コードギアス 教導のルルーシュ‐Archive Stories‐ 作:ライト鯖
白昼の凶行──。
そんな見出しが躍ってもおかしくないような無謀な突撃をアリスは、ミレニアムのオペレーションルームに対して敢行していた。
光の剣を用いた攻撃で、指紋認証のあるセキュリティを強行突破。
次々と破壊し、侵入していったが、当然、そんな無謀なやり方が通るはずもなく、C&Cのアカネと、動員されたセキュリティロボットによって最終的に敗北してしまうのだった。
「や、やられてしまいました…
ふ、復活の…呪文…を…」
蓄積したダメージによって動けなくなったようで、アリスはその場にへたり込む。
その様子を見ていたユウカは、呆れと驚きの混じった表情となっていた。
「信じられない…どんな方法で来るのかと思ったら、よりにもよって強行突破だなんて」
「この子がアリスちゃんですね?
可愛いですね〜。6番目のエージェントメイドとして育てたくなってしまいます。連れて帰っても良いですか?」
アリスを取り押さえたアカネは無謀とは言え見事なまでの突破力と火力にも魅力を感じたのだろう。
アリスをC&Cへ引き込みたそうに見るが、ユウカは「…それはダメ」と拒否する。
「今は生徒会を襲撃した犯人の一人なんだから…
とりあえず一旦、生徒会の反省部屋にでも閉じ込めておくわ」
警備の人員に連れらて行くアリスを見送りながら、ユウカは「それにしても」と改めて呆れ顔となる。
「まさかエレベーターの指紋認証システムを突破するためとは言え無理矢理扉を撃ち破るだなんて…」
「まあ実際ここまでたどり着けてはいるので、全くの無駄とは言い切れないのかもしれませんね」
「それにしたって蛮勇でしょ」
被害状況を確認したオペレーターがぼやくユウカに報告する。
「エレベーターのセキュリティロックですが、直ぐに修理するのは難しそうです。対処としては、丸ごと取り換えるくらいしか…」
「そう。じゃあ新しいのに交換…」
ユウカはそこで、ハッと気付く。
アリスの無謀な突撃は、単なる蛮勇でなかったのでは、と。
「ちょっと待って。…多分だけどアリスちゃんのあの意味分からないくらい巨大な武器…あんなのエンジニア部で作られたものに違いないわ」
「こういう時はいつもエンジニア部に依頼してたけど…それが罠である可能性は捨てきれない」
ユウカは数秒の黙考の後、指示を飛ばす。
「一番強力そうなセキュリティシステムを購入して早急に取り換えて。エンジニア部製じゃないもので。予算の方は何とかするわ」
その頃、ミレニアムの生徒達が行き交う廊下の一角でモモイらはアリスが連行されていく様子を遠目に確認していた。
木を隠すなら森の中。
人混みに紛れる事である程度カモフラージュしつつ、アリスとセミナーの動きを観察していたのだ。
「とりあえず、第一段階は完了かな?。仕掛けは上手く行ったみたい」
「うう…でもアリスが連れて行かれちゃったよ〜」
「落ち着いてお姉ちゃん。計画通りなんだから」
「まあ、逃亡プランも実行出来れば最良だったが、現状悪くはないな。
ハレ、次はエンジニア部に連絡を」
ルルーシュはハレにそう指示を出したが、わざわざ連絡を入れるまでも無かったようで、マキが「丁度連絡来てたよ」と報告をした。
「此方エンジニア部、トロイの木馬を侵入させることに成功した、ってね」
「ひゅーっ…。それは一安心。もし失敗してたら、ただ意味もなくアリスが監禁されただけになっちゃうとこだった」
「しかし、上手く行ったな。作戦を次の段階へ移行出来る」
「うん。それじゃあ、また夜に」
そうして、夜。
「皆、配置に付いたか?ヒビキやウタハは問題なさそうか?」
『"お客さん"をお迎えする準備は出来てるって』
「良いね。さすが」
モモイの反応に、「やってるのは良いことじゃないけどね…」とミドリが苦笑で応える。
「マキとコトリの方は?」
『こっちも大丈夫。準備オッケーだよ』
「よし。…では、作戦の第二段階を開始する!」
「行っくぞ〜!」とやる気に満ち溢れるモモイの声を先頭に夜の人気のない薄暗くなったミレニアム校舎を、ルルーシュらは駆け抜けていくのだった。
「…来た」
オペレーションルームのカメラが人の通過を感知した警告音を発している。
「監視カメラにて対象を発見しました。1番ゲート、ポイントA1にターゲットを確認。
まもなく、ポイントA2に侵入します」
「…そこまで入れば、もう脱出はほぼ不可能と見て良いのですよね?」
報告を入れたオペレーターに確認を取ったアカネは、「では」と愛銃を手に構える。
「私が行きましょう」
「あら。だいぶ高く買ってるみたいね。
アカネがわざわざ行く必要、ある?」
ユウカが意外そうに尋ねると、アカネは「勿論です」と微笑した。
「お客様のお出迎えは、メイドとしての基本ですから」
ミレニアムサイエンススクールの生徒会、セミナーはミレニアムタワー。─学園の中枢と言える高層ビルディング─の最上階を専用スペースとしている。
勿論、"鏡"の保管されている差押品保管所も例外ではない。
そして、ハレ達ヴェリタスが調べたところによると、それは最上階フロアの西側のブロックにあるという。
更に、セミナーから依頼を受け、セキュリティシステム等の構築に力を貸しているエンジニア部からの情報提供によりそこまでには400台の監視カメラ、442台、三種類の警備ロボットが計52体が待ち構えていると分かっている。
しかし、問題はその戦力と監視網ではない。
「一番の問題は保管所に行くためには必ず"エレベーター"を使わなきゃいけないということ」
数時間前の作戦会議中、ヴェリタスの部室でハレが資料を読みつつ、そう指摘した。
「このエレベーターは生徒会の役員と限られた人員しか通過出来ない指紋認証支部が付いている。
これを突破したとしてもその先にはセミナー所属の生徒や武装警備員がいるだろうし、何より最上階は各部屋毎にセクションで分けられてる」
「セクション…部屋が仕切られてるのは当然じゃないの?」
「セクションとセキュリティシステムが対応しているんだ」
ミドリの横で説明を聞いていたルルーシュはああ、なるほど、とそれだけで理解したようだった。
「火事だったりが何処かで起きれば、セクション間の隔壁を下ろし、防火扉としたり、よからぬ輩の侵入を許したとしても、閉じ込めて対処する事が可能になるわけか」
「そういうこと。そして、この辺のシステムは、登録のない指紋や強い衝撃を反応すると、次はもっと強力なチタン製の2番目のかが下りてくる」
その上、とハレはこれも問題の一つ、と言いたげに言葉を続ける。
「そんな状況にまでなると、今度は生徒会役員の指紋か虹彩二つの認証が必要となる」
「厳重だな。それを正面突破することなど、やはり不可能に近いだろうな」
ヴェリタスやエンジニア部の協力が無ければ、正面突破でなくとも不可能に近い、どころか全くの不可能事だっただろう。
「ふむ。監視カメラについてはハッキング出来そうだが…セキュリティシステムについては、ヴェリタスでも正面突破は難しいだろうね。
何せ、基本的に外部のネットワークからは遮断されている」
ウタハの説明の後、ハレが再び口を開く。
「あ、もう一つ新しい情報が入った。エレベーターに無理矢理侵入しようとすると、最上階の全部のセクションにシャッターが下ろされるみたい」
「難しい上に絶望的な話ばっかじゃん!何か良い話ないの?!」
「…弱点なら、ある」
モモイが想像される難易度の高さに辟易したように叫んだ直後、ヒビキがフォローを入れるようにして呟いた。
「まず外部電力を遮断する方式に弱い」
「まあ、電子機器は概ね電力の途絶には弱いだろうな」
「うん。勿論、それで機能停止する程脆弱ではないけどね。
電力を絶つと、自然に外部ネットワークに繋がるから、一時的にハッキングの隙が生まれる」
ルルーシュのコメントに頷きつつ、ヒビキの説明は続く。
「私たちが作った超小型EMPならその隙を狙ってあらゆるシステムを無効化する事が出来る。
恐らく、無効化出来る時間は、6秒」
「6秒、か。正に虎の子だな」
「…でも、十分だね。その間に予め作っておいたデータやコードを送り込むことは出来る」
「ふむ。…しかし、それだけ短いのならば、より確実性を増しておいた方が良いんじゃないか?」
「それは、そうかもね。何か考えがあるの?先生」
「ああ。無論だ」とルルーシュは頷いた。
「システムを全部ハッキングしてしまうのも一つの手だが、時間も限られている上、やはりボロが出やすくなる」
「そして昨日の今日で、あの多忙なセミナーが緊急システムの全ての動作確認を完璧になど終えられるわけもない。
つまり、挙動を利用し、"正常"に異常動作を引き起こさせるのが一番確実だ。ハッキングによる細工は最低限で良い」
「なるほど。確かにそれなら、私たちの作業量も減るし、送るデータ量も少なく済むね」
「此方がシステムを壊す必要はない。システム自身に敵を閉じ込めさせてやれば充分だ」
俺は未だ、彼女らのハッキングの腕を正確に把握はしきれていない。
しかし、彼女自身は自分達の腕のことを誰よりも良く分かっている。
変に驕り高ぶって自己を過大評価するタイプには見えないし。
その本人が充分だと言うのならその点は心配する必要はないのだろう。
しかし、やはり、やるからには万全を期すべきだ。
ルルーシュの提案に、ハレは納得したようであり、作戦は僅かに修整された。
とは言っても、基本は変わらない。
ただ、6秒という時間の確実性をより増大させたのであった。
そして、時は戻り、現在。
薄暗い廊下を進む影が二つ。
「えーっと、この辺で良いんだっけ?」
非常灯の僅かな光や、漏れ入る月光だけでは、その姿を正確に捉えるのは難しいが、特徴的な猫耳状の髪飾り、そのシルエットはかろうじて捉えられるくらいであったが、生徒会のオペレーションルームのモニターには、恐らくカメラを通してはっきりと、モモイ、ミドリの姿が映っていることだろう。
「凄く奥の方まで来た感じですが、恐らく間違ってはいないかと」
慎重な様子で歩を進める二人の前に、一つの影が、現れる。
「ええ、合っていますよ」
「…?!」
比較的光量の保たれた場所へとあえて進み出て、姿を現したのは、アカネであった。
「こんばんは。良い夜ですね。お二人のここまでの行動は全て監視カメラで見せて頂きました」
ニッコリとした笑顔を浮かべながら、アカネはジリジリと二人との距離を縮めていく。
「薄々お気付きかもしれませんが、あなたたちの計画はもう失敗しています。お早めに投降する事をお勧めしますよ」
銃を手に、彼女はなおも、にこやかさを保ち続けていた。
「改めまして、私はC&Cのコールサイン・ゼロスリー…本名は秘密ですので、謎の美女メイドとでもお呼びください」
「あ、アカネ先輩!」
「特技が"暗殺"で有名なあのアカネ先輩?」
アカネは二人の反応に、うーん、と苦笑する。
「一応秘密エージェントのはずなのですが…。いつの間にそんな知られ方を…。正体を明かさない系ヒロインはもう時代遅れなのでしょうか?」
「色々知ってるよ〜。コタマ先輩によると、どうやら最近体重が──」
「ま、待ってください?!さすがにその情報漏洩は問題ありますよね?!」
動揺を見せ、二人がそれ以上喋らないよう制止するアカネ。
そして、崩した笑顔を戻すことはなく、キッ、と二つの影を睨む。
「その情報に関しては永久に黙って頂きます!
…さあ、そろそろ姿を見せていただきましょうか!モモイちゃん、ミドリちゃん」
「………ふふふ」
「…?」
二つの影が漏らした忍び笑い。
その意図が分からず、アカネは二人との距を縮めつつあった歩を止めた。
「まだ気付いてない感じかな。失敗してるのは、そっちの計画の方だよ?」
「…はい?」
そして"二人"は、光の届きにくい廊下の隅から、月光に照らされる窓辺の方へと素早く動き、アカネの要望通り、姿を見せた。
「は〜い。アカネ先輩!寮に戻ろうとしてたら道に迷っちゃってさ〜」
ただし、それはモモイとミドリではない。
「あ、あなたたちは…?!」
するりと髪飾りを外し、悪戯っぽく笑いながら飛び出て来たのは──。
「あなたたちはと聞かれたら、説明するのが世の情け!どんな質問にも答えを提供!
エンジニア部、説明の化身、豊見コトリ!」
「芸術と科学のコンビネーション!ヴェリタスのデジタルアーティスト、マキだよ!」
ヴェリタスのマキとエンジニア部のコトリであった。
二人の姿に、アカネは動揺を隠せないでいた。
「そんな、ここに来たのはミドリちゃんとモモイちゃんだったはず?!監視カメラで確かに…!」
二人の動きに警戒しつつ、アカネは直ちにオペレーションルームへと通信を入れた。
『ユウカ!何が起きているんですか?!』
「分からない!こっちの監視カメラでは、今も確かにモモイとミドリの姿が映ってる!
それにアカネ、あなたの姿が見えない!」
通信を聞いていたユウカも動揺した様子で現状把握に努めていた。
『な、なんですって…?!これは、もしかして…』
「!…そうか、まさか…!
カメラの設定を初期化!クラウド接続を遮断して、プライベート回線で画面をもう一度映して!」
指示を受けたオペレーターは直ちに実行に移る。
素早くキーボードを叩き、カメラは初期化され、画面が更新される。
「新しい画面…出ました!アカネを確認!コトリ、マキと対峙中です!」
『と、いうことは…』
「ええ。私たちが見ていた、いえ、見せられていたのは…録画…!」
「そろそろ録画だとバレた頃合いかな」
マキやコトリがアカネと対峙している頃、モモイ、ミドリは差押品保管所へ向かうに必要なエレベーターのあるホールへと来ていた。
「今更だけど、平和な状態の映像でもながしておいて、こっそり"鏡"を取りに行ったほうが良かったんじゃないの?」
「人の出入りが頻繁な所だったし、何もない方が違和感を覚えるかもしれないでしょ?」
「ああ。それに、C&Cという強力な敵戦力を分断させて閉じ込められるこの策の方が、最終的な成功率は高くなるだろう」
そうこう話している間に、呼び出したエレベーターがポーンと到着を報せる音を鳴らす。
「来たね。それじゃ、"本当に"入るとしようか」
三人がエレベーターへと乗り込むと、問題なく動き出し、目的地へと籠は一気に向かうのだった。
しかし、同時にシステムは異常を検知してもいた。
エレベーターが止まることは無いように既に録画と同じタイミングで仕込みは済ませていたが、不正な侵入の検知自体は止めていなかった。
それこそが、作戦の肝となるからだ。
『侵入者を発見。緊急時の為、セミナー専用フロアの各セクションを、閉鎖します』
システム音声が異常事態を告げ、直後に隔壁が作動し、セクションは瞬時に分断されることとなった。
「シャッターが…!」
はあ、とアカネは息を吐く。
「まったくもう…」
「へへっ。仲良く閉じ込められちゃったね〜?」
「…そんなことはありません。貴方達と違って、私は指紋登録がされていますから」
緊急システムの動作によりむしろ余裕を取り戻したアカネはマキとコトリへ美女を向けながら、指紋認証へと向かう。
「痛い思いをしたくなかったら、大人しくしていてくださいね。お会い出来て光栄でしたが、私はこれで──」
『データ不一致。未登録の指紋です』
「えっ…?!」
『セカンドシャッター、作動します』
「そ、そんなっ?!」
"不正"な認証の試みを受け、緊急システムは"正しく"機能を果たす。
二枚目のシャッターが降り、更に厳重な分断体制が整えられてしまうのだった。
「アカネ、閉じ込められてしまいました!」
「誰か生徒会の役員を…。ノアが近くにいるはず、開けてもらって!」
ユウカは動揺しつつ指示を飛ばしつつ、モモイらの意図を掴もうと思考を巡らす。
一体どういうつもり…?
この状態だと"本物"のモモイとミドリも何処かで閉じ込められて──。
っもしかして?!
ユウカが一つの可能性に至ったのとほぼ同時、オペレーターから報告が飛ぶ。
「ノアから連絡!彼女達も閉じ込められているそうです!
ノアの指紋でもシャッターが開かないとのことで、助けを求めています!」
「なっ!なんですって?!」
このタイミングで故障?!あり得ない。
新しくしたばかりなのに。
それにちゃんと指紋データも移行して…。
いや、まさか、やっぱり…?!
「ハッキング済み?!ということは、始めからこれを狙って、最初にアリスちゃんに扉を壊させた…?!」
同じ頃、モモイらは、悠々とシャッターを開け、廊下を進んでいた。
「ハレから連絡だ。どうやら、マキ達がアカネを分断する事に成功したらしい」
「指紋認証システムも"正常"に動作したみたい。
やっぱり、先生の言う通り、"正常"な動作を利用する形で良かったのかもね」
「何にせよこれで生徒会の役員も全員隔離出来たはずだし…今、タワーの中を自由に動けるのは私たちだけ!」
勝利の色を早くも浮かべるモモイにミドリも安堵の色を浮かべながら頷く。
「本来のエンジニア部製よりほんの少しだけ弱そうに見える最新型のセキュリティ…上手く行ったみたいだね」
「名前を隠してたし、あれもエンジニア部製とは思わなかっただろうね。その辺の塩梅もさすがはエンジニア部」
それと、とモモイはルルーシュの方に目を向ける。
「ん?」
「いや、先生の作った架空の企業の書類も効いたのかなぁ、って」
「あれも凄いクオリティだったね…」
「先生、何処かで詐欺やったりしてないよね?」
「人聞きの悪い事を言うな。そんなわけないだろう」
まさかレジスタンスを率いるに当たって必要な偽造で慣れているだけ、とは言えないルルーシュは、当たり障りのない返答で茶を濁すのだった。
「アカネ先輩を閉じ込められたのは良かった。どうせならアスナ先輩も一緒に閉じ込めたかったけど…まだ居場所分かってないんだよね?」
隔壁の指紋認証を解除しつつ、モモイはミドリとルルーシュに尋ねる。
未だ、その報告は上がってきていないので、2人はそれを肯定する。
「ハレ先輩が出来る限りミレニアムの全域を調べてくれたみたいだけど、見つからなかったみたい。ミレニアムの外にいるんじゃない?」
「いっつも神出鬼没の先輩だし、簡単には見つからないよね〜。何かミッション中に急にパフェ食べに行ったりする人みたいだし…。
ま、今のところ計画通りなんだし気にしない気にしない!」
モモイは楽観的に片付けたが、ルルーシュとしてはやはり警戒せざるを得ない対象であった。
C&Cのコールサイン・ゼロワン、一之瀬アスナ。
希望的観測だけで片付けるにはあまりに強力な戦力。
とは言っても、影も形も掴めていない現況では考え過ぎてもどうにもならない事ではある。
警戒以上の事は出来ない。
「誰っ?!」
ルルーシュの思索は、モモイらの歩みと共に、廊下に響いた驚愕の声によって中断される。
開けたばかりの隔壁の向こうに、閉じ込められた事に動揺し、狼狽していたセミナーのメンバーと、何体かの警備ロボットの姿があった。
セミナーの彼女がモモイらの影に気付き、声を上げたのだろう。
「せ、生徒会じゃん?!まだこの辺りにいたなんて…」
「どうしましょう?先生」
「逃げたとして、他の道を探している時間は大幅なロスだ。
ここは彼女には悪いが、突破するぞ!」
「だよね」
「そうですよね…。ここまで来て、今更逃げるわけにはいきません」
異常事態に狼狽していたセミナーの子は、元凶であるモモイらに出くわしたことで、むしろ冷静さをある程度取り戻していた。
自らの任務と、モモイらを捕らえれば閉鎖も解除出来るだろうことは、隔壁の操作をしていることも明らか。
彼女らセミナーは優秀だ。即座にそれに思い至り、目的がスッキリしたことで、冷静となれたのだろう。
モモイらがセミナーとロボットの群を強行突破せんとしていた頃、最も早くに隔壁の餌食となって、いや、餌食となった事に気付いたアカネは相変わらずマキらと対峙していた。
「ふふっ。確かにさっきの合金製のとはレベルの違うシャッターだね。正に隔壁って感じ。
さて、どうしよっか?」
「こうして仲良く閉じ込められたのもなにかの縁ですし、楽しい相対性理論の講義でも始めましょうか?」
コトリもマキのからかいに反応を返すこともなく、アカネは応援を呼べないかと無線へ呼びかけ続けている。
「此方、コールサイン・ゼロスリー!A1セクションに閉じ込められました!コールサイン・ゼロワン。応答をお願いします!」
しかし、システム音声は無情にも、相手がオフラインであると告げる。
「アスナ先輩っ…!もう、どこにいるんですか!せめて電源くらいは点けておいてくださいよ…!」
憤るアカネ。
そこに、捨てる神あれば、と言わんばかりに、専用の端末がメッセージを受信した旨の通知を鳴らす。
[アスナ先輩の居場所は分からないけど…安心して、アカネ。
ゲーム開発部はもう、私の射程範囲内だ]
アカネの端末に表示されていたメッセージの送り主の名、それは──。
[From Call Sign 02]
C&C、角楯カリンからのものだった。
今回も読んで頂きありがとうございます。
更新日は未定で変わらずですが、また次回もどうぞよろしくお願い致します。