応援よろしく!   作:冷奴with紅しょうが

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蝿の王 後編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

警察官、

氷室真(ひむろまこと)G3-X(ジースリーエックス)を装備し、専用バイクガードチェイサーに乗って街の巡回に当たっていた。

その最中、鳴り響く怪人警報。

この渋滞だ。バイクから降りるのが賢明だろう。

ガトリング式機銃、ケルベロスを携帯し現場へ向かう。

そこでは一体の怪人が暴れていた。

既に避難は済んでいる。迷わずケルベロスを掃射。怪人は爆散した。

だがおかしい。怪人警報が鳴りやまない。

そして人の波がG3-Xを呑み込む。

 

「お、落ち着いてください!怪人は討伐しました!」

 

呼びかけ虚しく、人々はパニックに陥ったままだ。

人混みの後ろには、また怪人の姿があった。避難が完了していない以上、飛び道具は使えない。ケルベロスを置き、接近戦を挑む。

怪人はそこまでの戦闘力では無かった。高く見積ってメ級かどうかといった程度だ。

打撃を数発叩き込み、電磁コンバットナイフ、ユニコーンを突き刺してトドメ。

怪人は撃破された。

 

「ふうっ……」

 

快勝とは言え、流石に連戦は堪える。

一息つきかけたG3-Xを再び人の波が襲う。その背にはやはり怪人がいた。

何かがおかしい。その感覚を抱きながら、ケルベロスを拾い、突撃する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

応援要請を受け、神津島からパワーダイザーを使い本土へと渡ってきた仮面ライダー剣斬(けんざん)

会敵しているライオトルーパー部隊の支援に降り立った。

 

「剣斬、見参!なんつって」

 

味方の銃撃を避けつつ、二刀流で剣撃を見舞う。

怪人が倒れた。ここで畳み掛ける。

 

翠風(はやて)速読撃(そくどくげき)!』

 

必殺の十文字斬りが炸裂。怪人は爆散した。

だが息つく暇はない。

 

「おいおい」

 

すぐに二体の怪人が現れた。内一体の手にはロックシードが握られている。解錠すると、更に一体怪人が出現する。

計三体。

 

「本土はどうなってんだよ……」

 

さっきまで怪人だった市民も保護しながら戦わなければならない。その上にこの数。明らかな異常事態だ。

それでも、だからこそ戦わなければ。

風を切って、敵へと向かって行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそ!」

 

ベルゼブブは既に地上だろう。今頃は東京中がパニックに陥っているはずだ。

 

「さて、どうするかなヒーロー君。もうじき到着するお仲間と私達を完全に包囲するか、すぐにでも街の混乱を収めに行くか」

 

デュークが嗤う。

完全に相手のペースだ。だがオーズである以上、決断しなければならない。そして、それはもう決まっている。

頭部と胸に相当するメダルを交換。オースキャナーでスキャン。

 

『クワガタ、カマキリ、バッタ!ガ〜タガタガタキリバ、ガタキリバ!』

 

ガタキリバコンボへ変身。

街を救いに行く。一番避けなければいけないのは、一般人への被害だ。

 

『ブレストキャノン』

 

バースもそれを察してくれたのだろう。

ブレストキャノンを展開、ブレストキャノンシュートで天井を撃ち抜く。地上までのルートを作ってくれた。

デュークとナイトローグはもう居ない。敵の掌の上だとしても、やらなければならない事だ。

穴から地上へと飛び出し、ガタキリバの分身、ブレンチシェイドで増え続ける。上限、五十体まで。

 

「ここからは単独行動で行こう」

 

「反動には気を付けろよ!」

 

バースと別れる。

スマートスタッグフォンで敵の位置情報を確認。すぐさま散り散りになって街中へと跳んでいく。

問題は怪人一体に対して複数でかかるのか、それとも一人一体の対応を取るのか。

最初の戦場が見えた。ライドプレイヤーが三人、怪人が二体だ。

オーズは後者を選ぶ。分身一人に付き怪人一体、そして現場現場のライダーには他を当たってもらう。

ライドプレイヤーと怪人の間に割り込んだ。

 

「ここは俺に任せて、皆さんは他隊員と合流してください!」

 

「は、はい!」

 

ライドプレイヤーや黒影トルーパー等の、所謂量産型ライダーは正規の適合者と比べると戦闘力が低い。

味方の数を保持したまま敵の数を減らすには、合流して数の優位を得るのが得策だろう。

 

現場を見つけては味方を保護し、怪人と相対する。それを繰り返した。

だが三十を超えた辺りから、グラグラと頭痛がし始めた。

オーズも分身五十体を、しかもフルスペックで使うのは初めての事だった。想定以上の負荷だ。しかしその程度で止まる訳にはいかない。首都の存亡が懸かっている。

何も一人で事態の収束を図らなくてもいい、各県や自衛隊の応援が到着するまでのつなぎが出来ればいいのだ。

 

そして五十体全員が戦闘に入った。分身の連携を可能にするクワガタホーンを介したネットワーク。そこから来るダメージや疲労のフィードバックは凄まじかった。

だがもう大丈夫。複数の戦場で、ヘリからミサイル、ギガントによる爆撃支援が届いた。

 

自衛隊、G4(ジーフォー)マイルド達が到着した。更に装着者でない、一般の隊員達が怪人に変身させられていた市民を保護してくれる。

これで断然戦い易くなるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

連戦に次ぐ連戦。G3-Xは疲労困憊だった。

それでも怪人は待ってくれない。

再びケルベロスを構え、トリガーを引く。バババッと音立て速射したのは最初だけ。ガトリングの回転はゆっくり止まった。

 

「弾切……」

 

もう予備弾薬も残っていない。この火力を失うのは痛手だ。

ケルベロスを投げ捨て、近接戦闘を挑む。そのとき。

バイクが敵を轢き飛ばした。

救援だ。

 

「ありがとうございます!ええと……」

 

「仮面ライダー響鬼(ひびき)。埼玉からだ。よろしく!」

 

隈取りのような模様に鬼を思わせる角。全身のマジョーラカラーが特徴的なライダーはそう名乗った。

 

 

 

 

 

剣斬は追い詰められていた。

敵に数の有利があるのもそうだが、やはり変身させられていた市民を守りながら、というのが厳しい。

常に盾なって戦わねばならず、得意の機動力を生かせない。

そこに空から機銃の支援が届く。

黒いバイクと赤い戦闘機を半分ずつくっつけたようなマシンが宙に浮いていた。その乗り手、漆黒のライダーは敵の真ん中へと飛び込む。

肉弾戦で敵三体を怯ませ、後退させた。かなりの手練れだ。

 

「助かったよ!あんた名前は?」

 

「仮面ライダージョーカー。沼津の探偵さ」

 

探偵の意味はよく分からないが(副業だろうか?)とにかく、これで攻めに転じられる。

 

 

 

 

 

これで戦況はこちらに傾いたと確信するオーズ。だが。

突如地面が振動する。百メートルはあろうかと言う巨大な樹の怪物が出現した。大量の実を振り落としながらゆっくりと侵攻する。

 

『ジャングルマルガムとジャマトの多重怪人です!あの実一つ一つが怪人になります!早急に対処を!』

 

「そうは言っても!」

 

今東京で、それだけの余裕を持っているライダーは居ないだろう。ならば自分が行くしかない。

一番近い位置にいたガタキリバが跳びこんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結ヶ丘は地域の避難所として開放されていた。

生徒や近隣の住民達でごった返している。皆スマホやラジオを真剣に見聞きしている。

今回の怪人犯罪は大規模テロとして報道され、今も中継が続いている。

かのんもスマホを注視する一人だった。特に先ほどから何度も、何人も映っている緑色のオーズ、エイジで間違い無いだろう。

 

「かのんちゃん!」

 

「ちぃちゃん!」

 

人混みの中で千砂都(ちさと)と合流できた。

 

「みんなを集めよう。話したい事があるんだ」

 

「!うん!」

 

そして可可(クゥクゥ)、すみれ、(れん)とも合流できた。

かのんはゆっくりと語った。

 

「みんな戦ってる。エイジくんも(あきら)くんも。だから私達も出来る事をしようと思うんだ」

 

「心意気は立派だけど、具体的にどうするの?」

 

すみれが聞いた。

 

「前にエイジくんが言ってたよね。応援が本当に力になるって」

 

「BOARDの応援要請ですね?」

 

恋の言葉にかのんは頷いた。

 

「でも撮影機材とかが、これだけの人混みだと置けないよ?」

 

「それは多分大丈夫だと思う。確か……」

 

千砂都の意見を聞きつつ、かのんはスマホを操作し、応援要請のメールの承諾ボタンをタップした。

すると一台のバットショットが飛んで来た。

 

「この子が撮影してくれるんだって。可可ちゃん衣装は?」

 

「部室にありマス!」

 

五人は頷き合い、急いで部室へと向かった。着替えて再び体育館へと戻ってくる。人混みをかき分けながらなんとか舞台袖までやって来れた。

 

「戦ってる人達と見守ってる人達を繋げよう!」

 

「うん!」

「ええ!」

「ハイ!」

「はい!」

 

Liella!は何の飾りもない体育館の壇上へと、踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガタキリバソードで切り裂くと、ポーンジャマトは消滅した。

ジャマトジャングルマルガムが生み出せる怪人は、ズ級にも満たない取り巻き怪人だけらしい。ようは雑魚だ。

だがこの数。ポーンジャマトが視界を埋め尽くしていた。

巨大な本丸までは到底届かない。

オーズは膝を付いた。ガタキリバの維持も限界が近づいている。

敵は当然その隙を見逃さない。

ナイフの大振りは、しかし届かなかった。

誰かの援護射撃だ。

 

「来てると思ったぜ。無茶しやがって」

 

バースである。

しかし状況はあまり変わらない。このままではジャマトジャングルマルガムはおろか、雑魚怪人にやられてしまう。

 

 

 

 

 

 

◀挿入歌 Starlight Prologue▶

 

 

 

 

通信越しに歌が聴こえた。聞き覚えのある歌が。

 

「みんな……」

 

「行くぞオーズ、俺達には勝利の女神がついてる!」

 

「うん!」

 

さっきまで限界を感じていたのに、力が漲ってくる。

バースの攻撃で隙を作ってもらう。

全てのメダルの交換し、オースキャナーでスキャン。

 

『タカ、クジャク、コンドル!タ〜ジャ〜ドル〜!』

 

変身と同時に炎と熱風が周囲の敵を吹き飛ばした。

赤い鳥獣系コンボ、タジャドル。その力は亜音速飛行を可能にする。

六枚の翼を生成、飛翔。さらに背中に孔雀の光翼、クジャクフェザーを展開、多数のエネルギー弾として地表の敵軍へと撃ち出す。これを三度繰り返した。

ポーンジャマトの半数を消滅させられた。だがこれだけでは不十分だ。

ジャマトジャングルマルガムを倒さなければ、尖兵は無限に増えつづける。

左腕に円盤型のエネルギー開放機、タジャスピナーを装備。巨大な敵の周囲を旋回しながら、鬱蒼とした枝と実に火炎弾を炸裂させ燃やす。これでもうポーンジャマトは生み出させない。

バースも全武装装備形態、バース・デイとなり暴れ回っている。

これで雑魚怪人は殲滅できるだろう。

敵は無数の蔦を放出してきた。そんなものタジャドルの機動力の前には無意味だ。難なく躱す。

タジャスピナー内部のセルメダルをタカ、クジャク、コンドルのメダルに交換。オースキャナーでスキャン。

 

『ギガスキャン!』

 

タジャスピナーを中心に炎を纏った強襲、マグナブレイズ。

星のような爆発を起こし、ジャマトジャングルマルガムは大きく怯んだ。さらに最大出力であろうブレストキャノンシュートが直撃。

仕上げだ。

 

『スキャニングチャージ!』

 

天高く舞い上がり、急降下。

コンドルレッグが猛禽類の爪のように変形、燃え盛りながら敵目掛けて両足蹴りを叩き込む。プロミネンスドロップ。

巨大な幹を突き破り貫通。怪物は爆散した。

 

「ふう……」

 

これで皆、それぞれの持ち場に集中できるだろう。あとはまたガタキリバに戻って。

そこまでだった。オーズは倒れ伏してしまう。

 

「おい!」

 

バースが駆け付けてくれた。

応援があったとは言え、コンボの二重使用の反動は大きかった。その上今も四十九体の分身は戦っている。

 

「変身を解け」

 

「でも」

 

「もう救援は間にあってる。数的にも負けてないはずだ。それに分身達が倒れる方がお荷物だぞ。あとは任せろ」

 

バースの言う事はもっともだった。分身の維持とその体力も限界。変身を解く。

五十人分の疲労が一気に襲いかかって来る。エイジは意識を保てなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エイジが最初に見たのは、知らない天井だった。

いや、思い出して来た。知っている。病院だここは。その個室だ。自分は巨大な標的を倒して、その後気を失ってしまったのだ。

あの後どうなった?テロは終息したのか?章は?皆は?

疑問が頭を駆け巡る。

ふと机の上を見ると、花瓶に花が生けられていた。誰かがお見舞いに来てくれたらしい。それくらいには東京は落ち着いたと見ていいだろう。

ガラガラ、と扉が開いた。

 

「!エイジくん!?」

 

そちらを見るとかのんが立っていた。

 

「無事!?お店とかは大丈夫だった!?」

 

「こっちの台詞だよそれは……。本当に自分の事は気にしないんだから」

 

彼女はほっとしたように笑った。

 

「ほら、だから言ったでしょちぃちゃん。心配ないって」

 

かのんは自分の後ろにいた千砂都に語りかけた。

言葉をかけられた本人は唖然としているようだった。するとポロポロと涙を零し始めた。

 

「「ち、ちちちぃちゃん!?」」

 

「ご、ごめん安心しちゃって……。エイジくん、一週間も寝てたから、もしかしたらもう目を覚まさないんじゃないかって、ちょっと、弱気になっちゃって」

 

涙を拭いながら千砂都は言った。そんな彼女をかのんは優しく抱き締めた。

一週間。もうそんなに経ってしまったのか。今気づいたが、身体のあちこちに管が繋がれている。その間の栄養摂取等の為だろう。

 

「章くんも言ってたじゃない。疲れて眠ってるだけだって。」

 

「……うん、そうだったね」

 

千砂都の涙は治まった。そして二人にこの一週間の様子を聞く。

 

「ニュースだと、テロは無事鎮圧出来たって。エイジくん、またお手柄だったみたいだね。テレビに映ってたよ」

 

「途中で倒れちゃったけどね……」

 

かのんが嬉しそうに話してくれた。

怪我人は多いが、死者は出ていないとのことだ。

 

「ほんとに良かった。二人もありがとうね。みんなの応援、身に沁みたよ」

 

「いや〜、役に立てたならいいんだけど……」

 

「だけど?」

 

かのんは何故か苦笑いであった。

 

「あの後ね、TVの取材が来て、可可ちゃんなんかは『Liella!も遂にテレビデビューデス!』って喜んでたんだけど」

 

「なるほど」

 

千砂都が教えてくれた。

かのんは動画撮影やインタビューとなると、逃げたり他のメンバーに投げたりする。それくらいには苦手にしている。その辺りが苦労だったのだろう。

 

「まさかあんなに注目されるなんて……」

 

「大変だったね。でもLiella!も全国区デビューだ」

 

「そうなんだけど、やっぱり私には向いてないよ、ああいうの」

 

かのんはげんなりした様子でそう呟いた。

やはり受け答えはリーダーに集中したらしい。

 

「リーダー?誰が?私が?」

 

「かのんちゃん以外に誰がいるの……」

 

エイジの台詞にかのんはキョトンとしていた。

千砂都とやれやれといった具合のジェスチャーをする。

 

「と、ところでもう身体は大丈夫なの?」

 

かのんによるやや強引な話題の転換だった

 

「どこかしこも痛いけど大丈夫!」

 

「「大丈夫の定義……」」

 

今度はエイジが二人に呆れられた。

 

「え、待って。エイジくんいつ目が覚めたの?」

 

千砂都が聞いた。

 

「ついさっき」

 

「それを早く言ってよ!看護師さん呼んで来る!」

 

かのんが慌てたように言った。

二人はパタパタと忙しなく出て行った。

 

一通りの診察が終わり、それを見届けると二人は帰って行った。トントン、と扉をノックする音。静かになった病室に、再び来客だ。

 

「どうぞ〜」

 

「よう」

 

入って来たのは章だった。

 

「ごめんね。後始末押しつけちゃって」

 

「気にすんな。お前の仕事はちゃんと果たしただろ」

 

彼は周囲を少し見回したあと、スッと椅子に座った。

 

「嵐に感謝しろよ。毎日来てたんだから」

 

「そうなんだ。言ってくれればいいのに……」

 

「そんな恩着せがましい性格じゃねえだろ」

 

千砂都にまたお礼を言わなければ。

 

「……ところでさ、牛島って人、どうなった?」

 

「ウシジマ?あー。ベルゼブブのか?」

 

エイジは頷いた。

最初に聞くことがそれかよ、と章は頭を掻いた。

 

「助からねえだろ、どう考えても。あんなもん大規模テロ以前に自爆テロだ」

 

「そうだよね……」

 

蝿の数匹なら再生もしようが、全身を分散させ、その大多数を失ったとなれば、助かりようはないだろう。

 

「テロリスト気にしてる場合じゃねえぞ。こっちも相当な痛手なんだからな」

 

「?死者は出てないんじゃ?」

 

「それは本当だ。だから被害は人じゃねえ」

 

彼は身を乗り出し、声量を落とした。

 

「マスコミには発表されていないがな、BOARD(ボード)基地が襲撃された。同時多発的にな」

 

「え、いつ!?」

 

「ちょうど俺達があのデケェ樹と戦ってる頃だな」

 

「じゃあ基地が壊滅してるって事?」

 

「いや、そっちの被害も少ないし、何ならいつものゴォーンで直ってる」

 

ゴォーン、とは街が聖剣(?)によって修復される時に鳴り響く音だ。どうしてそんな音が鳴るのかはBOARD隊員も知らない。

 

「だから被害は変身アイテム類だ。連中まっすぐ保管庫まで向かって、ものの五分で済ませちまいやがった。」

 

「最初からそれが目的だった?」

 

「だろうな」

 

大規模テロはただの目眩ましで、変身アイテムを狙っていた。、そこまでのリソースを割いたなら、何か大変な物が盗まれている可能性が高い。

だがそれより気になるのは。

 

「志摩さんは?処分とかされちゃうの?」

 

「いや、むしろ表彰されてる。今回の事件の早急な解決で。上層部は盗みの方は隠し通す気らしい」

 

ほっとする反面、その対応もどうなのか、とも思う。

いたずらに市民の不安を煽ってはいけないのは理解できるが。

 

「その辺りは表沙汰にならないよう、回収していくしかねえだろうな。それはそれとして報奨金が出るぞ。喜べ、一級戦功者」

 

「……なんだか口止め金みたい」

 

「だよなぁ」

 

守銭奴というわけではないが、お金が好きな章も素直に喜べないようだった。

大規模テロの早期終結こそ出来たが、結局は敵の狙い通りか。

変身アイテムは奪われ、被疑者の命も救えなかった。

 

「まあお前が気にしてるのはテロリストの人命だろ?難儀な奴だな全く」

 

「分かってる。気にするだけ無駄だって」

 

それでも、救えるものなら全てを救いたい。そんな欲望の渇きがエイジの中にある。

 

「そんなお前に見せてやる」

 

「?」

 

章はおもむろに立ち上がり、病室のカーテンを明け放した。

街は夕暮れに照らされ、ビルからの反射にエイジは目を細めた。

 

「これがお前が、俺達が守ったもんだ」

 

「そうだね。そしてこれからも守っていく」

 

奪われたアイテムによる新たな脅威もあるだろう。隠蔽を正当なものにするなら、それらから人々を守り抜かねばならない。

 

「まさに俺達の戦いはこれからだってな」

 

「打ち切り漫画じゃないんだから」

 

ふっと二人して笑った。

冬の夕陽は、少しづつ闇に溶けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







ベルゼブブ

パペティアードーパントとなったロイミュードと、ムスカ・ゾディアーツの融合進化態。
無数の蝿に分裂し、寄生した人間を意のままに操る。
蝿が十数匹やられた程度ではダメージにならないが、大多数が撃破されれば変身者の命に関わる。
今回の事件では三百を超える人間に寄生し、怪人へと変貌させた。
まだ調整が完璧では無かった事、適合率等を鑑みず変身させている事などから、作り出した怪人一体一体は高くてもメ級程度の戦闘力しか持たない。






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