応援よろしく!   作:冷奴with紅しょうが

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あの日の真実

 

 

グリスは取り急ぎ、(あきら)を戦闘区域外まで運んだ。

 

「だめだ……!あいつを一人にするな……!」

 

「安静にして下さい!腹に穴空いてるんですよ、すぐ戻りますから!」

 

そんなに心配なのだろうか?エイジは、オーズは実力がある上、今はオリジナルまで持たされている。戦力的には十分過ぎると思うのだが。

 

「そうじゃない……!あいつは暴走する……!」

 

「え?」

 

直後、轟音が響いた。

さっきまで居た立体駐車場が半壊している。舞い上がった煙で何が起こったのかまでは分からない。敵の攻撃だろうか。

 

「遅かった……!」

 

「これを、エイジ先輩が?」

 

章は頷いた。

あれだけ周囲を気にかけるエイジが、直るとは言え、ここまで被害を広げるなんて。グリスには信じられなかった。

 

「俺を連れて行け……!」

 

「怪我人が何言ってんですか」

 

「俺にも切り札がある……!」

 

そう言って、章は懐からバースドライバーを取り出した。

グリスには直感で分かった。これはオリジナルだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瓦礫と煙の中から、オーズ、プトティラコンボが姿を現した。

紫の怪物を前に、デュークは高揚する。

 

「それが邪神フォーティーンを屠ったオリジナルの力か!」

 

二年前、推定ン級とされた巨大な怪人フォーティーン。それをほぼ単独撃破したのが紫のオーズであった。

 

「その性能、見せておくれ!」

 

弓型の武装、ソニックアローで矢型のエネルギー弾を放つ。

矢は簡単に受け止められる。更に凍りつき、粉砕された。まるでエネルギーがゼロになったかのようだ。

 

オーズは地面に腕を突き刺した。ひび割れと共に紫に光り、中からメダガブリューを引き出した。

ムチリが鳴き声を上げながら刺突を繰り出す。命中するが、オーズは微動だにしない。

メダガブリューを振り上げ、斬撃。ムチリの剣のような針をへし折った。

ナイトローグもさっきから狙撃しているが、まるで効いていない。いや体力が果てしなく多いような感触である。

 

オーズが向かってきた。

メダガブリューの斬撃をソニックアローで受け止めるが、膂力に差があり過ぎる。叩き伏せられた。

襟首を掴まれ、何度も地面に叩き付けられる。クレーターが出来るほどに。そしてメダガブリューの斬撃。吹き飛ばされ、デュークの変身が解除される。

カマキリヤミーが飛び掛かるが、当然のようにパンチで鎌を粉砕された。

 

これがン級単独撃破の力。出力も体力も強度も、何もかもが桁違いだ。

オーズはカマキリヤミーに狙いを定めたようだ。

オースキャナーが再びコアメダルをスキャンする。

 

『スキャニングチャージ!』

 

両肩の角、ワインドスティンガーが伸び、カマキリヤミーを貫く。

続けて頭部の翼、エクスターナルフィンを羽ばたかせて冷気をぶつけて凍りづけに。

トドメにティラノザウルスの尾、テイルディバインダーで粉砕した。複合技、ブラスティングフリーザ。

 

「はは、凄い威力だ」

 

「言ってる場合か!撤退するぞ!」 

 

飛び散ったセルメダルをオーズが掴んだ。

メダガブリューに一枚装填。

ナイトローグがデュークだった男を掴む。ムチリがそこへ合流した。

 

『ゴックン!』

 

メダガブリューを変形させ、砲のように構える。紫電と闇が砲口に集中する。

ナイトローグがトランスチームガンから煙を放出した。

 

『プ、ト、ティラノヒッサ〜ツ!』

 

セルメダルのエネルギーを極限まで濃縮した破壊光線、ストレインドゥーム。

紫の光が煙をかき消し、その後方まで消し飛ばしていく。

その後には何も残らない。周囲の瓦礫の山だけがその威力を物語る。

オーズは獣のように咆哮を上げる。その姿に理性は一片も無い。

 

『スクラップフィニッシュ!』

 

「チェストおぉぉ!」

 

グリス必殺の跳び蹴りがオーズに命中する。

エイジを取り戻す、第二ラウンドが幕をあけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スクラップフィニッシュは確かにダメージを与えたと思う。

だが少し怯んだだけだ。手応えが硬すぎる。

 

「変身!」

 

章はオリジナルのバースドライバーを使い、バースへ変身した。

 

申川(さるかわ)!時間を稼いでくれ!」

 

「無茶をおっしゃる!」

 

だがオーズの攻撃は大振りで、避けるだけなら何とかなった。

その隙を突き、ツインブレイカーでゼロ距離射撃。

ビクともしない。

背中をとんでもない握力で掴まれ、膝蹴りを喰らう。

 

「ぐは!?」

 

内臓が潰れるような衝撃。

そのまま仰向けに倒され、踏みつけ。骨が軋む。巨大な恐竜に乗っかられているようだ。

 

『そのまま足を抑えて!』

 

通信。

言われるがまま足を両手で掴んだ。直後、飛来した何かが爆発する。オーズは二、三歩後ずさった。

 

氷室(ひむろ)さん!」

 

G3-X、氷室真(ひむろまこと)がケルベロスとスコーピオンを合体させた状態で構えている。

と言う事はGXランチャーを放ったのか。

ゴ級の怪人にさえ十分なダメージを与えるロケットランチャー。だと言うのに、オーズには効果はあまり感じられない。

 

「氷室さんだけじゃないよ」

 

津田正一(つだしょういち)の声。仮面ライダーアギトがクロスホーンを展開した跳び蹴り、ライダーキックを放つ。更にオーズを後退させた。

 

「正一さん!」

 

「コンクリート蹴ってるみたい」

 

アギトが言う。確かにあの強度は人間どころか、ライダーからも外れている。

オーズの目が再びこちらを捉えた。

 

『シングルブレイク!』

 

グリスはツインブレイカーにガトリングフルボトルを装填。

G3-Xはガトリング砲、ケルベロスを構えた。

 

「おらあああ!」

 

「はあああ!」

 

二人でフルバースト。だがオーズはそれを浴びながら一歩、二歩、そして走りだした。

G3-Xへメダガブリューを振り降ろす。その一撃をアギトトリニティフォームがストームハルバードとフレイムセイバーを交差させ、受け止めた。だが。

バキッと音が鳴った。

フレイムセイバーとストームハルバードは真っ二つになった。

 

そのまま切りつけられるアギト。膝を付く。

返す刀、否斧でG3-Xも引き裂かれた。胸部装甲が激しく損傷している。

 

「エイジ先輩!何やってんですか!仲間ですよ」

 

オーズを後ろから羽交い締めにして、呼びかけるグリス。返ってきたのは獣のような叫びと、圧倒的な暴力。腕を振り払う。それだけで吹っ飛ぶ。

システムダウンしているであろうG3-X、いや氷室真へ、武器を振り上げた。

 

「どおりゃあああ!!」

 

叫び声を上げながら、巨大な影がオーズをさらっていく。

 

「章先輩!」

 

「悪い!待たせた!」

 

戦闘支援ユニット、バース・CLAWs(クロウズ)を全て展開した最強形態、バース・デイ。

ビルの壁面に、ドリルアームでオーズを張り付けにしている。

だがドリルから異音。回転が強引に止められている。弾かれた。

煙の中から、翼と尾を展開したオーズが飛び出して来た。

 

バース・デイもカッターウィングで無理矢理飛行し、何度もぶつかり合う。

そこより更に高高度から、援護射撃が飛んで来た。

単独飛行可能なGシリーズ、仮面ライダーG6である。二丁拳銃でオーズを狙う。

 

『氷室さん!G7の用意が出来ました!』

 

赤井(あかい)さん!」

 

G6、赤井瑠璃子(あかいるりこ)からの通信だ。真は一度戦線離脱する。

 

『ディスチャージボトル!潰れな〜い!ディスチャージクラッシュ!』

 

グリスもヘリコプターフルボトルをスクラッシュドライバーへ装填。ヴァリアブルゼリーで右腕にプロペラを形成し、飛び立つ。

グリスとG6が援護し、バース・デイがメインアタッカーとなる。

オーズの咆哮。

広範囲に極低温の冷気が発せられる。

G6の飛行翼とグリスのプロペラは凍りつき、落ちていく。動きが鈍ったバース・デイも尾を振り下ろされて、撃墜された。

落下するように降り立ったオーズ。その瞬間を見逃さない者が居た。

 

アギトバーニングフォームは走り込み、全霊のエネルギーを集中したバーニングライダーパンチを打ち込んだ。

オーズの顔面にクリーンヒット。爆裂音。短い距離だが吹き飛ばし、這いつくばらせた。

今までの攻撃は着実に効いている。後少しだ。

そこへアンダースーツとベルトを装着した真が戻って来た。

 

「エイジ君、自分を取り戻すんだ!」

 

『認証。資格者、氷室真。G7システム、機動します』

 

Gバックルmark7の天面ボタンを親指で押すと同時に、多数のドローンが飛来する。

ドローンが全身のアーマーとなり、各部へと装着される。

最後に装着されたヘルメットを手で微調整。四本角が展開。

最新鋭のGシリーズ、仮面ライダーG7だ。

 

日本刀のように片刃で反りの入ったブレード、オロチを展開。装備する。

アギトはシャイニングカリバーシングルモードを握る。

二人で斬りかかる。

メダガブリュー受け止められ、押し返される。そこをバース・デイがショベルアームで殴りつけ、押し勝った。

そこから前衛三人の連携。斬り、殴り、斬り、斬り、殴る。

オーズがふらついた。

 

『ツインブレイク!』

 

グリスはツインブレイカーにバラとロックフルボトルを装填。茨とチェーンを射出し、オーズを拘束。

だが拘束はすぐに引き剥がされた。

 

『リミッター解除、オーバードライブ』

 

一瞬でいい。一瞬あれば必殺技を発動出来る。G7はバックルの天面のボタンを押し、必殺技を発動。

アギトもシャイニングカリバーに炎を纏わせる。二人の合体斬りが炸裂した。爆発。だがまだオーズは立っている。

 

「とっておきだ……!」

 

『スクラップフィニッシュ!』

 

グリスは必殺技のエネルギーをツインブレイカーに集中、さらにロボットゼリーとフルボトルを装填。

バース・デイもリミッターを解除。ブレストキャノンをオーズへ向ける。

G6はリロードを終えた。

 

「目え覚ませエイジ!!」

 

バースの雄叫びと共に、二人の必殺ビームと一人の射撃がオーズへ到達する。

オーズをビルへと吹き飛ばし、その基礎を破壊したのか、ビルが倒壊する。

 

「やったか!?」

 

「フラグ立てんじゃねえ!」

 

グリスの呟きにバース・デイがツッコんだ。

煙の晴れた先、瓦礫の中には紫のオーズが佇んでいた。

 

「そんな……!」

 

G6の一言が、全員の気持ちを代弁していた。

最大の総火力をぶつけたのにまだ……!

再び臨戦体勢を取る。

 

「いいぜ、それがお前の望みなら、どこまでも付き合ってやる……!」

 

バース・デイの台詞に、しかしオーズは動かない。

突如、変身解除された。エイジが倒れこむ。

 

「エイジ先輩!」

 

グリスが駆け寄っていく。

ああ。もうこれで心配ない。

 

「たく、手のかかる相棒だ……」

 

変身解除した章は、意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エイジは夢を見ていた。

オーズプトティラコンボとなって多数のライダーと戦う夢。

違う、夢ではない。これは現実。その再演だ。

暴走して意識はなかったが、こうして無意識に刻まれている。

そして目を覚ます。

 

ここはBOARD(ボード)の治療施設内だ。

 

「……ああ」

 

自分はまたやってしまったのか。

章は、一実はどうなっただろうか。さっきまで見ていたはずの夢は、霞がかってもう思い出せない。

章はこんな時の為に、バースドライバーのオリジナルを持たされているが、プトティラコンボ相手では相性的には不利だったろう。

起き上がろうとしたが、痛みと固い何かに阻まれて上手くいかない。ギプスと包帯が全身に巻かれている。

身体中に何かの機械がたくさん繋がれていて、職員だろう。何人もの人が光るモニターを注視している。

 

「!目を覚ましました!」

 

その内の一人が言った。

ああ。二年前と同じだ。結局自分は、何も変われていない。

再び意識が遠のいていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梅雨の季節。その日は、生憎の雨だった。

 

「それじゃあいくよ?」

 

伊藤章(いとうあきら)様と書かれた病室のドアをノックする。

どうぞ、と聞き慣れた声がした。

 

「うぃすー」

 

「来てくれたのか。(あらし)、と一年ズ」

 

章は読んでいた本を、栞も挟まず閉じた。

千砂都は、きな子、四季(しき)、メイを連れ立って彼の見舞いに来た。

 

「章先輩!」

 

「な、何だよ桜小路。泣きそうな顔しやがって」

 

「本当に大丈夫なんすか!」

 

「問題ない。ちょっと腹に穴開いただけだ」

 

「「「問題ないとは……」」」

 

三人でツッコんだ。

きな子は章の事を本当に心配していた。直接見せないと駄目だなこれは、と思うくらいには。

 

「BOARDだからな。こういう事もある。そっちは?どういう組み合わせなんだ?」

 

「本当はみんなも来てるんだけどね、一年生に、二人が頑張った姿を見せたいと思って」

 

「ネガキャンにならねえか?情けねえだろ、病院のベッドで横になってるだけの姿は」

 

「そんな事ない。大怪我をしてまで私達を守ってくれているのは尊敬する」

 

四季が言った。表情こそ変わらないが、本音だろう。千砂都もうんうんと頷いた。

わからねえな、と章が言う。

 

「嵐はあいつがBOARDに居るのは反対なんだろ?」

 

あいつ、とはエイジの事だろう。

 

「うん。でもそれとこれとは別。街を守る為に頑張ってくれてるのは本当に感謝してるから」

 

「エイジ先輩のことですよね。どうして反対なんすか?テレビで何度も取り上げられるような人っすよね?」

 

「そうなのか?」

「そうなの?」

 

きな子の発言にメイと四季が聞いた。

そりゃあそうだ。二人はエイジがオーズである事を知らないのだ。

千砂都と章が焦る。

 

「な、何言ってるのきな子ちゃん!エイジくんは訓練生だよ?」

 

「そうだぞ、俺達も現場に出るが、そんな注目度はない」

 

「そ、そうでした!きな子うっかりしてたっす!」

 

四季とメイは顔を見合わせる。

疑われなかったのか、それ以上の追及は無かった。

ひとまず胸をなで下ろす。

 

「じゃあ、なんで反対なんだ?」

 

メイの質問に章がニヤリとした。

 

「付き合ってんだよ、こいつら」

 

「章くん!?」

 

「ええ!?」

 

「やっぱそう言う関係なのかよー!」

 

驚くきな子とメイ。

メイに関しては顔を覆い、ビターンと床に倒れてしまった。

 

「若菜は驚かないのか?」

 

「この結論は予測可能」

 

「そうか」

 

「そうか、じゃないよ!みんな違うからね!そういう関係じゃないから!……私の片思いなの」

 

言いながら、顔から火が出そうなほど熱くなる。

おお、と章以外の三人から感嘆のような声が聞こえた。

 

「そうそう。いわゆる両片思いなんだわ」

 

「だから違うって!」

 

「なんで断言出来るんだ?あいつの本音、聞いたことあるのか?」

 

「それは……」

 

章は急に真剣な顔になった。

なんなのだろう。今日に限ってやたと拘ってくる。

口ごもっていると、彼はぷ、と笑った。

 

「悪い悪い、いじり過ぎたな。何にせよ俺達は応援してるぜ。な?」

 

「はいっす!」

「おう!」

「me to」

 

「ありがとうね、みんな」

 

一年生にも片恋がバレてしまったが、皆いい子達ばかりである。

 

「俺は大丈夫だから、そろそろエイジの方に行ってやれ。だが覚悟しとけよ、あいつはかなりの重傷だからな」

 

「それは一実くんから聞いてる。心の準備は出来てるよ」

 

「つっても嵐が行けばすぐ元気になるだろうがな?」

 

「もう、まだいじり足りないの?」

 

「客観的事実だ」

 

桜小路達もサンキューな、と彼は言った。

そのまま病室を後にする。

次に向かうのはエイジの病室だ。

 

「あの、千砂都先輩」

 

「ん、何?」

 

歩きながらきな子が話かけてきた。

 

「エイジ先輩と二人きりのほうがいいっすか?」

 

「え?」

 

振り返ると、一年生達は妙に真剣な顔をしていた。

 

「そんな気使わないでよ。エイジくんもみんながくれば喜ぶから。それに私が居て欲しいんだよ」

 

「千砂都先輩が?」

 

メイが聞いた。

 

「うん。私、エイジくんが大怪我で運ばれた、って聞いた時、実は結構動揺しちゃったんだ。だからみんなが居てくれれば、部長の面目、保てると思う」

 

「……大切な人が担ぎ込まれれば、誰でも動揺する」

 

「ありがとう四季ちゃん。そういう訳だから宜しくね」

 

そしてエイジの病室へ辿り付いた。

コンコン、とノックをする。

 

「はーい」

 

中から彼の声がした。ただの三日、声を聞かなかっただけなのに、恋しいような気がしてしまう。

千砂都は一つ深呼吸をして、扉を開いた。

 

「うぃすー!」

 

ベッドで横たわっている彼の姿は、痛々かった。

全身で包帯を巻かれていないところがない。手足の片方づつにギプスが巻かれ、顔も半分ほどしか見えない。その首だけを動かして、彼は歓迎してくれた。

 

「うぃすー。ちぃちゃん、一年生のみんなも。来てくれたんだ。ありがとう」

 

それでも彼は笑顔だった。それが余計に千砂都の胸をギュと縛るように痛めた。唇を噛みしめる。

 

「大丈夫だよ。見た目ほど酷くはないから。心配しないで」

 

自分の表情を見たのだろう。彼は少し早口にそう言った。

 

「……その見た目でそりゃ無理な話だろ」

 

メイの言う通りだった。

 

「骨折、裂傷、火傷。それぞれ複数箇所。常識的に考えて、これは大怪我」

 

「でもほとんど治ってるから。BOARDの技術力様々だね」

 

四季の台詞にも何でもないように答える。

違う。そうじゃない。

 

「エイジ先輩。すぐ治るから、怪我していいって言うのは間違いだと思うんす。先輩が傷ついた分だけ、先輩を大切に思う人も傷つくんだと思うんす」

 

「……きな子ちゃん」

 

エイジは少し考え込んでいるようだった。

 

「すみません!きな子生意気言って!」

 

「いや、きな子ちゃんの言う通りだよ。ちぃちゃんごめんね。また心配かけちゃって」

 

彼は申し訳なさそうな顔をした。

千砂都は努めて笑顔を作る。

 

「エイジくんの生傷が絶えないの、いつもの事だもんね」

 

「ちぃちゃん……」

 

いつの間にか、目に涙が溜まってしまう。声も上手く出ない。

彼は何とか起き上がり、ギプスがない方の手をこちらに伸ばして。

 

「大丈夫。俺は怪人に負けたりしないから」

 

「……うん」

 

頭を撫でてくれた。千砂都の胸で、温かいものが広がっていく。

 

「怪人に負けてないなら、大怪我の原因は?」

 

「おい四季」

 

当然の疑問を口にする四季と、余計な事を、と言わんばかりのメイ。

 

「うーん。機密事項なんだよね」

 

「秘密って事っすか?」

 

「そうそう」

 

またそんな事を言うのか、こいつ。

四人でジトーと睨みつける。

 

「そんな顔しないでよ。どうしても言える事と言えない事が出て来るんだって」

 

焦ったように苦笑いするエイジ。

まあこれに関しては彼と言うより組織の問題なので、責めても仕方ないのだが。

 

「そう言えば他のみんなは?」

 

「……一階で待ってるよ。八人で押しかけるのもどうかと思って」

 

エイジは強引に話題転換をした。これ以上追及しても仕方ないので乗る事にする。

 

「そうなんだ。じゃあみんなにも宜しくね」

 

「エイジくんは?何か欲しいものとかない?」

 

「特にはないかな。ありがとう」

 

元気な姿とは言い難いが、一応の無事も確認できた。

長居するのも悪いだろうと思い、席を立とうとした時。

 

「あ、そうだメイちゃん、時間ある?」

 

「私?あるけど……」

 

「話があるんだ。二人きりで」

 

「みんなが居ちゃ駄目なのか?」

 

「うん。なんせ機密事項だからね」

 

エイジは笑顔だった。

千砂都はメイと視線を交わした。

 

「それじゃあ後でね」

 

病室を後にした。

廊下を歩きながら二人と話す。

 

「エイジ先輩、何の話があるんすかね?」

 

「二人の接点はまだ薄い。そこから導き出される結論は、告白」

 

四季の一言に、千砂都は雷が落ちたような衝撃を覚えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千砂都達を見送り、エイジへと向き直った。

 

「で?なんだよ話って?」

 

彼はいやに神妙な面持ちだった。さっきまでの笑顔とは程遠い。

 

「本当の事を知りたくない?」

 

「怪我の話か?だったら私より千砂都先輩に話してやれよ」

 

「無関係じゃないけど、そうじゃなくて、お兄さんの事」

 

胸がざわついた。

いや、確か面識があるとは言っていたが、本当の事とはどういう事だ?

 

「何言ってんだよ。本当も何も、説明は受けてる。バカみたいに強い怪人が出たんだろ。そいつにやられたって___

 

「半分本当で、半分は嘘なんだ」

 

頭がこんがらがる。今回の怪我と二年前の事とが繋がらない。それに半分?

 

「半分嘘ってどういう事だよ?」

 

「正確に言えば、ハルトさんを昏睡状態にしたのは、BOARDの仮面ライダーなんだ」

 

「……は?」

 

思考がフリーズした。そんな事は家族共々知らされていない。

心のどこかが、これ以上聞くな!と警告を発している。だがメイには何故か、エイジの話を遮ることが出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「二年前、邪神フォーティーン……いや名前はどうでもいいか。推定ン級……えっと、とにかく強い怪人が出た。これは本当」

 

「当時のBOARDの総力を上げて迎え撃ったんだけど、問題があったんだ」

 

「敵の巨大さと侵攻の早さ。そして同種の怪人達の活性化で、BOARDはてんてこ舞い」

 

「その強い怪人を早急に討伐する必要があったんだ。それも少ない人数で」

 

「そのチームの中に、仮面ライダーオーズって奴がいたんだ。知ってるかな?」

 

「ニュースで見た事ある?そう、そのオーズ」

 

「彼我の戦力差は歴然。でもオーズには切り札があった」

 

「それは凄く強力な代わり、使いこなせないと暴走するリスクがあった。怪人に取って代わって災害になるような」

 

「大丈夫だと過信したんだ。それまで似たような状況もあったから」

 

「オーズはその切り札を使って、強い怪人を倒した。ここまではよかった」

 

「そう。案の定暴走した。今度はオーズが東京に壊滅的な被害を出しかねない怪物になった」

 

「各地の怪人達の鎮圧で人材が足りない、戦力的に余裕のない状況で矢面に立ったのが」

 

「メイちゃんのお兄さん、ハルトさんだった」

 

「ハルトさんはチームの中心として、最前線でオーズと戦った。そして相打ちという形で何とかオーズを倒したんだ」

 

「その直後だった。ハルトさんが目を覚まさなくなったのは」

 

「原因は不明とされてるけど、推論ならあるんだよ」

 

「オーズの切り札には、あらゆるエネルギーを無に帰す力がある。恐らくはそれのせいじゃないかな」

 

「目覚めないのは、その意志の力が奪われたから」

 

「ハルトさんが寝たきりなのは、つまりはオーズのせいなんだよ」

 

「けどBOARDは、オーズが暴走した事実を隠蔽した。全てを怪人のせいにした」

 

「オーズを怪人討伐のヒーローとして祀り上げ、ハルトさんは怪人に負けた悲劇のヒロインとして演出する事にした」

 

「事件後、この事は機密事項になって、口外禁止になった。うん、俺もバレたら超厳格処分」

 

「なんで話たのかって?メイちゃんはハルトさんの家族なんだから、知る権利があるでしょ?」

 

「なんでそんなに詳しいのかって?それはね、俺がオーズだからだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え?」

 

情報の洪水だ。まだ上手く飲み込めない。いや嘘だ。話の筋は理解した。したのに驚いているのは、現実を理解するのを拒んでいるからだろう。雨音が妙にうるさい。

エイジは続けた。

 

「今回の怪我もね、俺が暴走したから。ライダー五人がかりで止めた結果がこれなんだ」

 

彼は微笑を浮かべた。

 

「ごめんね、今まで黙ってて。本当はすぐに全部告白するべきだったんだけど、米女(よねめ)家と接触しないよう言われてたんだ」

 

ようやく感情と頭とが並列に走り出した。

つまり、兄が目を覚まさないのは、彼のせい___なのか?本当に?

彼だって、暴走するような手段を取らずに済むなら、それに越したことは無かったはずだ。状況がそれを許さなかっただけで。

誰にも何も言う事が出来ず、罪の意識に苛まれてきたのではないか?

 

「長くなっちゃったね。つまり俺が言いたいのは、メイちゃんには復讐する権利があるってこと」

 

「はあ!?何言ってんだよ!?」

 

目を合わせた。エイジの目は澄んでいる。まるでここで終わってもいいと言う風に。

やめてくれ、そんなこと、望んでいない___。

 

「……後輩を人殺しにする気かよ」

 

「人殺し?違う違う、これは怪人退治だよ」

 

「はあ?」

 

さっきからはあはあ言ってるな自分。驚き過ぎで語彙力が壊滅したらしい。

しかしわけわからん事言う先輩だ。どこからどう見ても人間だろう。

 

「俺が変身に使うのはコアメダルって言うんだけど、平たく言えば怪人の核なんだ。それが俺の中には三枚入ってる」

 

「はあ!?大丈夫なのか!?」

 

「大丈夫じゃない、かな。BOARDの技術で進行は遅らせられるけど、俺はいずれ怪人になる」

 

「はあ!?」

 

またはあ!?って言ってる、とエイジは笑った。

笑い事じゃないだろう。それは人間に戻れるのか?可逆性はあるのか?と言うかその前に取り出して貰えばいいだろう。

 

「それが出来ないんだよね。方法が無いでは無いんだけど、ちょっと抽象的でね」

 

「……この事、かのん先輩達は知ってるのか?」

 

「ううん。知ってるのは章だけ。これも機密事項だからね。ここまで喋ったら、俺BOARD辞めなきゃならないかも、はは」

 

「ははじゃねえ……」

 

そりゃ機密にもなる。東京のヒーローが実は怪人になりかけているなど。

どれもこれも一般人が知っていい事ではない。

 

「メイちゃんは優しいね」

 

「急になんだよ?」

 

「怒っていいんだよ?ハルトさんの事。お前のせいだって、責めていいんだよ?」

 

やはり彼は優しく微笑む。

そんな様子を見て気付いた。彼は罰して欲しいのだ。自らの罪を裁いてくれる誰かを、二年間ずっと探していたのだ。

だがメイは問いたい。それは本当に彼の罪なのか?

 

「……エイジ先輩は盗聴の事、なんでみんなに言わなかったんだ?」

 

「え?」

 

「被害者の妹だから、許してくれたのか?そんな大怪我してまで戦うのは、全部贖罪の為なのか?」

 

「それは……」

 

「違うだろ。あんたは誰かを救いたくて、守りたくて戦ってるんじゃないのか?盗聴の件を許してくれたのは、あんたが前向きに人を認められる、お人好しだからじゃないのか?知り合って日は浅いけど、それくらいなら私にだって分かる。二年前だって、そうだったんじゃないのか?」

 

エイジは少し俯いた。

 

「買いかぶりだよ。俺は__

 

「エイジ先輩の言う事が事実だとしても!私はそんな人に復讐したって嬉しくも何ともない!」

 

メイは涙をこらえた。そのせいでエイジを睨むようになってしまう。

 

「推論だろ?エイジ先輩のせいって、決まったわけじゃない。私はまだ諦めてない。兄貴が明日、ひょっこり目を覚ますかもしれないって」

 

「メイちゃん……」

 

「それでも納得いかないなら、信じてくれよ」

 

メイはついに落涙した。

 

「どうせすぐ目を覚ますって。私にもスクールアイドルが出来るって信じて応援してくれたように」

 

窓の外では、ようやく晴れ間が顔を覗かせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エイジとの話を終え、一階ロビーに戻ってきた。

 

「あ、メイちゃん」

 

気付いたかのんが手を振ってくれた。

Liella!と一実を含めた八人全員が居た。

 

「みんな、待っててくれたのか」

 

「随分長かったですね。何をお話されていたんですか?」

 

(れん)が聞いた。

 

「あー、その、なんだ、身内のことでちょっと」

 

エイジからは、機密事項なので黙っていて欲しいと言われている。俺のBOARD生命に関わるから、と。

 

「身内と言うのは、お兄さんのことデスか?」

 

「そう言えば知ってるんだったな。そうそう。寝たきりのバカ兄貴の件」

 

可可(クゥクゥ)の質問にメイは答えた。

 

「Liella!にも応援部にも関係ないから、心配しないでくれ」

 

「良かったっすね、千砂都先輩!」

 

「いや、それはそれで良くないんだけどね……」

 

それを聞いて胸をなで下ろしたのは千砂都だった。

 

「どうしたんだよ?」

 

「告白じゃなかった?」

 

四季が首を傾げた。

どうしてそうなる?まあ確かに告白と言えば告白だったが。

成る程、四季の余計な一言で、千砂都は気が気でなかったわけか。

しかし、今日の話を聞いて、大丈夫だ、とは気軽に言えない。彼は放っておけば怪人になってしまうのだ。

 

「大丈夫なんですか?お兄さんに何かあったとか?」

 

「あんたはもうちょっと近づいて話なさいよ……」

 

「本当になんでもないんだよ。それに、ほら」

 

離れた位置から話しかける一実に、すみれがツッコんだ。

エイジはどんな気持ちで、怪人化の事を黙っているのだろう。

話して良いかどうか、メイは判断が付かなかった。

だから彼のように笑うことにした。

 

「機密事項だからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





紫のコアメダル

エイジの中にはプテラ、トリケラ、ティラノの三枚のコアメダルが宿っている。これらは全てオリジナルであり、二年前の邪神フォーティーンのとの戦いの後入りこんだ。
エイジが危機に陥れば、自動的に飛び出し、プトティラコンボへと変身させる。
BOARDの技術で怪人化はある程度抑えられるが、完全に停止することはない。
このままなら彼は近い将来、紫のグリードとなるだろう。






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