「え? この武器、あまりにも名前の趣味が悪過ぎじゃね?」
未だ神に対してある程度は表面上の敬意は取り繕っていた頃、暗黒期の最中に手に入れた武器の名前に俺は思わずゴブニュ様に崩れた物言いをしてしまう。
【肉削ぎ】と【骨斬り】。評判より実利、人望より金だよ金ぇ! な俺でも頭がイカれてる感じの名前の武器をそのままの馬鹿みてぇな名前で使うのはごめん被りたかったのに、闇派閥の幹部をぶっ殺の結果手に入れた武器を鍛冶神に見せた結果は非情だった。
「だが、この二つは
「なら仕方無いか。じゃないと勿体無いし」
何せ闇派閥のアジトに侵入して奪った資金全てを消耗して使用した切り札……全て…を……十億ヴァリスを……うっ。
「どうした?」
「いや、妹が居なかったらショックで死んでいた気がして」
「本当にどうした?」
この二つに腹を貫かれながらも相手の首を先に切り裂いてのギリギリ勝利。ヘイズが偶々突撃に参加してなけりゃアジトに入ったコソ泥のゴミが人斬り中毒のクズと相打ちに終わっただけだった。
それでランクアップもしたから実質大儲けなんだが……。
落ち着け。今回潜入と戦闘の大変さから二つのスキルも発現したから。でも、でも……。
「流石に十億ヴァリスを溶かしたのはキツいし、ソーマ…様の脛を八つ当たりで蹴る程度は良いよな?」
「止めておけ」
ゴブニュ様に言われたんで一応止めておいた。俺が居ない間に妹に絡んでいた連中の脛は蹴っておいたけれどもな。
まあ、隠していたがこの時既にランクアップ済みのリリルカには不要な手出しだったので完全な八つ当たりである。
今あの頃を思い返してみると……資金を断つって名目で盗みを正当化して良い連中が居たって面に関しては良い時代だったよな。
口には出さないけれど、流石の俺でも。
「そう。彼等の依頼で動いたのね」
「ええ。フレイヤ様がわざわざ救った者達を守る為に大金を投じる事を即断したのはこの三人。俺は既に報酬が確約されているのでお褒めの言葉は結構です」
「ひぇ!」
「へぇ!」
「ほぇ!」
言葉は要らんがお褒めの品は欲しいです。お金が良いです。若しくは魔導書。リリルカの為に結構な数を取り寄せてもスロットが増えなくて困ってるんだ。
あれか? モーニングスター振り回す脳筋戦法に育てた弊害か? 元から俺達の種族って魔法寄りの奴が少ないけれど、増やせるのなら増やしたい。
閑話休題、状況説明を求められた俺は関わっているとして依頼者三人も同席させるのを提案した。
「そう。貴方の筋の通し方ならそれを尊重しましょう」
人は金で裏切るが、金は人を裏切らないし、金の契約を裏切ってはいけないってのは俺のモットーだ。
メリットを提案した以上はちゃんとしないと
まあ、美神を前に舞い上がってんのか首斬りショーが怖かったのか使い物にならないが知ったこっちゃねえ。
後はお任せ自分次第、精々フレイヤ・ファミリアとの繋がりを得るなり一晩の愛を与えられるなり好きにしな。
同じ人の姿だろうと人と神は別物で、その美しさは朝焼けの空や満天の星々の系統だと俺は感じている。
『むぅ。無礼…では…無いか……。神への敬意の形の一つではある。俺達もあの方の愛を風に例えているからな……』
オッタルだけじゃなくヘディンやガリバー兄弟も反応の仕方は別だが同意見、アレンは喧嘩腰でくそ偉そうだから殆ど話さないし、ヘグニは何言ってるか分からねえから会話にならねえ!
まあ、そんな訳で俺にとってフレイヤ様は綺麗なのは綺麗だが遠雷に近い。美しいと呑気に眺めていたら大雨や落雷に巻き込まれるから尻尾巻いて逃げるに限るってな。
何なら財宝が持つ黄金の輝きの方が好きだよ、俺は!
こっち言ったらキレるだろうから言わないんだが。
「私を此処に連れて来てくれた事、そして巻き込まれたリオードを守ってくれた事を改めて感謝したい。そして恩人に無礼な態度があった事を謝罪させて欲しい」
「対価は払ったんだ。礼も謝罪も面倒なだけだ。短剣は返さねえしな」
この日の夜、宿に居た俺の元をアリィが臣下も連れずに訪れた。妙に着飾って何かを決意した様子だが、飯の最中だからさっさと済ませて欲しい。
金は貰ったし、短剣は最低一千万でしか返さない。売るのを待った事での機会損失補填金的な?
宿の外では無事に済んだ上にフレイヤ様との繋がりが出来た宴の最中。俺は主役だ何だのと呼ばれたが、酒臭いのは嫌なので宴の料理を幾らか取り寄せて静かに食ってる最中だ。
「それで何の用だよ。てか、俺を先にしたら文句言われるんじゃねえの? 特にアレン」
「彼か……」
わざわざ俺の所に来るのに着飾る必要は無いし、どうも悲壮な方の覚悟を決めた奴の目だからこの後の展開は予想出来る。
あの戦力を貸して欲しいって頼むんだろうな。神からすれば国の栄衰も同じ事。永遠の時の中で飽きる程に見て来た物だ。
うん、アドバイスしてやる必要は無いが、ちょっと利益引っ張れるなら引っ張ってやるか。
「もし女神の慈悲を得られたなら俺も力を貸してやるさ。その場合は回収の見込みがあるから後払いで良い、ローンも可」
但し利率は少しばかり高め。この提案だが、実際の所、受けても受けなくても俺は動く予定だ。ラシャプは少しばかりやり過ぎた。
あまり世界を引っ掻き回されたら何時来るかも分からない大きな戦いに悪影響が出るし、調査名目で来ているが、多分潰せってのがロイマンの本音だろう。
あくまで動くのはフレイヤ・ファミリア。俺は同時進行で動かさせて貰うだけだ。
結果から言うと俺の予想は的中した。自分を差し出しての懇願なんて美神が気に入る筈も無く、見事に却下の残念賞。
賞品は自分を賭け金にした盤上遊戯。勿論勝てる筈も無かったが、勝利に繋がる一手を打ったアリィの勝ちにしてもらって、協力を取り付けましたとさ。
……ほーん、凄くね。女神に気に入られる奴ってのは何処かが違うもんだ。
「女神のご意志に従う気が無いのなら消えたらどうだ? 代わりなら其処で第三者面をしている奴に任せるだけだ」
そんな訳でアリィを交えての作戦会議が始まったものの、勝負は茶番だったとアレンが不服を示してヘディンが挑発、俺は見事にとばっちり。
アレンは俺が自分の代わりになると言われて不満顔。
俺も当然納得しない。やりたい仕事が有るんだって。
「えー? 俺かよ? アレンで良いじゃねえか、アレンで」
「貴様には私直々に魔法での殲滅戦を叩き込んでやったのだ。愚猫の代役としてはお釣りが来る」
そう、俺にとってヘディンは【エル・ドラド】を使った広範囲同時連続狙撃の教師でもある。オッタルが指揮も書類仕事も駄目駄目だからと皺寄せが来たヘディン。
自分を鍛える時間にそれ程の余裕が無いからと大した経験値は得られない移動時間短縮の為に依頼して来たのはオッタルと同じ。
それで俺は得意分野の狙撃の訓練に浮いた時間の幾らかを割いてくれと頼んだんだが、鬼教官だったわ、此奴。
罵倒しながら魔法を浴びせ掛け、魔法で魔法を防げと迫る。最終的にグリーン・ドラゴンを一騎打ちで、しかも決めた距離以上近付けさせるなと課題を加えて勝てだとさ。
結果、俺はLv5への昇格を果たしましたとさ。
ガリバー兄弟も普通に頼んで来たから造形に関して元細工職人としてのアドバイスを貰おうとしたら駄目出しと作り直しの嵐で普通にスパルタだった。
そんな訳で模擬戦相手になってくれているオッタルを含めた六人とはダンジョン深層での戦闘を共にする仲としてそこそこの交流はある。
「ああ、お前は依頼を拒まれているから知らなかったか」
「横で聞いていたが頼み方が悪い」
「そうだぞ、アレン」
「ヘグニも酷かったらしいな」
「え? ヘグニと同じとか」
おっと、ヘグニにまで被害が出たぞ。
『嫉妬の悪魔の吐く業火へ立ち向かう為、我を闇の奈落へと誘い、その対価を得るが良い!』
(翻訳:差を付けられるのは悔しいのでダンジョン奥まで送って下さい。報酬は払います)
何か怖かった。アレンは偉そうだし、何か嫌いなので断った。
「それなんだが俺はラシャプ捕まえて吐かせたい情報があるんだ。ギルドからの依頼だし、金を貰う以上はやり遂げるべきだ」
それと、この機会に
俺の言葉にヘディンは指先で眼鏡をクイっとした後、一瞬だけ睨んでから何事も無かったみたいに口を開いた。
「さて、今回の作戦を説明しよう。サルワ軍及びラシャプ・ファミリア、それと集まった傭兵合わせて計八万。それを一箇所に集めて殲滅する。以上」
「以上っ!?」
ああ、そうか。一般人は驚くよな。ヘディンの奴、何で驚いたのかって困惑してるけれど、意外と馬鹿だったか。