コードギアス 教導のルルーシュ‐Archive Stories‐   作:ライト鯖

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Archive-041 王達が求める力

 

 

「…まだ起きていたのか。あれからずっとゲームを?」

 

暗い部屋の中、モモイ達もすっかり寝落ちしてしまったゲーム開発部の部室で一人、ゲームを続けるアリス。

ルルーシュが、ミレニアムの図書館やらを漁り終えてから戻ってくると、数時間前と変わらない姿勢の彼女に一瞬だがぎょっとしてしまう。

 

やはり、ロボット…いや、確かこういうのはアンドロイドというのが適切な言葉か?

ここまで集中を持続させ、寝ることもしないで良いとはな。

 

「しかし、随分と上手くなったな。一人でも全く詰まらなくなったじゃないか」

「貴方の言葉を肯定しよう。必滅者よ」

「……ん?」

 

数秒の沈黙。

ルルーシュは全てを察し、額に手を当てた。

 

「ま、まあ。最初よりはまだ…そういうキャラに見える…か…?」

 

少し嫌な予感はしていたが…予想の斜め上だったな…。

 

「ほどほどにな…」

「心配するでない」

 

心配だ…。まあ、もう既にここはなるようにしかならないだろうな。

 

諦め混じりにため息をつきつつ、ルルーシュは一度、部室を後にするのだった。

 

そして迎えた翌朝。

 

丁度モモイが学生証を持って戻ってきたタイミングでルルーシュは部室へとやって来ていた。

 

「アリスは正体不明の書類を獲得した!」

「おっ。また更に口調が洗練されてるね。

これは、"学生証"だよ」

「洗練っていうか、レトロゲーの会話調そのものだけどね…」

「学生証…?」

「この学生証は、私達の学校の生徒だっていう証明。生徒名簿にもヴェリタスがハッキ…いや、登録してくれたから、もうアリスも正式に私たちの仲間だよ!」

 

嬉々として説明するモモイの言葉に、ルルーシュが「おい」とツッコミを入れる。

 

「今ハッキングって言いそうになっていなかったか?」

「あ、先生。おはよー!」

「はいおはよう。…ではなく、モモイ」

「大丈夫大丈夫!さて、服装に話し方、学生証。この辺は解決出来たから…。あとは…武器、だね」

「大丈夫な要素が全く見当たらないんだが」

「まあまあ!ヴェリタスは優秀だから、バレやしないよ!」

「そういう意味じゃない。…はあ。まあ仕方ないか」

 

さすがにユウカ辺りに一報を入れておいた方が良いか?

いや、今言っても余計ややこしくなるな。

既に学生証は偽造されてしまっているのだし。

 

第一、それでアリスが放逐されるような事態になっても不味い。

 

いやしかし…。後々面倒にならなければ良いが。

 

「…はあ。で、武器だったか?余っている銃でもあるのか?」

「ノンノン!そんなのないよ。あったとしてもそんなちゃちなの渡せないよ」

 

折角だしね!とモモイは楽しそうに言う。

 

「アリスと、先生もついでに案内するよ!」

「「案内?」」

 

ルルーシュとアリスの声が重なった。

 

「私たちの学校、ミレニアムサイエンススクールをね!」

 

 

まずは…とモモイ腕組みし、考えるように続けるら、

 

「ミレニアムだけじゃなくて、キヴォトスの皆は何かしら武器を持ってるから。アリスにも必要なんだけど、このミレニアムで一番手っ取り早く、ちゃんとした武器が手に入る部活……エンジニア部にまずは行こうか!」

「マイスター集団のエンジニア部か。確かに良い武器がありそうだ」

 

丁度時間が空けば行こうと考えていた部活を訪れる機会が棚ぼた的に舞い込み、折角だから、とルルーシュは自らの用事もこなすことを決めた。

 

「先生、ミレニアムに本当詳しいよね。ウチにそう何度も来てるわけじゃないのに」

 

補足を入れられたモモイはルルーシュのミレニアムサイエンススクールに対する知識に、ただ素直に驚いているようだった。

 

「先生の言う通り、"サイエンススクール"でマイスターの称号を冠するエンジニア集団だから、機械全般に精通している上、武器の修理とか改造を担当している部活だし、きっと良いのがあるよ」

「モモイにしては、良い選択だな」

 

ルルーシュの合いの手に、モモイは聞き捨てならないと反応する。

 

「ちょっと!にしては何さ!にしてはって!」

「まあ、とりあえず、行ってみようか」

「先生!?スルーは私が許さないよ?!」

「…なら、前科を数えてみろ」

「うっ…!な、何のことだろうな〜。さ!いこいこ!」

 

 

 

-ミレニアムサイエンススクール エンジニア部 -

 

「おや。モモイにミドリに…見慣れない子と大人が一人ずつ、か。珍しいねこんな大人数で」

 

エンジニア部の部室にやって来たモモイらを出迎えたのは薄紫のロングヘアを揺らしながら工具を幾つも手に持ち、フォルムも、恐らく用途も様々の機器の間を忙しなく動いていた少女、エンジニア部部長の、白石ウタハであった。

 

「はじめまして。シャーレの先生。ルルーシュだ」

「シャーレ、というと、ああ、噂になってる連邦生徒会の。

よろしく、先生。私は白石ウタハ。ここの部長をさせてもらってる」

 

それで、とウタハはアリスの方に目を向ける。

 

「こっちの子は?」

「うちの新入部員なんだ!」

「へえ?じゃあ規定人数に達したわけだ。めでたいね」

「へへっ。ありがと!それで相談があってさ」

 

モモイは自信満々に紹介してから、かいつまんで事情をウタハへと説明する。

 

「…なるほど。だいたい把握出来たよ。

新しい仲間により良い武器をプレゼントしたい、と」

 

そういうことであれば、とウタハはアリスに目を向け、微笑む。

 

「エンジニア部に来たのは素晴らしい選択だね。

ミレニアムにおける勝敗というのは、優れた技術者の有無に大きく左右されてしまうものだ」

 

言いながらウタハは部屋の一角を指差した。

 

「そっちの方に私たちがこれまで作ってきた試作品が色々置いてある。そこにあるものであればどれを持っていってくれても構わないよ」

「やった!ありがとう!先輩!」

 

 

「やあ」と、モモイ達が試作品置き場へ向かおうとしたところで、網タイツにショートパンツという出で立ちの生徒が声をかけてきた。

 

「1年生のヒビキだよ。良ければ私が、何か良いものを見繕ってあげる」

 

これはどう?と拳銃を手に取りアリスに手渡す。

 

「へえ、拳銃?」

「見た感じ、多分だけど…これまでに余り戦闘経験は無いはず…」

 

ルルーシュは、一同が楽しげに武器の見繕いに集中し始めたのを確認すると、ウタハの下へ一人、近付き囁くように、小声で語りかける。

 

「実は私も相談があってね。今、良いかい?」

「先生も?勿論だとも。…しかし、どうして小声なんだ?」

「彼女らの邪魔をしないように、と思ってな」

「なるほどね。となると、何か面白いものかな」

「さあ。君らの実績は少しだが調べさせてもらった。

そこから考えると、まあ多少は興味を持ってもらえるんじゃないかと思うよ」

 

へえ、とウタハは興味を顔に浮かべる。

 

「楽しみだ」

「では、これを」

 

ルルーシュは懐から紙束を取り出し、ウタハに手渡す。

 

「これの製作を依頼したいんだ。

詳細な、というより正式の設計図は残念ながら持ち合わせていない上、私は専門家じゃないから、可能な限り、記憶と調べた知識に基づいて書いた概略書だが…」

 

ふむ、とウタハはその書類、ルルーシュの言う通り、設計図というよりかは、イメージ図、概念を伝える為のその図面を眺める。

 

「…これは。ロボット、と言うべきなのかな」

「まあ概念的にはそれに分類されるだろう」

「人が乗るタイプの…兵器か」

「ああ」

 

確かに、とウタハは顔を上げる。

 

「興味深い。ロマンさえ感じるよ。

こんなのが本当にあれば、戦車も簡単に倒せてしまうだろうね」

 

抑えた調子の中にも興奮が混じった様子で、ルルーシュの見せた"それ"にウタハは食い付いていた。

 

「…というか、先生の話しぶりだと実在しているのかい?これは」

「私のいた国にはあったよ」

「……しかしこいつは、石油や石炭…化石燃料ではとてもじゃないがエネルギーが足りない。

一体どうやって動かしていたんだ?」

 

ルルーシュは何処まで話すべきか、まだ迷っていた。

話し過ぎて、キヴォトスの外、どころか明らかに理の異なる世界から来たことを知られる事がどのような結果をもたらすか、想像も付かなかったからだ。

しかし、それでも、必要性を感じ、彼は欲していた。

自らのいた世界の兵器、人型自在戦闘装甲騎、ナイトメアフレームを。

 

キヴォトスへ来てから生徒に戦わせるばかりで自らは戦う力を持てないことに、忸怩たる想いを彼は抱き続けていたのだ。

しかし、戦車を赤子の手をひねるように打ち倒せるナイトメアフレームがあれば、自分も戦力としてカウント出来る。

それ故に、彼はエンジニア部を訪れる事がゲーム開発部の手紙を受け取ってからミレニアムへ来動機の一つであった

 

「この…ナイトメアフレーム…と私の国では呼ばれていたが、こいつの動力源は化石燃料ではない。

…まあ、特殊な超伝導体が使われていたんだ」

「そんな技術がキヴォトスの外にはあるのかい。

知らなかったな…」

「うむ…まあ、話すと長くなるが、国家機密のようなものだったんだ」

「じゃあ先生は、どうして知っているんだ?」

「訳ありでね。まあ、それを知れる立場だった、とだけ言っておこう」

 

結局、ルルーシュは全てが嘘ではない形で誤魔化すことに決めた。

しかし、必要な情報、つまり、特殊な超伝導体を前提にしている故に、普通の方法では実現出来ない事、は伝える。

 

「なるほど。それは深く追求しない方が良さそうだね。

でもそうなると、キヴォトス…いや、私達でもまだ実現出来ていない技術だね」

「やはりそうか…」

「でも…うん…そうだな。ある程度は実現出来ると思うよ」

 

ウタハは何かに火がついたようで隠しきれない興奮を口角に浮かべながら言う。

 

「本当か?しかしエネルギーの問題があるのだろう?」

「ウチもロボットは作ってるし…他にも色々と研究していてね。

残念ながら常温超伝導体は発見出来ていないが、化石燃料だけでは到底動かせないようなメカも作ってきた。

正に、超伝導体なんかを利用してね」

「つまり…高温超伝導体、か」

「そういう事。まあ、かなり高価だし、そうホイホイ使えるものじゃあないけどね。

何度か触れたことはある」

 

とは言っても、とウタハは紙束の内、何枚かを巡り、指で残念そうに1枚を叩く。

 

「このハドロン砲とかいうビーム兵器みたいなのは少し難しいね」

「やはり完全再現は不可能、か」

 

ルルーシュの言にウタハはムッと唇を結び、抗議する。

 

「不可能とは言っていないだろう。

今は、難しいというだけだ。

そういう類いのビーム砲は私達も研究しているしね。

ただ、悔しいが直ぐの実用化は出来ない、という意味だよ」

「む。すまない。早とちりだったようだな」

「分かってくれれば良いさ。まあ、しかし、正直なところ、ウチのそれに関連した研究の現在地は…」

 

あ、とウタハはモモイ達の騒ぎに気付き、「丁度良い」とルルーシュに手招きする。

 

「先生の求める武装に近いビーム兵器。

そいつを見せてあげるよ」

 

言いつつウタハはモモイらの輪に近付いていくので、ルルーシュもそれに続いた。

 

「予算の70%弱って…何か前にも似たような…確かコールドスリープ装置作って皆して風邪引いてなかった?」

 

丁度、アリスが興味を惹かれていた大きく、見た目からしても重厚さを感じられる大砲のようなそれ、レールガンが宇宙戦艦搭載用、と紹介されたところであった。

そして、それにミドリが前にもあった類例を挙げてツッコミを入れたところでもあった。

 

「その未来直行エクスプレスなら、今でもよく使ってるよ。

…冷蔵庫として、だがね。食べ物をもっと未来へ送れるようになったのだから、失敗ではないさ」

「使い道の割に名前が大げさ!」

 

ウタハの説明へのモモイのツッコミの後、ヒビキと共にアリスの武器選びの輪に参加していたもう一人のエンジニア部員、コトリが指を立て、眼鏡の奥の瞳を輝かせながら話し始めた。

 

「話を戻しますと、エンジニア部は今、ヘリコプターや汎用作業ロボットに続いて、宇宙戦艦の開発を目標としているのです!」

「このレールガンはその最初の一歩です!大気圏外での戦闘を目的として開発された実弾兵器!

これはミレニアム史上、明らかに類を見ない初の試みです!」

 

おお、とモモイはその説明に感嘆の声をあげる。

 

「カッコいい…聞いただけでワクワクしてくる!」

「さすがミレニアムのエンジニア部!今回は上手く行っているんだね!」

「ふっふっふっ。勿論です!」

 

と、言いたいところだったのですが、とコトリは肩を落とした。

 

「ちょっと今は中断してまして…」

「ええっ!?なんで?!期待したのに」

「いつものことながら技術者達の足を引っ張るのは、いつの世も想像力や情熱の欠如ではなく、予算なんです…」

「このレールガンを作るだけで下半期予算の70%分もかかったのに、宇宙戦艦そのものとなったら、果たして何千倍になることやら…」

 

心底残念そうに言うコトリに、いやいや、とモモイは困惑を向ける。

 

「そんなの計画段階で分かることじゃん!どうしてこのレールガン、完成まで持ってっちゃったのさ?!」

「愚問たね。モモイ」

 

これにはウタハが答える。

 

「…ビーム砲は、ロマンだからだよ」

 

ヒビキが無言で頷き、コトリも同意のようで、頷きつつ言葉を続けさせる。

 

「その通りです!ビーム砲の魅力が分からないなんて、全くこれだからモモイは」

「バカだ!頭良いのにバカの集団がいる!」

 

モモイのツッコミを聞きつつルルーシュの脳裏には、相談相手を間違えたかもしれない、と過ってしまっていた。

大丈夫か。ここに委ねて…。いやしかし技術力は折り紙付き…。

 

「エンジニア部の情熱が注ぎ込まれたこの武器の正式名称は…」

 

"光の剣 スーパーノヴァ"

 

「また大仰な名前を…」

 

ミドリの呆れたような言葉とは対照的に、アリスはそのワードに目を輝かせていたようだった。

 

「ひ、光の剣?!」

「あ、アリスの目が輝いてる?!」

「わあ!うわあ…!」

「アリスちゃんがこんなに興奮してるの、始めて見たかも」

 

アリスは目をそれはもう、子供のようにキラキラと眩しく輝かせながら"光の剣 スーパーノヴァ"を指差していた。

 

「…これ、欲しいです」

「え」

「…うーん。そう言ってくれるのは嬉しいんだけど…」

 

ウタハはルルーシュの方にもチラリと視線を向ける。

 

ああ、なるほど。話しぶりからすると、何か問題がありそうだったな。

しかし、見た感じ兵器としては機能しそうだが…。

 

「…この武器は個人の火器として使うには重くて大きすぎる」

「なんと、基本重量だけで140kg以上です!更に光学照準とバッテリーを足した上で砲撃を行うと、瞬間的な反動は200kgを超えます!」

 

重さ、か。確かにこのサイズで140kgとなると、俺の要求するハドロン砲級の威力と連射可能性を想定した場合、砲の重量だけでもう動けなくなりそうだ。

その上、機体の基本重量もある。

軽量化が出来ていない、ということだったか。

なるほど直ぐの実用化は難しい、というのは納得だな。

 

「これをカッコいいと言ってくれただけで、私たちは嬉しいよ。ありがとう。

持っていけるならば、本当にあげたいところなのだけれど…」

 

ウタハは心底申し訳なさそうに言う。

しかし、アリスは数秒の思案の後、弾けるような笑顔となっていた。

 

「汝、その言葉に一点の曇りもないと誓えるか?」

「ん?この子、喋り方が…」

「多分ですけど、"本当なのか?"って聞いてるんだと思います!」

 

ミドリが慌てて補足する。

 

「勿論嘘は言っていないが…それはつまり、あれを持ち上げるつもり、ということかい?」

 

アリスは頷き、光の剣に歩み寄った。

 

「此の武器を抜く者…此の地の覇者になるであろう!」

 

「んんんんっ!」と力を籠め、アリスは光の剣を──。

 

「まさか…」

 

確かに、持ち上げた。

 

「えええっ!?」

「し、信じられない…」

「持ち上がりました!」

 

アリスは光の剣をしげしげと眺め「これが…Bボタンでしょうか」と突起部に指をかける。

 

「あ、待って…」

 

呆気に取られていたエンジニア部の面々はアリスの行動へと反応が遅れ、制止は間に合わなかった。

 

「光よ──!」

 

カッとエンジニア部の部室は暗闇で落雷でもあったかのように、一瞬、白く、眩しく輝く。

そして、次の瞬間、轟音と落ちる瓦礫の音と共に、柔らかな陽光と、青い空が、消え去った天井の向こうに現れた。

 

「…すごいです。アリス、此の武器を装着します」

 

アリスは満足そうに光の剣を抱きしめたが、コトリはあわあわと引き留めようとする。

 

「ま、まさか本当に使えるなんて…で、ですがそれはその…!予算とか諸々の問題で、出来れば他のでお願いしたく…!」

「いや」

 

ウタハがコトリを押し留め、首を振った。

 

「構わないさ。持っていってくれ」

「ウタハ先輩。…本当に良いんですか?」

 

ミドリの確認に、ウタハは小さく首肯する。

 

「ああ。どちらにせよ、この子以外には使えないだろうからね。

ヒビキ、後でアリスが持ち運びやすいように肩紐と取っ手をつけて上げてけれ」

「分かった。…前向きに考えると実戦データを取れるようになったのはありがたいかも」

 

ヒビキは言いつつ、都合の良い部品を探しに行く。

 

「何だか凄い武器もらっちゃったね!ありがとう!」

「あ、ありがとうございます!」

「いや、お礼にはまだ早いさ」

「え?」

「さて…コトリ、ヒビキ、以前に処分要請を受けたドローンとロボット、全部出してくれるかい?」

 

ん?とモモイとミドリは顔を見合わせ、ミドリが恐る恐る尋ねる。

 

「ウタハ先輩…?何だか展開がおかしいような…」

「これってもしかして、"そう簡単に武器は持って行かせない!"みたいなパターンじゃない?」

「その通りさ。…他の武器なら喜んで渡しただろうけど、それについては、確認が必要かと思ってね」

「確認?」

「いや…"資格"と呼んだほうが相応しいかな」

「ふむ。ならば、私も手出しはしない方が良いかな?」

 

ルルーシュはウタハの意図を汲んだのか、そう提案する。

 

「え?!先生?!」

「まあ相手はロボットやドローンだ。大丈夫だろう」

「ああ、先生は指揮を執るんだったっけ。

まあそれはどっちでも大丈夫だよ」

「そうか。まあ、なら見学といこう。

勇者アリスのお手並み拝見といったところか」

「勇者…!」

 

さて、とウタハは小さく咳払いする。

 

「その武器を本当に持っていくのならば──」

「私たちを倒してからにしてください!」

 

そのセリフとほぼ同時に、起動したドローンやロボットが群れをなしてアリス達へと容赦なく襲いかかる。

 

「嘘でしょ?!」

「と、とにかくやるしかないよね!行ける?アリス」

「はい!勇者アリスにお任せを!」

 

しかし、とドローン軍団とアリスらの戦闘を眺めながら、ウタハはルルーシュに囁く。

 

「あれは本当に人間には持ち上げられないと思うんだが、アリスは──」

「否定しようのない現実が目の前にある以上、首を横に振ったとてどうにもならんだろうな」

「さっきの話も絡むけど、重すぎるから武装としても、それこそ宇宙戦艦、つまりは無重力を想定でもしないと実戦向きではなかった。

戦車に載せるにしても同じ大重量なら普通の砲塔の方が合理的だしね」

「しかし、アリスは使えてしまった、か」

「そう。それに"光の剣"をやすやすと扱えているだけじゃない。あの重量の砲を発射してブレない体幹バランス。戦闘をしているのに肌全体に傷一つ見当たらない綺麗な肉体………いや、機体」

 

つまり、とウタハは独り言ちるように、ルルーシュにしか聞こえないような小声で続ける。

 

「つまり、最初から厳しい環境での活動を想定し、ナノマシンによる自己修復を前提として作られた身体。その目的はきっと──」

「想像通りだと思うよ」

「先生は分かっていて、ということなんだね」

 

小さくルルーシュは首を縦に振る。

 

「様子を見ているところだ。

色々事情があってな。単なる機械とは言えない女の子を根無し草で放逐は出来ないだろう」

「なるほどね。まあ、何にせよアレを本当に使いこなせるのなら、私たちにとっては本懐さ。

悪い子には見えないし」

 

丁度その時、一箇所に誘導されたドローンの群れにアリスが照準を合わせていた。

 

「──光よ!」

 

モモイやミドリがどうにか一機ずつ落として抗していたドローン軍団は、光の剣によって一撃で消し飛ぶのだった。

 

「素晴らしい」

「く、悔しいっ!しかし、これが結果ですね…」

 

コトリは残念そうに肩を落としてから、笑顔でアリスに向き直る。

 

「アリス、その"光の剣"は改めて、貴方の物です!」

「わあっ!わあっ…!」

 

アリスは満面の笑顔で、嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねる。

 

「それを使いこなせるなんて、本当凄いね。

おいでアリス。もう少し使い方を教えて上げる。それから、取っ手ももう少し補強しようか」

 

そうして光の剣を整備してもらったアリスはモモイらと一緒に喜色満面、部室へと戻るのだった。

 

「すまないな。色々と」

「いや、構わないさ。しかし、先生。

アリスの事は、本当に良いのかい?」

「セミナーへの通知、か。

それも考えたが、事情が重なってな。

まあ彼女らが廃部を免れたら報告するさ」

「ああ。それで。…意外とお人好しなんだね」

「意外とって、まだ会ってすぐだろう」

「あはは。すまない。でもなんだか纏ってる雰囲気からはイメージ出来なかったんだ」

 

全く、とルルーシュは息をついてから、ところで、と話題を変える。

 

「ナイトメアフレームの事だが」

「ああ、その件もあったな」

「まあさっきも言ったが、ビーム砲は研究中だ。

予算も厳しいし、悔しいけれど中々時間がかかるだろうね」

「金の心配は問題ない。依頼するのは私なのだからな。開発費用は全て持つ」

 

ウタハは驚いたように目を見張った。

 

「本気かい?何千万じゃ済まないかもしれないよ?」

「その価値はあると確信している。勿論、支払い能力の方も、問題ない」

「…そうなると、後は技術的な問題だけだね。

急いでる、のかな」

「まあ可能な限り早くに実戦投入したいところだ」

「応えたいのは山々だし、応えられないのが心底悔しいけれど…うーん」

 

ウタハは唸ってから、眉を歪めつつも、しかし…と呟いた。

 

「あ」

 

ふと、彼女は何かを思いついたようで、パッと顔を上げた。

 

「そもそも、機体自体未知の存在。

まずはそっちをどうにかしないとじゃないか」

「そうなると……うん。でも、今までのロボット開発のノウハウも活かせそうだし…」

 

良し。と頷いてから、ウタハは先程のルルーシュから貰った資料を取り出した。

 

「この"ガウェイン"や"紅蓮"タイプの機体は一先ずビーム砲を別途実用化する必要があるがこっち…これが"量産機"?信じられないな…。

いや、ともかくビーム砲の必要がない"サザーランド"タイプを先ず実験機として開発する」

「やってくれるのか?」

 

愚問だね、とウタハはニヤリと笑った。

 

「こんな面白いものを見せられて、予算も全部出すとまで言われて、難しいので断りますなんて言った日には、マイスターの名が廃る」

「それに、ロマンがある。搭乗可能な人型機械兵器なんて宇宙戦艦並の憧れじゃないか」

「そ、そうか…」

 

それが当たり前にある世界にいたルルーシュはその琴線にはイマイチピンと来ていなかったが、受けてくれるというならば、そんなことは些末な問題であった。

 

「機体…ナイトメアフレーム、だったか。

必ず、先生の希望に沿った機体を用意してみせるよ。

その為にまずは、基本となる機構の再現。

サザーランドを開発する。

それが成功すれば、次はビーム砲を搭載した他の機体に」

 

それで良いかな?というウタハの確認に、ルルーシュはありがとう、と首肯を一緒に返した。

 

「むしろ、両方開発してくれると言うならば、此方としては嫌も応もない。是非お願いしたい」

「了解。…でも、何の目的でこれを作りたいと思ったんだい?

まさかシャーレが戦争をするわけでもないだろう」

「…私が戦えるようにするためだよ。

後ろで指揮を飛ばすだけではなく、ね」

「適材適所ということじゃないかな」

 

そうかも知れないな、とルルーシュはウタハの考えを否定はしない。

しかし、ルルーシュ自身のプライドが、ある種の人生哲学が、それを許せないのだ。

 

王様が動かなければ、部下は付いてこない。

 

ただ安全圏から指揮するだけでなく、自分も戦わなければ、結局のところ、口先だけの人間になってしまう。

ルルーシュはそう考えてしまっているのだ。

 

「それでも、私は、自らが前に出られる力が欲しいんだ」

「…分かった。これ以上深くは聞くまいよ。マイスターとしてクライアントの望みを叶えてみせるさ。必ずね」

 






今回も読んで頂きありがとうございます。
次回更新日は相変わらず未定ですが、早めに更新出来るよう頑張ります。
また次回もよろしくお願い致します。
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