ダンジョンに儲けを求めて何が悪い!   作:ケツアゴ

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本日二回目


第十五話

「【魔導賃借(スペル・コンバート)】。それが俺の隠し種の一つだ。ソーマ様とリリルカ以外じゃヘディンしか知らねえよ」

 

 フレイヤ様に聞かれたら答えそうだがな、あの七十代。魔法の指導の為とはいえ他派閥の幹部に情報流すなんて本来は有り得ないだが、スキルの特性上諦めるしかない

 

「簡単に説明すると魔法の交換だ。条件は少し厳しいけれどな」

 

 ① 魔法を一つ以上持っている事

 

 ② 双方が相手の魔法の効果と詠唱文を知っている事

 

 ③ 一回毎にスキルの持ち主は入金額から一日五十万ヴァリス失う

 

 ④ 双方納得の上でしか交換は不可能

 

 特に③が厳しんだよ。外で目立たない為に【シンダー.

・エラ】を借りて過ごしたら毎日毎日金が減るんだ。

 

 せめて貸し主のリリルカに払う形にしてくれよ……。

 

「分かっちゃいるだろうが漏らすなよ? 広まったら厄介事に繋がるから」

 

 ロキ・ファミリアの魔導士トップ二人も特異性から魔法大国に狙われてるってのが裏の噂だが、俺のも特異っちゃ特異だ。

 指導を受ける上で情報は必須だからって教えたがヘディンが珍しく驚いた顔をしていて、ペラペラ喋るなとまで言って来ただけは有る。

 

 オッタルも魔法に詳しくない脳筋だが流石に驚いた顔を見せた。

 

「……教えて良かったのか?」

 

「ああ、何となく教えるべきだと思ったんだ。……チッ!」

 

「実際は嫌なんだな」

 

「嫌に決まってんだろ。んで、ランクアップしたらスキルに文章には無い効果が追加された気がしてな。……又貸しだ」

 

 これがマジで厄介だ。聞かれたら答えるだろうが聞かれないと教えないとは思うんだが……。

 

 

 このオッさん、脳筋だから口を滑らせそうなんだよな。

 

 

 

 

 

「……お前の叔父から話は伝わっている。恩人の所に案内しよう。訳あって名前の部分が読めなくなっていたが……」

 

「僕はベル・クラネルです。宜しくお願いします、えっと……」

 

 オラリオの入り口近く、情報通りの少年を待っていたオッタル(筋骨隆々のアマゾネスに変身している)の様子を離れて伺っていたが、ありゃ少しは経験積んで来てるな。

 

「手には剣を握り続けた痕が有りますし、背負っている剣も腰のナイフも安物ですが使い込んでいるみたいですね」

 

「そりゃ仕込まれたんだろう、親戚に。にしても……うん」

 

「オッタル様のあの姿は無いですよね……」

 

 俺だって体型が全然違う姿に変身しちゃいるが、元から獣化魔法の使い手でイメージが引っ張られているのか又貸しの弊害なのかオッタルは筋肉二割り増しと身長そのままで顔もゴッツイ男顔。そのままじゃないのだけが救いだ。

 

 アマゾネスに変身しているが、服装は知り合いだからかヒリュテ姉妹の姉の物を持ち主の身長相応のサイズにしているから非常に何というか不気味だ。

 

 通り掛かる人がギョッとして二度見しているし、子供なんて泣いちゃってる始末。あれはヒキガエルのアマゾネスと良い勝負してる。

 あっちは醜悪でこっちは普通に怖い。多分目撃者全員が夢に見てうなされる。

 

 本人さえ鏡の前で硬直からの真顔だからな。あれは笑え……なかった。アレンでさえ同情すると思う。

 

「あんなのと一緒に歩くとか大変そうですね、彼」

 

「気にしてまあフレイヤ・ファミリアの敵対派閥に狙われるよりマシだ。……じゃあ、隠れながら観察するぞ」

 

 あ、オッタルが名前聞かれて誤魔化した。名乗る程の者じゃないって……そうだよな。あんな姿で本名をうっかり名乗っちまった日には……。

 

 この日、多くの者にトラウマを植え付ける存在がオラリオを闊歩した。誰か一緒に居た事は覚えていても印象の大きさが圧倒的で誰も覚えてはいない。

 きっと、その方が幸せなのだろう。だって覚えていたらベルを見たら女体バージョンのオッタルを思い出してしまうのだから。

 

 

 視界に入れておきたくないのでオッタルには元の姿に戻ってもらおうと離れた場所に向かわせ、家の前で俺はベルと対峙する。

 見た目は一見するとチビでチンケな田舎者だが基本はしっかり叩き込まれてるってのが伝わってくる。

 

 タケミカヅチ様が武術の動きは日常に取り入れて修行にしろって言ってたが、体幹とか足運びとか、ちゃんと見る奴が見たら分かるもんだ。

 

 背丈の方は遺伝で諦めるしかねえが、食い物もちゃんと考えて与えられてたっぽいよな。流石は元最強派閥の片割れの幹部。

 指導能力は現最強派閥よりも上か?

 

 

「始めましてだな。俺がお前の叔父の恩人で悪名高き第一級冒険者のキリア・アーデだ。……分かってると思うが叔父の名前は極力出すなよ? 恨んでいる奴は多いから助けた俺にまで害が及ぶ」

 

 極東の言葉で『坊主憎けりゃ袈裟まで憎い』だったか? まあ、友人や恩人の身内を優遇するのと本質的には同じさ。

 愛情も友情も憎悪も根本は変わらない。特定の誰かを色々な意味で特別扱いする、依怙贔屓か迫害かの違いってだけなんだよ。

 

 だから全く無関係でも身内ってだけで恨みをぶつけられる。顔を見た事もない相手だとしても身内は身内だってな。

 

 ベルも話は聞いていたんだろう。少し顔を強ばらせながらも頷いたが、あのオッさん、自分の行いを隠したり偽装したり正当化せずにそのまま伝えたのか。

 

「ザルド叔父さん……そして叔母さんがやった事は悪い事だと思っています。それは本人が言っていた事ですから。でも、僕にとっては憧れで、大切な家族ですから……」

 

 だからザルド叔父さんを助けてくれて有り難う御座います、ベルはそう言いながら頭を下げるが、別にお礼なんて言わなくて良いんだがな。

 俺が勝手にやった事だし、それに……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「礼儀は払わなくて良いから治療費は払ってもらうぞ? 年利十割だから凄い事になっているからな? ちゃんと手紙で伝えるか身内のお前が立て替えるなりしてくれ」

 

「年利十割ぃいいいいいいい!? 暴利にも程がありません!?」 

 

「払うっつったのはお前の叔父だから。契約書にもサイン有るし」

 

 気持ちより金だよ、金。誠意は態度じゃなく形で示すもんだと思う。

 

 人差し指と親指で輪っかを作ってみせれば顔を青ざめさせてガタガタと震える。あのオッタルの姿を見ても平然としていた奴がこの程度で震えるなんざ馬鹿な話だ。

 そういやオッタルの奴、戻って来るのが遅い……。

 

 

 

 

 

ぎゃああああああああああああっ!?

 

「今のはヘディンの声? 何があったんだ?」

 

 オッタルが消えた方向から響いた悲鳴。なので俺は一旦家に入る事に……って、おい。

  

 悲鳴を聞くなりベルは一目散に走り出していた。しかも向かうのは声が聞こえた方向だ。

 

「僕、様子を見て来ます!」

 

 え? 正気!? おいおい、実利よりも情で動くタイプかよ、馬鹿だ。早死にするし、無償の善意なんて群がって来た連中に食い物にされるだけだぞ? 

 

 

「このまま見捨てる……のは駄目だと直感が言っている」

 

 仕方が無いので不本意ながら後を追えば直ぐに追い付く。その先では……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピチピチなアマゾネス衣装のオッタルと立ったまま気絶しているヘディンの姿があった。

 

 なお、ベルは普通に泡吹いて倒れていた。

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