きな子がスクールアイドル部に入部して、初日の放課後を迎える。
「いつもこーんな感じで集まってマス!」
「お菓子もいっぱいあるよ。あ、今度たこ焼き持ってくるね」
部室で
「チョコもーらい」
「キナキナが先に取るデス!」
「固いこと言ってんじゃないわよ」
お菓子を取ろうと手を伸ばしたすみれを、
たった一人の一年生だ。早速可愛いがられている。
「お二人も練習するんすか?」
トレーニングウェアに着替えたエイジと
「うん。やっぱりサポートするなら、みんなと同じように出来た方が良いからね」
そこへかのんと
「遅いね」
エイジは呟いた。
「
「準備があるので、先に行っていて欲しいと……」
きな子は章から、少し距離を取りながら答えた。どうやら彼に怯えているらしい。
「大丈夫、章は目つきはあれだけど、面倒見いいから。怖くないよ」
エイジはきな子に章の人柄を説明した。
「そうデス。噛みついたりしまセンよ」
「吠えたりもしないから、安心しなさい」
「お前らは俺を何だと思ってんだ」
野犬じゃねえんだよ、と章は言った。
バタバタと階段を登って来る音が聞こえた。そして扉が開く。
「一実さん、なにかあ___ひっ!」
恋が短く悲鳴をあげた。その視線の先には、防護服とガスマスクを付けたおおよそ不審者の出で立ちの人物が居た。
Liella!の六人は困惑しながら後付さった。
エイジと章は咄嗟にその間に立ち塞がった。
「ああ、俺です俺」
シュコーと呼吸音をさせながら放たれた声は、一実のものだった。
エイジと章はずっこけた。
「一実くん?何でそんな格好してるの?」
「……失念してたんです」
かのんの質問に重苦しい雰囲気で一実は答えた。
「Liella!さんと同じ空気を吸ったり触れたりするから駄目なんです。こうして完全防備してしまえば、気絶する事もない!」
「はいはい、とっとと脱ごうな。エイジ、手伝え」
一実にとっての渾身の策は、軽く流されてしまった。二人でまずは手袋を引っ張る。
「な、何でですか!?」
防護服を引っ剝がされながら彼は聞いた。
「春とは言え、その重装備は熱中症が怖いよね。それにほら、俺達は
そんなぁ〜、と言いながら、身ぐるみを剥がされた一実。その下はちゃんと動ける格好である。良かった良かった。
「じゃあ、練習始めようか」
かのんの声に、皆が付いていく。
桜小路きな子は初心者である。その上彼女は運動が苦手だそうだ。なので練習に付いてこれないことは織り込み済みなのだが。
筋トレ、外周、ダンス、全てに置いてきな子は明らかに常人のそれより劣っていた。
「……やっぱりだめっす」
「まだ初日だよ」
屋上の隅で丸くなって落ち込むきな子に、かのんが声をかけた。
当の本人は当然、先輩と比べて落ち込んでしまう。いや、比べているのは先輩だけではない。
「けっこうハードですね」
「……君は遠いね」
離れた位置で、少し息を切らす一実にエイジは言った。
同じ一年生ともだ。
「これが今の限界距離ですー!」
「無理はしなくていいからねー」
一実の報告に千砂都が返答した。
一人は運動オンチ、一人は卒倒癖。多様である。
「同じ一年生なのにカズミンはすごいっす。それに比べてきな子は……」
「アイツはBOARDだ。それなりの訓練積んでるから、比べるだけ無駄だぞ」
「章さん!言い方と言うものがあるでしょう」
「地力に差があるのは事実だろ?」
「それはそうですが……」
章の言いぐさに、恋はうーん、と頬に手をやった。
彼なりにきな子を励まそうとしているのだろう。
「そうそう。それにこの子なんて最初の頃、腹筋一回も出来なかったんだから」
すみれが可可を指差し、やれやれという風に言った。
可可は一瞬、むっ、としたが、すみれの意図を理解したのだろう。
「そうデス!昔の可可よりキナキナのほうがずっと凄いデス!」
そう調子を合わせた。
「……そうなんすか?」
「うん。だから前向きに。あ、そうだ。センター立ってみてよ」
「きな子がっすか?」
かのんの提案に困惑気味のきな子。
恐る恐ると言った具合で、五人の間へと入っていく。
六人で手を繋いだ。
「気持ちいいでしょ?これがラブライブになると、応援してくれる人が集まってきて、私達に力をくれるんだ」
「素敵っす」
かのんの言葉は、確かにきな子の胸を打っているようだった。
帰り際、可可がきな子へ、一枚の紙を手渡した。
「強化メニュー?」
「可可が体力ゼロだった時の、秘密の特訓メニューデス。キナキナにあげます!」
「ちょっと見せてくれ」
そのメニューを、章はひょいとつまみ上げて、少し思案した。
「この半分、いや、四分の一からでもいいぞ。無理は怪我の元だからな」
そう言い、きな子へ返した。
彼女は大きな目を見開いて、章をまじまじと見つめた。
「なんだよ?」
「い、いえ、きな子は章先輩を誤解してたみたいっす。ごめんなさい」
「気にするな、この目つきだからな。馴れてる」
章の実像がきな子にも伝わったらしい。誤解が解けてなによりである。
だが肝心の一年生問題が解決していない。
「もう何人か入ってくれるといいんだけどね、一年生」
「そうですね。一人だとどうしても、 自分だけ遅れているように感じてしまいますし」
千砂都と恋が相談する。
「俺達も手伝うよ、勧誘。きな子ちゃんも同学年一人じゃ寂しいだろうし」
「ありがとうエイジくん」
「お礼なんていいよ。応援部なんだから」
千砂都の感謝に、エイジはそう答えた。
そんな話をしている内にお先ですー!ときな子は帰って行った。
「あれ、きな子ちゃんスマホ忘れてる」
きな子の忘れ物にかのんが気付いた。
「俺届けますよ」
「そう?じゃあお願い」
名乗り出たのは一実だった。かのんがスマホを渡そうとすると、彼は両手を全力で伸ばして、ギリギリまで距離を保ちつまむようにスマホを持ち上げた。その後お疲れ様でしたー!、と全速力で撤退していく。
「あっちも対策、いるんじゃないの?」
「あれはもう、馴れてもらうしか……」
すみれの苦言に、エイジは苦笑いした。
かのん達の前から逃げるようにして去った一実は、急いできな子を追いかけた。
すると正面玄関前で、尻もちをつく彼女と、その傍らに立つ白衣の少女を見つけた。
「きな子たん、大丈夫ですか?」
取り敢えず声をかけ、手を差し出す。
「ありがとうっす」
きな子はその手を取り、立ち上がった。
「あなたは……ちょうど良かった。あなたにも話がある」
「えっと、確か
白衣の少女は若菜
レンズが複数枚重なった物々しいメガネ、足元には一輪のローラースケートのような器具を装着している。科学部には必要な物なのかもしれない。
四季に案内され、促されるまま、二人で中庭のベンチに腰掛ける。
「どんな感じ?」
「と、言いますと?」
曖昧な質問にきな子が聞いた。
「スクールアイドル部」
「もしかして興味あるんすか!?」
「うん。メイが」
ポツンポツン、と四季は静かな口調だった。
興味があるのは本人ではないらしい。
「メイって
「そう」
米女メイ。彼女もまた同じクラスだった。一実は話した事は無いが、赤毛とつり目が印象に残っている。
きな子はどういう感情なのか、あ〜……といった表情を浮かべていた。
「それでどう?スクールアイドル部は?怖い先輩とかいない?」
「先輩達はみんな優しいっすよ!練習は確かに少し厳しいっすけど、ラブライブを目指すなら仕方ないっす!」
「ラブライブ……」
四季は無表情のまま呟いた。
「応援部は?一緒に練習してるんでしょ?ギクシャクしてたりしない?」
「しないですよ。俺から見ると七人とも仲良しって感じです」
それを聞いても、やはり彼女の表情は変わらなかった。だが何か逡巡しているようにも見える。
やがて四季はこちらへ向き直った。
「二人に、お願いがある。メイをスクールアイドル部に誘って欲しい」
「米女さんを?」
四季はコクリ、と頷いた。
「一応聞きますけど、勧めてはみたんですか?」
「私から勧めても、効果ない」
「分かりました。スクールアイドル部も、まだまだ一年生は募集中ですし、誘うだけ誘ってみますね」
これも一つの依頼、と言えるだろうか。だとしたら一実が請け負う初めての依頼になる。
「若菜さんも、興味があったら屋上、来てみてくださいね」
「私はもう科学部だから」
そう言い、彼女は足に付けた謎の装具でスイーと行ってしまった。
おっと、そもそもきな子にスマホを届けに来たのだ。
「はいこれ」
「あ、ありがとうっす」
そういうきな子の顔は、う〜んと悩んでいるようだった。
「何か問題でも?」
「いや、ちょっと米女さんは苦手で……」
「だったら俺一人でやりましょうか?」
「いえ、これもスクールアイドル部のため、きな子も頑張るっす!」
フンス、ときな子は立ち上がり、鼻息を荒げた。
翌日、休み時間。
四季から視線の合図が送られてきた。
「きな子たん?行けますか?」
「大丈夫、大丈夫っす、これもスクールアイドル部の為……」
するときな子は、メイの目の前まで駆けていった。
「あなたもスクールアイドル、初めてみませんか!?」
大声で、片手を差し出しながらきな子は勧誘した。クラス中からの注目を集める。一実も急いで駆け寄っていった。
「どうですかね?見学だけでも___
面食らっていたメイは強くきな子の手を握った。
脈アリか?そう思ったのもつかの間、メイは明らかに怒っていた。
「お前ら、ちょっと来い!」
二人して体育館裏へ連れて行かれた。
「落ち着きましょう米女さん。暴力はよくない」
「命だけはお助けを〜!お金はないっすけど、パン、パンならあるっすよ、カルボナーラパン!」
きな子は懐からパンを取り出し、この危機を脱しようとしていた。なお一実には具体策はない。
「別になんもしねえよ」
自分達の様子を見て、メイは呆れたように言った。
「四季に言われたのか?私をスクールアイドルに誘えって」
「よく分かりましたね……」
「アイツの考えそうな事だ」
全く、とメイは一つため息をついた。
「仲が良いんですね」
「ただの腐れ縁だよ。いいか?同じような事を言われても、今後は無視しろ」
「どうしてっすか?」
「私はスクールアイドルなんて興味ないんだ。後、みんなの前でスクールアイドルの話はするなよ」
「え?でも若菜さんはスクールアイドルに興味があるって言ってましたよ」
「勘違いだ。気にするな」
違和感。何か一実の中で引っかかるものがあった。
次体育だから急げよ、とメイは去っていった。
「……何か匂いますね」
「カルボナーラパンはあげないっすよ!」
「ああ、いえ、そういう意味ではなく」
一実の直感ことドルオタセンサーは、何かあると告げていた。
エイジは章と手分けして、一年生を勧誘する。だが帰ってくる返事はどれも芳しくない。
「私、科学部」
「きょ、興味ねえよ!」
「そんなことよりもマニーが、目標金額がぁ!」
全く関心が無かったり、あるいは興味があってもどこか遠い存在として見ている節があった。
収穫がないまま、合流の時間を迎えた。章も成果は無かったようだ。彼と一緒に、スクールアイドル部部室へ向かった。そこへ至るまでの階段は飾り付けられており、壁の矢印に従って進むと、可可とすみれが入部受付を担当していた。
「ごめん。誰からも良い返事もらえなかった」
「こちらもやはりすみれのせいで誰もきまセン」
可可が冷たく言い放った。
別にすみれのせいでは無い事は、彼女も理解しているだろうに。
「何で私?」
「それ以外考えられまセン」
今日の漫才もどこか元気が無かった。
「どうもっす」
「こんにちは」
そうしていると、きな子と一実がやって来た。が、彼は階段の端っこで顔だけ出している。
「よう一年コンビ。そっちはどうだ?」
「何人か声はかけてみたんすけど……」
「みんな遠慮がちに言うんですよ。私なんかじゃ付いていけないって」
ついていけない、か。やはり一年生の中で、スクールアイドル部は厳しいというイメージが定着しているようだった。
「やはりすみれのせいデスね」
「しつこい!」
「……いえ、きな子のせいなんす」
俯いたきな子は突然そんな事を言い出した。
「何言い出すのったら言い出すの!?私のせいだって言ってるじゃない!」
「そうデスそうデス!」
「私にもっとオーラさえあれば……ってやかましい!」
華麗なる自己完結型ノリツッコミだった。だがきな子の顔は晴れない。
「きな子ちゃん、どうしてそう思うの?」
エイジは俯いた彼女の目が見えるよう、屈み込んで聞いた。
「___
「練習が、厳しそう……」
スクールアイドル部部室。きな子の話を聞いたかのんが呟いた。
「はい。クラスに練習中のきな子を見たって子が何人か居て、それが厳しそうに見えたらしくて……」
「そういう事でしたか」
俯くきな子に、得心いったように恋が言った。
「先輩たちは悪くないんす!それもこれも、きな子が運動苦手なのがいけないんす。だから、余計……」
「平気デスよ。練習して、少し慣れてくれば」
「そうだよ、焦らないで。きな子ちゃんは頑張ってる。確実に良くなっていくから」
落ち込むきな子に可可とエイジが声をかけた。
「でも、その頃に勧誘しても遅いんじゃない?」
「そうだな。今度は一年と桜小路の間に差が出来る。なによりラブライブに間に合わんかもしれん」
すみれと章が言う事ももっともである。ならばどうするか。
しばしの沈黙が流れた。
「……練習メニュー、ちょっと簡単にしてみる?」
それを破り、千砂都が提案した。
「ちぃちゃん、それは___
「それは違う気がするっす!」
エイジを遮り、きな子が言った。
「そうですよ!俺の願望ですけど、Liella!には、憂いなくラブライブに挑んで欲しいです!」
部屋の隅っこから、一実も声を上げた。
「いえ、千砂都さんの言う事が得策かもしれません」
そう言ったのは恋だった。
「確かに
母親の想いを繋ぐ。それは恋にとって、何にも代え難い願いなのだ。
「たくさんの一年生が入部できる環境を、我々が作り、この学校のスクールアイドル活動を広げていくべきではないかと」
「俺は反対だ。根づかせるならラブライブ優勝のほうが宣伝になるだろ。部員増やすのはその後からだって出来る。今その目標を見失うのは危なくねえか?」
恋の力説に、章が反論した。
どちらの言い分にも理があった。こんな時最終的に決めるのは。
「どう思う?かのんちゃん」
千砂都が聞いた。最終的に決めるのは、やはりリーダー(本人にその自覚がないとはいえ)だろう。
「うん。実際、何か変えていかなきゃだもんね」
フー、とかのんは短く息を吐いた。
結論としては、練習を簡単する方向で落ち着いた。
掲示板に掲げてある目標も、ラブライブ優勝から出場へと張り直した。
更に練習メニューと共にたこ焼き配布で新入部員を募ろうという作戦だ。
校門前でのそれらの配布も終えた。
「そんな顔しないで。みんなで決めた事だから。二人のせいじゃないよ」
少し離れた位置で、膝を抱えるきな子とその側に立つ一実にエイジは言った。
二人とも表情に憂いを帯びている。
「エイジ先輩はいいんですか?ラブライブ、遠のくかもしれないのに」
「Liella!のことはLiella!で決める、だよ。俺達はあくまでサポーターだからね」
「あの……」
きな子がおずおずと手を上げた。
「恋先輩のお母さんって?スクールアイドルと関係あるんすか?創立者っていうのは聞いたことあるっすけど……」
そうだった。一年生は知らないのだから、説明が必要だろう。
「この学校の前身でね、スクールアイドルやってたんだ。そこが廃校になったあと、みんなの想いを結ぶ場所を作りたい、そうして出来たのが結ヶ丘なんだ」
「お母さんもスクールアイドル!?なんててぇてぇ……」
「そうだったんすか……」
二人ともが驚いた。
「その流れを、想いを汲んでるのがLiella!だから、みんなを結ぶっていうのは、大事な役割の一つなんだよ」
「みんなを、結ぶ……」
きな子はその言葉を、ゆっくり咀嚼するように呟いた。
練習メニューを変更して、最初の放課後を迎える。
最後の体幹トレーニング。
「あと五秒、四、三、二、一、終わり!今日はここまで」
コーチングしていた千砂都はそう言った。
「これで終わりデスか?」
「うん。昨日決めたメニュー通りだよ」
可可の疑問に、エイジが答えた。
「流石に歯ごたえないわね」
「ちょっと、すみれさん!」
たった一時間の練習では五人には物足りないだろう。だがすみれの隣では、きな子が肩で息をしていた。
「あ〜、そう言えばけっこう疲労がたまったかも?」
「そうですよ。足りない人は、帰って各自で練習して下さい」
恋はそう呼び掛け、練習は終了となった。
「ちぃちゃんも物足りないんじゃない?」
エイジは千砂都と帰りながら、そう言った。まだ日が高い。こんなに早く帰るのは何時ぶりだろう。
「まあね。その辺りは自分で調節するよ。エイジくんも手伝ってくれる?」
「もちろん」
しかし問題なのは今日のスケジュールだ。
適当な場所で練習、その後エイジ宅で夕食作り。その後ダンス特訓。これは。
「練習時間短くしたほうが、スケジュール大変になってない?」
エイジが聞いた。
学校で練習出来たほうが、無理が少ない気がする。
「音楽科だった頃を思い出すよ。かのんちゃんと可可ちゃんの練習をみて、自分の練習もして。あの時は二年生になった時のことなんて考えてなかったなあ」
「そうだね。みんな必死だった。今もそうだけど」
二人だけだったスクールアイドルも今や六人に。更にそれを拡大しようとしているのだ。
「エイジくんは反対なんでしょ?練習簡単にするの」
あの少ない言葉数で、彼女は理解しているようだった。
「うん。どんな形であれ、ラブライブ優勝、して欲しいからね」
「私も正直迷ってるよ。これでいいのかなって。言い出しっぺなのにね」
「気持ちは分かるよ。本当にいい方向にいくのか、不安だよね」
「でも一年生にたくさん入ってきて欲しいのも本当だから」
「うん。わかってるよ」
悩む千砂都に、エイジはゆっくり頷いた。
一実はきな子と一緒にいた。メイに呼び出されたのだ。
小池のほとりのベンチまでやって来た。
「座れ」
「はい?」
「いいから、座れって言ってんだ」
少しつっけんどんな風にメイが言った。きな子は座り、一実はその側で立つ。
「申し訳ないっす!パンは食べちゃったので今はこれしか!」
「は?」
きな子は懐からたくさんの飴をメイへと差し出した。やはりまだ彼女に怯えているようだ。
本当は呼び出されたのはきな子の一人なのだが、不安そうにしていたので一実も着いてきた次第だ。
「なんも取ったりしねえよ……」
「気にしちゃダメ。これがメイの普通」
いつの間にやら、メイの傍らに四季が立っていた。
「何でお前がいるんだよ」
「偶然。構わず続けて、スクールアイドルの話」
「べ、別に私はそんな話」
「違うの?」
「……」
メイの睨むような視線を気にも止めない四季。やはり二人は仲が良いようだ。
「桜小路はさ、やってみたいって思ったんだろ?スクールアイドル」
「え?」
「優勝目指してて、練習が厳しいのも知ってて入ったんだろ?」
「それは……はいっす」
「だったら、そのまま突き進んでくれよ。自分がやりたい、目指したいって思ったことを信じてみろよ」
メイはきな子の目を見ながら強く語った。
「周りの声なんて、気にするな」
「……はいっす!」
ようはきな子を励ましてくれているらしい。
しかしここまで真剣にスクールアイドル部のことを考えてくれているとは。米女メイやはり。
「米女さん、やっぱりスクールアイドル好きなんじゃないですか?」
「だ、だから興味ねぇって!たこ焼き配ってたから何してんだと思っただけだ!」
「え〜。本当ですかぁ?」
「しつけぇ!」
ねちっこく絡むとギロリと睨まれてしまった。やはりメイを前にすると、ドルオタセンサーが強く反応する。
機嫌を損ねてしまったのか、彼女は、わたしが言いたいのはそれだけだ、と言って行ってしまった。
「きな子たん。どうしますか?」
「きな子は、___
章は学校から離れた、適当な喫茶店へと可可を誘った。
「なんデスか?改まって話とは?かのんの家ではダメなのデスか?」
「聞かれちゃ不味いかもしれないからな。好きなもん頼めよ。俺が奢る」
ますます何かあると思ったのだろう。可可は訝しむような視線を向けてきた。
取り敢えずコーヒーを注文した。彼女はミルクティーだ。
「聞かれては不味い、かもしれない、とはどういう意味デス?」
「俺がじゃなくて、お前がな」
「可可が?後ろめたいことなどありまセンよ?」
「じゃあ短刀直入に聞くが、上海に戻るって話、どうなってる?」
可可は硬直した。
その間に注文した品が運ばれてきた。章は彼女から視線を外し、コーヒーの湯気を眺めながら返答を待った。
「……さてはグソクムシデスね。あのクルクルちょん切りマス!」
「なんだ、平安名は知ってるのか」
「へ?すみれから聞いたのではないのデスか?」
キョトンとする可可に、章は自分の耳元を指で叩いた。
「ちょっとならヒアリング出来るようになったんだわ。そしたら聞こえてくるじゃねえか、上海に帰る約束がどーのって」
章は可可と出会ってから、興味本位で中国語の勉強を始めていた。また適合元の人物が国外で働いていた事もあり、聞くだけなら少しは分かるレベルになっていた。
「凄いデスね、章は」
「お前程じゃねえよ。難しかったろ、日本語は。海外じゃ魔境って聞くぞ」
「元々勉強は得意デシタので、スクールアイドルの為なら、辛くは無かったデス」
可可は話してくれた。
ラブライブで結果を出せなければ、上海に帰るという約束を家族としていた事を。
「やっぱそういう話だったか。澁谷達は知らないんだな?」
「ハイ。可可の事を気にして、ラブライブに挑戦して欲しくありまセン」
「そりゃお前の事情だから、お前の意思を尊重するけどなぁ」
コーヒーを一口すすった。喉から胃にかけて熱いものが流れていくのが分かった。
「俺はごめんだぞ、ラブライブで優勝出来なかったから、はいさよならなんてのは。澁谷達だってそうなんじゃねえのか?だとしたら、今の状況は良くねえんじゃねえの?」
「……レンレンが言ってマシタよね、スクールアイドルを根づかせたいと。可可も同じ気持ちデス。この学校で、スクールアイドルに出会って良かったと、一人でも多くの人に思ってもらいたいのデス」
「そいつは練習ぬるくすれば叶うのか?里帰りのリスクまでしょって?」
「それは……」
可可は悩むように目を伏せた後、少し笑った。そして一口ミルクティーを飲む。
「章は優しいデス。いつも悪役を買って出て、言うべき事を言ってくれマス」
「買いかぶりだ。最初から言ってるだろ、俺は今の状況に反対なだけだ」
「図星だとすぐ否定する。照れ隠しデスよね」
「言うじゃねえか」
数秒、彼女と見つめ合った。そして何方ともなく笑い出す。
「可可を最初に見つけてくれたのが、章で良かったデス。そうでなければ、今のLiella!はありまセンデシタから」
「んな事ねえさ。お前の行動力なら、必ず澁谷を口説き落としてただろうよ」
一年前、困った様子だった可可に、声をかけたのが全ての始まりだったように思う。
彼女はティーカップをぐいとあおり、ミルクティーを飲み干した。置かれたカップはカチャリと音を立てた。
「心配ありまセン。練習は自分でしマスから。一年生にも必ずスクールアイドルを広めてみせマス」
「そうか」
章も同じように、コーヒーを飲み干した。
「悪かったな。決まった結論にケチ付けて。確認だが上海帰りは伏せとくんだな?」
「はい。お願いシマス」
話は終わった。二人は同時に席を立つ。
バイクで可可を送った帰り道、ふと公園に目をやるときな子が居た。
「何やってんだ、あいつ?」
端からみると、演劇の練習でもしているような印象を受ける。気になったのでライドベンダーを停めて、公園へと入る。
「桜小路ー、何してんだ?」
「あ、章先輩!?」
きな子は慌てたようにあたふたすると、両手を後ろに隠した。
あやしい。
「こんなところで何やってんだ」
「ちょっとその、練習を……」
「部活のか?嘘つけ、そんな雰囲気じゃなかっただろ」
「う、嘘じゃないっすよー?」
彼女は目を泳がせながら、口笛でも吹くように唇を尖らせた。口笛は吹けていない。
あやし過ぎる。
こちらの視線に観念したのか、きな子は肩を落とした。
「練習メニューを戻す?」
「はいっす。先輩方になんて言えばいいか、練習してたっす」
「練習は嘘じゃねえのな……」
公園のベンチに座った。
彼女は練習メニューを戻そうと言うつもりらしい。
不器用と言うか生真面目と言うか。皆が可愛がるのも分かる性格である。
「でも、考えれば考えるほど、きな子なんかが言うのは失礼じゃないかって思えてきて……」
「なことねえよ。後輩とか先輩とか関係ねえ。あいつ等はお前が何言ったって真剣に聞くだろ」
「それは、そうなんすけど、きな子の自信の問題と言うか」
「自信ねぇ……」
章も流石にいきなり自信を付けさせてあげる事は出来ない。
「よし桜小路」
「はいっす」
「あれが見えるか?」
章はライドベンダーを指差した。
「バイクっすよね。章先輩のっすか?カッコいいっす!」
「そうだろうそうだろう。乗ってみたくないか?」
「え、いいんすか!?」
二人でライドベンダーまで近づいて行く。章はパネルを操作し、要救助者保護用に使う予備のヘルメットを取り出した。それをきな子の頭に被せる。
「行くぞ。しっかり掴まれ」
「はいっす!」
彼女が回した腕に、しっかり力が込もるのを確認してから、ゆっくりとスタートさせた。
街中をぐるりと二十分ほど走らせて、元の公園へと戻ってきた。
最初こそ怖がっていたきな子も、五分もすれば速度に慣れてきたのか、歓声を上げていた。
「どうだ?初バイクの感想は?」
「凄かったっす!車と違って、風が肌に直接当たって、気持ち良かったっす!」
ヘルメットを脱いだきな子は意気揚々と語った。
「でもどうして乗せてくれたんすか?」
「ただの気分転換だ。案ずるよりも産むが易いぜ」
章もヘルメットを脱ぎ、ハンドルへと掛けた。
「いいか桜小路。いきなり自信を付けさせてやる事は出来ない。けどな、着いててやる事は出来る。俺でもエイジでも申川でもな。不安なら応援部を頼れ。お前は一人じゃない」
「……はいっス!」
彼女はさっきより明るい表情になった。こういう役回りはエイジのほうが向いていると思うが、この程度の励ましでも効く素直な子で良かった。
「じゃあついでだ。送ってってやる」
「え?いや〜……」
「遠慮すんな」
「いや、そうじゃなくてっすね……」
「?」
「……道に、迷ったんすよね……」
道理で妙なところで見かけると思った。桜小路きな子、まだ都会には馴れてないらしい。
エイジ、章、一実の三人は早朝パトロールの担当だった。本来ならエイジと章だけだったのだが、一実はまだ地理に馴れていないだろうという事と、本人の希望もあって三人一組で行った。
街に異常は無い。パトロールを終え、桜が綺麗な公園で一休みする。
「はい一実くん」
「ありがとうございます」
自販機で買った飲み物を手渡した。彼は炭酸飲料、特にコーラが好きだそうだ。ちぃちゃんと一緒だな、と思った。
「……やっぱりこのままは良くないと思います」
「練習メニューのこと?」
「はい」
やはり一実はまだ引っかかっていたようだ。確かに、違和感を抱いているのは皆同じだろうが。
「エイジ先輩も反対なんでしょ?どうして何も言わないんですか?」
「言ったでしょ?Liella!のことはLiella!で決める。過度な干渉はしちゃダメだよ」
「それは、そうかも知れませんけど……」
「大丈夫。もう少し見守ってみよう?そしたらきっと、ね」
「?」
章とアイコンタクトを取る。きな子の話はエイジも聞かされていた。後はそれを受けて五人がどうするか、である。
そこでふと、遠くから走って来る人影が見えた。
「かのんちゃん?」
「あれ?三人ともこんなところで何してるの?」
「あ、待ってかのんちゃん___
自然と彼女は三人に近づいた。近づき過ぎてしまった。
「街中で不意な遭遇!きゅん!」
そう言い残して一実は倒れた。
「ごめん。ついいつも通りに……」
「いや、しょうがないよ。まあこれも訓練だと思って貰おう」
謝るかのんにエイジは言った。
「澁谷は朝練か?」
「うん。全然落ち着かなくて」
「かのん先輩?」
いつの間にか、きな子が側までやって来ていた。彼女もランニング中らしい。
「やっぱり、きな子は練習しなきゃと思って」
そう彼女は控えめに笑った。
そこへ複数人の足音が聞こえてくる。
「なぜここに?」
「わぁきな子ちゃんまで!」
恋と千砂都がやって来た。
「みんな自分だけ練習しようだなんてズルいわよ」
「こんなところでハチ合わせるなんて」
すみれと可可がやって来た。
「みんな……」
Liella!全員集合である。エイジは一実がまた気絶しないよう、章と共に離れた位置まで運んでおいた。
その間に、章ときな子が視線を交わし、少し頷く。
「あの、やっぱり戻しませんか?」
きな子が意を決したように口を開いた。
「きな子がこんな事言うのは、失礼かもしれせんが……きな子もLiella!さんといっしょに、優勝目指して頑張りたいんす!きな子が憧れたのは、こんな風になりたいって思ったのは、優勝目指して必死に頑張ってる先輩達なんです!大変でも、前向きに頑張ってる先輩達なんです!」
「ですが……」
きな子の熱弁に、恋が難色を示す。
それでは一年生はきな子一人になってしまう、と。
「わかってます。でも、でも!」
きな子は必死に涙を堪えている。そこへかのんが歩み寄り、抱きしめた。
「私もずっと思ってた。これが本当に良いことなのかなって」
「先輩……」
「メニューを戻したら、一年生が入ってこなくなってしまうかもしれない。きな子ちゃん一人って事になってしまうかもしれない。それでも頑張ってくれる?」
「……はい!」
「一緒に優勝、目指してくれる?」
「はい!」
かのんは振り返り、皆に問うた。
「いい?」
「私は賛成」
千砂都が元気よく答える。だが恋は迷っている様子だった。
「きっと、伝わると思うんです。大変でも続けていれば、その先にある楽しさは大きくなるって。皆が一緒に、やってみたいって思えるものが作れるんじゃないかって、そう思うんす!」
「___」
恋は、はっとしたような表情をした。
「す、すみません!出過ぎた真似を……」
「いえ。その通りだと思います。信じましょう、スクールアイドルの力を。私達の想いは、きっと届きます!」
「はいっす!」
これで大方の意見は決まったようだ。
「危うく目標を見失うとこだったね」
千砂都が言った。
「不覚ったら不覚だわ」
すみれが言った。
「目の前の事に気を取られ過ぎマシタ」
可可が言った。
「目指すべきものは、変わりません!」
恋が言った。
新たな決意と共に、五人はピースを突き合わせた。いつもと違うのは、そこに隙間が空いていること。
「きな子ちゃん!」
かのんが呼びかけた。その隙間に、きな子もピースを差し込んだ。
「私達はLiella!、私達が目指すのは、ラブライブ」
「「「「「「優勝!!」」」」」」
六人は打ち上げるようにしてピースを掲げた。
「は!?今感動のシーンを見逃したような!?」
「すげえアンテナしてんなお前」
一実が急にガバッと起き上がった。
その直後、BOARDの三人のスマホから怪人警報が響いた。
更にその後、Liella!の六人のスマホからも警報が鳴る。
マップを確認すると、怪人はこちらへ高速で移動してきていた。
「みんな、逃げて!」
エイジがそう叫んだのと、怪人の着地は同時だった。
轟音と共に砂煙をあげた。
キュロロロ、と不快な虫の鳴き声ような音。そして全貌を顕す。
「グリード……!?」
章が呟く。
「ムチリ!?」
エイジは知っていた。
コアメダルから生まれる怪人、グリード共通のベルト装飾。
ムカデ、ハチ、アリを融合させたようなグロテスクな外見。
記憶で見たグリード、ムチリと一致している。
三人はすぐさま戦闘体勢に入る。三者三様のシークエンスを踏み。
「「「変身!」」」
『タカ、クジャク、バッタ!』
『潰れる、流れる、溢れ出る!ロボットイングリス!ブラァ!』
「バース、保護お願い!」
「ああ!」
見ればきな子が腰を抜かしている。
彼女達はバースに任せて、グリスと共に距離を詰める。
「毒を使うから近づき過ぎないで!」
「分かりましたぁ!」
『ツインブレイカー!』
左腕にタジャスピナーを装備。火炎弾でけん制する。
ムチリは左腕から水流弾を放ち、それをかき消した。
「は!?」
オーズが驚く。おかしい、ムチリには水を操る能力などないはずだ。
ツインブレイカーとタジャスピナーで同時に突きを放つが、敵の右腕、ハチの毒針のような刃でやすやすと弾かれた。次に頭部に生えたムカデの腹を、鞭のように使い叩き付けてきた。
二人でなんとか防ぐが、吹き飛ばされてしまう。
敵は全身を剣山のようにし、無数の針を空中へ飛ばした。
飛んだ針は的確にこちらへと振り注いでくる。走り回って躱すが、そこへ口から毒霧を吐いてきた。
タジャスピナーの火炎放射で毒を燃やす。その間敵は無防備だ。バースバスターとツインブレイカーの十字砲火が炸裂する。
だが大したダメージにはなっていない。
「三人がかりでこいつは」
「うん。ゴ級だ」
バースの呟きにオーズが答えた。
怪人の最上位、ゴ級。ならば出し惜しみは無しだ。
足に相当するメダルを交換。再びスキャン。
『タカ、クジャク、コンドル!タ〜ジャ〜ドル〜!』
タジャドルコンボへと変身。空へ飛び立つ。
バースはバースバスターのエネルギー弾一発当たりの威力を出来る限り高出力に。
『シングルブレイク!』
グリスはツインブレイカーにガトリングフルボトルを装填。
オーズは空中から、二人は地上から射撃戦を仕掛ける。
それぞれが火力を上げた攻撃で、敵を翻弄する。
ムチリは特にオーズを狙い、ムカデを突き出したり、針を飛ばしたりするが、そのどれも当たらない。
ついに敵が怯んだ。
『セルバースト』
バースバスターを変形させ、必殺技を放つバース。
『ツインブレイク!』
ツインブレイカーにロボットゼリーとロボットフルボトルを装填し必殺技を放つグリス。
だがこれらだけで倒せるほど甘くはない。敵は大きく仰け反った。
ここだ。タカアイで敵の弱点を探り、コンドルレッグの斬撃で穿つ。
ムチリは自身の構成要素であるセルメダルをばら撒き、後退した。
そしてオーズの狙い通り、コアメダルを三枚奪う事が出来た。
コアメダルは各グリード九枚しか持たない、最重要な構成物だ。この枚数でグリードの性能は決まると言っていい。
であれば今はかなり弱体化しただろう。
敵は胸を掻きむしるような動作を見せた後、地面に向かい毒霧を吐いた。
立ち込めた霧によってムチリの姿が覆われる。
再び火炎放射で毒霧を晴らすと、そこにはもう影も形も無かった。
「どこ行っきやがった!ごらぁぁ!」
「落ち着いてグリス!」
残った霧へ向けてビームを乱射するグリスを諌める。
いくら被害がすぐ直るとは言え、率先して破壊活動するのはよろしくない。
「なんだったんだ一体……」
「自我は無かった、よね?」
バースと敵の感想を言い合う。
それにしては不利を悟るやいなや逃亡するなど、妙に冷静な判断力である。
だとすると何の目的で強襲して来たのか。
わからない事を今考えても仕方ない。
「みんなのところに戻ろう」
今は全員の無事を確認するのが先だ。
六人と合流すると、きな子がへたり込んでいた。
「迷惑かけてすみません、章先輩、すよね?」
「気にすんな。そういう仕事だ」
バースを見ながらきな子は疑問形で言う
避難する際、彼女を抱っこして運んだらしい。
腰が抜けてしまっては仕方ないだろう。
「みんな無事?具合悪いとか無い?」
敵が毒を撒き散らしていただけに心配である。ライダーに影響は無くとも、人体には有害な物質が撒かれている可能性は十分ありうる。なので三人とも変身を解いていない。
「私達は大丈夫。だけどきな子ちゃんが立てないかも」
かのんが答えた。
どうやら杞憂のようである。
「その声、エイジ先輩すか!?わ、テレビで見た事あるやつっす!」
オーズを見たきな子は、案の定驚いていた。
「てことは、あの金ピカがカズミンすか!?」
「私達も初めて見ます」
きな子の疑問に恋が同調した。
あの金ピカことグリスは皆の前へ正座でスライディングして来た。
「皆さん!こんな時になんですけど、練習メニューの件、考え直しませんか!?」
お願いします!とグリスは土下座の構えである。
皆が呆気に取られ、誰ともなく笑い出した。
「その段階もう終わってるわよ?」
すみれが呆れた風に言った。
へ?へ?と辺りを見回すグリス。
「今日からまた練習メニュー戻すから、一実くんもよろしくね」
千砂都がグリスへ笑いかけた。
キュンです!と言いながら胸を押さえるグリス。
「今回は気絶しないんだね」
「変身してると気合いが入るので!」
オーズの質問にハキハキ答えるグリス。
じゃあずっと変身してて貰ったほうがいいかもしれない。
放課後。早速学校の外周を走る九人。
「もう一周行くよー!」
かのんが声を上げる。
やはりきな子はついてこれてないようで、ヒィヒィ悲鳴を上げている。側に章がついて、すぐにサポート出来る体勢だ。
「カズミン、もっと近づくのデス!」
「可可たん、ご勘弁を〜!」
一実も悲鳴を上げている。彼はついてこれてはいるのだが、Liella!の五人と異様に距離を取りながら走っていた。
「ほら、もう一歩!」
「エイジ先輩、押さないで下さいぃ!」
エイジは一実に付いて、卒倒癖の克服を助ける。
新しい道を、一年生二人と走っていける。今はそれだけで充分だ。走り抜いた先で、Liella!の想いが伝わると信じて。
仮面ライダーバース
原作との違いとして、適合者でなければ変身できない点、セルメダルを格納する機能がある点が挙げられる。
セルメダルは実に千枚超を収納でき、これはCLAWs・サソリを機動しても余裕のある運用が可能な枚数である。
またこの機能により、サポートを必要とせずとも、十全の性能を発揮できる。