コードギアス 教導のルルーシュ‐Archive Stories‐   作:ライト鯖

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Archive-008 砂漠の負債

 

「良し!シロコ、今だ!」

 

物陰から飛び出したシロコは、ヘルメット団前哨基地のリーダー格へ突撃する。

これによって、ヘルメット団のアビドス高校攻略の為と思わしき前哨基地は壊滅した。

 

「しかし、こんな町中に不良グループのアジトを堂々と構えられるとはな」

「でも、これだけやったから暫くはおとなしくなるはず」

 

シロコの言に頷きつつ、ルルーシュは辺りを見渡す。

周囲には雑居ビルなどが立ち並び、パッと見ただけではここの殆どが空きテナントであるとは思えない位には都市郊外の風景が広がっていた。

 

自治区の統治主体であるアビドス高校が5人しかおらず、過疎化も進展しているのだ、ああいう手合いにとってはこれ以上ない場所なのだろうな。

 

「皆さーんこっちに、ヘルメット団の弾薬庫がありました〜」

「ほう。良いじゃないか。折角だ。鹵獲していこう」

 

全員で詰め込めるだけの弾薬や物資を詰め込み、アジトを破壊してから、一行は学校へと戻った。

 

「お帰りなさい。皆さん、お疲れ様でした」

 

学校に残り、遠隔でオペレーター業をこなしていたアヤネが皆を出迎える。

 

「ただいま〜」

「アヤネちゃんもオペレーターお疲れ」

「火急の事案だったカタカタヘルメット団の件が片付きましたね。

これで一息つけそうです」

「そうだね。これでやっと、重要な問題に集中出来る」

「うん!先生のおかげだね。これで心置きなく全力で借金返済に取りかかれるわ!

ありがとう!先生!この恩は一生忘れないから!」

 

「待て。借金返済とは何のことだ」

 

既に御役御免の空気を漂わせてきたセリカの語った借金というフレーズを、当然、ルルーシュがスルーすることはなかった。

 

「あ、わわっ!」

「そ、それは…」

「ま、待って!アヤネちゃん。それ以上は!」

「…!」

 

気まずい雰囲気が流れる。

 

「いいんじゃない?セリカちゃん。隠すようなことじゃあるまいし」

「か、かといってわざわざ話すようなことでもないでしょ!」

 

ルルーシュは会話を聞きつつも思考する。

 

借金。アヤネからの要請を受け取り即日此方に来たからアビドスの事をまだ詳細には調べきれてはいなかったが、確かに街のあの状況と学校の物資不足を鑑みれば当然の帰結とも言えるだろう。

確かに財務状況が思わしくないような情報も見た覚えがある。

まあ、多少の借金程度ならば、俺が肩代わりするのも手か。

金ならばそれなりに集まりつつあることだし。

 

「別に罪を犯したとかじゃないでしょー?それに先生は私達を助けてくれた人でしょー?」

「ホシノ先輩の言う通りだよ。セリカ。先生は信頼して良いと思う」

 

シロコがそう言ってホシノを引き継ぐように言った。

しかし、ルルーシュはホシノの僅かな表情の動きから、シロコの言葉とは微妙に真意の異なる事を感じ取っていた。

 

「そ、そりゃそうだけど!先生だって結局部外者だし!」

「確かに先生がパパっと解決してくれるような問題じゃないけどさ。でも、この問題に耳を傾けてくれる大人は先生くらいしかいないじゃーん?」

「私に可能なことなら手伝うよ」

 

ルルーシュは相変わらずの笑顔を造り、そう言った。

 

「先生も言ってくれてるしさ。悩みを打ち明けてみたら何か解決方法が見つかるかもよ?

それとも何か他に良い方法があるのかなー、セリカちゃん」

「うう…でも、さっき来たばかりの大人でしょ?!今まで大人達がこの学校がどうなるかなんて気に留めたことあった?!

今更大人が首を突っ込んでくるなんて…」

 

なるほどな。

どうりで御役御免かのように扱われたわけだ。

あくまで、連邦生徒会に出した要請は武装勢力の排除。

それを達成した以上、"大人"である俺に必要以上の介入をして欲しくはない、というのがセリカの心情か。

 

色恋沙汰の絡まない人間の心中を推し量る事はルルーシュの得意とする所と言えるだろう。

無論、完璧ではなく、人間は計算通りには動かない故に何度も煮え湯を飲まされてきたわけではあるが。

こうした分かりやすい状況であるなら、ルルーシュでなくともある程度は分かる事だ。

 

「私は認めない!」

 

セリカが教室を飛び出して行くのをルルーシュは黙って見送った。

 

今、下手に言葉をかけてもヒートアップさせるだけだろう、と一旦クールダウンをセリカに与えるべきと判断したのだ。

 

「セリカちゃん?!」

「私、様子を見てきます」

 

ノノミがセリカの後を追いかける。

残されたアヤネらは暫く沈黙していたが、やがて、ホシノが口を開いた。

 

「えーと、簡単に説明すると…この学校、借金があるんだ。まあ、ありふれた話だけどさ」

「まあありふれてはいるが、死活問題でもある。

5人での返済が難しいなら私が──」

 

肩代わりしようか?と口にしようとしたルルーシュに被せるように、ホシノが言う。

 

「問題は、それが9億円位あるんだよね〜」

 

9億?!

そうか。くそっ。そうだ。学校ではなく実態としては自治体だったな。

未だにこの認知のズレには慣れないな。

当然、都市を運営するなら借金の額も比例する。

そりゃあそうだ。

しかし、そうなると肩代わりは今は出来ない。

まだかき集めても1億いくかどうかという資産しか築けていない。

 

運用自体は上手く行っているから、まあ1億は少なく見積もってあるだろう。

しかし、更にその9倍…。

無理難題だな。投資関係で資産を増やしている現状、借金を先んじて肩代わりしてしまっては俺の信用情報がガタ落ちし、運用に影響が出てしまう。

そうなれば今度は俺が──。

 

「9億6235万です…」

 

ルルーシュが腕を組み、思案する中、アヤネが細かい数字を補足し、ホシノの話を引き取った。

 

「アビドス…いえ、私たち"対策委員会"が返済しなくてはならない金額です。

これを返済出来ないと、学校は銀行の手に渡り、廃校手続きを取らざるを得なくなります」

 

ですが、とアヤネは目を伏せる。

 

「でも実際に完済出来る可能性はゼロに近く…。

殆どの生徒は諦めてこの学校と街を捨てて、去ってしまいました…」

「そして、私たちだけが残った」

「学校が廃校の危機においやられたのも、生徒がいなくなったのも、街がゴーストタウンになりつつあるのも、全てこの借金が原因です」

「借金による影響は理解出来た」

 

だが、とルルーシュは続ける。

 

「何故、借金がこれほど膨れ上がったんだ?砂漠化が原因か?」

「凡そその通りです。

数十年前、この学区の郊外にある砂漠で、砂嵐が起きたのです。

その地域では頻繁に砂嵐が起きていたのですが、その時の砂嵐は想像を絶するものでした」

「…異常気象か」

「はい…。学区の至る所が砂に埋もれ、砂嵐が去ってからも砂が溜まり続けてしまい…」

 

なるほどな。とルルーシュは頷く。

 

「その復興の為に資金を投入して、それが借金にまで繋がったわけか」

「ええ。このような片田舎の学校に巨額の融資をしてくれる銀行は中々見つからず…」

「結局、悪徳金融業者に頼るしかなかった」

「はい…でも最初は直ぐに返済出来る算段だったのだと思います。

ですが、砂嵐はその後も毎年のように、更に巨大な規模で発生し、学校の努力も虚しく、学区の状況は悪化の一途を辿りました…」

 

そして、とアヤネは机に広げられたままのアビドスの地図をチラリと見る。

 

「アビドスの半分以上が砂に呑まれ、砂漠と化し、借金はみるみる膨れ上がっていったのです」

 

「そういうことか」とルルーシュは呟く。

 

「その上、悪徳金融業者だ、どうせ利息も法外なのだろう?実際に返済出来る可能性はゼロに近いとも言っていたしな」

「はい…。仰る通りです。なので私達の力だけでは毎月の利息を返済するので手一杯で…

補給品も弾薬も底をついてしまっています」

 

アヤネの説明を聞いて、考え込むルルーシュは、はたとシロコと目が合った。

 

「セリカがあそこまで神経質になってるのは、これまで誰もこの問題にまともに向き合わなかったから。

話を聞いてくれたのは、先生、貴方が初めて」

「…まあ、そういうつまらない話だよ」

 

ホシノは若干の影を感じる声色でそう言った直後、普段の調子に戻し、続ける。

 

「で、先生のおかげでヘルメット団って厄介な問題が解決したから、借金返済に全力投球できるようになったってわけ〜。

もし、この委員会の顧問になってくれるのだとしても、借金の事は気にしなくて良いからねー。

話を聞いてくれるだけでもありがたいし」

「ん?顧問?」

「…あれ?違った?さっき、5人で返済が難しいなら私がって何か言いかけてたからてっきり」

 

まさか、資産が足りないので肩代わりする考えが頓挫しました、とは言えないルルーシュは、「あ、ああ。そうだったな」と肯定するしかなかった。

 

「先生はもう充分力になってくれた。

これ以上迷惑はかけられない」

「迷惑?まさか。これは私の仕事だ。

そして、君達は生徒。頼ってもらって構わないんだ。幾らでも力を貸すさ。……私の力の及ぶ限りはな。約束する」

「それって…!はい!よろしくお願いします!先生!」

「先生も変わり者だね〜。こんな面倒な事に自分から首を突っ込むなんて」

 

"先生"としての役割を考えるならばこれが正解だろうからな。

それに、どうにも引っかかる。

 

「良かった…シャーレが力になってくれるなんて…」

「ん。これで希望が見えてくるかもしれない」

 

和気藹々とした空気感になった対策委員会の教室、その前で聞き耳を立てていた影が一つ。

 

追っ手を撒いて様子を身に戻ってきていた彼女は「ちぇっ」と不服な表情で不満の息を漏らし、一人、孤独に立ち去るのだった。

 

「とりあえず。今日の所は私はシャーレへ戻るとするよ」

 

放課後、ルルーシュはホシノ達に告げる。

 

「あ、分かりました。今日はありがとうございました!」

「礼など不要だ。…それより、私は次来るのは3、4日後になるが大丈夫か?」

「ん。結構空くね。やっぱり忙しいの?」

「というより、今日は金曜日だぞ。皆」

「あ…そっか…」

「授業もないからここにいると曜日感覚なくなっちゃうよね〜」

 

ホシノがそう笑ったが、ルルーシュは真面目くさった表情で「…授業の方も、対策をしておく」と言い足した。

 

「あ〜。そういうつもりで言ったんじゃなかったんだよー」

「分かっているよ。半分は冗談だ。まあ、少し調べたい事と、やるべき事が出来たんでな。

次は早ければ月曜日、場合によっては火曜日に来るよ」

「授業、半分は本気なんだね…」

「そりゃあな。学生の本分だ」

 

こうしてルルーシュにとってもキヴォトスに来た日と同じくらいには激動の日を終え、シャーレへと戻るのだった。

 

「アロナ」

『はい!何でしょう。先生』

「少し調べておいて欲しい事があるんだが、頼めるか?」

『お任せください!何でしょう』

「アビドスについて、だ」

『アビドスの、ですか。どういった情報を?』

「アビドスの借金相手の事、砂漠化の現状。そして──」

 

小鳥遊ホシノについて。

 

『承知しました…先生は何をされるおつもりなのですか?』

「別件の調査だ。こっちも、"生徒"の為に必要な事だ」

 

──翌々日。

 

ルルーシュは、とある邸宅へと来ていた。

 

「おい、約束の無い者は取り次げんぞ」

 

守衛に止められるも、ルルーシュはその様子を見るカメラにも見えるようにアタッシュケースを開け、怪しげな微笑を浮かべてみせる。

 

「お約束をしていなかったのは申し訳ありません。

何分、キヴォトスの外から来たばかりでして…。

実は、此方の猫山様が大層な好事家と耳に挟み、逸品をお持ちした次第で」

 

邸宅内でワイングラスを片手に寛ぎつつ、不審者が訪ねてきた、という報を受けて監視カメラの映像を眺めていたその猫型の市民は「ほう?」と興味をその顔に浮かべていた。

 

「おい」

『はっ!』

「通せ」

『よろしいのですか?』

「構わん。客間に通せ」

『了解』

 

ルルーシュは不満げな守衛に見送られながら邸宅へと入り、主人の猫山と対面する。

 

「お初にお目にかかります。スペンサー商会のアラン・スペンサーと申します。

本日は"Archaeoloberry"の異名を持たれている猫山様に是非と思い、これをお持ちした次第です」

「へえ…?私の裏の名を知っているとは」

「ええ。よく存じていますよ。キヴォトスの外にもその名は聞こえております。表でもブラックマーケットでも関係なく希少な古美術を収集なさっているとか」

 

ルルーシュは言いながらアタッシュケースを開いた。

 

「これは…見たこともないな。…そう言えばキヴォトスの外から来たと言っていたな。つまりこれは…」

「お目が高い。ご明察の通り、これはキヴォトスの外でかつて栄えた帝国。その王侯貴族が身につけていた装飾です」

 

ルルーシュの差し出した、古めかしくも美しさがある、ように見える"それ"は、シャーレの地下にて"シッテムの箱"と共に準備されていた、不可思議な力で物質を生成する"クラフトチェンバー"で素体を作り、使い方を覚えたばかりの3Dプリンタで細工を施した"逸品"であった。

 

「ほほう。素晴らしいな。鑑定書は?」

「勿論、此方に…」

「ふむ…。幾らかね?」

「希少価値の大変高いものです。まだ、さる大博物館に収蔵されているモノを除けばこの一点だけ。

時価はこのぐらいで…」

 

ルルーシュは数字を見せる。

裏社会でもそれなりに名の通った猫山でも面喰らう程の額。

 

「ですが、突然お邪魔してしまい、ご迷惑をおかけしましたし、それに、これから先キヴォトスで商いをするに当たって、猫山様のような御方とは良い関係を築いていきたいとも考えています」

 

電卓を弾き、ルルーシュは桁を一つ削り、数字の頭も三分の二程にした額を提示する。

 

「如何でしょう?」

「ううむ…。御心遣いは嬉しいが、これでも些か…」

 

それでもかなりの金額であり、猫山は渋る。

ルルーシュはそれ以上しつこく引き下がりはせず、「そうですか」と残念そうにアタッシュケースを閉じる。

 

「暫くは取り置きをしていますので、ご一考頂ければと思います。

…代わりに、こちらはいかがでしょう?」

 

ルルーシュは別の、もっと安い金額を設定した装飾品っぽく誂えた。同じくクラフトチェンバーと3Dプリンタ合作の"古美術"を提示した。

 

「これは…安いな」

「特別価格です。それに、此方も市場には唯一無二という程ではありませんが、古代王国の逸品で、大変な希少品です」

 

猫山の食いつきに、ルルーシュはニヤリと笑った。

 

数十分後。

 

一人、帰路でルルーシュはほくそ笑む。

 

「馬鹿め。あれだけ派手な部屋に、これ見よがしに調度品を飾る虚栄心。

利用しやすそうでありがたいな。…さて」

 

ルルーシュはポケットから取り出した機械のスイッチを入れた。

 

「聞かせてもらおうか。貴様の愚かしさを」

 

ルルーシュは仕込んでいた。

盗聴器を、調度品に。

 

ジャマーが設置されていないことは訪問時に確認済み。

傲慢な連中だ、想定すらしていないのだろうな。

卑しい商人が自分達を陥れる様など。

 

ルルーシュはその日はD.Uを中心に飛び回り、様々な形で仕込みを行うのだった。

 

 

──翌日、昼過ぎ。

 

「C.E.O」

 

恰幅の良い印象を受けるロボット型市民は呼ばれ、顔を上げる。

 

「どうした」

「それが…大株主の猫山様、露歩様、狗上様を始め、10名程の株主達がCEOに大至急お会いしたいと」

「…ほう?何の用だ?」

「とにかく会わせてくれ、の一点張りで…」

「…次の予定は?」

「会議までは三十分あります」

「分かった。なら通してくれ」

「よろしいので?」

「大株主様達だ。無下には出来んだろ」

 

通された株主達は、八割程が陰鬱な空気感を醸し出しており、残り数名は、形容のしがたい、しかし、何かの熱意に動かされているような様相であった。

 

CEOは違和感を覚えつつも、全員を迎え入れ、椅子を勧める。

 

「それで、本日はどのような御用向きで…?

株価はうなぎ上り…とは行きませんが、安定して上昇しておりますし、会社の売上も既に前月を越えておりますが…」

「そういう話じゃないんだよ。CEO」

「では…?」

 

猫山が代表して、はあ、と気怠げな息を吐きながら、口を開いた。

 

「我々は株主総会の開催を要求しにきたのだ」

「株主総会…?それはまた一体…」

「新しいCEOを迎え入れる為です!」

 

不審な熱気に包まれた株主の一人、狗上が立ち上がり、言った。

 

「は?今なんと…」

「貴方には降りてもらう!新しいCEOを迎えるのです!」

「ははっ…狗上様は冗談がお上手だ…」

 

CEOは突然の自体と、この場の人間たちの空気感の余りのギャップに戸惑いっぱなしであった。

 

「お入りを!新CEO!」

 

狗上の雄叫びに近い呼び声に合わせ、扉が開かれる。

 

「始めまして…"エンジェルマートグループ"現CEOさん。私は…」

 

CEOの前に現れたその青年は、名乗る。

 

L.Lと──。

 

 






今回も読んで頂きありがとうございます。
お気に入り登録も100を超え、大変嬉しく思っております。
本当にありがとうございます。

次回更新日も変わらず未定ですが、出来るだけ早く更新出来るよう頑張ります。
どうぞ、よろしくお願いします。

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