ダンジョンに儲けを求めて何が悪い!   作:ケツアゴ

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大体ソードオラトリアの少し前の遠征の辺りです


プロローグ

 働けど働けど我が暮らし楽にならず。命懸けで稼いだ金額の表示に頬が緩んだのが昨日。今現在その額面が物凄い勢いで減って行く。

 

 ああ、桁がどんどん少なくなって……。

 

 金額の減少が止まり、代わりに目の前に現れた扉を手で押すも、扉の軽さとは裏腹に足取りは重い。

 この種族特有の小柄で華奢な身体には不釣り合いな程に巨大な荷物も本来なら軽々持てるのだが、今の俺にはアリの上に乗せられた巨岩と同等だ。

 

「……はぁ」

 

「何をクソデカ溜め息なんてしてるんですか、兄さん! 金ヅ……お客様がそろそろ来そうですよ!」

 

 扉を潜れば其処は先程まで居た市場の隅ではなく、怪物を生み出すダンジョン内部。一応モンスターは生まれない安全地帯ではあるけれど、出来るのならこんな所には来たくなかったさ。

 

 墓場にまで金は持っていけないと気落ちする俺の隣では妹がフンス! と鼻息を荒くして張り切っている。

 両親が死んであの阿保の世話になっていた頃に比べたら随分逞しくなったと嬉しさ半分呆れて半分。

 

「相変わらず金の亡者だな。今やって来ているのは一応は種族の英雄だぞ? リリ。まあ、俺はどうでも良いけれど」

 

「兄さんにだけは言われたくないのですが!?」

 

 そうこう話している内に目当ての集団、世界の中心であるオラリオにて最強派閥の片割れであるロキ・ファミリアのお出ましだ。

 

 先頭を歩くは小人(パルゥム)の英雄であるフィン。ダンジョン深くで待ち構える俺達兄妹の姿に一瞬驚くも直ぐに苦笑いしつつ背後に視線を向ければ期待に満ちた目を俺達に向ける団員達。

 

「……まあ、良いか。良いよ、キャンプの準備が終わった者から利用を許可するよ」

 

 少し悩んだ後、肩を落として息を吐き出せばアラフォーの苦労人らしい哀愁が漂っているので育毛剤を格安で売ってやろう。

 髪に来るからな、髪に。

 

「さてと、先ずは僕との商談にしようか、キリア。魔石とドロップアイテムの配送を頼みたい。手数料は5%って所かな?」

 

「需要と供給」

 

「……ふぅ。良いよ、契約書を頼む」

 

 指で八を示す。本来ならばサポーターの相場の割合を要求したい所だが名声も高いしヘイトは稼ぎたくないからな。

 何せソーマ・ファミリアは数だけの弱小、今後の付き合いもあるしサポーターは他の仕事もするのを考えれば妥協すべきか……。

 

「はい、既に此方に用意していますよ、フィン様」

 

 苦笑いするフィンにリリがペンと契約書を差し出す。此処までの道中で集めた深層の魔石とドロップアイテム、それを換金した際の金額は幾ばくなものか。

 

「さて、他の階層から来るモンスターの相手はロキ・ファミリアに任せて俺達は昼飯にするぞ。これから忙しくなるからな」

 

「そうですね。チキンのサンドイッチと水筒にスープを用意していますよ」

 

「チキンか。……牛肉が食いたいな」

 

「はいはい。今日の儲けを考えたらご馳走が食べられますから我慢して下さいね」

 

 約束された報酬に心踊らせつつ弁当箱を広げ、少し経った頃に持ち込んだ商品を広げれば商売の時間だ。

 正直、下手なモンスターの相手よりも忙しい。

 

 

 

「ねえ、キリア。何か美味しいものない? アタシ、お肉が食べたい!」

 

「味付けされた肉の串や焼き菓子は用意しているぞ。串は一本五千ヴァリス。菓子は一袋二千ヴァリスだ」

 

「相変わらず高いなぁ。でも買った! 三本ちょーだい。手形で良いんだよね?」

 

「ではティオナ様。此方にサインをお願いします。あっ、化粧水など如何ですか? 一回分が五百ヴァリスになりますよ?」

 

「無駄よ。この子、その辺気にしないんだから。私は五回分お願いするわ」

 

「あの、替えの下着なんかは……」

 

「その手の物は後で俺とリリが男女別に売るから待ってくれ。タオルやトイレットペーパーもあるが要るか? 因みに配送料十万ヴァリスで洗濯物の配送も請け負おう」

 

「じゃが丸くんの小豆クリーム味は……」

 

「三個で四千ヴァリスになりますよ?」

 

「買います……」

 

 ダンジョン探索、それも団体で深層を目指せば数週間は当たり前。当然食い物も制限されるし、色々と要りようだ。普通ならグッと我慢する所に目の前に差し出されたら割高だろうと飛び付く。

 

「兄さん、水の樽の交換準備が終わりましたよ」

 

「ポーション類も補充が終わったし……」

 

 まあ、そんな感じで地上の価格に桁を増やして売ろうが需要と供給って奴で手形の金額は鰻上り、消費した額を遥かに上回るって寸法だ。

 

 その結果、物凄い勢いで上級冒険者が殺到するんだが、それを捌くのはマジで疲れる。肉体は別として精神がな。

 

「売れ残った分はリヴィラでボールス様にでもお売りするとして……」

 

「持ち込んだ物の大半は売れたな」

 

 目標を果たしたら退散退散、俺としてはさっさと金勘定をしたいって訳よ。時は金なりって事で帰ろう、我が家へ。因みに酒臭いファミリアのホームとは別である。

 

 

「【金は天下の回り物、金の力は偉大なり。心身削って得た金で、我の願いを叶えよう】、マネーイズパワー」

 

「我が兄ながら酷い詠唱ですよねぇ」

 

 詠唱が終わるなり空中に現れる文字。その中から移動場所の項目を選択し、目的地を入力すれば目の前に現れるのは此処に来た時に通った扉。

 そして、減っていく残高。

 

 大…丈……夫。今回の儲けで楽に取り戻せる。金をもっと稼ごう。この魔法なら可能なんだから。

 

 移動も、未来の為のヒントも、強くなる為の成長促進だって金次第で思うがままだ。金だ、金さえあれば大抵の物は上手く行くんだから……うん。

 

 行きに感じた精神的虚脱感に耐えつつ俺は在庫処分の為に十八階層へと向かう。……地上へは徒歩で行こうかな。

 

 

 

 

 

「……漸く帰りやがったか、あの野郎」

 

「ベートったら相変わらずキリアが嫌いなんだね。一応同じ第一級冒険者だから雑魚じゃないでしょ?」

 

「同じ第一級の面汚しだからに決まってんだろうが。強い奴の役目を果たさず団長すら格下に放り投げてる奴の何処を嫌うなってんだよ」

 

 

 

 

キリア・アーデ Lv5

《魔法》

 

【マネーイズパワー】

 

 詠唱式・金は天下の回り物、金の力は偉大なり。心身削って得た金で、我の願いを叶えよう

 

 精神力とは別に自らが稼いだ金を消費して発動する。

 

 転移 強化 成長促進 等の項目から選択して使用。使う力の大きさと消費額は比例する。他者を対象にする場合、消費額増加

 

 

 

 

 




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