コードギアス 教導のルルーシュ‐Archive Stories‐   作:ライト鯖

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Archive-005 明日に向けて

 

「そういえば…」

 

ルルーシュは一人になったシャーレで、一先ず顔を洗って落ち着こうと洗面所へ来ていた。

鏡を見、彼は漸く、キヴォトスに来てから始めて、自分の姿をしっかりと認識する。

 

「いつの間にかスーツを着ていたんだな。

此方に来た時か?全く心当たりがないが…。

まあ、皇帝の服だと悪目立ちしてたろうから良かったか…」

 

そうしてから、オフィスのデスクへ座り、息を吐いた。

ルルーシュは漸く自らの思考に没頭出来る時間を手に入れたのだ。

 

さて、現況を整理するとしよう。

 

ルルーシュはPCを操りキヴォトスの情報を目から仕入れ、それと同時並行にこれまでの事を整理し始める。

 

まず、俺が突然やって来たこの"学園都市"は銃社会で、子供達が学校という名の政府による自治を行っている。

それらの自治区を束ねる連邦生徒会の首魁、連邦生徒会長は行方不明。

 

俺は、その連邦生徒会長が任命した"先生"であるらしいが…。

 

その"先生"が所属する機関"シャーレ"。

権限が巨大過ぎ、不自然な箇所も多い、不透明な組織だ。

俺の判断一つで、キヴォトスに大混乱を引き起こしかねないような危うさを秘めている。

 

さて、その上でまず考えるべきは、俺がこの世界へと来た理由だな。

 

俺にはサンクトゥムタワーで目覚めるまでの記憶がない。

スザク、ゼロに刺され、俺は命を落とした。

その後、目覚めるとあのソファの上にいた。

 

何の脈絡もなく、不自然だ。

次元の平行移動という可能性も考えられたが、"シッテムの箱"のみならず、リンも俺を認識していた。

リンに待っていてくれと言ったのに寝ているとは、と言われた以上、あれ以前の記憶もあって然るべきだ。

少なく共、リンにはあれ以前の俺の記憶があるということ。

 

だが、その記憶が俺にはない。

つまり、何者かに記憶を消されている可能性がある、と考えるのが自然だろう。

 

それで問題になるのは、俺が同意してのことだったか、ということ。

 

"情報(アーカイブ)"、俺が知っているはずがないのに知っている、既知でありながら未知の記憶群。

これがあるということは、キヴォトスについて知る機会があったということだ。

 

超自然的な力で自然とインストールした、とすることもできなくはないが、それは考えるだけ意味のない可能性。

 

人為的にこの"情報(アーカイブ)"が与えられたのだとすれば、俺に与えた者がいる。

 

そいつと俺は、どんな関係だったのだろうか。

俺がキヴォトスの事を聞き、自らの意志で来ることを選んだ?

或いは、強制、それに近い状態だった?

 

もし、自由意志だったのなら、記憶を消す必要はないように思える。

そうなると──。

 

いや、決めつけるのは早計だ。

自由意志であるのに記憶を消されるとすれば、どういう理由があるだろうか。

 

例えば、"覚えていること"が今後不要なノイズたり得る可能性があった、とかか?

若しくは、"忘れた方が良い"ナニかがあったか。

または、忘れさせた人間にとって、忘れて欲しい情報があった、か。

何れにせよ、連邦生徒会長が重要な鍵となる。

 

そして、3番目の可能性が当たった場合、連邦生徒会長のみならず、恐らく、アロナか、リンも──。

 

…今はまだ、自由意志、強制、どちらの可能性も消せないな。

これは情報不足で保留か。

 

…元の世界には帰れるのだろうか。

 

ルルーシュは考察の途上で、ふと、そんな事を考えてしまっていた。

 

莫迦な。

帰った所でどうするんだ。

俺は、新たな明日には不要な存在だ。

悪逆皇帝ルルーシュが生きていては、ゼロの偉業にケチが付く。

 

…いや、正体を隠しながら、スザク達のサポートをすることも…。

フッ。我ながら未練がましいな。

俺の、元いた世界での立場や結果を考えるなら、"キヴォトス"にいる事を前提に思考を進めるべきだろう。

だが、もしも、そんな方法があるのなら──。

 

ルルーシュは首を振り、思考のレールを戻そうとする。

 

未練ばかりだ。何の心残りもないと思っていたのにな。

 

……次に考えるべきは。

俺がキヴォトスで成すべきこと──。

結局、仕事をせねば何も出来ないのだから。

 

彼はどうにか無理矢理思考を引き戻し、"先生"へと戻る。

 

連邦生徒会が混乱し、キヴォトスには銃火器が溢れかえり、各学園には争いの種も多い。

 

ちょっと調べた限りでも学園間の抗争のような事案が多く見受けられる。

特に、このゲヘナとトリニティという2つの巨大学園は相当に関係が悪いようだな。

確かチナツはゲヘナ、ハスミとスズミはトリニティだがそんな様子には見えなかった。

内心までは分からない以上、渋々従ってくれていたのやもしれないが。

 

他にもオープンな情報の少ないレッドウィンター連邦学園だったり──。

 

これだけ多くの学園が自治区を有している割拠を連邦生徒会長は収めていた、ということだろうか。

本当に何者なんだ?尋常じゃあない。

 

しかし、"先生"の成すべきこと、は一先ず、目先で悩む必要はなさそうだ。

こんな状況の学園都市で問題の起きないはずが無い。

 

だが、本質的な必要性はまだ推測しか出来ないな。

まあ、目先の問題を解消していけば、ある程度は見えてくるだろう。

──"俺"である必要性がある、という前提に立つなら2,3には絞れていることだし。

 

「決まりだな」

 

ルルーシュはそう呟き、立ち上がる。

 

『先生、お出かけですか?』

「ああ、図書館に行くついでに確かめたい事があってね」

 

机に置いていた"シッテムの箱"からアロナがルルーシュに声をかけたのだ。

 

『でしたら、"シッテムの箱"も持っていかれて下さい』

「いや、しかし貴重な物なのだし」

『先生がそのまま出歩くには外は危険過ぎます!』

「まあ、そうだが…君がいてもまさか銃が内蔵されているわけでもないだろう?」

『とにかく、持って行って頂ければ分かります!』

 

実際、護身用の武器もまだない以上、出かけるには不用心であることはルルーシュも認めるところであった。

とは言っても、そう遠出するわけでもないのだから、護衛を手配するほどの事でもない、と考えていたのだ。

 

無論、それは余りに楽観的過ぎる見方であった、とルルーシュは即座に痛感することとなる。

彼はまだ、この世界の秩序への認識が甘かったのだ。

 

「分かった。持っていくよ」

 

その15分後、ルルーシュは路地裏に連れ込まれた先でスケバンにカツアゲをされていた。

 

「おい。さっさと財布だしなよ」

 

スケバンに凄まれたルルーシュは、スケバンに慄きはしなかったが、キヴォトスの治安の悪さに慄いてはいた。

 

嘘だろう。

幾らD.U.の中心地でないとは言え、いきなり強盗に出くわすだと。 

銃を突きつけられているルルーシュは、ああ、そうか。と自らの認識の甘さを悔いた。

 

銃で死ぬことがないのなら、カツアゲにも銃を使うし、実質強盗なこういう事案も、挨拶位の頻度で起きてるよな。

そりゃあそうだ。俺が甘かった。まだ、キヴォトスを理解しきれていなかった。

銃弾一発で大した怪我もしないんだ。感覚としては玩具みたいなものなのだろう。

 

俺の世界でも不良という生き物は鉄パイプやら何やら場合によっては人を殺せる物体を持ち歩いていたんだ。

キヴォトスなら当然、銃火器になるよな。

しかし、それを考えたとしても、これ程までに治安が悪いとは…。自動販売機と同じくらいの感覚でカツアゲに出くわすというのは、さすがに想定外だ。

 

「すまないが、今持ち合わせがなくて…」

「嘘つくんじゃねえよ!財布も何も持たずに街をうろつくバカがいるか?!」

「でも姐さん。こいつ銃も持ってませんよ」

「は?おいおいどんな貧乏人だよ。それともバカか?」

「くっ…」

 

ルルーシュは不味い予感を感じ取っていた。

 

「チッ。もう良いや。一発二発撃って動けなくして、身ぐるみはいでやろうぜ。多少は金になんだろ」

 

なんてがめつい奴らだ。

不味い。俺は撃たれたら。

ちっ。仕方がない。ここは一か八か。

 

『先生!』

「ん?」

 

引き金が引かれ、銃声が薄暗い路地に響く。

 

「あら?」

「何してんだよ」

 

ルルーシュの脇腹辺りに銃口を向けていたスケバンは小首を傾ける。

 

「いや、あれ?撃ったのに」

「おいおい。整備してねえのか?」

「ちゃんと昨日しましたよ!」

「ったくしゃーねえな。アタシが…」

 

しかし、もう一人の方も「は?」と頓狂な声を上げることとなった。

 

「な、何で当たらねえんだ?!」

「くそっ!」

 

混乱したスケバンはルルーシュの脇腹に銃口を当て、ゼロ距離で発砲した。

しかし──。

 

「なっ…」

 

これにはルルーシュも目を見開いた。

間違いなく、何があろうと外れるわけもない筈の銃弾が、ルルーシュの脇腹に当たることはなかったからだ。

 

「なんだ…?」

「な、なんだこいつ…」

「あ、姐さん。もういきましょうよ…何か怖いっす」

 

スケバン達は余りに不可解な事象に混乱と恐怖を齎され、逃げ出すのだった。

 

「何だったんだ今のは…まさか…」

『先生、先生!』

 

呼びかけられる声によって、ルルーシュは確信する。

 

「今のはアロナが?」

『はい!私が銃弾を防ぎました!』

「一体どうやったんだ…?物理的な障壁だとかではなさそうだったが。…いや、そもそも確かに脇腹に銃の感触が…」

『え〜と…頑張りました!』

「………」

 

どうやら、答えは得られなさそうだな。

ルルーシュは仕方ない、と小さく肩を揺らし、笑顔を作った。

 

「まあ、とにかく助かったよ。ありがとう。アロナ」

『えへへ。私は先生の秘書ですから!言ったでしょう?ちゃんと役に立つって』

「悪かったよ。これからも頼りにしても?」

『勿論です!このアロナちゃんにお任せください!』

「ところで、どんな攻撃も無効化されるのか?」

『頑張りますが、私にも残念ながら限界はあります』

 

すまなさそうにするアロナ。

ルルーシュは分かった、と頷き、笑顔を向ける。

 

「出来るだけ攻撃に当たらないようにはした方が良いってことだな。

いざという時に助けてくれるだけでも充分過ぎる程だよ。ありがとう」

『…はい!』

 

このアロナという少女、システム。

俺の味方ではある。それは確実だ。

だが、何かを隠しているのか、彼女自身知らないのか。

何れにせよ、盲信するには危険性がありそうだ。

だが、信頼関係を築いておくに越したことはない。

 

それに、命の恩人になった。

その分位は、気にかけねばな。

 

ルルーシュはその後、一応同じような目には遭わず、どうにか図書館へたどり着くのだった。

 

─数時間後。

 

一先ず主要学園のここ数年間の歴史の概略は頭に入れた。

それと、地理に、法律関係。

後は──。

 

ルルーシュは手に持つ数冊の本のタイトルに目をやる。

 

"聖典解説" "聖典""聖典概論"

 

宗教。

どうやらこのキヴォトスには独自の宗教…。

形としては俺の世界にも似たものはあったが、教義等はまた異なるものがあるようだ。

 

これも把握しておかねばな。

それともう一つ、帰りに試すとしよう。

さっきのスケバンに一か八かで、と考えたが、アロナのおかげで賭けをすることもなく済んだ。

成功したとして、あんな不良をどうこうしたところで、役に立つ場面は少ないだろうしな。

 

通りを歩き、ルルーシュは目星を付ける。

 

良い服を着ているし、身につけているものもそれなりだな。

しかし護衛と思わしき人間はいない。

お誂向きだ。

 

フッとルルーシュは何かを企んでいる笑みを浮かべ、犬のような姿をした市民へと近寄る。

 

出歩いて分かったことがある。

ここ、キヴォトスにはどうやら大別して3種類の人間がいる。

一つは、生徒。

頭上にヘイローを持ち、ヒト種と近似した特徴を有する。

もう一つは、動物型の市民。犬や猫がヒトと同じように歩き、話し、食べている。

そして、機械型の市民。

ヘイローを持つ生徒達と同じように武装していることが多く、SFに出てくるような自律型のロボットそのものに見えるが、彼らもヒトのような意志を有しているようだ。

 

それら全てが全く異なる特徴を有し、俺のいた世界の人間とは遥かに異なる以上、確証が必要だ。

それに、そもそも使えるのか、まだ、俺に残っているのか、ということも。

 

「失礼」

「おや、この辺りでは見ない方ですね。

どうしました?」

「私は本日この辺りに赴任してきた者でして。

今、少しお時間よろしいですか?」

「ええ、まあ。何です?」

 

ルルーシュはいえ、大したことではないんです、と社交的に笑いながら、発動する。

絶対遵守の"ギアス"を。

 

「私の質問に答えて頂きたい」

 

「──分かりました」

 

犬型の市民は、ぼんやりとした様子となり、ルルーシュの要請に、いや、命令に応える。

 

「よし。ではまず、個人情報を教えてもらおうか。氏名、年齢、職業だ」

「秋田八…。年は30。職業は、幾つかの自治区にもチェーン店を持ってるスーパーを経営している…」

「ほう。当たりだな。…では、誰にも言っていない秘密を教えてもらおう」

「………5年くらい前、売上が落ちて、経営が傾いていた時…商品の銃器と弾を幾らかブラックマーケットに横流ししたことがある…」

 

「はっはっはっ。これは運が良い」、とルルーシュは嗤う。

 

「それで経営を建て直した訳か。因みに、発覚すればヴァルキューレの追及を受けることは理解しているな?」

「はい…。だから、証拠は可能な限り消しました…」

「なるほど。良し。もういいぞ」

 

ハッと眠りから覚めたように身体を揺らし、犬型市民はキョロキョロと目を左右させる。

 

「あ、あれ?私は…」

「どうされましたか?」

「ん?あ、ああ。すみません。何か声をかけられてたんでしたね。何でしょう?ちょっとぼんやりしてたみたいで…」

「いえ、お気になさらず。それより…」

 

ルルーシュはゆっくりと口を開いた。

 

「ブラックマーケットには、お世話になったようですね。秋田さん?」

「…何の話です…?ブラックマーケット?いや、それより、何で名前を…」

「おや、5年前、覚えていないのですか?」

「はっ!…いや、な、なんで…」

「そう取り乱すと注目を浴びてしまいますよ?」

「!…っ。し、証拠は全て隠したはず…なんで…」

 

「壁に耳あり障子に目あり、というわけですよ」

ルルーシュはそう適当にあしらいつつ、続ける。

 

「ご安心下さい。何も通報しようだとか、そんなつもりはありませんから」

「で、では、何を…」

「そう怖がらないでください。少しお願いごとを聞いてもらうだけです」

「な、何でしょうか…」

「今は連絡先を控えさせてくれれば充分。勿論、嘘をつけば…」

 

市民は慌てた様子で紙に走り書きしてそれをルルーシュに渡す。

 

「携帯番号と私直通の会社の番号です!」

「ありがとうございます。…お願いごとの方は、何れ機会がくれば」

 

勿論、とルルーシュはつけ足す。

 

「貴方のしたこと以上の悪事に手を貸せ、なんて言うつもりはありません。

ただ、私の仕事に協力してもらうかも、というだけですから。

そう恐怖せずに、待っていてください」

「あ、あの…待って…この事は…」

「私しか知りませんよ。ご安心を」

 

これで手駒を確保。

まだまだ足りないが、足がかりとしては充分だ。

 

そして、これで少なく共、動物型市民には効果のあることがはっきりした。

それに、ギアスが使えることも確認出来た。

 

だが、そうなると妙だな。

俺は今、"特別製"のコンタクトを着けていない。

つまり、裸眼だ。

だというのに、ギアスが今の今まで発動していなかった。

というか、オンオフが効くようになっている。

 

一応、生徒に指示を出す時は目を直接見ないようにはしていたが、確認している暇も、余裕もなかったから気付いていなかった。

 

一度死んだことでギアスの進行度がリセットされたのか?

C.Cに死んだらギアスがどうなるかなんて聞いたことがなかったな。

いや、本来想定する意味のないことなのだから当然なんだが。

 

そうなると──。

いや、それに関してはダメだろうな。

シュナイゼルは俺の死後もゼロに仕えるよう命令したし、C.Cにも俺の死後、生前かけたギアスの効果持続については確かめている。

 

だが、被効果者が死んだら?

一応試しておくか…。

 

シャーレへ戻ったルルーシュは、鏡の前に立つ。

 

左目に、ギアスの紋様を浮かび上がらせ、自分自身へと言葉を向けた。

 

「"ゼロレクイエムから連邦生徒会で目覚めるに至るまでの全ての記憶、あらゆる情報を思い出せ"」

 

時間軸を絞ったのは、人生全ての記憶が、情報が流れ込み、脳の処理能力の限界を越えることを避ける為である。

そして──。

 

「ダメか…」

 

俺はジェレミアに必要性もなかったからキャンセラーはかけてもらっていない。

つまり、マオと相対した時に俺自身にかけただろうギアスは今も生きている。

死んだ俺にも有効ならば、だが。

そうであるならば、俺は既に俺自身にギアスをかけることは出来ない。

 

だが、本当にそれが原因なのだろうか。

まだ、他の可能性もある。

 

そう例えば、別のギアスによって、俺のギアスをも想定した形で忘却させられている可能性。

シャルルの記憶改竄のギアスで例えるなら、「ルルーシュ・ランペルージは既に自分自身へギアスをかけている」という記憶を植え付ける事でギアスによる記憶解除を先んじて封じる、というような形だ。

 

それに、俺のギアスの進行度は初期化されている。

より強いギアスに打ち勝つ事が出来ていない可能性も捨てきれない。

 

ギアス以外の超常の力によるものかもしれない。

或いは、"忘れていない"という可能性。

つまり、俺が目覚めるまでの時間、Xとしよう。

その時間Xが存在する前提でのギアスを俺はかけた。

だが、時間X自体が存在しないものとなっていたら?"情報"はあくまで、時間Xの名残に過ぎず、時間X自体は無かったことになっているのやも。

 

突拍子もないが、絶対にない、とは相変わらず言い切れない。

あり得ないの連続なのだからな。

 

「まあ、つまり、ギアスが俺に効かなかった以上、振り出しだな…」

 

はあ、と深くため息を漏らし、ルルーシュはオフィスへと戻る。

 

「しかし、ギアスの進行度が初期化されていることは不幸中の幸いと言えるかもな」

 

図書館で借りてきた本を開きつつ、ルルーシュは考える。

 

またギアスの進行が進めば、前のように誤魔化す事は難しくなる。

 

もし、ギアスの進行度がそのままであったなら、生徒の前に顔を出すことも難しくなっていただろう。

 

だが、折角リセットされているのならば、この先はより慎重に、使い所は選ばねばならない。

乱発して生徒と接する事が出来なくなれば、キヴォトスでの俺の役割を果たせなくなってしまうからな。

 

「ならば、必要になってくるな、大金が」

 

ルルーシュはリンの残した資料の一つを手に取る。

 

給与は悪くないのだろう。相場を見る限り。

だが、当たり前だがこれだけではキヴォトス全体に目を行き届かせるシステムの構築など不可能に近い。

次に俺が手をつけるべきは…。

 

ルルーシュはパソコンに向き直り、さて、と小さく気合を入れる。 

 

「やってやろうじゃないか。"先生"を」

 

それから2日後。

 

ルルーシュはその日も金策に全力を上げており、既に資産をかなりの額にまで増やしていた。

中古の一般的な住宅一軒程度ならば余裕を持って買えるだろう。

 

「とりあえず一旦はこんなところか。…次は各学園への挨拶回りだな。依頼もちらほら入り始めているし、各学園の責任者と顔なじみになっておけば便利だろう」

 

丁度その時、スリープ状態にあった"シッテムの箱"に一つの通知がやって来ていた。

 

アロナが教室の空間で中身を見て、ルルーシュに通知を飛ばしたのだ。

 

「ん、どうしたアロナ」

『お忙しい所すみません。先生。この依頼は一度先生に直接読んで頂いた方が良いかな、と』

「分かった。出してくれ」

 

アロナは頷くと、その依頼を画面へ表示する。

 

差出人には、"アビドス高等学校"と書かれていた──。

 

 

 

 





幕間です。
次回からアビドス対策委員会編に入っていきます。

更新日は未定ですが、できるだけ早く更新出来るよう頑張ります。
よろしくお願い致します。
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