ダンジョンに儲けを求めて何が悪い!   作:ケツアゴ

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主人公に前世があった場合、多分騎士団の金庫番 団長だろうが帳簿で頭をベシベシ叩き、物資や資金のやりくりをこなす裏方


第十三話

 足元は血に塗れ、部屋全体を震わせるのは主人である強竜(カドモス)の咆哮。攻撃をモロに喰らえばL v5の前衛ですら一撃でズタボロになる程の怪物を前に俺とリリルカはとっくに限界ギリギリだった。

 

「兄さん、今ので精神回復薬(マインドポーション)が切れました」

 

「そりゃピンチだ。今直ぐ逃げ帰るか?」

 

「まさか。弱ったのを倒されてしまったら大損じゃないですか」

 

 一体何回致命傷クラスの怪我を修復したかは覚えていないし、残高の消費量は考えたくもない。

 九割死のうが金次第でどうとでもなるんだし、命の値段と考えりゃ破格だ。普段の儲けはこんな時に使う。

 

 

 

 それはそうと視界が少しグラついた。左腕の袖の肘から先は喰い千切られ、黄金で無理矢理止血をしている状態だ。これを直す精神力は残っていない。

 にしても、肉体は治せても疲労や精神力は治せないってのは惜しいよな。

 

 こっちは金払ってるんだし、どうにかして欲しいんだが。

 

 目の前の竜だって無傷じゃ無い。腕の対価に右目は潰して、尻尾も斬り飛ばした。頑強な鱗に覆われた甲殻はベコベコに歪んでヒビだらけ。

 

 追い込んじゃいるが、重傷を負っても直ぐに治せる事を前提にした神が言う所の『ゾンビ戦法』

でガンガン攻めてるのを考えたら……。

 

「ヘディンの魔法を借りパクすりゃ良かったな。絶対ろくな事にならねえが」

 

 巨体で押し潰そうと突進して来たのを掠るギリギリで避けて骨斬り丸で斬りかかれば傷は負わせられる、血だって出る。

 それでも動きが鈍るには足りない。

 

 リリルカのスターフォールは荷物を持つ際の助力になるスキルで何とか扱えている状態で、俺も広い場所なら【エル・ドラド】による質量攻撃が出来るんだが、此処は少し狭くって、武器や鎖を作っても黄金の強度じゃ深層の竜には通じない。

 

 状況問わず有効な決定打に欠ける、それが俺達の弱点だ。まあ、その辺は何ともしようがないので考えるだけ時間の無駄だ。

 

「兄さん、次で決めましょう。リリが突っ込むので後はお願いします」

 

 返事はする必要が無い。振り回す鎖に空気が唸りを上げ、突進して来る巨体に向かって天井スレスレまで飛び上がっていた。

 回転速度は上がり続け、最高点に達した瞬間にカドモスの眉間目掛けて放たれる。突進の最中だった為に避ける事は叶わず、轟音と悲鳴と共に巨体の動きが止まった。

 

 勢いが収まらず頭を地面に擦り付ける形になって漸く止まり、身震いしながら起き上がれば甲殻の一部が割れて血と共に落ちて行く。

 

 竜に残った目に宿るのは怒り。本能から目の前の俺達を襲っていたさっきまでと違う個に対する憎しみ。

 

 つまり僅かな間だろうと俺から意識がそれたって事だ。

 

 

「じゃあな。精々ドロップアイテム出して補填宜しく」

 

 骨斬り丸の切先を眉間の割れた部分へと根元まで突き入れ、片手に力を込めて無理矢理に切り裂く。

 ガタガタの汚い傷だが、別に死体をどうにかするんじゃあるまいし別に良いだろ。

 

 

「あー、疲れた。二度とやりたくねぇ。水は汲み終わったか? 天井より先に床を掃除するオッタル」

 

「未だ魔石を取り出すか砕くかしませんと。ですよね、目玉焼きを作ろうとして炭を作ってしまうオッタル様」

 

「……終わった」

 

 フレイヤ様に命じられて俺達の家に居候する事になったオッタル。高額な家賃か迷ったがダンジョン探索と訓練に付き合って貰う方向で話は纏まったが、それはそうと同居するなら家事の分担は必須だ。

 

 取り敢えず掃除やら炊事の手伝いから始めたものの、見事にポンなコツ。入団当初は雑用とかしなかったのかって思ったが、何かされる方が迷惑なので家事は免除。

 

 その代わり、たまに弄られるのは勘弁してくれって話だ。

 

「それじゃあ流石にオラリオに帰るか。……精神力も帰還ギリギリしか残っていないしな」

 

 それを考えると今回の戦いは偉業判定されるのか? 安全な逃げ道が用意されている訳だし、骨が折れて足がグチャグチャになって腕を失おうが全部治せるなら掠り傷だからな……。

 

 そんな訳で移動を選択、場所は……バベルの入口がギリギリか。取り敢えずコスパ考えたら腕を治す分だけのポーション類買って、後はアミッドに治療頼んだ方が良いよな。

 

「兄さん、帰るのなら早く帰りましょう。リリは早くお風呂に入りたいですし、さっさと傷を治しませんと」

 

 幼い頃、俺に頼るだけだった泣き虫がこうも逞しくなるなんて嬉しい限りだ。俺に何かあった時の為に無茶に付き合わせたのは正解だったと何度も思う。

 サポーターになるのが精々だったのに今や第二級冒険者、但し公的記録はLv3。だってファミリアのランク上がったら、ロイマンに賄賂渡していても結構な税金持って行かれるし。

 

 成長促進やらには一日だけでも高額を請求されるのだけは欠点だけれども必要経費だ……。金じゃ命は買えないが、命は助けられる。マジで金の力は最高だ。

 

 

 

「腕…が……」

 

 そんな訳でオラリオに帰還後、アミッドの所に向かう最中に()()()()()()()()に遭遇したんだが、片腕を失った俺を見て顔を青ざめさせる。

 

 おいおい、まるで仲間の仇の一味だと思って腕を切り飛ばしたら、心配して気に掛けていた子供だった誰かさんみたいな顔だな、色々な意味で。

 

「確か豊穣の女主人の店員さんだったっけ? 冒険者ならこんなの掠り傷だろ。生きてりゃどうとでもなる」

 

「え、ええ。そうです…ね……」

 

 目の前のエルフに似ていて俺の腕を一度斬った【疾風】は公式記録じゃ死人扱い。目の前のエルフは名前と顔が同じだが髪の色は違う別人だ。

 

 どうせ治せるし、アストレア様から見舞金貰えて収支はプラス。だから死んだ賞金首が生きてるなんて騒いで幾らかの神を敵に回すのは勘弁だ。

 なーんもプラスになりゃしねえ。復讐なんて自己満足だぜ? 人間、死んだらただの肉の塊なんだからよ。

 

「じゃあ、話した事もろくにない店員さん。俺は治療があるから行かせてもらうぜ? お仕事頑張ってくれよ」

 

「……ええ、是非いらして下さい。サービスしますので」

 

「酒臭いからヤダ」

 

 酒場だから酒の臭い凄いじゃん。酔っぱらいだって沢山居るじゃん。だから行かない。

 

 

「ミアの飯は美味いぞ?」

 

「あの店のゴミ漁ってたから知ってるよ。役立たずのガキに与えられる飯なんて不味いし少ないしでな」

 

 三回目位の時に使い古しの武器が捨てられてたから本当に助かったし、今でも感謝はしている。

 

それはそうと酒場には行かないけれどな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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