ダンジョンに儲けを求めて何が悪い!   作:ケツアゴ

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第十八話

 他人の命は金より軽いが、自分と身内の命は金より重い。そりゃ、俺達だって危険な真似はするぜ? でも、結局それは将来的に命を守る為の対価って奴だ。

 

 だから命を助けたら感謝の気持ちより物で礼をして欲しいし、自分じゃどうしようもない状態で助けられたなら金で終わりじゃ無いのは当然って訳で……。

 

「ちょっと待てぇええええい! ウチらは嫌そうに断ったのに、こっちに頼みなら引き受けるってどうなっとんねん!?」

 

「あれか!? ディアンケヒトの所のアミッドとも仲が良いらしいが、ナースか!? ナースフェチなのか!?」

 

「いや、普通に命の恩人とその他の違い」

 

 年頃の男女が親そうにしているだけですーぐに恋愛と話を絡めるんだから勘弁してくれよ。神って暇なのか? 暇潰しに来たってのが公式設定だったな、確か。

 

「暗黒期に闇派閥のアジトに忍び込んだら相打ちで死に掛けた所を助けられた、それだけだよ」

 

 そもそもフレイヤ・ファミリアの団員に懸想しても無駄だろ。

恋じゃなくて恩だよ、恩。

 

 あの時、俺は全身ズタズタに切り裂かれた状態で腹をブッ刺されて普通に死ぬ所だった。其処に偶々奇襲の為に駆け付けて、仕方が無いから味方のついでに助けてくれたのが目の前のヘイズだ。

 

 だから季節の変わり目には歳暮の品を送って、此奴の頼みなら多少は融通を効かせる。同じファミリアだからって他の奴からは対価を貰っちゃいるが依頼を受けるのも微妙に関係はしているんだ。

 今じゃオッタル達にも多少の親近感は覚えているから普通に引き受けるけれどな。

 

 尚、アレンは何か嫌いだし、ヘグニはちゃんと頼まないから断っている。

 

 なので俺の中では優先度が身内の次くらいには高い訳で……。

 

「……此方としては過労で溜まった疲労を魔法で取り除いて貰ったり、お歳暮の品を貰ったりで無茶を言うには気が引けるんですがね。あれが無いと目の隈とか肌の艶とか全然違うので」

 

「其方は大した事じゃ無いと思うが、あの時死んでいたら妹も守れないし金も稼げちゃいない。俺が勝手にやってる事だから気にすんな」

 

 あの脳筋、待遇改善を訴えられても何もしないで俺に魔法での疲労回復を依頼する程度だからな。

 俺の魔法で肌の艶も睡眠不足も解決するんだ。

 

 

 なのでヘイズだけ無償でやって、残り奴の分だけ有償だ。差別? 区別だよ。貰った金はちゃんと歳暮の品で還元してるし良いだろう

 

 ……俺じゃ成金趣味でセンスが悪いからってリリルカやアミッドに選んで貰ってるから迷惑じゃ無いはずだ。

 

「フレイヤ様の頼みならソーマ様に丸投げして後は知らねって感じだが、ヘイズがフレイヤ様の為に頼んで来たなら話は別だ」

 

 多分それを考えてヘイズを挟んでるよな、あの女神。フレイヤ様の頼みを断ったら狂信者共がブチ切れるだろうから断れないが、他の神のを断ったのにフレイヤと比べて格下の神扱いされたって鬱陶しい。

 

「あー、命の恩人かぁ。ならウチは断っても引き受けるしかあらへんか……」

 

「飲みたい……が、ぬぅ……」

 

 嘘を見抜ける以上は咄嗟の誤魔化しじゃないと伝わる訳で、商売の客として関係を持っているだけのロキ・ファミリアと普段無関係なディオニュソス・ファミリアに譲る理由は無い。

 

 商売だって深層での貴重な物資補給と戦利品の運搬リスクの削減だ。酒の為にそれが今後失われるってのは避けたいよな。

 

「しかも此奴、リヴィラの連中とも親しくやってんのや」

 

「だが、飲みたい。凄く飲みたい……」

 

「仕方が無いので帰りますよ、ディオニュソス様。……秘蔵のワインと一部を交換して貰えないか交渉すれば良いじゃないですか」

 

 ……助かったな。

 

 ロキは大手ファミリアの主神としての立場から眷族を考え、ディオニュソスの方は酒神だけあって交渉材料は持っていると。

 ロキの方はフレイヤ様に頼み込むとか出来ないだろうからなあ。

 

 口惜しそうにしながらロキは去って行き、ディオニュソスもエルフが半ば引っ張る感じで連れて行き、残ったのは俺とヘイズだ。

 

「後でオッタルに頼む……は無理か」

 

「ええ、無理ですね」

 

 謹慎でホーム出入り禁止だからな、彼奴。余程嫌だったのか、アリィとの夜の余韻を邪魔されたのが。

 

 他の団員もこれ幸いと荷物の受け取り拒否さえしそうだし、だったら俺が配達するのもちょっと……。

 

「じゃあ、さっさとホームに行くか。残ってたら速攻で貰って来るから待っていてくれ」

 

「そうですね。随分と執心した神や人も居そうで狙われそうですが、何処に喧嘩を売る事になるのかは理解しているでしょうし、夕食の仕込みには間に合わせたいですし」

 

「団員の治療に食事の支度までご苦労なこった。俺は兄妹で当番制だし、面倒な時は外に食いに行くんだが、そっちじゃそうもいかないだろうし……ダンジョン産の温泉で足湯でもするか?」

 

「温泉って、貴方が発見したっていう未発見領域の?」

 

 あれは十八階層での採取依頼の帰りだった。魔法で帰ると魔法に金を請求されるので歩いて帰っていたんだが、ふと壁が気になった。

 

「金目の物でも埋まってるのか?」

 

 直感に従い壁を強く蹴ってみれば崩れた先は空洞。まさかダンジョンと外を繋ぐ道を作ってしまったかと焦るも一応調査をしてみれば奥にはなんと温泉だ!

 

 何かあった時の調査の手間を省こうとボールス達に伝えたら金儲けのチャンスだと目の色を変え、日頃の疲れを取ろうと体も洗わず飛び込んだ。

 

 まあ、温泉自体は悪くなかったんだが、新種の魚みたいなモンスターの住み処だった上に布を溶かす効果まであって……戦闘の余波で起きた波を被った服が溶け、野郎共は揃って全裸を晒しましたとさ。

 

「週末は浴槽抱えて汲んで持ち帰ってんだ。体拭いたタオルも使い物にならなくなるのは勿体無いがな。ああ、それかアミッドを風呂に誘ったら良いんじゃね? 出汁温泉の効能は良いらしいぞ。腰痛肌荒れ薄毛に肥満だとか」

 

「出汁温泉とか平気で言っちゃうから第一級冒険者の癖にモテないんですよ、貴方」

 

 深い溜め息と共に呆れた視線を向けるヘイズの口撃! つうこんのいちげき! こうかはばつぐんだ!

 

 そう、普通は第一級、それも若いとかキャーキャー言われちゃう物なんだよ。名誉とか要らない俺でも異性からチヤホヤはされたい。

 でもモテません、はい。

 

 フィンと比較されてるのもあるけれど、ファミリアも問題点が多い上に俺も素行が悪いし。

 

 

 

 イシュタル・ファミリアさえ支配していないならリリルカの目を盗んで歓楽街とか行くんだけれどな!

 

 あっ、でも金がかなり必要っぽいしな。

 

 思ったより心にグサッと効いた一撃に意気消沈な俺とは対照的にヘイズは主神からの頼み事が完遂出来そうだとご機嫌で並んで歩く。

 

 道行く人は大抵ヘイズの噂話だ。良いのも悪いのもな。大手ファミリアの第二級とか弱小ファミリアや一般人からすれば憧れと恐怖の対象だからしゃーない。

 

 それにしても……。

 

 

「……神イシュタルがフレイヤ様に評判で負けてる原因何だと思う? 俺は普段の立ち振舞い」

 

「全てに決まっています。フレイヤ様こそが神々の頂点ですので。……それでどうします?」

 

 

 どうします、それは振り返らず意識を向けた相手、何が目的なのか不明な追跡者について。

 

 先程から尾行されてるんだが面倒だ。都市の中で刃傷沙汰はロイマンが煩いし罰金も必要そうだしな。

 

 先ずは誘い出す為に路地へと向かうとするかと視線だけでことばをかわす。楽な相手だと良いんだが、この組み合わせを調べるとなるとな……問題が多すぎる。

 

 

 

 

 

 

 

「おや? 珍しい組み合わせですね」

 

 其処で訪問治療帰りらしいアミッドに遭遇した。あー、余計にややこしくなって来た。

 

 

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