「そりゃあ話は聞いてもらえなかったけどさ、だからって尾行はどうなんだろう?」
エイジはかのん達に聞いてみた。
「もうこれくらいしか、
かのんはそう答えた。
二人して撃沈しているので、ただの話し合いでは駄目だろう。
そういう分けで
「そっちは俺がやっておく。葉月の事、気になるんだろ?」
そのあれこれは
エイジはスクールアイドル同好会のメンバーと共に、尾行班に加わった。
すみれの活躍もあり、何とかバレずに葉月家へと到着出来た。
「おっきな御屋敷だね」
「お金持ちだろうとは思ったけど、ここまでとはね」
「どうしよう〜!約束もしてないのに〜」
「ここまで来たのデス、腹をくくりまショウ!」
狼狽えるかのんに
『はい』
「あの、私達、結ヶ丘の生徒なんですけど、葉月恋さんに話があって来ました」
『……』
かのんの言葉を信用してくれたのだろう。門は開いた。
応接間までメイドさんが通してくれ、温かい紅茶まで準備してくれた。
「今お嬢様を呼んできますね」
メイドさんは出ていった。
部屋には五人と一匹が残された。一匹?
可可とすみれはその一匹、大きな犬に近づいていった。
「フサフサであったかいデス〜」
「本当。剥製なのに気持ちいいわね〜」
「いや、二人とも。その子生きてるよ」
「「またまた〜」」
エイジの言葉は信用されなかった。
そこでその犬はワンと鳴いた。二人は腰を抜かしている。
その大型犬はまっすぐにエイジの元に向かってきた。
「あははは!くすぐったいよ」
のしかかられ、頬をペロペロと舐められる。相当人懐っこいようだ。
「エイジくん、昔から動物に好かれるよね」
少し呆れたように千砂都が言った。
「お待たせしました。___貴方達は」
入って来た恋はやはり驚いているようだった。
「ごめんね葉月さん。急に押し掛けて。さっそく聞きたいんだけど、この子の名前なんて言うの?」
「……チビです」
「「「「ちび!?」」」」
四人は驚いているようだった。この巨体にその名前は無理もない。
「そっかー。お前チビって言うのか。お手出来る?おお、えらいえらい」
エイジが右手を差し出すと、ポンとその上に前足を置いて来た。大きくて賢い、可愛い恋の家族と言うわけだ。
「そうですか。ここまで来てしまったのですね」
恋は天井を仰いで、一つ呼吸をした。
「いいでしょう、お話します。葉月家と結ヶ丘の現状を」
恋が話してくれたのは、母との思い出でもあった。
結ヶ丘があった場所には昔、恋の母親、
そこは廃校になったが、同じ場所にもう一度学校を作りたいと花は奮起し、新設校の創立にまでこぎ着けた。
だが過労がたたり二年前に帰らぬ人に。
そうして出来た結ヶ丘も状況は芳しくない。運営資金は乏しく、来年度の入学希望者も多くはない。
そこで恋は入学希望者を増やすため、結ヶ丘を一番の高校にするため、音楽科メインの学園祭を打ち出したのだ。
当時の集合写真や卒業アルバムまで見せてくれた。まるで親しい友人に接するかのように。
「今日ここで見聞きしたこと、他言しないで貰えますか」
帰り際、恋はそう言った。
「え……でもみんな、理由を知ればきっと理解してくれるよ?」
「不安にさせたくないのです。結ヶ丘に入学した事を後悔して欲しくない」
かのんの言葉に、恋は唇を噛み締めながら答えた。
___て、わけなんだけど、どう思う?」
「やり過ぎ。入学希望者を考えるにしても、音楽科だけの学園祭は早計すぎたな」
「それは、そうなんだけど……」
同好会部室に向かいながら。
章には事情を説明した。彼なら他言したりしないだろう。
「このままだと、葉月さんは誤解されたままになっちゃうよね」
「でもそれも、自分で説明するしかねえんじゃねえか?」
そして扉を開く。
「あれ、みんな疲れてない?」
「そうなんだよ〜」
エイジの疑問にぐったりしたかのんが答えた。
「そっか。音楽科行ってきたんだ」
「そうよ。めちゃくちゃ風当たり強かったんだから」
すみれが言った。
四人は問題解消の為に普通科と音楽科の橋渡しをしようとしたそうだ。
「で、普通科はやっぱり?」
「うん、学園祭参加したくないって子までいて、溝がどんどん深まってる」
千砂都が答えた。
二科が何となく感じていた隔たりが、ここに来て顕在化したのだろう。
このままでは、学園祭が開催できるかどうかも怪しいかもしれない。
「リコール署名の方はどうなのデスか?」
「残念ながら順調だ。最悪普通科の九割が集まるかもな」
可可の質問に章が答えた。
恋は誤解されたまま、普通科と音楽科の分断は大きくなり、学園祭も危ぶまれる。
事態は悪い方へ悪い方へと向かっていた。
「私のせいで、申し訳ありません」
恋は部室まで訪ねて来てそう言った。
「ああ。迷惑してるよ」
「ちょっと章」
「署名を滞らせるのも限界だ。どっかで釈明しなきゃなんねえと思うぞ」
章は釈明するなら早い方がいい、と言いたいらしい。
「それについてはご心配無く。明日全校集会を開くと理事長がおっしゃっていました。成り行きしだいでは学園祭は中止とも」
最悪のシナリオが現実味を帯びてきた。
「どうするの?」
「全て説明するしかないでしょうね。これも自分で蒔いた種ですから」
かのんの質問に、恋は覚悟を決めているようだった。
「今からでも普通科と音楽科で学園祭を行うって言おう?」
「しかし……」
かのんの言葉に言い淀む恋。
まだ彼女が話していない事がある。
「スクールアイドルだよね。どうして反対なの?」
エイジが聞いた。
ここまでの話を聞いて、きっと母親とも無関係ではないと確信する。
「かつてここには、学校を廃校から救うために、アイドル活動をする生徒がいました。それが母です」
やはり。 話が見えてきた気がした。
「しかし奮闘虚しく、神宮音楽学校は廃校になりました。そこで私は母の遺志をついで、結ヶ丘でスクールアイドルをするつもりでした」
「「「「「え!?」」」」」
「マジかよ……」
あそこまで反対していた恋がスクールアイドルを。
誰もが驚きを隠せなかった。
「じゃあ一緒にやろう?私達が手を取り合えば___
「何も残っていないのです」
かのんの言葉を遮り、恋は悲嘆を隠そうともせず言った。
「他の学校の記録は残っているのに、スクールアイドル活動の部分だけが残っていないのです。あえて処分したとしか……」
「まだだよ。葉月さんちに無くても、学校の資料室とかなら___
「既に探しました。けれど何処にも見当たらないのです」
エイジの言葉に、恋は首を横に振る。
母親はスクールアイドル活動を後悔して、処分したと思い込んでいるのだ。
まだだ。まだ探していない場所がある。
「じゃあここは?まだ探してないよね?」
「そうだよ!ここの鍵、確か葉月さんが渡してくれたよね!?」
エイジの言葉にかのんは、はっとしたように食いついた。
スクールアイドル同好会部室の、なぜか二つついた鍵。
「え、ええ。理事長が見当たらないと言うので、探してみたら、家の引き出しから見つかりましたが……」
かのんはスッと立ち上がり部室内を探し始めた。
エイジも倣って探してみる。恐らくそれには鍵が掛かっているはずだ。
「ここに来た時、最初にあったものってどれだっけ!」
「物置きのほうではないでショウか?」
可可の声を受け、物置きへと駆け込んでいくかのん。
「本当にここにあるんでしょうか?」
「……わからないけど、後悔してた、って決め付けるのはまだ早いよ。大事な物ほど隠して、しまって置いておくかもしれないから」
不安げな恋に、エイジが言った。
「あった!」
そしてかのんが見つけ出して来たき木箱には、確かに鍵が掛かっていた。
部室の鍵と一纏めにされたもう一本の鍵でその箱は開いた。
その木箱の中からは神宮音楽学校アイドル部Diaryと書かれたノートと衣装が見つかった。
ノートには、何一つ後悔していない。学校の仲間達と一つになり、一喜一憂できた奇跡のような時間を過ごせた感謝。そしていつか、結ぶと文字を冠した学校を創るという夢への希望が詰まっていた。
恋は大粒の涙を流し泣いた。母を思い、真実を知り泣いた。
そして迎えた全校集会。
恋の謝罪から始まり、もう一度一つになって学園祭を作っていきたいとの訴え。さらには普通科、かのんが登壇し、ノートの内容を語ったことで、ようやく事態は収束を迎えた。
そして恋はかのん達の手を取り、スクールアイドルとなった。
「リコール署名もなくなったし、これでようやく学園祭に本腰入れられるな。めでたしめでたしってか?」
「まだまだ。むしろここからが本番でしょ。うちのクラスだけじゃない。みんなのクラスから応援要請が来てるんだから。それに新しく入った恋ちゃんの練習も見てあげないと」
「だな。遅れた分を取り戻さないとだ」
応援部の二人は普通科、音楽科問わずクラスに出入りし、進捗を確認しては浮いている人材を投入する、そんな役割をこなしていた。まさに普通科と音楽科の橋渡しだ。
そして夜になり、ようやく空き時間が出来、同好会に合流する。
「恋ちゃんすごいよ。実力的にはみんなを引っ張っていけそう!」
「へえ。そうなんだ。じゃあこっちは心配なかったかな」
千砂都から恋の評価を聞き、安堵した。
「エイジさん。章さんも。本当にありがとうございました」
「いや、俺達は何も。活躍したのはかのんちゃんだから」
「いえ、お二人がいなければリコールはどうなっていたか分かりませんし、母のノートもこんなに早く見つからなかったかもしれません」
まさか恋から感謝の言葉を受け取る日がくるとは。
「おう。リコール組止めるのは骨が折れたぜ」
「章はすぐに悪ぶりマスね」
「苦労したのは事実だ」
章と可可がやり取りする。
最初は章が可可を連れてきて、一人から始まったスクールアイドルも今や五人になった。感慨深い。
「……入学希望者、増えるでしょうか」
屋上から、恋が校庭を眺めながらポツリと言った。
「正直、わからない。けどきっと伝わると思うんだ。私達の音楽で。ね」
「うん。この学校、良い所だから」
かのんから振られ、エイジは答えた。
「そうだ!」
言い立ったかのんがピースサインを突きだした。
「せっかくだから、やってみようかなって」
「可可、夢見ていました!」
可可がピースを合わせる。
「うぃすーじゃ駄目なの?」
「アイドルデスから」
千砂都がピースを合わせる。
「良いんじゃない?」
すみれがピースを合わせる。
そして最後に恋がピースを合わせて、星のような形になった。
かのんが掛け声を上げる。
「歌で皆を繋いでいこう!Song for me! Song for you! 」
「「「「「Song for all!!」」」」」
普通科、音楽科が一丸となって準備した学園祭ライブは大成功したようだ。
「生で見たかったなあ〜!」
「毎回言ってるな、それ」
エイジと章は出し物の当番真っ最中だったため、見ることが出来なかった。
そこへライブを終えた、制服姿の五人がやって来た。
正直来て欲しくなかった。
「章、あんた、ソレ」
すみれが笑いを堪えながら言う。
最初に目に入ったのは章だったようだ。
ちなみにエイジ達のクラスの出し物は、男女逆転メイドカフェ。つまり今、章もエイジもメイドの格好なのだ。
「章は線が太すぎマスね。えぐみがでてマス」
「やかましいわ。筋肉質と言え」
可可評に文句を言う章。
今の内に逃げ出してしまおうか。
「お前も早く出てこい」
「嫌だあー!」
教室の扉を盾にしていたら、章に引っ張られた。
「ナゼェミテルンデスゥ!?オンドゥルラギッタンデスカァ!?」
「奇声をあげるな」
「あいた!」
喚いていると章にシバかれた。渋々みんなの前へ出た。
「「「「「おお……」」」」」
「好きに料理してー……」
引いているのだろうか。悲鳴なのか感嘆なのか、区別の付かない声が、五人から漏れ聞こえた。
「可愛いデスよエイジ!体型とベストマッチデス!」
「ええ。異様なほど似合ってるわよあんた」
「やめて〜。嬉しくない〜」
可可とすみれからはそんな評価を貰った。似合って欲しくなかった。涙出てきた。
「う、涙の上目使いは反則ですよエイジさん!」
「レギュレーションもヘッタクレもないよこんなの」
恋は胸を抑えている。反則ってなんだよ。
「大丈夫だから。自信持ってエイジくん!章くんみたいな悲惨な事になってないから」
「誰が悲惨だ澁谷こら」
何言っても傷つかないと思ってんじゃねえぞ。そうかのんに噛み付く章だった。
「……」
「ちぃちゃん?なんで黙ってスマホ向けるの?」
「……」
「止めてちぃちゃん!カメラを速射しないで!」
エイジの願いは届かず、ただ無情にもシャッター音だけが響いた。
そして学園祭は盛況の内に幕を閉じた。
「なんでお前はまだメイド服なんだ?」
「クラスのみんなが着替えさせてくれないんだよ……」
学校中が片付けに追われていた。
エイジも仕方なく、メイド姿のままあれこれと奔走していた。
周囲の奇異の目を受けながら。
そうしていると、何やら廊下の奥が騒がしい。自分のせいではないだろうと耳を澄ませる
「怪人が出た!」
誰かのそのひと言で空気が凍り付く。
章と二人、人波の逆方向へと走る。
そして辿り付いたのはのは体育館。
棍と盾をもった赤い大男のような怪人。それから倒れている生徒を庇う恋の姿があった。
「葉月さん、逃げて!」
「私は生徒会長です!結ヶ丘の生徒を置いてはいけません!」
生徒の言葉に耳を貸さず、怪人と向き合う恋。
エイジは章と共に怪人に跳び蹴りを見舞う。怪人は微動だにせず、蹴ったこちらが宙を舞う事に。
それでも何とか恋達と怪人の間に割り込めた。
「二人とも、俺達から離れないでね」
エイジはオーズドライバーを、章はバースドライバーを腰に当てた。ベルトが出現し固定される。
オーズドライバーにコアメダルを三枚装填。 オースキャナーでスキャン。
章はセルメダルを弾き、それをキャッチ。
「「変身!」」
バースドライバーにセルメダルを装填。ツマミを捻る。
『タカ、トラ、バッタ!タ・ト・バ、タトバ、タ・ト・バ!』
エイジはオーズに。章はバースへと変身した。
オーズはメダジャリバーを取り出し、切り込む。が、盾に弾かれてしまう。
『ショベルアーム』
左腕をショベルアームに換装したバースが大型クロー、バーミリオンバケットで盾を殴る。
何とか盾を弾いた。その隙を付いてオーズがバッタレッグでのドロップキックを食らわせ、距離を稼ぐ。
空からバットショットが飛んで来た。これで映像が基地へと中継されるだろう。
『敵はオリオンゾディアーツと断定。剛力です。注意してくだしい』
「「了解」」
オリオンゾディアーツは棍棒で殴り掛かってきた。メダジャリバーで受けるも、壁まで吹き飛ばされる。続けざまにバースも転がされて来た。
これは相性を考えなければ。
胴と足に相当するメダルを交換し、オースキャナーでスキャン。
『タカ、ゴリラ、タコ』
ゴリラの腕力を宿すガントレット、ゴリバゴーン。タコレッグの吸盤の如きグリップ力で対抗だ。
追撃の棍棒を受け止めた。ゴリラアームなら敵の剛力にも対抗できる。棍棒を弾き返した。
空いた胴にバースのショベルアームが炸裂。後退したところへゴリバゴーンによる殴打。押し返せている。
オーズのボディブローで宙へ浮かせる。そこへバースバスターの射撃。敵は地に伏せた。
「決めるぞ!」
バースが叫ぶ。それぞれに必殺技の体勢を取ろうとした時、狙撃を浴びせられた。
「言ったはずだぞ。邪魔をするなと」
「ナイトローグ……!」
オーズは新たな敵を睨んだ。
『デビルスチーム』
「数の利を得る」
ライフルのような武器のバルブ部分を回し、ナイトローグは銃口を恋達の方へ向けた。
「伏せろ!」
バースの呼びかけも虚しく、弾丸は発射された。そして恋へと命中する。
「う、うあああ!」
恋は悲鳴をあげながら、怪人へと姿を変えた。
「なんてことを……!」
「怪人を造れるのか!」
オーズとバースは驚き、怒りを露わにする。
『標的はバーンスマッシュと断定。成分を抜き取って被変身者を保護してください』
「「了解!」」
すかさずバースはナイトローグへ撃ち返した。
「アイツの相手は俺がやる。お前はコンボを切れ!」
「うん!」
バースはナイトローグへと向かっていった
頭部と脚部に相当するメダルを交換。オースキャナーでスキャン。
『サイ、ゴリラ、ゾウ、サゴーゾ、サゴーゾ!』
オーズの重量級コンボサゴーゾ。パワーと耐久力、そして重力に干渉する能力が特徴だ。
「うおおお!」
ドラミングのように胸を叩き、衝撃波を発する。怪人達の注意をこちらへ誘導するためだ。
狙い通り二体ともこちらへ向かって来た。
棍棒が振り下ろされるが、それを肩で受け止め、殴り返す。
バーンスマッシュの火炎放射を浴びながら突進。両腕のパンチで吹き飛ばす。
もう攻撃は効かない。
再びオースキャナーでスキャン。
『スキャニングチャージ!』
両足を揃えて跳び上がり、そのまま垂直に落下。振動と共に重力を操り、敵を拘束。二体をこちらへ引き寄せる。
サイヘッドとゴリラアームによる三点同時攻撃、サゴーゾインパクト。
オリオンゾディアーツは爆散、バーンスマッシュは倒れて動けないようだ。
今の内にエンプティボトルてスマッシュの成分を抜き取る。怪人は恋の姿へと戻った。
オリオンゾディアーツだった少年からはゾディアーツスイッチを回収。
これでこちらは片付いた。バースの加勢に行かなくては。
走り出そうとした時、バースが帰って来た。
「悪い。逃げられた」
「大丈夫。こっちは楽させて貰ったから。今回も操り案件なのかな」
「アイツが出てきたってことは恐らくな」
オーズとバースは変身を解除した。
「エイジくんと章くんが、オーズとバース……!?」
「ナナミちゃん、大丈夫?」
「う、うん腰が抜けちゃって」
恋が庇っていた生徒は、かのんと同じクラスのナナミだった。
彼女は平気そうなので恋の方へと向かう。
「恋ちゃん、しっかりして」
「ううっ……サヤさん?」
「エイジだよー」
「エイジさん?私はいったい……?」
恋は目を覚ました。
「怪人にされてたんだよ。どこか痛んだりしない?」
「大丈夫です。それよりも虫が」
「虫?」
恋が言うには、ハエのような虫が取り付いた途端、男子生徒の様子がおかしくなったらしい。同じくナナミも見たと言う。
「それ、結構重要な証言かも」
一連の操られ事件の糸口になるかもしれない。
男子生徒から聞き取りをしていた章が戻ってきた。
「意識がなかったとよ。今回も操られ事件で間違いないだろうな」
「やっぱり……」
「ところでエイジさん」
章と話していると恋から声をかけられた。
「なぜまだメイド服なのですか?もしかして、気に入ったのです?」
「あ、私もそれ聞きたかった」
恋とナナミからの素朴な疑問が胸をえぐる。
「着替えるタイミングを失ったんだよ……」
「「えー?」」
二人からは疑惑の眼差しを向けられた。
「着替えるタイミングを失ったんだよー!」
エイジの嘆きは、体育館中に木霊した。
バットショット(BOARD製)
カメラからコウモリに変形するメカ。原作は仮面ライダーW
写真だけでなく動画も撮ってリアルタイムで送れる優れもの。
怪人が出現した地点に飛び立ち、映像を基地へと送る。その役割の都合上、何台ものバットショットが街の至る所で待機している。