Liella!の五人がラブライブの地区大会説明会から帰って来た。
「お帰り。どうだった?」
「まさかジャンケンじゃねーよな?」
エイジと
類をみない最大規模と言われる今大会。
地区予選前からふるい落としがあるのでは、と予想されていたが、果たして。
「ラップだって」
「「ラップ?」」
かのんの言葉を二人して反すうした。
ふるい落としと言うより課題が出た。
結ヶ丘が属するグループでは曲の中にラップを取り入れること。なければ即失格らしい。
なので早速、五人はラップに挑戦する。リズムにのって、韻を踏んで。
「私の名前は
かのんは断念。
「昔ダンス教室とかでやってたけど、踊り出しちゃうとそっちに集中しちゃうんだよね」
はラップを早々に切り上げ、ダンスにのめり込んでしまう。断念。
「千砂都さんには、やはりダンスで差を付けて欲しいので、他の方のほうがよろしいのでは。……私ですか!?」
唯一即興ラップ自己紹介を成功させたのはすみれだった。
可可が苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「ショウビジネスで場数は踏んできてるの。アドリブだったら任せなさい」
ビシっとポーズを決めるすみれ。
これは、もしや。
「かのんちゃん、提案があるんだけど」
「うんエイジくん。私達多分同じ事考えてる」
かのんと顔を見合わせ、頷き合う。
「「すみれちゃん」」
「?何よ?」
「「センターやってみない?」」
「へ?」
すみれはポカンとしていた。
そして練習。すみれを中心としたポジションへセット。
当の彼女は左右に顔を向けては、目をパチパチさせている。
「つ、つかぬ事をお聞きしますがここは……?」
すみれが地面を両手で指さす。
「センターだよ」
「センター!?」
かのんの答えに驚愕するすみれ。
「やはり可可は反対デス。こんな人がセンターだなんて……」
全員の視線が可可に向く。その内にすみれは出入り口の方へ移動した。
「すみれちゃんだって立派なLiella!の一員だよ。それにセンターを任せられるだけの力はあると思うな」
かのんが言う。
その間にもすみれは、出入り口の方へ近づいていく。
「おっと、どこに行くんだ
「え?いや?その〜……」
そのすみれの前に章が立ち塞がる。
残念ながら出入り口は我ら応援部が押さえている。
「センターにするって依頼だったもんね。叶える時だよ」
「あはは……」
せっかく時は来たれりなのに、すみれは苦笑いである。
やはりまだ自信を持てていないのだろうか。
そんなやり取りの間に、三人に説得されたであろう可可がカツカツと歩みよってきた。
「やるからには真剣にやってくだサイ!でないと許しまセンよ!」
「わ、分かってるわよ!」
そしてすみれをセンターに据えての練習が始まる。
意識し過ぎているのだろうか。彼女の動きは少し硬かった。
そして練習おわりに。
「私、もうちょっと残るから」
「大丈夫だよ。俺達が付いてるから、みんなは帰って」
四人と別れ、すみれの練習を見守る。
「別にあんた達も帰っていいわよ」
「無理しないよう見張ってんだよ。気にするな」
章が言った。
自覚があるかどうかわからないが、すみれは端からみれば気負っているのがよくわかる。
しっかり見張っておかなければ。
___て言ってるのに、夜まで練習しちゃうんだもんね」
「ぶつぶつ、文句いわない。サポーター、でしょ!」
すみれは現在、自宅の神社でスクワット百回を目指し奮闘していた。
エイジが居る事については飲み込んでくれたようである。
やはり百回はやり過ぎな気がする。止めようとしたのだが聞いてくれない。
「と言うか、章は、どこ、いったのよ」
「今日はパトロールだよ。ごめんね俺で。章のほうが良かったよね」
「はあ?なんでよ」
すみれは本当に百回やりきり、一息ついた。
「二人は仲良いでしょ?」
「冗談よして。あの人を小馬鹿にした態度、腹立たしいったらないわ」
「……これがツンデレ?」
「誰がツンデレよ!誰が!」
すみれは今度は体幹トレーニングに移った。
エイジも真似をし、同じポーズを取る。
「あんたこそどうなのよ千砂都とは」
「ちぃちゃん?仲良しだと思うけど……?」
「はあ〜」
ため息をつかれた。また何かやらかしただろうか。
「別に何も。いつも通りよあんたは。そして千砂都に同情するわ」
「えー」
やっぱり何かやってしまったのだろうか。一応あれ以降、話はちゃんと通しているつもりだが。
そこでふと視線を感じた。
その方向を見ると影がさっと隠れた。
目を凝らすと、そこに居たのは可可である。わざわざ様子を見に来たのだろうか。
声をかけようかとも考えたが、本人が隠れたということは、見つかりたくないのだろう。
すみれは今度はランニングに出かけるようだ。それにも付いていく。
「……ねえ。エイジは私がセンターでいいの?」
「まだ不安?」
「だって、一度もスポットライトなんて浴びた事ないのに、いきなりだなんて」
「最初は誰だってそうだよ」
並走しながら。
彼女は不安げだった。
そして一呼吸置く。
「センターがすみれちゃんでいいなんて思ってないよ」
「……え?……そうよ___
「すみれちゃんが、いいんだよ。そんな消極的な姿勢じゃ、可可ちゃんに怒られるよ。やる気はあるのデスか!って」
すみれに笑いかける。
「いつもみたいに勝ち気でいてよ。ショウビジネスの世界で生きて来たんだから!ってさ」
「ふ、愚問だったわね。忘れて」
「了解」
チラリと後ろを見る。可可はまだ付いてきているようだった。
「何のつもりかしらね」
「気付いてたんだ」
「流石に下手でしょ。あれは」
可可の尾行?には気付いていたらしい。
「きっとすみれちゃんが心配なんだよ。今日ちょっと動き硬かったし」
「監視でしょ。私が真面目にやってるかどうか」
「そんな事言って、悪いと思ってるんじゃないの?スクールアイドルをアマチュア呼ばわりしたこと」
「あ、アマチュアはアマチュアじゃない」
すみれはぷいと顔を背けた。
エイジには、すみれが謝るタイミングを探しているように思えた。
ああだこうだ言っている内に、公園まで到着した。
「そんなことはどうでもいいから、発声練習やるわよ」
「はーい」
エイジの元々の役割であるストッパーは果たせそうに無かった。
スクールアイドルのやるべきことは練習だけではない。曲作りにさらに衣装作りもある。
今日は可可を中心とした衣装作りの手伝いだ。千砂都と恋も居る。
章は曲作りチームに合流している。
ただ男子なので出来る事は多くない。何せスリーサイズに合わせなくてはならないのだから。
なのでそこに関わらないものを作る。
はずなのだが
「私は別にいいよ。スリーサイズ測ってくれて」
びっくり横転。千砂都がそんな事を言った。
エイジは倒れた体をなんとか立て直す。
「ちぃちゃん」
「なに?」
「確かに俺達は仲が良いです。でも節度というものがあります。わかりますね?」
「はーい」
「生返事しないの!」
こっちは真面目な話をしているというのに、打てども全く響ている感じがしない。
「可可ちゃんからも言ったげて」
「愛、デスネ!」
可可は手を止めずに即答した。
「……そうだねー、愛かもねー」
愛と言うより信頼だろうが、よくない方向に傾いている。
「恋ちゃんからも言ったげて!」
「いえ、その、お二人の関係に私が口を挟むのは……」
「?」
恋は頬を染めて、もじもじとしている。
「だって、二人はお付き合いしているのでしょう?」
びっくり横転、二回目。
そんな風に思っていたのか。
再び体勢を立て直す。
「「違うよ?」」
千砂都と言葉が被る。中々どうしてそんな勘違いが生まれたのか。
「そうなのですか!?私はてっきり……だとしたら生徒会長として風紀を正さねばなりませんね」
「そうそう恋ちゃん。言ったげて」
「エイジさん!」
「え、俺?」
恋の矛先はまさかのエイジだった。
「女性のスリーサイズを測るなんて、破廉恥ですよ!」
「だから測ってないって!断ってるんだって!」
「出来まシタ!」
恋の口撃をなんとか凌いでいると、可可が声を上げた。
主役の衣装が仕上がったのだ。
曲作りチームを呼んで、今回の主役ことすみれに衣装を見て貰う。
「オーラのないあなたでもセンターで戦えるよう、他の人とは少し作りを変えてありマス」
出来上がった時はあんなに嬉しそうだったのに、すみれが来ると不機嫌そうなポーズを取る可可。
「素直じゃないなぁ」
「何が?」
「何でもないよ」
千砂都に問われるがはぐらかした。
「それじゃあ早速着てみてよ」
かのんがすみれを急かす。
屋上で待っていると、着替えたすみれが現れた。
「お姫様みたい!」
「似合ってるよ!」
エイジとかのんが言う。
フワリとしたプリンセス風の衣装がすみれの雰囲気によく馴染んでいた。
すみれは嬉しいのか緊張しているのか、複雑な表情をしていた。
「じゃあ着たまま踊ってみる動画、撮ってみよう?」
提案するかのん。
「そんな事してどうするのよ?」
「他の生徒にも見てもらうんだとよ」
すみれの質問には章が答えた。
そして彼女をセンターに据えた動画撮影が始まる。
動画をアップした翌日。
「エイジくん、章くん。ちょっといい?」
隣のクラスから千砂都が来て声をかけられた。かのんも一緒である。
小池のベンチに座り、千砂都のスマホを見せて貰う。
「動画の反響?」
「うん。センターの件、かのんちゃんや恋ちゃんがいいんじゃないかって」
エイジの疑問に千砂都が答える。
センターは別の人がいいのではないかと言うコメントが多かったそうだ。
「それは私は恋ちゃんがやったから、何となくそう思うだけで、すみれちゃんだってやってみればきっとみんな納得するよ」
かのんが言った。
「二人はどう思う?」
千砂都が応援部の二人に振った。
「俺は___
「そんなの、決まってるわ」
エイジが意見を述べようとすると、後ろからすみれが言った。
いつからそこに?
「この学校のスクールアイドルなんだから、みんなの意見に従うのは当然じゃない」
すみれは背後から池の縁へと歩いていく。表情は見えない。
「そもそもおかしいと思ってたのよ。こんな素人の大会で、ショウビジネスの世界を歩いてきた私がセンターだなんて」
彼女は振り返った。何でもないような顔をしている。
「私の出番は、決勝まで取っておくわ」
それだけ言って走り去ろうとする。
「俺は変えない方がいいと思う!」
その背中にエイジは叫んだ。
すみれは足を止めた。
「みんなの意見と部としての主体性は別で考えるべきだよ」
「だな。人の意見ばっかりに左右されてたら、足元も覚束ない宙ぶらりんになるのが目に見えてる」
エイジの意見に章は賛成してくれた。
「もう一度言うよ。今回はすみれちゃんがいい」
「そんな事言ったって……」
すみれは階段を駈け上がる。その前に可可が立ち塞がった。
「なに逃げようとしてるのデスか!」
「え……?」
「衣装まで作ったのデスヨ!一度決めたのなら、誰が何と言おうと最後までやり抜くべきデス!」
「無理なのよ……」
すみれは俯き、両手の拳を強く握りしめた。
「いつもそうよ。どうせ最後には、私じゃ無くなるんだから!」
可可を避け、すみれは駆けて行った。
「すみれちゃん、来ないね」
かのんが呟いた。練習の時間になっても、彼女は屋上には現れない。
「やはりセンターの件をはっきりすべきでしょうね」
「恋ちゃんはどう思う?」
「難しい問題です。すみれさんは歌もダンスも高い水準にあります。ただ、一番かと言われると……」
かのんと恋がやり取りする。
「歌はかのんちゃん」
千砂都が言う。
「ダンスはちぃちゃん。優雅さでは恋ちゃん。華やかさでは可可ちゃんが一番かな」
かのんが続いた。
「だからでしょうね。今まで希望が叶わなかったのは」
恋が言った。
確かにすみれの能力は平均して高い。だが突出している部分も無い。
「よく言えば万能型。悪く言えば器用貧乏か」
章が言った。
そこで可可に電話が掛かってくる。
「ちょっと失礼シマスね」
彼女は扉の向こうに行った。
「でもまだだよ。今回の動画だって、緊張で十全の力を発揮できてない。すみれちゃんの本気はもっと凄いはずだよ」
「私もそう思う」
エイジとかのんの意見が合致する。
「でも、どうするの?本人があれだけ否定してたら」
「説得するよ。やっぱりすみれちゃんがいいって」
千砂都の心配にエイジが答えた。
すみれだって、本心ではセンターをやりたいはずなのだ。こんな形で終わっていいわけがない。
「すみまセン。お待たせしまシタ」
可可が帰って来た。
心なしか、浮かない顔をしているような。
「何かあった?」
「いいえ、何も。ただあの腰抜けグソクムシには失望しまシタ」
エイジの言葉にそう返した可可。
「じゃあそれだけ買ってたんだね。センターで胸を張って踊って貰えるくらいには」
「言葉の綾デス」
ぷいっと横を向かれてしまった。
そこにすみれが登場した。
「すみれちゃん!」
「ようやく来まシタね。センターがそんな事でどうするのデスか」
「センター……?」
かのんと可可が声を掛ける。すみれの表情は動かない。
「今話し合ってたところなんだけど、私達、やっぱりすみれちゃんにセンターやって欲しいんだ」
「……どうして?」
かのんのお願いに疑問を返すすみれ。
「私が可哀想だから?頑張ってるのに報われないから?そんな同情でセンター譲って貰っても嬉しくない!」
俯いたまま、叫ぶように言う。
「それでもセンターやれって言うなら私、スクールアイドル辞める」
すみれの覚悟に困惑する一同。
「勘違いしてるよすみれちゃん」
エイジはゆっくり諭すように声を調整する。
「同情や忖度でなれるほどLiella!のセンターは甘くない。分かってるでしょ?すみれちゃんが選ばれたのは、戦略的に意味がある。何度でも言うよ。センターはすみれちゃんがいい」
「勝たなきゃいけないんでしょ!」
「……?」
すみれが涙を流して見据えた先は、エイジでは無く可可だった。
「あんた……勝たなきゃいけないんでしょ……」
「……まさか」
可可が呟いた。
そしてすみれは走り去る。
全員がその後を追おうとした。だが。
「可可に任せて、みなさんは待っていてくだサイ!」
そう言って彼女は飛び出した。
「どうするかのんちゃん?」
エイジはかのんに聞いた。
すぐにでも追いかけたいのは山々だが、可可には考えがあるようだった。
今行けばそれを邪魔してしまうかもしれない。
「……やっぱり追いかけよう」
かのんの決断に賛成する。結局は皆で考えねばならない問題だ。
可可に追いつくと、すみれと対峙していた。
「その練習を見て、その歌声を聞いて、センターに相応しいと思ったから、衣装を作ったのデス」
可可はその手にティアラを持ち、差し出す。
「受け取りなサイ。可可が想いの全てを込めて作った、センターのあなたの為に作ったのデス」
可可の作戦が功を奏したのか、すみれはこちらへ歩み寄ろうとした。
そのとき一陣の風が吹いた。
見た目より軽い素材で出来ているのだろう。ティアラは風に飛ばされ、宙を舞う。
「待て!」
すみれが叫んだ。
ティアラを全員で追いかける。それはもう落ちてきそうだった。
そしてすみれが跳び上がり、ティアラに手を伸ばす。
届いた。だがそちらは芝生とはいえ坂だ。このままでは彼女は落ちていってしまう。
いや、心配ない。何故なら。
「うう、うん?」
衝撃が来ないことを不思議に思ったのだろう。目を瞑っていたすみれは瞼をあけた。
章が彼女をお姫様抱っこしていた。
「怪我でもしたらどうすんだ。全く」
章が呟く。
跳び上がったすみれの、更にその下に飛び込んでいたのだ。
ティアラも無事だ。
「すみれ!」
「!……初めて名前で呼んだわね」
「そんな事はどうでもいいデス。Liella!のセンターとして恥ずかしくないステージにして下さい」
可可は笑った。
章はすみれを優しく降ろした。
「ふ、私を誰だと思ってるの?任せなさい」
すみれもいつものように笑った。
「ギャラクシー!」
◀挿入歌 ノンフィクション!!▶
地区大会のライブ当日。
アラートが鳴り、オーズとバースは現場に急行していた。
そこでは男性が一人倒れており、その近くで暴れまわる怪人の姿があった。
『ラフレシアデッドマンと断定。幻覚作用をもつ異臭を放ちます。注意してください』
「「異臭かぁ……」」
怪人の中には稀に異臭を放つタイプが存在する。
有機物系の怪人と言うだけで人間とは違う臭気を放つのに、この手の輩は本当に、本当に鼻が曲がるような悪臭がするのだ。
オーズもバースも経験済みだった。
少しげんなりしつつも、ラフレシアデッドマンと向き合う。
「お前はあっちで倒れてる
「一人で大丈夫?」
「遠距離攻撃の手段、あるか?」
「ごめん、お願い」
バースバスターによる射撃は的確に敵に命中。
その間に倒れている男性を救助に向かう。が、突然その人がゾンビのように立ち上がった。
異変を察知し、立ち止まる。手にはガイアメモリが握られていた。
タカアイで全身を隈無く観察する。見つけた。首筋に大きめのハエのような虫が止まっている。
『コックローチ』
男性はガイアメモリを虫に突き刺し、ゴキブリのような怪人へと変貌した。
「コネクタの代わりになるのか!」
敵は素早い動きで襲いかかってきた。右腕の大振りだか避けられなかった。
クロックアップほどとは言わないが、相当なスピードだ。
足に相当するコアメダルを交換、そしてオースキャナーでスキャン。
『タカ、トラ、チーター』
チーターレッグの速度で対抗する。高速で走りながら、すれ違いざまにトラナックルで殴る。
クリーンヒットしたようで、敵を吹き飛ばした。
速度ではこちらが上回っているようだ。
『敵はコックローチドーパント。可能なら捕縛して』
「志摩さん」
『司令官と呼びなさい。それが不可能でも、虫のサンプルが欲しいわ。なんとか捕獲できる?』
「やってみます!」
虫の位置は先ほどと変わっていないが、一部以外は皮膚の下に埋没しているようだった。何とか引き剥がさなければ。
トラクローを展開、コックローチドーパントに連続斬撃を仕掛ける。
敵がへたり込んだところで、首筋の虫を摘みにかかる。
しかし相当硬いようで、トラアームの握力では千切れない。
もたついている内にキックを喰らい、引き剥がされてしまった。
位置はわかったのだ。ならもう鷹の目も必要ない。
全てのメダルを交換。そしてオースキャナーでスキャン。
『サイ、ゴリラ、ゾウ、サゴーゾ、サゴーゾ!』
「うおおおお!!」
サゴーゾコンボへと変身。これでもう敵の速度には追いつけない。だが。
コックローチドーパントは高速移動しながら、何度も攻撃を浴びせて来る。だがそのどれも大したダメージにならない。
これでもう敵の攻撃は通用しない。
狙うはカウンター。攻撃してきた腕をそのまま掴み、地面へと叩きつける。
更にゾウレッグによるスタンプ、踏みつけを決める。
敵が動かなくなったところで再び首筋へと手を伸ばす。ゴリラアームの握力なら労せず虫を引き剥がせた。
この虫が変身も媒介していたようで、メモリは吐き出され、人の姿へと戻った。
バースも敵を倒したようだ。こちらへ向かってくる。
「ギリギリの戦いだったぜ……」
「そっか。お疲れ」
「で、その右手の中に例の虫が?」
「そう。離さないようにしないと」
一連の事件の重要なピースだ。ここでナイトローグが襲ってきても、絶対に離してはいけない。
だがそんな気合いも杞憂に終わった。今回あの蝙蝠男は現れず、サンプルは無事回収出来た。
「ワン、ツー、スリー、フォー、ファイブ、シックス、セブン、エイト」
テンポを取りながら五人のダンス練習を見るエイジ。
まだ地区大会の結果は出ていない中、皆不安半分期待半分と言った雰囲気だ。
そして小休止。
「可可ちゃんちょっと遅れてるよ」
「しっかりしなさいよ可可」
エイジが指摘すると、それに乗っかりすみれが叱咤する。
「平安名はまた硬いぞ。緊張してんのか?」
「すみれこそ言われているではないデスか!」
一緒に見ていた章が発言、お返しとばかりに可可も言い返す。
ムムム、といがみ合うすみれと可可。
「……なんか二人とも、前より仲良くなったね!」
「はあ!?」
「ハイ!?」
直感的に思った事を言うと、両者から睨まれた。
口は災いの元だった。
「ふふ」
「かのんちゃん?どうしたの?」
笑うかのんに千砂都は問いかけた。
「こんな風に私達もみんなも、結ばれていくといいよね」
「うん!」
「そうですね」
かのんの意見に千砂都と恋が賛同する。
「別に結ばれてないわよ!」
「別に結ばれてまセン!」
二人の声が、秋の空に高く響いた。