コードギアス 教導のルルーシュ‐Archive Stories‐   作:ライト鯖

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「やあ、ソラ。こんばんは」

陽も傾き始めた時刻、シャーレへと戻ったルルーシュは、エンジェルマートへと入る。

「あ、いらっしゃいませ。先生」
「悪いが、少し時間はあるか?」
「?…はい。見ての通り暇ですけど、何でしょうか」

小首を傾けるソラ。
ルルーシュはスルリと身体の角度を変え、背後に手を差し示す。
そこには、二人の犬型市民の姿があった。
ソラの位置からだと、ルルーシュと棚が影となり、気付いていなかったのだ。

「紹介するよ。彼らは、新しい従業員だ」
「…へ?」
「3シフト制の八時間労働を導入することにしたんだ。最終的には、だがな。
暫くは業務を色々と教えてやって欲しい」
「え…と…?」

事態を全く理解することが出来ず、ソラは唖然としていた。

「ああ、勿論、彼らに業務を任せられる位になるまでは、夜間は店舗を閉めてもらって構わない」

まあとにかく一先ず、とルルーシュは構わず続ける。

「今日は顔見せだ。明日から頼むよ。ソラも今日は帰ると良い」
「あ、あの!」
「ん?どうした」
「さっきから言ってる意味が…」

混乱した様相のソラに、ルルーシュは「ああ」と気付いたように呟いてから、「すまないな」と謝った。

「そう言えば正式に決定、というわけではないから、まだ公式には発表されてはいないのだったな」
「ええと…」
「エンジェル24の運営、エンジェルマートグループのCEOが交代することになったんだよ」
「ええ?!?」

ルルーシュはソラの方に身を寄せ、耳打ちする。

「"友人"がCEOとなるのでね。
改革をさせることにしたんだ。
前…いや、まだ現CEOが抵抗しているが、大株主の皆々様のおかげでスムーズだ」
「ええと…?ええ…」
「メールが来ているはずだ。全店舗に送らせたからな。見てみると良い。」
「メール…メール…嘘…」

スケールの大きすぎる話に、説明されても結局困惑したままのソラ。
数十秒程してから、ハッと彼女はルルーシュを見た。

「で、でも。私、お給料が下がるのは困るんです!」
「問題ない。時給をはね上げておいた。だからこうして新しい従業員の募集もあったんだよ」
「私ら、提示された時給を見て、これは!と思ったんでさあ。
いやあ、エンジェル24の募集なんて信じられないぐらい安い時給しか見たことがなかったのに」

それに、とルルーシュは言う。

「ソラ、君は正確にはアルバイトではなく、契約社員という形式だ。ボーナスも出るようにした。
さすがにただのアルバイトに店長業務はさせられなかったんだろうな。
だから、これなら給料はむしろ上がるんじゃないか」

ソラは目を見張りつつも、ゆっくりと指を折り曲げ、脳内で静かに計算をしていく。

「ほんとだ…」
「な?だから問題ないよ。
…さ、今日はもう遅い。帰りなさい。
お二人もご足労ありがとう」
「いえいえ!店長さん、でいいんですかね。
明日からお願いします!」
「お願いします!」
「あ、は、はい!よ、よろしくお願いします…」

二人を見送ったソラとルルーシュ。
ソラは、おずおずとルルーシュに向き直った。

「あの…ありがとうございます。
まだ正直、よく分かんないですけど。
本当なのかな?とか色々と。
でも、先生が、してくれたんですよね…」
「もののついでだ。"友人"のおかげでもある」

付け足すように言われた友人の存在。
ソラは、はたと、そのお友達は本当にいるのかな、と思い至ったが、どちらでも良いことだ、と考えないことにした。



Archive-009 "平凡"な一日

 

 

シャーレのオフィスへ戻ったルルーシュは、ふう、と息を吐き、背もたれに身体を預ける。

 

『お疲れ様でした。先生』

「…アロナか。確かに、今日は随分歩き回った」

『まさか社長さんになってしまうなんて、驚きました。しかも、生徒さんを助けるためだけに』

「フッ…。まさか。それだけじゃないさ。

キヴォトスで活動するに当たって、"シャーレ"という法的な足がかりのみならず、経済的な足がかりも欲しかったからな」

『でも、先生、CEOさんと話してる時の顔、凄かったですよ』

「見られていたか。

──まあ、弱者を踏みにじることを恥じとも思わん奴だったからな。少し、苛立っただけだよ」

『へ〜そうなんですか』

 

アロナはいたずらっぽく、しかし、何処か嬉しそうに微笑んでいた。

 

「おい、なんだその信じていなさそうな言い方は」

『この前のお返しです!』

「ハッ。なるほど。これは一本取られたな」

『ところで、エルツーってどういう意味なんです?』

「ん?ルルーシュ・ランペルージの頭文字ってだけだ。Lが並んでL.L.(エルツー)だよ」

『……あ、あ〜。なるほど!』

「そこは気付いてなかったのか」

 

ルルーシュはエンジェルマート乗っ取りの為に複数人の大株主を手駒とした。

大半は、ギアスを用いずとも弱みを握ることに成功し、それをネタに操ったのだが、数人は、少なくともたった2日では辿り着けない程度の堅牢さは持ち合わせていた。

 

故に、この短期間で攻略出来なかった株主に対してだけは、"ギアス"を用いた。

かつてのルルーシュならば、ギアス無しで攻略可能な相手でも時短として全員に用いていてもおかしくはなかった。

 

わざわざ手の込んだ偽の美術品やらを作るくらいなら、そうしただろう。

 

だが、暴走の懸念を認知しているからこそ、少し慎重になっていたのだ。

 

他の、ギアスで済ませた者達も時間をかければ攻略出来ただろう。

だが、アビドスの件もあり、早めに足がかりを手に入れておく必要があると判断し、2日という期限内に攻略出来なければ、ギアスで人形とする、と決めていたのだ。

 

しかし、とルルーシュはアロナと談笑しつつも、彼女に対する考察を深めていた。

 

俺の顔色まで把握していたということは、俺がギアスを使う瞬間を見ていてもおかしくはなかったはずだ。

にも関わらず、一切それを指摘してはこないな。

…此方から聞いてみるか?

いや、自ら藪に突っ込むようなものだな。

たまたま昼寝をしていて見ていない可能性だってあるんだ。

無論、それは低確率の希望的観測ではあるが。

 

だが、指摘してこないからには、そして、あえて触れないことには理由がある筈だ。

ならば、今はあえて聞く理由もないか。

そもそも、糾弾されたっておかしくない力なのだから。

 

『先生?』

「ん?ああ、すまない。少しぼんやりしてしまっていたようだ」

『先生もそういうことがあるんですね』

「そりゃあるさ」

『そんなイメージはありませんでしたが…先生の色々な一面を見れている気がします』

「そうかい。…それで、悪いがもう一度言ってくれないか?」

 

ピコン、とシッテムの箱の通知音が鳴る。

 

『今、転送しました。以前先生にお願いされていた調べ物の成果です』

「…これは。…そうか。ありがとうアロナ。おかげで助かった。予想以上だ」

『ふっふっふ。凄いでしょう!スーパーアロナちゃんとお呼びください』

 

アロナの小ボケはあしらいつつ、ルルーシュは画面を見つめる。

 

「カイザー…。E.Uの公用語の一つにあったな。ドイツ州だったか?意味は確か──。

…気に食わない名だ」 

 

そして、と彼は一つのプロフィール調に纏められた資料へ目を移す。

 

「ホシノ…。やはり君は…」

 

明日からも忙しくなりそうだ。

確かに、俺は会社を一つ手に入れた。

だが、だからといって九億円をポンと出せるわけでもない。

そもそもCEOになれたからといって、会社の金全てを私物化できるわけもない。

 

ギアスを使えば不可能ではないだろうが、余りにも怪しい金の動きをすることになる。

そうなれば、周囲を嗅ぎ回られることになるだろうし、それで万に一つでもギアスがバレては不味い。

 

既に突然のCEO交代劇をやってしまっているのだ、それだけでも充分怪しい。

しかし、大半はギアス関係なく弱みを握ってのことであり、多少調査されたとしてもボロは出にくいだろう。

ギアスで操った者達も、それついでに弱みを教えてもらってもいるし。

 

その上、あのCEOは別に株主にも好かれていたわけではない。

その辺りも勘案すれば、これ以上妙な真似をしなければ、株主にとって都合の良い神輿を用意した、だとかの解釈も成り立つんだ。

まあ、問題はないだろう。

 

だが、これ以上を即座に実行しては間違いなく疑われる。何か、裏があると。

そして、普通は人の意志を捻じ曲げる能力を持つ人間等、恐ろしくて仕方ないだろう。

自分の意志が本物なのか疑わざるを得なくなるのだから。

 

それに、アビドス高校は利息も払えない程に窮している訳では無い。

見た限り、利息は毎月支払えているし、元本も微々たるものだが殆ど毎月減少させている。

理論上は返済可能な状況だ。あくまで理論上だが。

 

そうであるならば、徒に急いて仕損じるよりも、慎重に事を運ぶべきだ。

 

「どうにか事業という形でアビドスの借金を、か──」

 

先ずは、"エンジェルマートグループ"の完全な掌握。俺の城とする為の地歩を固めるのが先決か。

 

明日からもまだまだ忙しくなりそうだ。

 

ルルーシュはそこで、一息入れ、少し長めの睡眠を取ることとした。

 

「アロナ。明日は四時半に起こしてくれ」

『先生、ちゃんと寝ないと身体に悪いですよ』

「だから今日はもう寝るんじゃないか」

『先生の言う明日は、もう今日ですけど?』

 

頬を膨らませながら不満そうに言うアロナに、ルルーシュは苦笑する。

 

「参ったな。分かったよ。アビドスの件が一息つけば、ちゃんと寝るようにする」

『約束ですよ?』

「ああ、分かった。約束だ」

 

 

そして、翌日…いや、数時間後──。

 

朝日が既に人に対する殺意を向けているのかというほどに地面を照りつけるアビドスの街をルルーシュは歩いていた。

 

「暑い…やはり、車…最低でもバイクが必須だ…」

 

ルルーシュが自らの体力の無さを真剣に恨めしく思う事この数日で2度目であった。

 

そんな彼がアビドスの街を歩いていると、見覚えのある人影を見つけた。

向こうも気付いたようだったが、それは既に避けて逃げるには近すぎる距離であった。

 

 

「うっ………。な、何っ…?!」

「おはよう。セリカ」

「な、何がおはようよ!なれなれしくしないでくれる?

私、まだ先生のこと認めてないから!」

 

「分かっているさ」というルルーシュの一言。 あしらわれているように感じたセリカは皮肉気な調子で嫌味を投げかける。

 

「…。全く!朝からこんな所をうろついちゃって…!良いご身分だこと」

「うろついているわけではない。学校に向かう所さ。セリカもだろう?」

 

言われたセリカはしかし、ルルーシュの問いには答えない。

 

「そうやって馴れ馴れしく名前で呼ぶの止めてくれる?私は先生を認めてないって言ってるでしょ」

「ならば、黒見。これで良いのか?

そんなことより、ノノミやアヤネが心配していたぞ」

「…やっぱ私だけ名字なのも何か気持ち悪い!」

「はいはい。分かったよ。セリカ」 

「ふん!朝っぱらからこんなとこウロチョロしてたら、ダメな大人の見本みたいに思われるわよ?」

 

セリカは苛立ちのままに言い捨てたが、ルルーシュは大してそれを気に留めることはない。

 

「それで?学校へ行く所だったのか?」

「私が何処に行くかなんて、先生には関係ないでしょ?」

「何だ。セリカは学校に向かっているんじゃなかったのか。

しかし、今日は休みではないだろう?良いのか?」

「今日は自由登校日だから、別に学校に行かなくても良いの」

 

そうか、ならば、とルルーシュは言う。

 

「悪かったな。しかし、それならこんな朝から何処へ行く?」

「そんなの教えるわけないでしょ。

…じゃあね、バイバイ。私は忙しいの。

先生はせいぜいのんびりしてれば?」

 

ふん、と鼻を鳴らし、セリカはそのまま砂埃を立てて走り去ってしまうのだった。

 

「ふむ…」

 

ルルーシュはしかし、凡そセリカが向かった場所の検討は付いていた。

アロナにホシノについて調べてもらった傍らで、他のアビドス生の情報も多少は集まった事と、一応は付いているアビドスの出席記録。

そして、彼女達のアビドスに寄せる並々ならぬ思い。

 

それらを勘案し、ルルーシュはセリカがバイトをして、そのお金をアビドスへ入れようとしているのでは、と推察していたのだ。

 

だから、彼女が向かうのは恐らくバイト先だろう、と考えていた。

 

「まあ、どこで働いているかまでは分からんが…ホシノ辺りに一応聞いておくか」

 

ルルーシュはそう独り言ちつつ、アビドス高校へと向かうのだった。

 

──その日のお昼頃。

 

「いらっしゃいませ!柴関ラーメンです!」

 

完璧な営業スマイルを浮かべたセリカの姿が、アビドスのとあるラーメン屋にあった。

 

「何名様です…か…わわっ?!」

 

店に入ってきた人達の姿に、セリカは飛び上がらんばかりの反応を見せる。

 

「あの〜★5人なんですけど〜!」

 

楽しそうなノノミがノリノリな様子で手を挙げる。

その後ろでアヤネが苦笑しつつ、セリカを見た。

 

「あはは…セリカちゃん…お疲れ…」

「お疲れ」

 

シロコも何処か楽しげに、そう被せた。

 

「み、みんな。どうしてここを…?!」

「うへ〜やっぱりここだと思った」

「やあ、セリカ。さっきぶりだな」

「せ、先生まで…。まさかストーキングしてきたの?!」

「まさか。私はバイト先について聞いただけなんだが…」

 

ルルーシュはチラリとホシノを横目で見る。

 

「うへ、先生は悪くないよー。セリカちゃんのバイト先と言えば、やっぱここしかないじゃん?

だから来てみたの」

「ホシノ先輩かっ…!。ううっ…」

 

合点が行ったセリカであったが、ホシノへ先生を連れてきた事に対する怒りをぶつけようにも、それは自分の都合による八つ当たりとなってしまって、出来ない。

それ故に、憤懣やる方ない様子で肩を震わせるのみだった。

 

「アビドスの生徒さんかい?セリカちゃん。お喋りはそれぐらいにして注文受けてくれな」

 

カウンターの奥から大将に言われたセリカは、うう、と不満を呑み込みつつ、5人を先導する。

 

「それでは広い席にご案内します。…こちらヘどうぞ」

 

「先生はこちらへ。私の隣、空いてます!」

「…ん。私の隣も空いてる」

 

ノノミはいたずらっぽく言い、シロコは普段と何ら変わらない表情で当然かのようにそうルルーシュを誘う。

 

「ああ、ありがとう」

 

しかし、ルルーシュは特段考えることはなく近い方であったシロコの隣に腰を落ち着けた。

 

「ふむ…」

「シロコ先輩!狭すぎ!そんなにくっついたら先生が窮屈でしょ!もっとこっち寄って!」

「いや、私は平気。ね、先生?」

「あ、ああ。…問題はない」

 

実際の所、シロコの反対隣であるホシノはかなり広々とした様子であるのに、ルルーシュはかなりスペースが狭い状態であったが、一度座った手前、言葉を濁す。

 

「なんでそこで遠慮するの?!空いてる席沢山あるじゃん!ちゃんと座ってよ!」

「わ、わかった」

 

セリカの剣幕に押され、シロコは少しルルーシュから離れる。

 

懐かれてしまったか?

まあ、アビドスと関わっていく以上、状況的には悪い事ではないが、些か…。

 

シロコの距離の近付け方に困惑しつつ、一先ずスペースの確保出来たことで落ち着く。

 

「セリカちゃん、バイトのユニフォームとっても可愛いです★」

「いやあーセリカちゃんってそっち系か。ユニフォームでバイト先決めちゃうタイプ?」

 

ノノミの言葉にホシノが乗っかり、そうからかう。

 

「ち、ち、違うって!関係ないし!ここは行きつけのお店だったから…」

「ユニフォーム姿のセリカちゃん、写真撮っとけば一儲け出来そうだねー。どう?一枚買わない?先生」

「勘弁してくれ。塀の中には行きたくないぞ」

 

既視感を感じる…。

 

ルルーシュはホシノのノリにミレイを一瞬重ね合わせていた。

 

「バイトはいつから始めたの?」

「い、一週間くらい前から…」

「そうだったんですね★時々姿を消していたのはバイトだったということですか」

「も、もういいでしょ!ご注文は?!」

 

「"ご注文はお決まりですか?でしょー?"セリカちゃーん。お客様には親切に笑顔で接客しなきゃ」

 

セリカは強引に話を打ち切り、注文を取ろうとするが、ホシノに再びからかわれてしまう。

 

「うう…ご注文はお決まりですか?」

「私はチャーシュー麺をお願いします★」

「私は塩」

「えっと…私は味噌で」

「私はね〜、特製味噌ラーメン!炙りチャーシュートッピングで!」

 

ホシノは注文してからルルーシュを見やり、ニヤリと笑う。

 

「先生もじゃんじゃん頼んでねー。この店、めちゃくちゃ美味しいんだよ。アビドス名物柴関ラーメン」

「ところで皆、お金は大丈夫なの?もしかしてまたノノミ先輩に奢ってもらうつもり?」

 

セリカが注文書を見ながら、眉を八の字にして尋ねた。

 

「いやいやーまたご馳走になるわけには行かないよ。きっと先生が奢ってくれるはず。だよね?先生」

 

水を向けられたルルーシュであったが、顔色一つ変えず、頷く。

 

「ああ、構わんよ。この程度、どうということはない」

「わあお。おっとな〜。さすが先生だね」

「からかうならホシノは自腹でも良いんだぞ」

「いや〜冗談だよ〜。ごめんごめん」

 

アハハと皆が笑う中、ノノミがちょいちょいとルルーシュの袖を引っ張り、耳打ちする。

 

「ん?」

「先生、こっそりこれで支払ってください」

 

カードをこっそりと差し出されるが、ルルーシュはフッと笑うだけだった。

 

「おいおい。無理をしているように見えたか?

まさか生徒に支払わせるようなみっともない真似はしないさ」

「…でも…大丈夫なんですか?先生、キヴォトスに来たばかりですよね」

「本当に大丈夫だよ。気遣いありがとう。ノノミ」

 

「あ、ところで先生のご注文は?」

「ん?ああ。…では私も味噌で」

 

暫くの間、セリカが働く様子を皆で見守り、20分ほどして全員分のラーメンが到着した。

 

「わあ、美味しそうです!」

「ふむ…」

 

ラーメンか。そう言えば余り食べたことがなかったな。

スザクと食べたことがあったような、なかったような。

いずれにせよ、エリア11以前の事か。

 

だが、それでもこれは、素人目にも分かる。

匂い、見た目、どれをとっても申し分ない。

 

「名物というだけのことはありそうだな」

「でしょ〜?味も凄いんだよ」

「では頂くとしようか」

 

その後、食事を終えた5人。

ルルーシュは会計を済ませ、セリカへ目を向けた。

 

「邪魔をして悪かったな。しかし、美味かったよ。大将にもよろしく伝えてくれ」

 

他の客の相手をしている大将をチラリと見つつ、ルルーシュはセリカへ微笑を浮かべて見せた。

 

「……ありがとうございました」

 

彼女自身お気に入りでもある店を褒められた嬉しさと、ルルーシュの前で素直に喜びたくはない感情、そして、嫌味の一つでも言おうとしていたのを阻まれ、気勢をそがれたこともあり、微妙な面持ちで、ルルーシュ達を見送る。

 

「いやあーゴチでした、先生」

「ご馳走さまでした」

「お陰様でお腹いっぱい」

「セリカちゃん、また明日ね」

「ううっ…!もう来ないでよね。仕事の邪魔だから!」

「んもう、セリカちゃんってば照れちゃって〜」

「ち!が!う!」

 

ホシノのからかいに気勢を取り戻したセリカは頭から湯気を立ち昇らせんばかりに戻った。

 

「もう!皆大っきらい!!」

「あはは、元気そうで何よりだ〜」

「分かった分かった。悪かったよ。それじゃあ、また明日な」

 

そうして、ルルーシュ達はセリカのバイト先から学校へと戻るのだった。

 

 

──夜。

 

「ふう…。何かいつもの倍疲れた…」

 

セリカはバイトを終え、帰路についていた。

 

「…そういえば、この辺も結構人がいなくなったなあ。前はここまでじゃなかったのに。

治安も悪くなったみたいだし…」

 

─このままじゃ駄目だ。私達が頑張らないと。

…そして、学校を立て直さないと。

 

「とりあえずバイト代を利息の返済に充てて…」

 

そう独り言ちたセリカの進路を妨害する影があった。

 

「!?…何よ、あんたたち」

 

ヘルメットを被っているいかにも不良然とした生徒達。

正体は一目瞭然であった。

 

「黒見セリカ…だな?」

「カタカタヘルメット団?まだこの辺をうろついてたの?

ちょうど良かった。虫の居所が悪かったの。

二度とこの辺りに足を踏み入れられないようにしてやるわ」

 

銃を素早く構えたセリカ。

しかし──。

 

重低音が辺りを包み、セリカは前に、よろけていた。

 

背後にも──。こいつら、最初から私を狙って──。

 

「くっ…!」

 

足に力を込め、どうにか踏みとどまる。 

だが──。

 

「捕らえろ」

 

リーダー格の命令に遅れることほんの数秒。

銃声とは比較にならない轟音が轟いて、辺りを土煙で包んだ。

 

た、対空砲…?違う…。この爆発音はFlak41改…?

火力支援…何処から…?ち、違う…?まさか…。

いしきが…こいつら…ヤバ…い…。

 

セリカの意識は、そこで途絶えた。

 

 





今回も読んで頂きありがとうございます。
次回更新日は変わらず未定ですが、出来るだけ早く上げられるよう頑張ります。

これ程多くの方に読んでいただけるとは思っていなかったので大変嬉しいです。

また、次回もよろしくお願い致します。
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