コードギアス 教導のルルーシュ‐Archive Stories‐   作:ライト鯖

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Archive-040 クソゲーで学ぶ感情

 

「何だか忙しいないな。モモイは何処に行ったんだ?」

 

アリスを廃墟で発見した日の夜、ルルーシュがゲーム開発部の部室へ戻ると、慌ただしくゲーム機のセッティングを行うミドリと、ぼんやりその様子を眺めるアリスの2人の姿があった。

 

「あ、先生。今、アリス…ちゃんに話し方を教えようとしてて」

「話し方?」

「はい。今のままだとちょっと…何というか不味そうなので?」

「……………。ああ…。確かに」

 

先日のアリスとのやり取りを思い出し、ルルーシュは納得したように頷いた。

 

「それで、ゲームか。確かに、RPGなんかの会話形式は話し方の参考にはなるかもな」

「そう思ったので、私達のゲーム…を…」

 

タコ足配線の奥にある空きのコンセントにプラグを差し込み、ミドリはふう、と息をついた。

 

「よし、準備完了!」

 

ミドリの満足気な様子を横目に見つつ、ルルーシュははた、と思い至り、用意されているゲームタイトルを確認する。

 

「おい…。いや、気持ちは分かるが、言語学習にクソゲーの王者を使うつもりか?」

「い、いや!アリスちゃんが興味を持ってくれたからですよ!」

「はい。アリス、ゲームを開始します…」

 

何とも読めない表情でコントローラーを手に取るアリス。

ルルーシュは大丈夫だろうか、と不安げに見守るのだった。

 

「タイトルから分かるかもしれないけど、このゲームは童話テイストで色彩豊かな王道ファンタジーRPGなの」

 

ローディング中にミドリが説明するのを聞きながらルルーシュは内心、その概要でどうやったらあんな評価が叩き出せるんだ?と首をひねっていた。

 

"コスモス世紀2354年。人類は劫火の炎に包まれた…"

 

画面に映し出される文字列。

 

童話…。童話…?

 

既に童話テイストには見えないそのフレーズに嫌な予感を覚えるルルーシュ。

アリスもミドリの説明からかけ離れたフレーズに疑問を覚えたのか、或いは言葉の意味がまだあまり理解しきれていないのか、真相は不明ながら、首を傾けていた。

 

「えっと、王道とはいっても、色々な要素を混ぜたりしてるんだけどね。トレンドそのままでもダメだけど、王道にこだわり過ぎても古くなるからってことで」

 

まあ、考え方自体は間違っていないようには思えるが…。

 

「……ボタンを押します」

 

アリスがボタンを押下すると、画面は明るく光り、ドット絵の世界が現れる。

主人公と思われる人物、その前には如何にも、というように設置されている武器があった。

そして、テキストメッセージが新たに現れる。

 

"チュートリアルを開始します"

"まずはBボタンを押して目の前の武器を装着してみてください"

 

アリスは指示に従いBボタンを押す。

すると───。

 

ドット絵の主人公が突然、ピクセルの爆発に巻き込まれ、画面が暗転した。

 

"GAME OVER"

 

そうして、ゲームオーバー画面へと遷移する。

 

ルルーシュは額を抑えつつ、ため息を吐いていた。

 

なるほど。こりゃダメだ。

 

先を悟り、テイルズサガクロニクルがクソゲーと評される所以をルルーシュは理解していたが、ゲーム経験のないアリスは、ただひたすらに困惑していた。

 

「あはははっ!」

 

背後から笑い声。

モモイが外出から戻ってきて、そのまま楽しそうに笑いながら説明を始める。

 

「予想出来る展開ほどつまらないものはないよね!本当はここで指示通りじゃなくて、Aボタンを押さなきゃいけないの!」

「あれ。お姉ちゃん。学生証を作りに行くって言ってなかった?」

「行ってきたんだけど、もう遅い時間だから誰もいなかったの。だからまた明日行く」

 

ふーん、と言いつつ、ミドリは「それはさておき」とGAME OVERの文字が躍り続ける画面を指さし、苦言を呈するのだった。

 

「改めて見てもこの部分はちょっと酷いと思う」

 

「も、もう一度始めます…」と漸く多少は事態を彼女なりに処理したのか落ち着いたアリスはコントローラを取り直す。

 

「再開。…テキストでは説明不可能な感情が発生しています」

「あ、それ私分かるかも!きっと興味とか期待とかそういうのだよ!」

「怒りとか困惑って感じが近そうだが…」

 

その後、Aボタンを押下し、武器を装着したアリスはゲームを進める。

 

直ぐにチュートリアルの一部だろう敵とのエンカウントが発生し、画面が暗転。

戦闘画面へと遷移する。

 

"野生のプニプニが現れた!"

 

両者のHPバーが表示されターンバトル形式、かに見えるが、実際はアクション形式のフィールドバトルとなっているようで、プニプニが徐々に主人公の方へと近寄って来ていた。

 

「…緊張、高揚、興奮…」

 

アリスがボソリと漏らした言葉に、モモイとミドリは嬉しそうに目を見合わせて笑った。

 

「Aボタンを押して!今度は嘘じゃないから!」

「Aボタン秘剣燕返し…敵に対して2回攻撃をする…」

 

アリスはモモイに指示されてすぐには押さず、効果をさっと確認してから、指を伸ばす。

 

「行きます。プニプニに対して…秘剣…」

 

しかし、技が発動される直前、ダーン、という効果音が響き、同時に主人公のHPバーが一瞬にしてゼロとなった。

 

"GAME OVER"

 

今度はその文字列と共に、"プニプニ"と名前の入ったウィンドウが現れ、セリフが流れる。

 

"どれだけ剣術を鍛えた所で、我が銃の前では無力。…ふっ"

 

「うーん。やっぱりプニプニがふっ、って言うのは不自然かな?」

「ツッコミどころはそこじゃないと思う」

 

モモイの的外れな懸念にミドリがツッコミを入れる横で、アリスは困惑を絵に描いたような様相となっていた。

 

「思考停止。電算処理が追いつきません…」

「あ、アリスちゃん。大丈夫?」

 

暫しの沈黙。

アリスは、ふうと落ち着いた様子となり、コントローラーを再度手に持つ。

 

「リブート。再開します」

「……………」

 

本当に大丈夫か?これ。

というか…。うん。ここまでだけで既にクソゲーという評価に納得出来るな。

 

こめかみに手を当て、ルルーシュはため息を吐き、アリスの様子を伺う。

 

「今度は銃の射程距離把握に努めながら、接近しすぎないようにプニプニを排除します」

「そう、まさにそれ!諦めずに繰り返し挑戦して、試行錯誤の末に答えを見つける!それがレトロチックなゲームのロマンだよ!」

 

不要な試行錯誤を強要するのはロマンとは違わないか?という発言が喉まで出かかったがそれを呑み込むルルーシュ。

 

いや、一応アリスも楽しんで…はいるようだし、一先ず野暮は言うまい。

ついでに彼女らのゲーム製作の問題点をある程度洗い出せそうだしな。

 

その後、理不尽に振り回され、幾度もGAME OVERの文字列に苦しめられながらの数時間後。

 

アリスは苦悶を顔に浮かべていた。

 

「電算処理系統、及び意思表示システムに致命的なエラー発生」

「頑張ってアリス!ここを乗り越えれば待望のクライマックスだよ!」

「…今のはどう考えても"草食系"って言葉が思い出せないからって、それを"植物人間"って書いたお姉ちゃんのせいでしょ?!」

 

「"ごめんなさい。私は植物人間ですので、女性に対して気軽に声をかけることができません"ってテキストを読んだ瞬間にアリスちゃんが一瞬意識を失ってたじゃん!」

 

ルルーシュは最初こそ内心のツッコミのみならず、時折口にも出していたが、最早殆ど諦めていた。

 

何から…何から直せば良いんだ…。

G.Bibleとやらが本当にあったとしても、彼女らが作れるのか…?

ここから…?

しかし、逆に言えば確かにG.Bibleのようなナニカが無ければ…。

はあ…。確かに部員集めが一番現実的だったわけだ。

ユウカも大変だな。こんなのに付き合わされていたわけか。

 

「…質問。どうして母親がヒロインで、それでいて実は前世の妻で、さらにどうしてその妻の元に、子供の頃に別れたきりの腹違いの友人がタイムリープしてきているのか…。

いえ、そもそも"腹違いの友人"という表現はキヴォトスの辞書データに登録されていな──」

 

アリスはまたも苦しそうに呻き始める。

 

「エラー発生!エラー発生!」

「が、頑張ってアリスちゃん!クライマックスまでもう少しだから…!」

「…リブート。プロセスを回復。…ふう」

 

アリスは神妙に画面を見つめ、呟く。

 

「これが、ゲーム…再開します!」

 

1時間後──。

 

「こ、ろ、し、て…」

「すごいよアリス!開発者二人が一緒とは言え、3時間でトゥルーエンドなんて!」

 

モモイがそうはしゃぎ、アリスを称える。

 

「そ、それもそうだけど…もしかして本当にゲームをやればやるほど…アリスちゃんの喋り方のパターンがどんどん多彩になってきてる…?!」

「表情もパターンが増えてきているな」

 

ルルーシュも、そこは素直に感心していた。

しかし、それを上回る頭痛に、苦しんでもいた。

 

まずはレビューを作るべきか。

いや、しかし何をどうレビューすれば良いんだアレの…。

 

並列で動く思考の一端は絶えず、ゲーム開発部の惨状とも言うべき成果に対する絶望的な状況を考えていたのだ。

 

「勇者よ汝が同意を求めるならば私はそれを肯定しよう」

「うん。確かにそう…かも?」

「ゲームからそのまま覚えたせいでちょっとまだ不自然かもだけど、言葉を羅列してただけの時よりはかなり良くなったと思う」

 

まあ、多少人間味は出たから良しとするべきだろうな。

本当にちゃんとした喋り方は後々余裕のある時にでも──。

 

ルルーシュは一先ず大きな問題が起きることなく、お世辞にも良いとは言えないクソゲーの王者を終えれた事に安堵していた。

 

「と、ところでその…」

 

ミドリは照れ臭そうに小さくアリスに向かって切り出す。

 

「こういうのを面と向かって聞くのは緊張するんだけど…」

「わ、私たちのゲーム、どうだった?面白かった?」

 

アリスは数秒、思考の為に瞑目する。

そして、口を開き、出でた評価は──。

 

「……説明不可」

「え、ええっ!?なんで?!」

 

モモイがショックを目を見張り尋ねる。

 

「類似表現を検索…ロード中…」

「もしかして悪口を探してる…?そんな事ないよね…?」

 

アリスは探り探りにポツリポツリと言葉を紡ぎ始める。

 

「面白さ…それは、明確に存在…」

「おおっ!」

「プレイを進めれば進めるほど…まるで別の世界を旅しているような…夢を見ているような気分。…もう一度…もう一度…」

 

そこでアリスは言葉に詰まったかと思うと、僅かに視線を揺らしてから一粒の雫を目尻から零した。

 

「えええっ?!」

「アリスちゃん!?どうして泣いてるの?!」

「決まってるじゃん!それぐらい私たちのゲームが感動的だったってことでしょ!」

「い、いくらなんでもそれは…というかこれ、ギャグ寄りのRPGのはずだし…」

「ありがとう!アリス!その辺の評論家の言葉なんかよりも100倍嬉しいよ!

あー、早くユズにも教えてあげたい!」

 

モモイがはしゃぐ言葉の間に、「ちゃんと、全部見てた…」という小さな声が挟まり、キィ、とロッカーが小さな音を立て、開かれた。

 

「?!だ、誰だ?!いつの間に…?!」

「お、お化け?!」

「って、ユズかあ。びっくりしたよ〜いつの間にいたの?」

 

ユズ。というと、この子がゲーム開発部の部長、か。

 

ロッカーから出てきたのは自信なさげに縮こまるように立つ赤い髪という明るい髪色でも目立たない雰囲気の少女であった。

 

「み、みんなが、廃墟から帰ってきた時から…」

「ほぼはじめからじゃないか…」

「あ、もしかしてアリスちゃんと先生が怖かったから?

モモトークか何かで伝えてくれれば良かったのに…。びっくりしたよ」

「あ、アリスと先生は初めてだよね。この人が私たちゲーム開発部の部長、ユズだよ!」

 

ミドリに紹介され、ユズはルルーシュの方に小さく頭をペコリと下げた。

 

「よろしくな。ユズ」

 

そう笑顔を向けるも、直ぐに目を逸らされてしまったルルーシュは内心苦笑していた。

 

人見知り、のような感じか?

これは少々慣れてくれるまで時間がかかりそうだ。

 

しかし、ユズは恐る恐るではあったが、アリスへと寄り、「えっと、あの…その…」と何か伝えたいことがあるのだろう、しどろもどろに声を繋げる。

 

「あ…あ、あ…ありがとう」

 

アリスは訳がわからないと言うように首を傾けるが、ユズは構わず、いっぱいいっぱいな様子で続けた。

 

「ゲーム、面白いって言ってくれて…もう一度やりたいって言ってくれて…泣いてくれて…本当に…ありがとう」

「???」

「面白い、とか…もう一度、とか…。

そういう言葉が、ずっと聞きたかったの…」

 

今にも溢れ出しそうな顔で、ユズはアリスに感謝を、心からの想いを伝えるのだった。

 

 

そうして落ち着いてから、ユズは改めて自己紹介をする。

 

「とにかく、改めまして、ゲーム開発部の部長、花岡ユズです。

この部に来てくれてありがとう。アリスちゃん。

これからよろしくね」

「よろ、しく…?」

 

アリスは首を捻ってから、理解、と瞬きをし、パッと表情を明るくさせた。

 

「ユズが仲間になりました!パンパカパーン!」

 

「合ってますか…?」というアリスの確認に、ユズは、あ、うん、と少し困惑しながらも肯定した。

 

「そんな感じかな…?その様子だと、本当に私たちのゲームを楽しんでくれたんだね。

仲間が増えるのはRPGの醍醐味の一つだもんね」

 

あっ、とユズは楽しそうに笑いながら提案を言う。

 

「あ、もし、RPGを面白いなって思ってくれたのなら…わたしが他にもおすすめのゲーム、教えて上げる」

「ちょっと待ったあ!アリスにオススメするのは私が先!良質なゲームをやればやるほど話し方も自然になって、私たちの計画の成功率も上がるんだし!」

 

モモイが割り込み、幾つものゲームソフトのパッケージを両手で扇状に広げて見せた。

 

「さあ、まずは"英雄神話"と、"ファイナルファンタジア"、"アイズエターナル"と…」

 

そこに、ミドリも割って入る。

 

「何言ってるの!アリスちゃんはゲーム初心者なんだよ?!"ゼルナの伝説夢見るアイランド"から始めるのが一番だって!」

「これだけは譲れない。次にやるべきは"ロマンシング物語"だよ。あ、でも第3弾だけはちょっと…個人的にはやらなくて良いかなって…」

 

ロッカーから出てきた直後からは想像も出来ないほどに饒舌に話すユズも本格参戦し、次にやるべきゲームで三人はわちゃわちゃと激論を交わし始めていた。

 

アリスはその様子を眺め、小さく笑った。

 

「期待。再び、ゲームを始めます」

その後、どうにか三人が折り合った順序でゲームを始めたアリスをルルーシュは遠目に眺めるのだった。

 

まさか、あんなゲームで幾ら情緒がまだ幼いとは言え、感動の涙を零すとはな。

一瞬、怒りか何かかと警戒してしまったが、丸く収まったようで何よりだ。

さすがにここからは大手のまともなゲームばかりだろうし、問題はなさそうだ。

しかし──。

 

結局情報は殆ど増えなかったな。

むしろ謎が深まるばかりだ。

アリスの言葉や表情が多彩になったことをみるに、感情を表出、或いは再現する機能が組み込まれていることは間違いない。

 

一体、誰の、何の意図で、だ?

全く読めない。情報が不足しているのもあるが、それでもなお、絞り込める可能性が散らばり過ぎて進展がない。

 

敵意による被造物なのだとしたら感情は不要な要素だろう。感情を持つ兵器など、人間を考えれば不完全性は明らかだ。

しかし、そうでないのならば、何故あんな場所に隠すような場所で眠っていたのか。

理解が難しい。

 

やはり、廃墟の調査が必要、か。

現地探索もだが、文献をあさるべきだな。

何か分かるかもしれない。

 

ルルーシュはなおもアリスへの警戒は解いておらず、ゲーム開発部の面々が暫くはゲームをし続けるだろうと離れても大丈夫だろうことを確認してから、一旦ゲーム開発部を後にし、一先ず文献の調査へと向かうこととするのだった。

 

 






今回も読んで頂きありがとうございます。
次回更新日は変わらず未定ですが、また次回もよろしくお願い致します。

初めてプレイしたゲームって実際の評価とか、今やった時に感じる面白さを超えた特別さを感じます。

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