応援よろしく!   作:冷奴with紅しょうが

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スポットライトは何のために

 

 

 

 

 

「最初からこういうつもりだったのかな」

 

「理事長のこと?」

 

「そう」

 

かのんと話ながら階段を上がる。手分けしてスクールアイドル同好会の部室を探しているのだ。

各部の部室が集まる新校舎のほうには無かった。ので普通科、旧校舎内を当たっている。

そんな中、エイジは疑問を口にした。

 

「一位とれって言うのは、本気で取り組めよって言う発破で、実際は辞めさせる気なんて無かったんじゃないかなって」

 

本当はスクールアイドル活動を止める気も辞めさせる気も無く、ただ真剣に取り組むよう仕向けただけなのではないだろうか。

 

「う〜ん、どうなんだろう。でも少なくとも一位とって欲かったのは本心じゃないかな」

 

「そうだよね」

 

そこはエイジも同意見だ。順位は高ければ高いほど良いだろう。

音楽で結果を出して欲しかったのも事実だろう。

結局真意までは図れない。わからないが。

 

「分からないと言えば葉月(はづき)さんもだよね。スクールアイドル以外ならいくらでも応援してあげられるって」  

 

かのんが言った。

部室の鍵(なぜか二つ)を渡して来た時、(れん)はそう言っていた。スクールアイドルだけを目の敵にしているようだった。

 

「なのにラブライブのレベルは知ってる。普通嫌いなものの事なんて知らないよね」 

 

エイジが答えた。

かのんが決意を伝えた時、あなた達がラブライブを勝ち抜けるとは思わない、とも言っていた。

いや、嫌いなものだからこそ詳しい事もあるか?

この分だとまた何かで関わった時、衝突するのは必至だろう。

なぜ彼女はああまで強固な姿勢なのか。

 

「「仲良く出来たらいいのに」」

 

「「あ」」

 

二人して呟いて、笑い合う。ここまでとは言わないが、この半分くらいは友好関係を築けたらいいと思う。

 

「ところで、こんな所に部室があるの?」

 

「見取り図だとこっちのほうにスペースがあって、あ」

 

かのんの質問に答えていると、扉を二つ見つけた。階段の突き当たりとその右手側。

右側の扉の小窓からは陽光が差している。そのせいか奥の扉は暗く、不気味に見えた。

目の前まで行くと、四-Bと掲げられ。

 

「学校アイドル部?」

 

更にその隣にそう記されていた。探していた部屋である。

 

「なんだろうねこれ?学校をスクールって読ませるのかな」

 

「最近つけた感じじゃないよね。古びてる」

 

言い合っていると、中から物音がした。

かのんが一瞬で逃げてしまう。心霊現象とか苦手だっけ。

別にエイジも得意ではない。怪人と幽霊の恐怖はまた別物だ。

 

「こんにちは〜……」

 

意を決して扉を開く。

暗い中に、髪の長い女性が一人。振り向いた。

慌てて壁をバシバシ叩き、スイッチを探す。明かりがついた。

見れば安心。ちゃんと足がある。普通科の制服だった。

 

「かのんちゃーん、幽霊じゃないよー」

 

「あの、スクールアイドル同好会の部室はここって聞いたんですけど……」

 

もしかしてこれは。

 

「もしかして、入部希望者?」

 

クーカーの転機は意外とすぐにやってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部室探しに分かれた全員を招集した。

早速可可が入部希望者(仮)こと平安名(へあんな)すみれに詰め寄っている。

 

「スクールアイドルは素晴らしいデスヨ!青春の輝きデス!」

 

可可(クゥクゥ)、落ち着け」 

 

(あきら)が宥める。

話を聞いたところ、即入部という訳ではないようで、興味を持って来てくれたらしい。

そこで可可オススメのサニーパッションの動画を視聴する。

 

「これがラブライブ決勝の舞台……!」 

 

「はい、お客さんもたくさん入りマス」

 

「ラブライブで優勝すれば、もちろん有名になるわよね?」

 

「はいデス!サニパ様のフォロワー数は……」

 

「九万八千!?ギャラクシー……」

 

すみれと可可が話す。ぎゃらくしー?

彼女は有名になりたいのだろうか。だとしたらスクールアイドルはうってつけだろう。ラブライブを勝ち抜いていけば、自然と知名度は上がっていく。

 

「やるわ。やるわったらやるわ!」

 

「本当に!?」 

 

すみれは決意を固めたらしい。かのんが驚く。

 

「ええ、これからよろしく」

 

ではまず何をするべきか。

 

 

そして部室の隣の扉、その先は屋上だった。

 

「広〜い!」

 

「これなら何人居ても練習できそうデス!」

 

かのんと可可が駆け回る。

確かに屋上には十二分に平坦なスペースがあった。

 

「で?何をすればいいの?」

 

「そうだね、じゃあこれやってみて」

 

すみれの質問に千砂都(ちさと)が答え、そしてステップをふんだ。

 

「ちぃちゃん、初心者にいきなりは___

 

エイジの心配をよそに、すみれは同じステップを簡単にやってのけた。

おお。

 

「じゃあ、これは?」

 

千砂都は更に難しいステップを見せる。

 

「それくらいなら」

 

すみれは今回も完璧にこなしてみせた。

おおお。

 

「基礎はしっかり出来てるみたいだね」

 

「これはもしや、即戦力というやつデハ!?」

 

千砂都と可可が言う。

ここまで出来るからには、何かやっていたのだろうか。

 

「小さい頃から、ショウビジネスの世界に居て」

 

「ショウビジネスって、テレビとか!?」

 

「何回か、ね」

 

かのんの驚き混じりの質問に、少しはにかむように答えたすみれ。

 

「それで、センター、なのだけど」

 

「あ、そっか。今まで二人でやってきたから意識してなかったけど、三人になるんだもんね」

 

かのんがはた、と言った。

そうか。三人になれば自ずと真ん中、センターが出来る。そこを誰にするかも考えなければならない。

 

「色々考え方はあるかもだけど___

 

「かのんがいいデス」

 

すみれの言葉を遮り、可可が言った。

 

「私もかのんちゃんでいいかな」

 

「え?」

 

「二人はどう思う?」

 

困惑するかのんを尻目に、千砂都は応援部へ振る。

 

「やっぱりかのんちゃんだよ」 

 

「まあ澁谷だろうな」

 

エイジも章も同意見だった。

やはりというべきか、センターは早々に決まりそうだった。

 

「ちょっと待ったー!!」

 

そう叫び、すみれが滑り込んできた。

 

「センターって、そんな感じで決めていいの?もっと歌もダンスも実力がある人がやるべきなんじゃないの?」

 

「そ、そうだよね」

 

すみれの反論にかのんは同意した。

ではどうやって決めようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その回答は、かのん達のクラスでの多数決という形になった。

三人それぞれのアピールタイムを挟み、投票。

その結果、かのんが三十票以上を獲得し、センター決定となる。

やはり歌を取り戻した彼女は強かった。

ちなみに可可が二票。すみれはゼロ票だった。

そしてスクールアイドル同好会部室。

 

「納得いかないわ!歌もダンスも、全然負けて無かったはずよ!」 

 

「それも見て貰った上での結果だよ」

 

怒りを露わにするすみれに、千砂都は冷静に返した。  

今度はすみれはこちらを睨んでいる。

 

「と、特別差があるわけじゃないけど、かのんちゃんの歌は、やっぱり良かったかな」

 

エイジは自分の素直な感想を口にした。別に投票した訳じゃないけど。

すみれの視線は、次に章に向けられた。

 

「___俺に言わせればな、平安名」

 

「この二人になら勝てる、って思ってなかったか?」

 

「ぐっ!?」

 

章の鋭い指摘に、すみれは苦悶の声を上げた。

 

「正直見え透いてたぞ。勝ちを確信した奴の驕り」

 

「章、言い過ぎだよ」

 

「そういう点では二人のほうが真摯だった。センター云々関係なく、パフォーマンスに対してな」

 

「章!」

 

エイジの二度目の制止でようやく口をつむぐ。だが目が言っている。お前も感じただろう、と。

自分達は戦闘経験からか、油断や隙に確かに敏感だ。その雰囲気が彼女にあったか無かったかで言えば、あっただろう。

 

「可可達よりかのんのほうがあるのデス。センターに相応しい花とかカリスマ性みたいなモノが」

 

「がはっ!?」

 

悪気のない可可の発言が止めとなった。 

すみれは戸棚に背を預け、肩で息をしている。

 

「や、やめる……」

 

「え?」

 

キョトンとしてしまった。

今なんて?

 

「センターになれないならやる意味ないわ!やめるったらやめる!」

 

「すみれちゃん!?ちょっと待っ___あ痛!?」

 

追いかけようとしたかのんだったが、勢いよく閉しめられた扉に額をぶつけてしまう。

扉の先にはもう誰も居なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

BOARD東京本部基地。

仮面ライダー用の特殊免許を入り口にかざした。

重い扉はひらき、中へ章と共に入っていく。

 

「かのんちゃんだって、センター任せてもいいって言ってるんだから、譲ってもいいんじゃない?」

 

「いかがなもんかね。センターって、要はリーダーみたいなもんだろ。それをほいほい明け渡すのは」

 

雨天だったため千砂都が帰ったあと、四人で協議した。

そこで意見は真っ二つにわれる。

すみれにセンターを任せてもいい派、かのんとエイジ。

センターはやすやす譲ってはいけない派、可可と章。

結局答えは出ないまま解散となった。

 

「第一、そんな譲ってあげるみたいな形で、平安名が納得すると思えねえな」  

 

「それもそっか……」

 

「それに今、それを気にしてる余裕はないはずだぜ」

 

その通りである。 

エイジと章は本部から呼び出しを受けていた。こういう時は大抵、とまでは言わないまでも、何かしらのお叱りというパターンが多い。

一体何で怒られるのだろうか。

 

「普通に考えればガタキリバだろうな」 

 

「えー。あれはしょうがないよ」 

 

「はたから見れば、功を焦ったようにも見えるぞ」

 

そしてオペレーションルームまで来た。

 

「「失礼します」」 

 

「お、来たわね。問題児二人」

 

そこで待っていたのは志摩郁代(しまいくよ)

若干二十代でBOARD東京本部の司令官にまで上り詰めた才女である。

 

「俺は違いますよ。こいつが無茶苦茶するんです」 

 

「バディなんだから一緒よ」

 

章が訂正を求めたが、一蹴された。

めちゃくちゃって。そんなつもりはないのだが。

 

「それで志摩さん、話と言うのは?」

 

「司令官と呼びなさい。司令官と」

 

エイジが切り出すといつも通りの注意を受けた。

まあいいわ、と郁代は話を始めた。

 

「まずはガタキリバの強行使用ね。多数対多数の戦闘は被害が広がりやすい。いつでも庇える訳じゃないのよ」

 

「はーい」

 

「返事だけはいいんだから。それとここからが本題」

 

郁代の顔つきが変わった。本当のお叱りはここからか。

 

「違法使用者の何人かが、自分の意思とは関係なく使用させられている事が分かったわ」

 

お叱りでは無く、至極真っ当な情報共有だった。

 

「その何人かが、口裏を合わせてる可能性は?」

 

「ないわ。まるっきり接点がないのよ。共通してるのは使用時の記憶が曖昧な事と、使用中は暴走気味なことくらいね」

 

章の質問に郁代はお手上げと言った具合のジェスチャーをした。

 

「させられているって事は、誰かが操ってるって事ですか?」

 

今度はエイジが質問する。

 

「恐らくは、ね。ティーレックスドーパント、マンティスマルガムもその内よ。何か現場で見なかった?」

 

エイジと章は顔を見合わせた。これと言った不審人物等を見た覚えはない。

 

「特別何かは見てないですね」

 

章が答えた。

 

「そう。でも操っているなら近くにいる可能性が高いわ」

 

「はい、周囲を警戒しておきます」

 

エイジはそう返答した。

もし本当に本人の意思に関係なく、ガイアメモリやケミーといった怪人への切符を使わせられるなら、とんでもない事態だ。

 

そしてサイレンが鳴り響いた。壁一面に貼られた巨大なモニターが赤色に染まる。

 

「怪人出現、数一!」

 

オペレーターが叫ぶ。

画面をみると、比較的結ヶ丘に近い位置だった。

だがここからだと距離がある。

 

「志摩さん、パワーダイザーの使用許可を!」

 

「OK、あと司令官ね」 

 

エイジと章は変身し屋上へと向かう。

 

パワーダイザー。それはひと言で言うならマスドライバーである。

宇宙へ資材を射出する機構を応用して、ライダーをバイクごと目的地まで運搬する装置だ。

なおその本当の姿はロボットらしいが、エイジは見たことがない。

オーズはパワーダイザーにライドベンダーで乗り上げる。固定された。

 

『カウント開始、十、九、八、七___

 

ギュルギュルと音をたて方角が定まる。

 

___三、二、一、射出!』

 

つよい風とGがかかるが、変身していればなんという事はない。

そして目的地へと滑り込むように着地。

 

場所は神社である。 

そこには冷気を纏うゴリラのような怪人が佇んでいた。 

 

『対象、イエティメギドと断定、融合されている被害者の切り離しに注力してください』

 

「了解!」

 

中に人が取り込まれている。救出が最優先だ。

敵との距離を詰め、掌底を放つ。が、簡単に受け止められてしまう。

そのまま右腕を掴まれ、振り回し、投げられた。

 

「がっ!」

 

鳥居の柱に激突。

この怪人、強い。ともすると()()()()()の可能性がある。そうなると余裕でメ級は超えてくるだろう。

 

今度はメダジャリバーで斬りつけるが、太い腕で完全にガードされた。押し返され、弾かれる。

完全にパワー負けしていた。

そして敵は全身から冷気を放ち、周囲を凍らせた。雨粒さえも凍てつく。

オーズの足元が凍りつき、身動きがとれない。

 

「かはっ!」

 

ボディブローをもろに食らう。氷は砕かれ、オーズの身体が浮き上がる。更に背面から拳を叩きつけられ、地面とキスさせられる。その上蹴りをくらい、転がされる。

 

『そこ動くなよ!』

 

バースからの通信。

パワーダイザーで射出されたバースが、敵を轢き飛ばした。

 

「大丈夫か!」

 

メダジャリバーを支えにして立ち上がりながら、駆け寄るバースを制止する。

 

「離れてて。ラトラーターを使う」 

 

味方が離れるのを確認し、頭部と脚部に相当するメダルを交換。オースキャナーでスキャン。

 

『ライオン、トラ、チーター!』

『ラタラター、ラトラーター!』

 

復帰してきた敵は両手から先ほどよりも強力な冷気を放つ。

 

「うおおおおおおっ!!」

 

全身から放つ熱と光。ライオディアス。冷却攻撃を押し返し、更に敵にダメージを与え、周囲の凍結を溶かす。

バースとアイコンタクト。

チーターレッグのスピードで急接近。両手のトラクローを突き立て、高速の連続キック。

取り込まれている人が見えてきた。

 

『クレーンアーム』

 

バースはクレーンアームを展開。ワイヤー付きフック、シュプリンガーハーケンを発射。

被害者に貼り付き、そのまま巻き取っていく。

これで救出は完了した。

最後の蹴りを見舞い、一旦距離を取る。

融合していた人を取られたことで、敵は怯んでいるようだった。

この隙は見逃せない。

再びオースキャナーでメダルをスキャン。

 

『スキャニングチャージ!』 

 

「せいやー!」

 

出現した三連リングをくぐり、急加速。トラクローで敵をエックス字に切り裂く。必殺技、ガッシュクロス。

イエティメギドは爆散した。

そして排出されたアルターライドブックを回収する。

 

「エイジく〜ん」

 

「え、かのんちゃん!?」

 

突き破られた壁の向こう、縄で椅子に縛られたかのんが居た。

トラクローで縄を切り、彼女を解放する。

 

「本の中から光るメモ帳みたいなのが、すみれちゃんの中に入っていって、そしたら怪物が!」

 

「うん。災難だったね……ん?すみれちゃん?」

 

振り向いて確認すると、バースが抱きかかえているのは誰であろう、すみれである。

 

「どうゆうことったらどうゆうことー!?」

 

彼女の叫びは御尤もだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうやら古い本の中にアルターライドブック、それもオリジナルが紛れ込んでいたらしい。

いわゆる変身アイテムや怪人を生み出すアイテムには大別して二種類ある。オリジナルとレプリカだ。

オリジナルを元に、様々調整を行い多機能にしたレプリカ。

稀少性が極めて高く、レプリカと比べると性能が段違いに高いオリジナル。

エイジ達が使っているのもレプリカで、単純な戦闘力こそオリジナルに劣るが、通信や各種アイテムの収納、様々な怪人に対応出来る機能を有している。

今回のイエティメギドはどうやらオリジナルだったようだ。巻き込まれた二人は不幸だったが、未発見のオリジナルが回収出来たのは僥倖である。

それ以外の問題と言えば。

 

「ふ〜ん。あんたがあのオーズねえ」

 

つま先から頭の先まで、すみれはまじまじと見つめて来た。

面映ゆいです。また正体がバレた。最近多い。

 

「で、ウチの神社、どうなんのよ!」

 

どうやらここはすみれの実家だそうだ。イエティメギドとの戦闘で損壊してしまっている。

 

「それは大丈夫。多分もうすぐ___ほら、始まった」

 

エイジの言葉と同時に、建物やその破片が青白く輝き始めた。そして時間が巻き戻るかのように元通りになっていく。

 

「聖剣?とかいう物の力だって。俺も詳しくはしらないけど」

 

BOARD基地のどこかで運用されているという聖剣。建造物等の被害は何でも元通りに出来るらしい。

その所在も、もっと具体的な性能もトップシークレットで組織内でも知っている者は一握りだとか。

 

「ところで、二人は何をしてたの?」

 

根掘り葉掘り聞かれる前に、こっちから質問する。

なんだか二人はあたふたしているようだった。

 

「お、おまじない遊び、みたいな?」

 

かのんはそう答えた。

 

「そ、そう!神社だし」

 

続けてすみれも同意する。

確かに本には呪いがどうとか書いてあった。しかしかのんはそういう類は苦手では無かっただろうか?

 

「エイジくん!女の子のプライベートを聞き過ぎるの、よくないと思うな」

 

「それもそうだね。ごめん」

 

かのんにそう指摘され、素直に謝った。デリカシーが欠けていた。

 

「そんな事よりすみれちゃん、どうしてセンターにそこまでこだわるの?」

 

成る程。かのんがここに居る意味は理解出来た。

要は放って置けなかったのである。お人好しな彼女らしい。

すみれは遠くを見るような目をした。

 

「私ね、小さい時から色んなオーディション受けてたの。でも一生懸命頑張っても、いつもどうでもいい脇役ばかり」

 

「だからスクールアイドルなら何とかなると思ったの。アマチュアだし。そのあたりの気概はあんたの言う通りよ」

 

すみれはそう言いながら章の方を見た。彼は表情を変えずに聞いている。

 

「でも今回のことで分かった。私は真ん中では輝けない」 

 

「それは、まだわからないと思うけど……」

 

かのんの言葉にすみれは首を横に振る。

 

「分かるわ。私はそういう星の元に生まれてる。二人にも伝えておいて。悪かったわねって」

 

「待って」

 

立ち去ろうとするすみれをエイジは引き留めた。

 

「だったら依頼してみない?一人じゃなければ何とかなるかもしれないし」

 

「無理よ。それにあんただって、スポットライトを浴びる側でしょ。なんたってあのオーズなんだから」

 

「おい、平安名___

 

すみれは自嘲気味に笑った。

何かを言おうとした章をエイジは手で制した。

 

「注目されるかどうかなんて関係ないよ。俺達の仕事は人を助けること。すみれちゃんはどう?本当に主役になりたかっただけ?それであれだけのスキルを身につけたの?」

 

「それは……とにかく、私はもういいから」

 

「気が変わったらいつでも言ってね」

 

すみれは傘を広げ、行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

「お、晴れてる」

 

窓の外を見上げ、エイジは呟いた。

今日も雨だったので、スクールアイドル同好会の練習は中止になり、応援部の部室で章と共に手持ち無沙汰にしていた。

クーカーのサポート以外にも部活の助っ人や教員からの雑務、果てはペット探しなどをやってきたが、今日はそのどれも無かった。

それでも部室に居るのは。

 

「来ると思うか?」

 

「うん、だってかのんちゃんだし」

 

来るべき相手を、すみれを期待してのことだった。そしてすみれを説得、ではなくスカウトに行ったのはかのんである。

だからこそエイジは確信に近い感覚をもっていた。きっと来る。

 

そして扉は開かれた。

 

「本当に来た……」

 

驚く章の視線の先にはすみれが居た。

すみれだけではない。他の三人も居る。確執は解れたらしい。

 

「私にセンター、獲らせてくれるんでしょ?」

 

「依頼なら全力で応援するよ」

 

勝ち気な表情のすみれに、エイジは応える。

 

「そういう訳だから覚悟してね、かのんちゃん!」

 

「うん、楽しみにしてる!」

 

エイジの挑戦的な宣言に、かのんは笑顔で返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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