コードギアス 教導のルルーシュ‐Archive Stories‐ 作:ライト鯖
電気を消し、自室へと戻ったルルーシュは、そうした事も思考しながら、明日の補習の最終準備を始める。
それから数十分して、彼は扉のノック音に気付いた。
「…どうした?」
「今、お時間よろしいですか…?」
「ヒフミか。構わないよ」
ルルーシュは立ち上がり、扉を開けてヒフミを招き入れる。
「その、夜中にすみません…」
「気にするな。さあ、座って」
ルルーシュはヒフミに椅子を進め、自らは棚に設置してあるポットへと向かう。
「紅茶で良いか?」
「あ、お、お気遣いなく…直ぐに戻りますので!」
「眠れないんだろ?」
「う…はい…」
なら、とルルーシュはティーカップをヒフミへ差し出す。
「気持ちを落ち着ける為にも、飲むと良い。
身体が温まれば、多少は脳も落ち着くだろう」
「ありがとうございます…」
おずおずとティーカップを受け取り、ヒフミは俯く。
「すみません。…あれこれ考えていたら、その…」
「そうか。…やはり、試験の事が気にかかるか?」
ヒフミはコクリ、と小さく頷く。
「やはりか。まあ、話しにくいこともあるだろう。
ゆっくりで構わないよ」
ルルーシュに目で促され、ヒフミは紅茶を少しばかり啜る。
そうしてから、ふう、と息を吐きだし、ポツリ、ポツリと彼女は話し出した。
「明日から本格的な合宿…なのですが…私たち…このままで…大丈夫なのでしょうか?」
もし、とヒフミは怯えたようにカップを強く握り締める。
「1週間後の二次試験に落ちてしまったら、三次試験…。万が一、それにも落ちてしまったら…」
「全員、退学。やはりヒフミは聞いていたか」
ヒフミは不安げに眉を下げたままの顔を上げ、ルルーシュを見た。
「先生も…。はい…。聞いています。まだ、誰にも言っていませんが…。
そもそも、言って良い事なのかどうなのか分からなくて…」
一人で抱え込んでいた不安が、口にしたことで溢れかけているのだろう。
ヒフミの瞳が潤んで揺れる。
「学力試験なのに、どうしてこういう"全員一斉に"みたいな評価システムなのかもよく分かっていませんし、私たちの試験の為だけにこんな合宿施設まで提供してもらえるなんて…」
それに、とヒフミは逡巡したように目を泳がせた。
ルルーシュに話して良いのかどうか、判断が付かないのだろう。
しかし、もう一人で抱えていたくない、という想いもあるのだ。
「ヒフミ」
「は、はい…?」
「ナギサから他に、何か言われたりしたんじゃないか?」
「い、いえ?!そ、その…」
しどろもどろになるヒフミ。
ルルーシュはそれで確信していた。
ナギサ。やはり君は、友をすらも利用しているのだな。
「ナギサ様からは…えっと…」
暫く迷っていたのだろう、黙り込んでしまったヒフミだったが、やがて、意を決して、というよりも、不安に押されたような表情で、頷くのだった。
「はい…ナギサ様からは、誰にも言わないように、と言われていたのですが…私の手に負えるような話ではなくって…。
その…なんと言えば良いのか…」
「トリニティの裏切り者を見つけて欲しい、って?」
ヒフミは目を見張り思わず椅子から腰を浮かしていた。
「先生も、そう言われたってことですよね…?」
「ああ。ナギサと話した時にな」
「…私も、ナギサ様とお話した時に─」
ヒフミの耳には、まだその時に聞いた、ナギサの声が残っていた。
いつものように彼女の名を呼ぶ声。
しかしそれに続いたのは、いつもとは全く異なる、ヒフミにとって、縁のなかった世界の、そして、信じられないような、話だった。
「補習授業部にいる裏切り者を、探していただけませんか?」
「えっ?!ええっ…?!」
驚き、困惑するヒフミであったが、彼女の落ち着きを待つことなく、ナギサは話を続けていた。
「正直な所をお話しますと、補習授業部の試験の結果など、特に気にしてはいません。
試験に合格しなければ退学、というのも、つまるところ最終手段」
口元を微笑ませ、ナギサはヒフミに"お願い"する。
「出来る限り彼女達の情報を集め、出来るだけ早く、裏切り者を見つけていただけませんか?
ヒフミさんは、今、その為に補習授業部にいるんです」
「その、どうして私が…そんな…」
不安げに尋ねるヒフミ。
ナギサは全く表情を動かすことなく、そのままヒフミに答える。
「どうして。その答えは、ヒフミさんがシャーレと繋がっていたから、ですね」
「………」
「第三勢力である"シャーレの先生"が一緒にいる限り、裏切り者は無闇に動くことは出来ないでしょう。
ゴミが、ゴミ箱から飛び出さない蓋のようなもの…でしょうか」
「ご、ゴミ箱…?」
余り穏当には聞こえない喩えにヒフミは無関心でいられなかった。
しかし、問い返されたナギサは、「失礼しました」と誤魔化すのみであった。
「忘れてください。今のはただの独り言です。
とにかく──」
「ナ、ナギサ様!わ、私はその、こういうことは…」
頭を振るヒフミであったが、有無を言わさぬ調子で、ナギサにテーブル越しに、笑っていない目で「ヒフミさん?」と見据えられ、口を噤んだ。
「他に選択肢はないのです。それに、やむを得なかったとは言え、失敗してしまった場合はヒフミさんも同じことになってしまうのですよ?」
「っ……!」
ナギサはヒフミのことも疑っているのだろうな。
まあそりゃあそうか。
ティーパーティーのホストの友人、と言うだけで裏切り者の候補者リストへ上げるには十分過ぎる。
それに、親しい関係の者も補習授業部に入れることで、敵勢力にも、これを罠の類と感じさせない事も出来るだろう。
だが──。
話に聞いていた限りでは、ヒフミとナギサはそれなりに親しい間柄であったはずだ。
そのヒフミすらも疑っているとなると──。
「わ、私はその…裏切り者なんて話…」
ヒフミは、震える声で絞り出す。
「皆おんなじ学校の生徒じゃないですか…!今日だって、皆でお掃除をして、一緒にご飯を食べて…」
「これで…誰が裏切り者なのかを探れなんて…」
「そんなこと…私には…」と彼女の言葉は、細く、小さく消えていった。
ルルーシュはフッと優しげに微笑んでみせ、ヒフミに目を合わせる。
「ヒフミは、優しいな」
「え、ええっ?!」
大丈夫だ、とルルーシュは言ってみせた。
「裏切り者の件は、ヒフミは気にしなくて大丈夫だ」
「先生…?」
「私に任せてくれないか?解決してみせるよ」
大丈夫。とヒフミを安心させるようにもう一度繰り返し、フッと自信を覗かせる笑みを浮かべる。
「一人で大変だったな。けど、大丈夫。
後は、ヒフミはヒフミの出来ることを頑張ってくれれば良い」
「私に、出来ること…」
ヒフミはまだ湯気の立ちのぼるカップの中に目を落とし、紅茶に反射する瞳を見つめていた。
「…分かりました!あ、その、私に何が出来るのかはまだ分かりませんが…ちょっと考えてみます!」
「まあ、勉強しながらゆっくり考えると良い。
一先ず目先は、皆の成績を上げねばならないのだしな」
「はい。ですね!
先生、ありがとうございます!なんだか心が軽くなりました…!」
「そうかい?こんな事で良ければ、いつでも来ると良い」
そう言ってルルーシュは柔らかく笑う。
「紅茶、淹れなおそうか?冷めただろ」
「あ、大丈夫です!飲んじゃいますね。
…先生。それより、お願いしたい事があるのですが!」
「なんだい?」
残った分を一気に飲み切ったヒフミは椅子から立ち上がり、ルルーシュに歩み寄り、助力を願うのだった。
ルルーシュがヒフミと話していた頃、合宿所のロビーに、一つの影があった。
ジャージ姿のまま、何処へ行くでもなくロビーをゆったりと歩いていたのは、ハナコである。
何かを考えているのか、窓外に視線をこそ投げていたが、大して景色の情報は頭に入ってはいないようだった。
そして、背後に近付く気配にも直前まで、気付いていなかった。
「ハナコ?こんなところで何を」
「!アズサちゃんこそ。まだ起きていたんですか?それに制服で…」
アズサは一人、ジャージから愛銃を片手に制服姿へと戻っていた。
「もうある程度寝た。だから見張りでもしておこうかと」
「見張り…?いえ、それよりアズサちゃん…もしかして全然寝られていないのではないですか?
しっかり寝られたようには見えませんよ?」
「…慣れない場所だと、余り寝られなくて…」
「……」
アズサはハナコの視線から目を外し、取り繕うように続ける。
「心配しなくても、夜通し動くための訓練もちゃんと受けているから、5日間ぐらいなら寝なくても問題ない」
「いえ…そういうお話ではなく…」
「ハナコも散歩?ヒフミも何処かへ散歩に行ってしまったみたいだし、皆慣れないところで不安だろうから見張りでもした方が良いのかもと思って」
そういう事だから、とアズサはハナコに背を向ける。
「気にしないで大丈夫」
「…アズサちゃん。余り無理しないで下さいね」
ハナコは去っていくアズサの背を、静かに見つめるのだった。
そうして、初日の夜は過ぎていき、翌朝。
ルルーシュが教室に入ると、丁度来たばかりのヒフミが挨拶をしている所であった。
そして、コハルが何故か頬を赤らめ、縮こまってもいた。
「ううぅ…全部見られた…もうダメ…」
「コハルも私の裸を見たんだから何も問題ないはず」
済ました顔でサラリとそう言い放つアズサに、コハルは「そういう問題じゃない!」と反論する。
「あんな強引に脱がすなんて!無理やりとかそういうのはダメなの!」
「では、次は私がコハルちゃんの身体を洗ってあげましょうか?」
ハナコの乱入に、コハルは完全にペースを乱され、殆ど反射的に後退っていた。
「はあっ?!だ、ダメッ!あんただけは絶対に嫌!」
お前ら…とルルーシュは呆れたようにぼやく。
「朝から元気なのは結構だが、一体何をしているんだ」
「あら。やはり先生は私たちのシャワー事情、気になるのですか?」
「なっ…!そういう事じゃあない!!」
うふふっと楽しげに笑うハナコ。
ルルーシュはそんな様子に、はあ、とため息を吐いた。
「あはは…」
「全く。…む。ヒフミ。この辺、髪の毛はねているぞ」
「え?!あ、ありがとうございます…。少し寝坊してしまいまして…」
ではなくて!とヒフミは緩んでいた教室の空気を変えようとしてか、皆の注目を集める。
「皆さん、此方にご注目ください」
ヒフミはドサリ、と分厚い封筒を教壇に置き、話し始める。
「今日は補習授業部の合宿、その大切な初日です!
私たちは大変な状態でともすれば慌ててしまいがちな状況ではありますが…。
難しく考える必要はありません!1週間後の二次試験で合格する!それだけです!」
それを否定するものはいない。
それが純粋な真実ではないかもしれない、とは、二人は言わない。
少なくとも、まだ。
「…そこで」
少しのためを置いてから、ヒフミは宣する。
「今から、模擬試験を行います!」
「…模擬試験?」
「…なるほど?」
「き、急に試験?!なんで?!」
三人は、今度は、意味を掴みかねたのか、困惑を浮かべていた。
「闇雲に勉強しても、余り効率が良いとは言えません。
着実に、目標達成の為には何が出来て、何が出来ないのか、今どのぐらいの立ち位置なのか…まずそれを把握する必要があります!」
ヒフミは理由を説明しながら、封筒の封を開ける。
「というわけで、先生に此方を用意していただきました!」
ルルーシュがヒフミから言葉を受け継ぎ、説明を続ける。
「それは昨年までのトリニティで行われた試験問題と、前回の試験を参考に傾向を分析し、難易度の方も一定程度想定して組んだ模擬試験の問題用紙と模範解答だ」
「昨晩の間にこんなのを…?!」
素直に驚いた様子のコハルに、ルルーシュはいいや、と笑いながら否定した。
「さすがに一晩は無理だよ。前の試験が終わってから準備を進めていてね。
昨晩は、実際に解いて合格ラインに達したヒフミから所感を聞きつつ、微修正を行った」
凡そ、と問題用紙を掲げながらルルーシュは言う。
「第二次試験を想定したものとなっている。
解答時間は60分。100点中60点で合格。
本番と条件は揃えている」
「まずは、これを解いてみましょう!」
異論はでなかったので、ルルーシュが皆に用紙を配布する。
「さて、行き渡ったな」
では、と皆を確認してから腕時計に目を落としたルルーシュは、秒針がゼロを指すのを見計らい、開始を宣言した。
「試験開始!」
そうして数時間後。
採点を終えたルルーシュが、結果を発表する。
ハナコ─4点。
アズサ─33点。
コハル─15点。
ヒフミ─68点。
ヒフミ以外は不合格、という1次試験と変わらない結果であった。
「これが今の私たちの現実です。このままだと私たちに明るい未来はありません」
前回と違うことと言えば、ヒフミが結果を前にしても動じず、冷静に話を進めている事だろう。
この結果は見えていた彼女は、驚きもショックも受けもせず、前を見据えていた。
「ここからあと1週間!皆で60点を超えるためには残りの時間を効率的に使っていかなければならないのです!」
そこで!とヒフミはコハルとアズサに目を向ける。
「まず、コハルちゃんとアズサちゃんはどちらも1年生用の試験ですので」
一旦言葉を切ってから、ヒフミはハナコの隣へと行く。
「私とハナコちゃんがお二人の勉強内容をお手伝いします!ハナコちゃん、最近何があったのかは知らないのですが、1年の時の試験では高得点だったんですよね?!」
「あら…?えっと、まあ、そうですね?」
実は、とヒフミは少し申し訳なさそうに言う。
「1年生の時のハナコちゃんの答案を見つけてしまいまして…。
それで、ハナコちゃんについては、後ほど、今の状態になってしまった原因をしっかり把握した上で、私と先生と一緒に解決策を探しましょう!」
ハナコは、何とも言えない、感情を悟らせないような、微妙な表情でヒフミの方針をただ黙って静かに聞いていた。
「今日から定期的に模擬試験を行って進捗具合も確認出来ればと思っています」
そう、成績という観点から見た場合、これが今出来る最善だろう。
昨日に叩き台は考えていたが、それから直ぐに完成させるとはな。
ブラックマーケットに乗り込む胆力も去ることながら、しっかりと下調べをしていたことも印象に残っていたが…流石と言うべきかな。
「まあ、やるしかないんだ。皆、頑張ろう」
「頑張れば、きっと皆で合格も…!」
私は、私に出来ることを。
ヒフミはその想いを胸に、昨夜、必死に頭を働かせてきたのだった。
「…うん。了解。指示に従う」
「わ、分かった…」
「ヒフミちゃん…すごいですね。昨晩だけでこんなに準備を…」
ハナコの感心に、ヒフミは「いえいえ」と頭を振る。
「先生も手伝ってくださったので」
「大した事はしていないよ。模試は作ったが、後のことはヒフミの頑張りだ」
フフフッと自信たっぷりに笑う彼女は、ドン、と教壇に大きな彼女のリュックを置き、中身を素早く取り出し、並べる。
"それ"もヒフミが必死に考えた結果の施策であった。しかし──。
「何と、ご褒美も用意しちゃいました!
此方です!良い成績を出せた方には、この"モモフレンズ"のグッズをプレゼントしちゃいます!」
"モモフレンズ"。
ペロロ様を初めとする特徴的で、かつ、個性的な見た目をしたキャラクター達。
その珍妙な見目に、ヒフミと一人を除き、反応に困った様相となってしまっていた。
「…何それ?」
「モモフレンズ…?」
だが、一人、アズサだけは反応が異なっていた。
彼女の視線はモモフレンズのグッズ達に釘付けとなっていたのだ。
ただ、表情は余り動かない為、それに気付いた者もいなかった。
「あ、あれ…?最近流行りの、あの"モモフレンズ"ですが、もしかしてご存じない?」
「初めて見ましたね…。いえ、何処かでチラッと見た気も…?」
「ええっ?!」
ヒフミはいたくショックを受けたようだったが、ルルーシュはそりゃそうだろう、と内心ツッコミを入れていた。
流行っていると言っても、ニッチなファンによるカルト的な人気、の方が近いのだし、そりゃ普段そういうジャンルに触れていなければ知りようもない。
「何これ、変なの…豚?それともカバ?」
「ち、違います!ペロロ様は鳥です!見てください!この立派な羽!そして凛々しいクチバシ!」
必死に訴えかけるが、コハルには残念ながら理解してもらえなかったようで、「目が怖い。何か名前も卑猥だし…」とにべもなく拒まれてしまっていた。
「た、確かにそういう声も一部にはありますけど…よ、よく見てください。じっくり見てるとなんだかかわいく──」
「あ、思い出しました。そう言えばヒフミちゃんのカバンやスマホケースがそのキャラクターでしたね」
「ええ!そうなんです!」
「確か、舌を出してよだれを垂らしながら、"もう許して!"と泣き叫ぶキャラクターだったとか…?」
「え、いえっ!後半部分は色々と違いますよ?!」
ハナコのとんでもない説明にツッコミを入れたヒフミだったが、「私は要らない…」というコハルの無情な拒絶によって、「あうう…」と鳴き声を上げて撃沈するのだった。
だが、机にうなだれ、視線を投げ出したことで、それによって漸くアズサの様子に気付く。
「アズサちゃん…?」
「…か、」
「か?」
「可愛い…!」
皆が驚き、目を見張る。
ヒフミ以外は、ルルーシュも含め、マジか?という驚きであったが、ヒフミの方は漸く現れた理解者の存在に対する驚きだったのだろう。
「か、可愛すぎる!なんだこれは…この丸くてフワフワした生物は…!
この目、表情が読めない…何を考えているのか全く読めない…!」
「さ、流石はアズサちゃん!ペロロ様の可愛さに気付いてくれたんですね!そうです!そういうところが可愛いんです!」
一部の者には凄まじい刺さり方をしているとは把握していたが、ヒフミ以外では初めて見たが…。
なるほど。こういう感じの人気なんだな。
冷静に見守るルルーシュの隣でコハルは「嘘ぉ…」と理解不能、と言うような声を漏らしていた。
「こ、こっちは?この長いのは?イモリ…いや、キリン?なんだか首に巻いたら暖かそうな…!」
「それはウェーブキャットさんです!いつもウェーブして踊っている猫なのですが、おっしゃる通り、最近ネックピローのグッズが…」
イモリ、キリンで、猫…。
確かに、これが何の生き物かはわからんな。
実物を見ても、やはり理解は困難であり、アズサがイモリやキリンを選択肢に入れる程度には妙な生物、以外の感想しかルルーシュにはわかなかったようだ。
「これは!この小さいのは…!」
「それはMr.ニコライさんです!いつも哲学的なことを言って不思議な目で見られてしまう方ですね!」
今回、とヒフミは一冊の本を嬉しそうに取り出す。
「ご褒美の一つとして、そのニコライさんが書いた"善悪の彼方"という本もあるんですよ!しかも初版!」
「凄い、凄い…!まさか、選んでも良いのか?この中から?!」
興奮した様子のアズサに、嬉々としてヒフミは頷く。
「はい!アズサちゃんが欲しいのを持ってってください!」
二人の輪は興奮の渦であり、ハナコ達は置いてけぼりであった。
「あらあら」
「な、何なの…」
まあ、同好の士を見つけられたのは良かった、のか…?
やはりさっぱり良さは分からんが。
「…やむを得ない。全力を出すとしよう。
良いモチベーション管理だ。ヒフミ、約束しよう。必ずや任務を果たして、あの不思議でフワフワした生物を手にして見せる!」
アズサは、俄然やる気になったようで、キリッと眉を上げ、これまでにないやる気を見せるのだった。
「はいっ!ファイトです!」
まあ、一人でもこれでやる気が出たのなら良い事だ。
しかし、やはりハナコだな。
前回のアレは、偶然、生まれた点数ではない。
偶然、低得点であっただけで、もう少し今回でマシな点を取れていれば、杞憂だったと思えたのだが……。
一年の時に高得点でありながら、今や一桁台。
普通なら、勉強についてけなくなったのだとしても、一年生の時の知識の応用や復習問題で点を取れる筈。
最早、疑う余地もない。
彼女は間違いなく、"わざと"、低得点を叩き出している──。
今回も読んで頂き、ありがとうございます。
また次回もどうぞよろしくお願い致します。