ダンジョンに儲けを求めて何が悪い!   作:ケツアゴ

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本日、2回目


第十七話

「此処迄だな。少し力の入れ方がぎこちないが、ランクアップによるズレという奴か」

 

 木刀を打ち合わせる事、3合。武神の一振りが俺が持つ木刀を取り落とさせ、拾うより前に切先を突き付けられる。

 流石は武神、ランクアップして得たステイタスの強化もモノともせず、寧ろ感覚のズレを見抜く余裕すらあるか。

 

 ソーマ様とかヘスティアとか見ていて忘れそうになるが神ってのは遥か上位の存在なんだよな。

 

 

 強くなればなる程に武の高みが果てしなく遠い事を思い知らされる。いや、俺にとって力を付けるのは手段であって目的じゃないんだが、それはそうと十万分の一も引き出せていなさそうなタケミカヅチ様の技量を前にすればワクワクだってする。

 

 リリルカに知られたら『兄さんも男ですからねぇ』とか呆れながら言われるのを想像する中、不意に投げて寄越された小太刀サイズの木刀を受け取ればタケミカヅチ様も同じく二刀流の構えを取っていた。

 

「体が慣れるまで俺が存分に付き合ってやる。桜花達の見稽古にもなるだろうし、少しだけ本気を出してやるぞ」

 

「そりゃ有り難い。十万分の一も引き出せたら幸いだ」

 

 無様に打ち据えられる未来しか見えないが別に良い。生き残る為、金を稼ぐ為、妹を守る為にも技の末端の末端の末端でも盗ませてもらうとするか!

 

 

 

 

「ほう。ヘスティアの奴にも眷属が出来たか」

 

「ええ、元冒険者のご身内……まあ訳ありで名前は伏せますが基本の方はミッチリと詰め込まれているみたいですよ」

 

「訳有りか。まあ、詮索はすまい。誰しも腹に抱えている物が有る」

 

 結局散々に武神の木刀を浴びた後、俺達はタケミカヅチ・ファミリアのホームにて飯を食っていた。

 三日三晩通い詰め、最終的に半年分の月謝と契約金を払い多少の改築も行ったからか来た当初の貧乏住まいとは大違い。

 

 特に風呂好きな奴は毎日風呂に入れる事に大歓喜していた。公衆浴場って人数を考えたら毎日だと負担になるよな。

 実際、月謝の殆どを故郷の孤児院に送金しているって話だし。

 

「タケミカヅチ様の知神の眷属でしたら一度顔合わせでもしておきましょうか。冒険者に成り立てなら狩り場で獲物を取り合う事にはならないでしょうが」

 

「うーむ。月謝を貰っている以上は其奴にも技を教えるのは不義理だが、命の言う通りに顔を通す位は良いか?」

 

「別に他人が得しても俺が損をする訳じゃねえし、別にそれはそっちの自由ですけれどね」

 

 それはそうとオッタルが稽古付けるとか大丈夫か? 一応エリクサー(価格五倍)を渡しておいたし、防御だけで攻撃はしないとかは言っていたが、脳筋だからな……。

 

 

 

「それはそうとソーマが新しい神酒を作ったそうだな。前から市場に出回っている分だけでも俺には手が出せん値段だったが、ロキ辺りが飛び付きそう……苦虫を噛み潰した顔だな」

 

「上級冒険者でさえベロンベロンに酔わせる上に酔い覚ましが無けりゃ醒めないってんで団長でさえも薬を頼る程度に胃を痛めてましたよ。流通はしない方向ですけれど……」

 

 あの女神、一度酒目当てでホームに乗り込んでソーマ様に求婚したんだよな。酒飲みって彼処迄無様になれるんだな。数十年とかじゃなくて万単位以上生きてるんだろ?

 

「酒の管理は団長の仕事だからな。だから俺は第一級になろうが幹部にはならねえんだ。主神も団長も好きにやりたいから口出し嫌がるし問題は無いぜ」

 

 団が大きくなれば資金繰りも対外関係も内部の統率も大変だ。それでも人数差が数倍有るオッタル達と並べているのは凄いが……あー、此処らでストップだ。

 

 俺が考えても無駄だよ、無駄。他人の心配する程に余裕は無いってな。

 

 つーか、神がダンジョンについて何も言わないから焦燥感が無いが、暗黒期にゃ悪党退治とダンジョン攻略を同時に進めろとか言ってたロイマンは何か知ってるのか?

 

 

 分かんねえから俺はずっと平団員で良いや。団長への周囲からのアレコレ? 知らねったら知らね。

 追い込まれてる下っ端を知らんぷりしてたんだし、権限悪用してるんだから我慢しろや。

 

 

 

 

 

「なあ、なぁ〜。オラリオメリーやったか? 眷属だけとか言うてへんでウチにも飲ませてーな」

 

「無論対価は払う。ソーマが作った新しい美酒とやらを是非味わいたいんだ」

 

 そんな風に思ってたのに帰宅途中で俺は二柱の神に絡まれてたよ、畜生。逃げても良い場合だとリリルカは兄ちゃんを平気で見捨てて逃げるし逞しいなぁ! 何なら力コブが少し大きくなったの知ってるんだぞ。本当に逞しくなったな!

 

 俺に文字通り絡んでるのは神ロキで、眷属らしいエルフ連れてるのがディオニュソス、こっちも葡萄酒の神だがウチと違って製造からの販売はしてない模様。

 

 どっちも酒の匂いが染み付いて臭いし最悪だ。

 

「俺は酒に関しちゃ関わって無いんで……」

 

「団長に頼んだらお前に言えとか言っとったで」

 

「一番強い君に扱いを任せたいと言ってたね」

 

「成る程。体良く押し付けられたか。あの阿呆、折れない程度に脛蹴ってやる」

 

 エルフ……ああ、思い出した。テメェだけ生き残れたのを幸運とか実力とか評価されず呪われてるとか噂されてる奴で、確かフィルヴィスだっけか?

 

 直感が関わるなって告げているが、ぶっちゃけどうすれば良いかまでは分からない。例えるなら物語でクライマックスの結果だけを読むも其処までの経緯と其処からの結末は読まないって風に、面倒なタイプのエルフなのか危険な奴なのか迄は分からねえし、この場を切り抜ける手助けをして欲しいんだがな。

 

 おい、エルフってのは基本傲慢で生真面目だろうが。主神の醜態どうにかしろよ。

 

「……すまない」

 

 目で助けを求めたら気まずそうに横向きやがったよ、このエルフ!

 

 あー、酔っ払った上級冒険者以外にもこんなトラブルの種があるから噂が広まるのは嫌だったのに……アホ主神め!

 

「アホが……失敬、噛んだ。ソーマ様が言うには量産までは時間が掛かるし、今はする気も無いそうなので俺と妹以外から買い取るなりして下さいよ」

 

「今、思いっ切りソーマをアホって言ったな、自分。どんだけ威厳無いねん、彼奴」

 

「常に負債を負い続ける程度には無いな」

 

 口には出さねえが、この二人の威厳も俺の中じゃ絶賛下降中。

 

 

「飲ませてーな! なあ、飲ませてーな!」

 

「飲みたい飲みたい飲みたーい!ヌーヴォー、ヌーヴォー!」

 

「いけない! ディオニュソス様の発作だっ!」

 

 金づるでさえ、お得意様の主神でなければ放り捨てて逃げるのに! おい、ポンコツエルフ! 醜態晒してる馬鹿を回収してくれ!

 

 良い加減我慢するのが馬鹿馬鹿しくなって来た時、足早に近付く奴が居た。

 

 

 

 

「丁度良い所に居ましたね、キリア。神ソーマの新作の噂を聞いたフレイヤ様が小耳に挟み、飲んでみたいとおっしゃってます。どうにか融通して貰えませんか?」

 

「……あー、アンタの頼みなら断り辛い。何か起きても自己責任って事にしてくれるなら何とかするよ、ヘイズ」

 

 

 

 

 

 

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