Fate/phantom tale   作:おさかなパフェ

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御伽話の始まり

このお伽話の始まりは、齢6歳の少女が誘拐されたことから始まった。

その少女は、魔術が非科学的なものとして認知された末に切り捨てられたこの世において、極めて珍しい魔術師の家の子供であった。

それに加えて、彼女は希少な属性の魔術を操ることが出来る体質であったためか、その家の人間や魔術師として生きるにしても死ぬにしても、常人ならば己の境遇を呪わざるを得ない程の特異的な存在で、特殊な素質を持った人間。

それこそが、遠坂桜という人間であった。

 

故に、父親である遠坂時臣は彼女のことを扱いきれないと思ったようで、聖杯戦争と呼ばれる戦いが度々行われていた冬木という地において、魔術師として絶大な力を持つ間桐家に養子として出されることになっていた。

本来の歴史の流れであれば、彼女は間桐家の養女となった末に地獄よりも残酷な体験をするのだが....この世界での桜という少女は、そのようなことにはならなかった。

と言うよりかは、そのような出来事は無いに等しいと言っても過言ではない。

何故ならば、彼女は一人の魔術師によって養子に出される前に誘拐されたからである。

 

その魔術師は、遠坂桜という存在が自らの魔術の研究のオメガでありアルファであると、自らの生み出した芸術の始まりであり終わりとして認識していたからか、遠坂家や間桐家の目を掻い潜った末に彼女を誘拐し、生きたままホルマリン漬けにする形で保存しようとした。

だが、結局のところ.....彼の野望にも近い夢は叶うことは無かった。

むしろ、その夢は残酷なまでに無惨な有様で潰えていた。

魔法が使えない、一般人の警察官に逮捕される形で。

 

ただの街のお巡りさんこと、萌葱幻十郎は魔術師が逃亡する際の中継拠点としてこの街にやって来た時から、桜を無理矢理引きずる形で連れ回していた時から、警察官としての正義と本能が怪しいと睨んでいたからなのか、彼の尻尾を見つけ出すのは容易であった。

そして、魔術師が催眠の魔術を使う暇を与えることもなく彼を逮捕すると、誘拐されていた桜を保護することに成功。

 

しかし、桜が実家の電話番号すら知らなかったことに加えて、彼女を遠坂家に戻しては今回のようなことを起こるかもしれない。

そう懸念していた幻十郎に対し、桜は間桐家の養子になりたくないという意思をハッキリと見せたため、彼は今後のことも考えて彼女を養子として迎えるを決断し、その日から遠坂桜は萌葱桜として暮らすようになった。

 

「俺は、正義の味方になりたくて警察官になったんだ」

 

いつかのある日、桜に向けて警察官になった理由についてそう語る幻十郎のの言葉には、昔のことを懐かしむ割には過去の自分を軽蔑し、少し先のことを考える割には未来の自分を嘲笑し、今現在のことを触れる割には今日の自分に失望していたため、桜はそんな彼の様子を不思議に思いつつも、その願いが叶ったのかどうかを尋ねた。

すると、彼は血は繋がらないが自身の娘である桜の言葉をしっかりと聞いた後、その言葉に対して丁寧にこう答えた。

 

「俺は正義のヒーローにも、悪役にもなれなかったよ」

 

そう呟くように声を漏らす幻十郎の顔には、正義という名の太陽に焼き尽くされてもなお、悪という名の深淵の奥底に飲み込まれてもなお、英雄だからか何者にもなれないという苦悩が、承認欲求ではない何かしらの感情が渦巻いており、桜は彼の中で渦巻く感情が何なのかを脳内でグルグルと考えていた。

 

やがて、桜が子供から大人へと成長していく段階を踏むにつれて、幻十郎が抱いていたその感情が何なのかを理解していった。

彼は....萌葱桜の父親は、街のお巡りさんである萌葱幻十郎という人間の本質は、どんな感情でさえも呑み込む空虚そのものであると。

萌葱幻十郎という存在は、傍目から見れば一般的な成人男性にしか見えないが、その本質は普通の皮を被った異常者であった。

 

周囲の話に共感することも、何かを観て泣くことも、誰かのために怒ることも、愛を分かち合うことも、人間が人間たる所以である欲望ですらも、彼の無いにも等しい心の代わりになることは無かった。

むしろ、そう言った類いのモノは心の代わりに存在する空虚に飲み込まれていき、彼にとっての苦痛と化していく。

物心が付く前から心を持たず、赤子の頃から感情を持つふりをしていた玄十郎にとって、感情とは痛みそのものであったからであった。

 

萌葱幻十郎という人間の本質について、そう結論付けた彼女は父親である彼を見捨てるということはしなかった。

と言うよりかは、むしろ彼を苦しめた善悪について興味を示したようで、彼女は父親と同じく善と悪の境界線のことを詳しく知るために、父親と同じような道に進むことになった。

最も、彼女の場合は日本ではなく....海外であった。

 

「.....うん、うん。とりあえず、フランクリンさんと掛け合って今度の休みに帰れるかどうかを聞いてみますね」

 

2022年のアメリカ某所の空港にて、インターポールの捜査官となった萌葱桜はとある事件の捜査のため、これからロシアへと向かおうとしていた。

幻十郎のような警察官になりたいと努力した結果、日本で普通のお巡りさんとして働いていた彼女は、どういうわけかインターポールへの出向が決まったことにより、今に至るのだった。

 

もちろん、彼女は自身が魔術師の娘であることは隠している。

だが、それでもなお不安はあったようで....彼女は幻十郎にバレない範囲で魔術の練習していたためか、それなりに魔術が使えるようになったのである。

万が一のことがあったら、魔術を使う。

その覚悟を胸に、彼女は今日も捜査官として活動していた。

 

そして、空港で父親とのスマホ越しの会話を終えた彼女は、椅子に座ると今回の事件の捜査に対し、本能的に胸騒ぎを覚えていた。

それはまるで、あの日あの時に誘拐された時と同じような感覚だったため、桜はどうしても不安を拭い切れてはいなかった。

 

魔術とは縁の無い捜査機関の捜査官になったとは言え、魔術師の家のしがらみからは逃れられない。

魔術師の娘として生まれたからには、魔術との関係性は切り離せない。

今回の事件の詳細を頭に浮かべる度に、桜自身はそんなことをボーッとした様子で考えていた。

 

ちょうどその時、空港内に飛行機の案内のアナウンスが流れできたためか、彼女は荷物を手に持つと飛行機の中へと移動していった。

 

「シュトルノーチ家の聖杯.......ですか」

 

これは、一人の少女が辿るもしもの世界の物語。

あるいは、運命の夜のIFの世界で巻き起こる英雄譚。

または、魔術師の世界で言うところの亜種聖杯戦争と呼ばれる戦い。

もしくは、幻の聖杯に関する御伽話である。




見切り発車の妄想詰め込み福袋バーゲンセール状態の作品ですが、どうぞよろしくお願いします。
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