応援よろしく!   作:冷奴with紅しょうが

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諦めない気持ち

 

 

 

 

 

 

朝の通学路。校門前でエイジはスキップでもしそうな勢いのかのんを見つけた。

 

「かのんちゃん!」

 

「ん〜?」

 

振り返った彼女は、それは上機嫌だった。溶けるような笑顔をしている。 

 

「歌えたんだね!すごいよ!」

 

「いやあ〜それ程でも、あるかも」 

 

やったね、やったやった。

二人してそんな言葉を繰り返しながら、手を取り合い喜び合う。

 

「ところで、ちぃちゃんとは仲直り出来た?」

 

一段落したところでかのんはそう切り出した。 

 

「う……いや、面目ない。会話さえ出来ませんでした」

 

正直に言えば、目さえ合っていなかったのだが。

 

「何か知らない?俺が何したのか」 

 

「う〜ん。何となく想像は着くんだけどね」

 

「本当!?」

 

光明が見えた。持つべきものは歌の上手い幼なじみである。

 

「それを私から言うのも違うと思うから」 

 

「そこを何とか!」

 

うーん。と腕組みしながら唸るかのん。

でも、と。

 

「やっぱり言えないかな。私の勝手な想像だし、ちぃちゃんから聞いたわけでもないから」

 

「そっか、そうだよね。ごめん無理言って」

 

この件に関しては、本人から聞き出す他なさそうだ。無視されるけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後。学校生活応援部の部室にエイジと(あきら)、かのんと可可(クゥクゥ)が集まっていた。

 

「許すマジ、アンチキショウ〜!」

 

可可が退学届けを握りしめ、怒りをあらわにしながら唸る。

 

「どうどう、何があったの?」

 

エイジがなだめながら、かのんに聞いた。

 

葉月(はづき)さんが部活申請書を受理してくれないから、話しに行ったんだけど」

 

「うんうん」 

 

「音楽で他の学校に劣るわけにはいかないから、やりたいなら学校変わればって」

 

「なるほど?」 

 

音楽科のある結ヶ丘で、その誇りに傷をつけるわけにはいかないのは理解出来るが、部活を認めない程か?

 

「俺たちの時とはえらい違いだな」

 

章が言う。

自分達の時は素晴らしい活動だ、と褒めてくれていた。スクールアイドルが絡むと人が変わったようである。

 

「基準も割と曖昧だしね。どうするかな」

 

「葉月に話、聞きに行くか?」

 

「同じだと思うよ。『同じ説明を何度もしたくないのですが』って言われるだけ」

 

章の提案を、かのんが(れん)のモノマネをしながら否定した。

エイジもきっと徒労になると考える。なので。

 

「行ってみるかな。直談判」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エイジ達は結ヶ丘の理事長室に、理事長に直談判に来た。昨日、恋は理事長の許可について言及していた。ならば本人に聞くまでだ。

 

「成る程、事情はおおよそ理解しました。葉月さんを呼んでください」

 

理事長はそう言い、そして恋も加えての聴取がはじまった。

 

「葉月さん。部の申請を阻害したと言うのは本当ですか?」

 

「していません」

 

「シマシタ!」

 

恋の否定に食らいつく可可。バチバチだった。

 

「普通科の生徒が音楽活動に興味を持つことは良いことです。そしてそれを妨げる権限は貴女にはありません」

 

「しかし母は___! 

 

「ここではお母さんは関係ありません」

 

理事長は恋の反論を遮り、言い切った。 

これなら部の申請は通りそうだ。

 

「しかし、音楽がわが校の誇りなのも事実。そこで二人には課題を出します」

 

理事長はかのんと可可を見据えた。

 

「近く代々木で行われるイベントで、一位を取ってください。それを条件とします」

 

「「一位!?」」

 

かのんと可可が声を上げた。

一位か。始めたてで、その上人口も多い近辺で一位。

それはほぼほぼ、諦めろと言っているようなものではないか。

 

「あの」

 

「何ですか木野さん」

 

「それはあまりに厳しすぎませんか?もう少し譲歩があっても良いのでは?」

 

例えば三位以内、とか。

しかしエイジの意見に理事長は首を横に振る。

 

「一位が望ましい。音楽の要素で他校に劣るわけにはいかない、この意見もわが校に置いては重要です」

 

理事長と目が合う。そこは譲れない、といったような強い意志を感じる。これ以上は無理そうだった。

話は終わり、五人して退室する。

 

「木野さん、伊藤さん」

 

そして恋に呼び止められた。

 

「これがあなた達のやりたい人助けですか?」

 

つまりはこう言いたいのだろう。スクールアイドル部など支援してどうするのだ、と。

答えは決まっている。

 

「うん。二人は本気だから。葉月さんも困ったことがあったら何でも言ってね」

 

恋は何かを言おうとして、しかし口を紡いで去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

代々木スクールアイドルフェスティバル。調べてみるとやはりそれなりの規模らしい。これは助っ人が必要だ。幸いにも当てがある。

 

「と言うわけでかのんちゃん、ちぃちゃん呼んで来てもらっていい?」

 

「いいけど、エイジくんは?」 

 

「俺が行ったらダメだよ」

 

ただでさえ怒らせているのだ。通る案件も通らなくなる。

しかし、この返答にかのんは。

 

「ちぃちゃんが怒ってる理由知りたいんでしょ。話す機会増やさなきゃ!」

 

とぐいぐい引っ張られてしまった。音楽科のクラスに来てしまった。

 

「うぃっすー」

 

「うぃっすー」

 

かのんと千砂都(ちさと)は挨拶を交わした。

 

「うぃっすー……」

 

「……」

 

エイジの挨拶は返ってこなかった。

ところ変わって中庭。

千砂都に事情を説明し、二人のコーチングをお願いした。かのんが。

 

「私で良ければ喜んで!」

 

快く引き受けてくれた。可可と章とも打ち解けている。 

エイジが噛まないほうが話がスムーズに進む進む。

ちょっと泣きそうである。

 

「千砂都さんもスクールアイドル、やってみませんカ?」

 

「名案!ちぃちゃん可愛いしダンス上手いから、一位だって夢じゃないよ」

 

可可の提案に乗っかる。

千砂都からジトーと睨まれてしまった。

はい、黙りますね。

 

「可可ちゃん、それは無理。ちぃちゃんは音楽科だから。これ以上無理は言えないよ」 

 

かのんが答えた。

音楽科でも部活くらい自由に決めていいのでは、と思ったが口にしなかった。また睨まれるし。

 

「じゃあ今の二人の実力をみるよ。簡単なステップから」

 

千砂都の掛け声と共に踊り出した二人。だが片方が、可可が途中でパタリと倒れてしまう。

 

「「可可ちゃん!?」」

 

「言い忘れてマシタ。可可は運動が苦手デス。パタリ」  

 

簡単なステップ、その半分で力尽きた。

なんてこった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダンス指導を千砂都、基礎体力づくりをエイジと章で監督することになった。

基礎体力。かのんはともかく可可には最重要である。主にランニングと自重筋トレ。

 

「今日は、このくらいに、してやるデス……」

 

そして可可は今日も死にかけていた。

このペースで、一曲笑顔で歌って踊れるだけの体力が作れるのかどうか。

章は五分五分だと考える。あとは本人のやる気次第だが、その点は問題ないだろう。 

エイジはと言えば、理事長に話をしに行った。課題の難易度を下げて貰うためだ。

 

「なあ、(あらし)

 

「なに?章くん」

 

そして休憩の折、章は意を決して聞いてみた。

 

「迷惑を承知で聞くんだが、あいつ何したんだ?」

 

「そーデス。二人は喧嘩しているのデスカ?」

 

数日見ていたが、千砂都は人当たりは良い。その上コミュ力も相当なものだ。

なのにエイジに対してだけは余りにも頑な態度だった。

一緒にやっていく上で、気にするなと言うほうが無理である。

千砂都はえーと、と狼狽えているようである。

 

「ごめんね。迷惑かけて」

 

「いや別に。あいつが無視されるだけなら実害ねえし、ちょい面倒くらいだ」

 

面倒くさいのである。エイジの話を章が経由して話すのは面倒くさい。ちょっと面白いが。

 

「どうせエイジが悪いんだろうけど、あいつは鈍感だ。はっきり言ってやらなきゃ気付かないぞ?」

 

「私もそう思う」

 

かのんが続いた。

 

「エイジくんも謝りたがってるし、そろそろ教えてあげてもいいんじゃない?」

 

「うーん、そうだね。私も悪いしね」

 

千砂都は観念したようだった。

 

「それは」

 

「「「それは?」」」 

 

「__________________」 

 

成る程成る程。章も実のところ、そんな話ではないかと思っていた。

そんなところに渦中の人が帰ってきた。

 

「ごめんよ、遅くなって。成果とは言えないけど『一位かそれに準ずる成績』でも良いって___何かあった?」

 

エイジは心配そうにそう尋ねた。

 

「愛デスネ!」

 

「はい?え、ごめん何の話?」

 

可可の発言にキョトンとするエイジ。

当の千砂都はそっぽを向いてしまっている。

これは重症だ。

そこでエイジと章のアラートだけが鳴り響いた。

怪人出現である。なんと間の悪い。

 

「ごめんみんな、また今度!」

 

駆け出すエイジに追従し、その場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オーズとバースが到着した時には、既に戦闘が始まっていた。

BOARD(ボード)黒影(くろかげ)トルーパー三人とワームサナギ体数匹が乱戦の模様を体している。

今回はどうやら自然発生した怪人、怪人災害が相手らしい。

 

「いた、成体」 

 

オーズが呟く。

黒に赤い模様が入った、蜘蛛のような怪人。

 

『対象はアラクネアワームと断定。クロックアップに気をつけてください』

 

「「了解」」

 

混戦の中を、バースの援護射撃を受けながら進み、アラクネアワームにメダジャリバーで斬りかかる。

斬撃で吹き飛ばしたが、敵は糸を両腕から発射。

絡め取ろうとしてくるその糸も切り落とす。

更にバースバスターの射撃でダメージが蓄積。

 

しかし不利を悟ったのか、敵は消えた。

次の瞬間には目の前。こちらが攻撃されたかと思えば、バースも攻撃を受けている。

特殊な超高速移動、クロックアップを発動したのだ。

目にも止まらぬ、いやギリギリ目視は出来るがついてはいけない。

翻弄され、連撃で二人して吹き飛ばされてしまう。

 

「速さには速さで!」 

 

足部分に相当するバッタのメダルを交換。オースキャナーでスキャン。

 

『タカ、トラ、チーター!』 

 

チーターのスピードを宿すチーターレッグへ変身。

そしてトラクローを展開、疾走する。

すれ違いざまに攻撃しあう。速度と速度の応酬。

 

『クレーンアーム』

 

バースはクレーンアームを展開。そしてカウンター気味に換装した右腕を突きだした。

クレーンアームの先端は、強力な磁石のように敵に貼り付き、動きを封じた。

 

「今だ、オーズ!」

 

トラクローを地面に突き立て、無理やりブレーキをかける。

そしてオースキャナーで再びメダルをスキャン。

 

『スキャニングチャージ!』

 

「せいやー!」

 

トラクローを敵の両肩に突き刺し固定、両足での連続キックを見舞う。

アラクネアワームは爆散した。

残りのサナギ体は黒影トルーパーによって掃討されている。

これにて状況終了だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてトレーニング開始から数日たったある日。

エイジ達の元に、かのんが曲のサンプルを持ってきた。

 

「曲づくりもしなきゃいけないんだもんね」

 

「そう。だから二人にも聴いてみてほしいなって」

 

うん、いい曲だ。まだ詩はついていないが、かのんらしいのではないだろうか。

 

「素敵だと思う!」 

 

「いいんじゃねえか」

 

「ほんと!?」

 

エイジと章の感想にかのんは喜んでいるようだった。

 

「あとは詩だね。どうするかな」

 

「それは大丈夫。可可ちゃんから歌詞ノート貰ってるから」

 

見せてもらったそれは、一部中国語だったが、印象的な言葉が載っていた。

 

「諦めない気持ち……」

 

「うん。ここには可可ちゃんの、海を渡ってまで来た諦めない気持ちがたくさん詰まってる」

 

かのんは思いを馳せているのだろう。感慨深そうにそう言った。

 

「そうだよね。ハードルが高いとか言ってる場合じゃないもんね。一位取ろう!」

 

「うん!」 

 

「頑張りマス!」

 

隣で眠っていた可可もいつの間にやら目覚めている。

 

「ところで、千砂都サンとは仲直りできましたカ?」 

 

「……まあそれも、諦めず頑張ると言うことで」

 

まだまだ道のりは険しそうである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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