コードギアス 教導のルルーシュ‐Archive Stories‐ 作:ライト鯖
時は再び少しだけ戻り──。
ルルーシュはナギサ達から受け取った名簿に記載されている、見覚えのある名前をまずは訪ねていた。
つまり──。
「久しぶりだな。ヒフミ」
「あ、あはは…おひさしぶりです…
あの…これは、やむを得ない事情がありまして…!」
「ほう?事情か」
「え、えっと…そのですね」
ヒフミはしどろもどろに目を泳がせている。
とても誰もが納得出来る理由があってのことではないだろうと、既にルルーシュは察しが付いていた。
「ペロロ様のゲリラ公演に参加するために、テストをサボってしまって…それで…」
嘘だろ、と思わず顔に出ていたのだろう。
ルルーシュの視線に目を逸らしつつ、「あうう…」とヒフミは小さくなる。
「そんな冷たい目で見ないでくださいぃ…。
ちゃんと試験の日程は確認していたはずなんです…!何かの間違いと言いますか…手違いと言いますか…」
「あうう…ご、ごめんなさい…」
自分で自分の言い訳の苦しさに思う所があったのか、無言のままのルルーシュが怒っていると勘違いしたのか、ヒフミは更に小さくなり、謝罪を口にした。
「いや別に謝る必要はないんだが…
私も授業をすっぽかすことはよくあったし、人のことは言えないしな」
「そ、そうなんですか?意外です…。
先生、真面目そうなのに」
「他にやらねばならないことがあったんだ。
その点は似ているかもな」
まあペロロのライブとレジスタンス活動、やらねばならないこと、の内容は懸け離れているが…。
「というか真面目そうと言うならヒフミ。
君もその辺はちゃんとしているように思っていたんだが…。
一人でブラックマーケットに乗り込む胆力はあるが、常識もあるし…そんな君がまさかな」
「あうぅ…」
ヒフミは気まずさを打ち消すように、「あ、そ、それでですね…」と話題を変える事とした。
「ナギサ様に先生のサポートを頼まれていまして…」
「サポート?」
「い、一応補習授業部の部長、ということになっています…」
「なるほど…ナギサが…」
お目付け役といった所か。
ルルーシュはナギサの意図に考えを巡らせる。
そもそもがシャーレの超法規的権限を前提に組まれていた補習授業部の計画。
つまりは、妙に強引な手法。
それらから感じる違和。
確かに、部長が顧問のルルーシュをサポートする事は自然なことと言えるだろう。
だが、それまでに得られている情報から、何かしらの意図を感ぜずにはいられなかったのだ。
「ま、まあ部長といっても、この部は臨時のものですし!皆が落第を免れれば私もお役御免だと思いますし…。
なので、その時までよろしくお願いします。先生」
まあ、ヒフミはこの様子だとナギサがこの為だけに送ってきた存在、というわけでもなさそうだ。
精々、知己の人物が偶然、補習が必要な生徒だったからそのまま利用した、という所か。
なら、一先ずは──。
「ああ、よろしくな。ヒフミ」
「所で、他のメンバーにはまだ会われていないんですか?」
「いいや。見覚えのある名前があったから先にと思ってね」
「あ、あはは…。そ、それじゃあ皆に会いに行きましょうか。
集まって皆で落第回避する方法考えないとですし」
「そうだな」
この時のルルーシュはまだ、ナギサの意図は気になるところではあっだが、多少、楽観的に構えていた。
ヒフミのサボりの理由には少々驚かされはしたものの、彼女も不真面目というわけではない。
そうした子達の集まりならば、成績向上自体は、そう苦でもないだろう、と自信を持っていたのだ。
しかし、後のルルーシュはこの時の自分を深く恨むことになる。
補習授業部に集められた者達は、一癖も二癖もある生徒達であると、痛感することになったのだ。
「ここは…」
「あ、あんまり来たくはなかったのですが…ここは正義実現委員会の部室です…。
まあ、他所で言うと風紀委員に当たる委員会なのですが…」
コンコンと豪奢な扉をノックし、ヒフミはその向こうへ声をかける。
「す、すみません。どなたかいらっしゃいませんか…?」
少し間をおいてから、ガチャリ、とゆっくり大きな扉が開かれ、ピンク髪の小柄な少女、下江コハルが顔を出した。
「あ、あの…」
「なに?」
「あ、あうう…私、何かしてしまったのでしょうか?」
無愛想な短い反応と気まずい沈黙に、ヒフミは耐えかねたようだった。
「いや…初対面だから警戒されてるだけじゃないか?」
「そ、そうよ!知らない相手なんだから当然でしょ?!」
「あう…それは人見知りってことなんじゃ…」
「違う!け、い、か、い!」
「は、はい!すみません…」
ムッとした様子ながらもコハルは一度息を吸い、声を落ち着けた。
「それで、正義実現委員会に何の用?」
「え、えっと…探してる方がいまして…」
「はあっ?!正義実現委員会に人探しを依頼しようってこと?!私たちのこと、ボランティア団体か何かと勘違いしてる?!」
おかんむりなコハルにヒフミは誤解であるとアピールするように両手を横に振り、「いえ」と否定をする。
「ここに閉じ込められている、って聞いて…」
「…はあ?」
「ですからえっと…よくないことをした方がここに…」
コハルは誰のことか察しがついたのか、なんとも形容のしがたい、困惑を顔に浮かべていた。
「それってもしかして…」
「こんにちは。もしかして私のことをお探しでしたか?」
コハルが言い終わるよりも早く、彼女の背後にその子は現れた。
スクール水着姿で──。
「「「?!?!」」」
ルルーシュ含め、三人ともが困惑をその顔に刻むことになったのだった。
「え、は、なんで?!あ、あんたどうやって牢屋から出てきたの?!ちゃんとカギ閉めたのに?!」
「いえ、開いてましたよ?私のことを話されているような声が聞こえてきたので此方に来てみました。
何かご用でしたか?」
サラリと鍵が空いていたと言うスク水の少女は、浦和ハナコ。
補習授業部の一員である。
「あら、大人の方…もしかして先生ですか?
改めましてこんにちは
とすると…お二人は補習授業部の?」
「あ、ちょっと!その格好で出歩かないでよ?!」
コハルは制止するが、聞き入れられることはなく、ハナコはそのままルルーシュらの方へと近付く。
補習授業部、2年生。浦和ハナコ。
彼女は、水着姿で学校を徘徊し、その現場を正義実現委員会に取り押さえられた。
現在は 正義実現委員会で監禁中…。
の、はずが目の前にいる、というのが現状だな。
まさか他にもこんな生徒があと二人いるのか?
雲行きが怪しくなってきた、とルルーシュはこめかみを抑える。
「何か問題でもありましたか…?下江さん?」
とぼけたように言うハナコに、コハルは飛び上がらん勢いで叫ぶ。
「あるに決まってるでしょ?!何で学校を水着で徘徊するの?!」
「ですが、学校の敷地内であるプールでは皆さん普通に水着になられますよね?ここもあくまで学校の敷地内で──。あっ、もしかして下江さんはプールで水着を着ないタイプですか?」
「え?は…。それってどういう…」
「そうでしたか。下江さんは全裸で泳ぐのがお好きなんですね。流石は正義実現委員会。そういった分野まで網羅されているなんて」
「な、何言ってるの?!着るに決まってんでしょ?!」
ニッコリとした笑顔で屁理屈と論点ずらしを行うハナコにまんまと乗せられたコハルは顔を真っ赤にして反論する。
──面倒そうなタイプだな。
そんなハナコの様子に、ルルーシュは更に憂鬱な感覚を強くしていた。
「それにしても裸こそが正義、とは…中々前衛的ですね。余り考えたことはありませんでしたが、なるほど。試してみるのもまた一興…」
「──もう!と、とにかく早く戻って!早く!
もうすぐ先輩達が帰ってきちゃうから!」
コハルはハナコの背中をぐいぐいと押し、強制的に話を中断し、再び牢へと戻さんとする。
「あら。しかし、この方たちは私に会いに──」
「うるさいうるさいっ!この公共破廉恥罪!
早く戻れ!」
「すみません。どうやら色々と混乱している状態のようなので、また後ほどお会いしましょうね?」
ルルーシュとヒフミにそう言い残し、ハナコはお縄につくのだった。
二人が何とも言えない面持ちで顔を見合わせて沈黙していると、息を切らせたコハルが戻ってきた。
「はあ…はあ…」
「だ、大丈夫か?」
「えっと…この状況は一体…ハナコさんはどうなるんですか?」
「そんなの当然死刑よ!えっちなものはダメ!死罪!」
「そ、そんなはずはないと思いますが…」
勢いのままに言うコハルに、ヒフミが困惑しつつも冷静なツッコミを入れる。
しかし、コハルは熱が入っているようで、捲し立てるように続けた。
「水着で学校を歩き回ったんだよ?!真っ昼間から!生徒が沢山いる広場のど真ん中で!」
「……」
「ですが、校内では校則で決められた服を着るものですよね?ですから学校指定の水着を…」
扉の向こうから聞こえてくる声に、コハルは「だからってなんで水着なの?!」と反駁する。
「制服を着れば良いでしょ?!っていうか話に入ってくるな!」
「ま、まあ。ハナコはとりあえず後にするとしよう」
「は、はい…。ええと次は…白洲アズサさん、ですね」
ヒフミが名簿を確認し、次へと向かおうとした折り、丁度、正義実現委員会部室の扉が開かれ、ルルーシュにとって見覚えのある生徒がやって来た。
「ただいま戻りました」
大きな黒い羽と同じく黒く、長い髪。
羽川ハスミである。
その後ろからハスミと同じ服装、つまりは正義実現委員会のメンバーがルルーシュらにとって聞き捨てならないセリフと共に戻ってきた。
「任務完了です!現行犯で白洲アズサさんを確保しました!」
「何っ?!」「はいっ?!」
顔を青くさせる二人を他所に、コハルは二人を出迎える。
「あ、お帰りなさい。ハスミ先輩。マシロ」
「コハルさん。お疲れ様です」
「お疲れ様です。…ルルーシュ先生?お久しぶりですね」
ハスミはルルーシュの存在に気付くと、何故ここに、と目で問いつつも挨拶をする。
「あ、ああ。久しぶりだな。その節はどうも。
…それで、聞いていいかな?後ろでガスマスクしてる子のこと…」
ハスミらが連行してきたその少女、白洲アズサはその白と紫のグラデーションがかかった髪とは真反対の、無骨で真っ黒なマスクに顔を包んでいた。
「…惜しかった。弾丸さえ足りていればもう少し道連れに出来たのに…」
ハスミが口を開くよりも早く、アズサはそう物騒な独り言を呟く。
「もういい。好きにして。ただ、拷問に耐える訓練は受けているから、私の口を割るのはそう簡単じゃないよ」
ルルーシュは、最早半分程諦めの境地に達しつつあった。
厄介者、とミカが言いたくなるのも分かる気がしてきたな…。
はあ、とため息が漏れそうになるのを抑えつつ、ハスミから説明を受ける。
曰く、校内での暴力行為の疑いがあったため正義実現委員会が追跡。
教材用催涙弾の弾薬倉庫を占拠、約一トンの催涙弾を爆発させ、三時間に渡る抵抗。
逮捕寸前までブービートラップ等を用いた攻撃を続け、被害者多数、ということだった。
とんでもない問題児ばかりに思えるが、しかしやらねばならない以上、知らんふりを決め込んで帰るわけにもいかない。
話で聞いた限りからは想像出来ない苦労が予想され、気が重くなったルルーシュであったが、一先ずハスミに事情を説明することとした。
「…なるほど。先生が補習授業部の担任になられる、と。
残念です。出来ればお手伝いをしたかったのですが…」
「気持ちだけ受け取っておくよ。…ああ、いや、それなら、あの二人、連れて行ってもいいかな?」
ルルーシュはにこやかに、もちかけるが、コハルがそうはさせんと割って入ってくる。
「ダメに決まってるでしょ?!絶対ダメ!凶悪犯なのよ?!」
「コハル。先生はティーパーティーから依頼を受けて此方にいらっしゃったのです。
規定上は何の問題もありません。補習授業部の顧問になるのですから」
「え、ええ…まあ、でも…先輩がそう言うなら…」
しかし、ハスミがすかさずコハルを宥め、事を収めた。
「ありがとう。助かるよ」
「いえ。こんな事しか助力出来ず…」
「大助かりさ。じゃあ、後は…」
ルルーシュはチラリとヒフミに目を向ける。
後一人、名簿には名前があった。
「ふ、ふん!まあ、良いザマよ!こっちはこんな凶悪犯と一緒にいなくて済むし!
そもそも補習授業部なんて恥ずかしい!」
コハルは、アハハッ!と嘲笑を浮かべる。
「良いんじゃない?悪党と変態の組み合わせ!
そこに"バカ"の称号もなんて!私なら一緒にいるだけで羞恥心で死んじゃいそう!」
「…下江コハル」
ルルーシュは先輩らが戻ってきたことによって余裕が生まれたのか調子に乗っているコハルに若干の憐れみを向けながら名前を呼んだ。
「何よ」
「補習授業部、最後の一人は君だ。
…よろしくな?」
余裕ぶった笑みのまま数秒固まっていたコハルは、「えっ?」と頓狂な声を挙げた。
「私…?」
下江コハル。
3回赤点を叩き出し、留年目前。
……一番シンプルだな。こうなってくると。
既に二人の、濃いと一言で片付けるには余りに手がかかりそうな問題児二人を見た後では、コハルなど可愛いものに思えていた。
「あ、因みに成績向上まで正義実現委員会には復帰出来ないらしいから。頑張ろうな」
「え…えっ…えええええ?!」
コハルの驚愕と、絶望と、羞恥と、色々と混ざった叫び声が部室にこだまするのだった。
今回も読んで頂き誠にありがとうございます。
次回更新日は未定ですが、また次回もよろしくお願い致します。
↓以下、最新のメインストーリーのネタバレが若干ある雑談
メインストーリーのゲヘナ編、ルルーシュの十八番、反乱がが発生していたので是が非でもそこまで辿り着きたい想いが溢れてきました。
絶対暴れてくれる。
いつになるかは分かりませんが、デカグラマトン編然り、ルルーシュの哲学と相対して欲しい相手だったりがブルアカには結構いるので考えるのが楽しいですね。