ダンジョンに儲けを求めて何が悪い!   作:ケツアゴ

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恩人へのアリィの態度ですがフレイヤへの対応がアレですからね うん


第十話

 力を示す目的で豪奢な内装にした部屋の中、俺が持ち込んだ短剣を鑑定していた男は訝しげに首を傾げた。

 

「はて? アリィという令嬢がシャルザードに居りましたかな? この短剣を見る限り、相当な身分の様ですが」

 

 リオードの街に向かった俺だったが、知人の所に顔を出すも不在。この地でも力の象徴であった屋敷を貸し出して少し離れた先のオアシスの別荘に拠点を移していた。

 

 本人曰く、先ず狙うならあの場所。機会損失よりも命の損失を優先した、との事。流石は暗黒期に脱法なら問題無しとばかりに色々やっていた商人だ。大多数が根拠も無しに頭の片隅に置いてある“自分は大丈夫だ”を捨て去っている。

 

 知っているんだよ、日常ってのが前置き無く奪われるってのを。

 

 そんな商人とはオラリオでの元取引相手。此奴の読み違いで復讐者に要らん恨みを意図せず買って、闇派閥に狙われてるから商人を巻き込まない様に顔を隠していたのが災いして俺も襲われた。

 

 いやー、その事を気に病んだ上に俺の第一級冒険者って地位もあって情報のやりとりをしていたんだが、そういった贅肉みたいなもんを抱えてくれていて都合が良かった。

 

 腕を切り落とされた程度、俺の魔法ならどうとでもなったんだ。必要経費はこの関係性を買ったからと思うと安い安い。

 

「あー、その紋章ってやっぱり……」

 

「ええ、王家に連なる家柄でしょうな。となれば隠し子を担ぎ上げて軍の旗頭にでもする気でしょうか。して、その娘の見た目の特徴ですが……目の色は?」

 

「紫」

 

「成る程。ならば男装させ口元を隠せば影武者には。もしくは……」

 

 神が多く住まう場所に住んでいたからこそ商人は情報をハッキリとは伝えて来ない。ただ、少し考えれば分かる範囲を呟く。

 

 これで何も聞いていないってのが本当になる且つ情報を得られた。

 

「それでキルア殿。此度のワルサとシャルザードの戦争をどう考えますか?」

 

「起こるべくして起きた。ワルサ王が善良な暗君でなく、運が良くて最高に悪かった、それだけだ」

 

「でしょうな。奪わねば民を食わせてやれぬ過酷な地の王の所に力を与えに神が来て、シャルザードという国力の差で出せなかった手が届いた。その後の狼藉は兎も角、善と悪が見る方角で入れ替わる範囲。ですが……」

 

「今まで差し伸べられなかった手を差し伸べてくれた相手が悪かった。特効薬に別の病気の、周囲一帯を巻き込む疫病の副作用があった。……そんな所か」

 

 例え侵攻を善神に咎められたとして、過酷な地に生まれた運命を受け入れて死ねとでも? となるだけだ。

 

 結論。運が悪かった、以上。地上に降りる順番がラシャプに回ったのも、目を付けたのがワルサだったのも不幸な事故みたいなもんさ。

 せめてオラリオの有力派閥と繋がりがあればな。この国、イスラファンの商人の格言でも下手な有力者よりも先に媚を売れってなってるぞ?

 

 軍に恩恵を与えてた神に遠慮したか機会に恵まれなかったか。

 

 起こるべくして起きた、確かにそうだわ。

 

 この商人は暗黒期のオラリオを知っているからかラシャプがどんな神格の持ち主か見抜いたらしい。

 だから調べ、ボールスの所に噂が行く様にした。

 

 余所者なのに商会五傑の筆頭候補とまで呼ばれてうるだけあるよ。……なんだ、その商会五傑って。

 

 

 あのお姫様じゃ逆転は難しいだろうな。戦力も足りず、予想通りなら外部の支援者との繋がりも薄そうだ。

 部下がイスラファンの商人と繋がるがあるとして、どれだけの利益を提示すればリスクを負ってくれるやら。例え勝っても搾り取られ続けるだけじゃね?

 

 恩がある分、対外的に厄介だぞ。俺には無関係だが、亡国のって売り文句も使えず、商人に買い叩かれて秘蔵の品が出回れば短剣の付加価値も下がるし、その辺は心配だ。

 

 他はまあ……ラキアみたいな理由じゃなけりゃ生存競争の範疇だし、俺からは何とも

 

「それでキリア殿はこれからどうするおつもりで?」

 

「自分の目で情報収集しつつ観光。美味い屋台知らねえ?」

 

 肉系が良い、肉系が。特に牛。

 

「此処を出て右に曲がった先の果物屋横のケバブが絶品ですぞ」

 

 良いねえ。ケバブ食って果物食ったら、リオードに取ってる宿に戻って水風呂入って昼寝して夜中に備えるとするか。

 

 

 え? 娼婦? いや、病気もらった時、心当たりを妹とかに知られるの嫌だし。歓楽街に興味があっても近付かないのはオッタル達との繋がり以外にも理由があるんだよ。

 

 あのイメージ戦略に失敗して同じ美神に評判負けてる女神ってヒス持ちっぽいし関わりたく無い。

 

 

「さてと、このまま事態が進むべくして進むと良いんだが。トラブルとか避けたい」

 

「神はそれをフラグと呼ぶらしいですな。この場合、何かあったらフラグ回収と呼びますぞ」

 

 ……おーう。じゃあフラグ回収しない様にソーマ様に祈っとくわ。

 

 

『無理。そういったの専門外』

 

 何か嫌そうな顔したアホを幻視したがきっと大丈夫。直感も外れているさ。寧ろこういった際に外れておけば重要な時に当たるから。

 

 

 

 

「フレイヤ様が奴隷を解放して屋敷をお買い上げねぇ。前日までに売られた連中はお可哀想に。自分の不運を呪うんだな」

 

 はい、リオードの街に到着早々にフラグ回収。お疲れ様でした!

 

 到着後あっちこっちで女神の噂が流れて来るし、何やってんだロイマン。

 外に出さないのも仕事の内だろう。オラリオに幾ら賄賂渡して外に出たと思ってんだ。あの女神、金の力で出るタイプじゃねえだろに。

 

 少し遅めの昼飯を注文、流れてくる会話に耳を傾けて情報を集めていたものの、このまま滞在しても何かに巻き込まれそうだ。

 

 だってフレイヤ様がアリィらしい奴と旅立ったって聞こえて来たから。

 

「飯、未だ来ないのか……」

 

 世話になっている神は居るが基本的に関わりたく無いのが俺のスタンス。大盛りのパスタを食ったら速攻で別方向に向かおうと思っていたら運ばれて来るのが目に見えて勝利確実!

 

 

「お待たせしま……」

 

 

 

 

 

出て来いアラム王子!!

 

 俺の目の前に置かれる直前に店に向かって放たれる魔法もしくは魔剣の炎。店が揺れて店員がすっ転んで俺に向かって飛んで来るパスタ。

 サッと避けるも皿は料理諸共床にぶち撒けられ、俺の昼飯は台無しだ。

 

 実は朝から調査で忙しく飯を食ってない俺。運ばれて来た直後に台無しになった飯。

 

 アラム王子ってあれだろ? 行方不明の王子様。もしかしたらアリィ。

 

 その首が無けりゃ王家の権威が強いシャルザードは降伏しねえ。

 だから幾ら探しても見付からない王子探してやって来たと。

 

 この情勢でイスラファンにまで喧嘩売って商人敵に回すとか軍が軍として機能していない証拠だな。

 力に溺れる風に誘導された連中も犠牲者達もラシャプの玩具って事だ。

 

 妹と同じく癖のある髪に指を突っ込んで数度掻き回し、フレイヤ様が購入して奴隷を保護してるって話の屋敷に目を向ける。

 

 このまま犠牲者が出た場合、知らぬ存じぬで済まされないよなあ、多分。

 選択肢は実質一つ、後は利益確保の……。

 

「糞っ このままじゃ組合五傑の私達が……」

 

 あっ、ラッキー。

 

 慌て怯える声に目を向ければ他の商人よりも高価そうな服装の三人と護衛らしい男達。こんな時に街に居るなんて不運で、そして俺が居たのは運が良い。

 

「おい、手短に言うと俺は第一級冒険者、つまりLv5だが、出るのが分かっている損失と失われるかも知れない命を考えて……連中の撃退を俺に依頼する気はあるか? 今なら奴隷を守ったとしてフレイヤ様に恩が売れるぞ」

 

 少し威圧しながら提案すれば即座に頭を上下に動かす。良いね、金の使い道を心得ている奴は話が早い。

 あの姫さんは綺麗で理想の王族であろうと自縛しちゃってるからな。

 

「さてと、契約を結んだからにはお仕事お仕事っと」

 

 愛刀である小太刀【肉削ぎ(にくそぎ)】と太刀の【骨斬り(ほねきり)】の柄を軽く撫で、アラム王子に呼び掛けながら攻撃を始めたワルサの連中を遠目に捉える。

 こんな時には高ランクの優れた聴覚が嫌になるもんだ。俺も品がある方じゃ無いが、欲に塗れた下品な笑い声が聞こえるんだからよ。

 

 

 

「もう良い! アラム王子の居場所を知らぬ者は殺して良し! 奪うなり殺すなり……」

 

 隊長らしき男は業を煮やした様子で剣を持った腕を振り上げ、突如吹いた風に舞い上がった砂から目を庇おうとして、目蓋に触れる硬い感触を覚えた時に何かが地面に落ちる音に目を開ける。

 

 落ちていたのは皮が付いた肉片。目を庇った腕の肉が綺麗に削ぎ落とされ骨が露出していると気が付いて顔を引き攣らせる。

 

「ぎぃ……」

 

 途端に走る焼け付く様な痛み。涙と共に悲鳴が喉の奥から込み上げ……首が宙を舞った。

 

 

「そっちも欲望の為に散々殺して来たんだろう? じゃあ、今後は金の為に俺に殺されてくれよ」

 

 突如首が飛んだ隊長の姿に虐殺を続けて来た兵士達の動きが止まる。そんな彼等は声が聞こえた足元に視線を向け、再び複数の首が宙を舞う。

 

 

 臣下が戦いに備えて臣下が立て籠もっていた砦に残されていた虐殺の跡とリオードの街を襲うという血文字。

 それを目にして大急ぎで戻ったアリィとフレイヤ達が目にしたのは一人を残して斬り殺されたワルサの兵士達の血が染み込んだ地面だった。




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