ダンジョンに儲けを求めて何が悪い!   作:ケツアゴ

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第三十二話

「あれは……」

 

 怪物祭で起きた謎の爆発とモンスターの脱走。逃げ出したモンスターは直ぐに討伐したんだけれど、離れた場所に知らないモンスターが現れたって聞いた私は高い場所から探して、直ぐに発見出来た。

 

 襲われていたのはこの前の兎みたいな少年と大切な仲間のレフィーヤ。直ぐに助けに向かったけれど、その途中でレフィーヤの魔法がモンスターを仕留めたから一安心。

 

 どうして背負われているのかな? もしかして足を怪我した?

 

 そんな心配と同時に感じたのは少年への興味。私が目にしたのは僅かな応酬でしかないけれど、本来なら手も足も出ないずっと格上相手に戦っていた。そう、あれはちゃんと戦いになっていた。

 

 根の攻撃をナイフで受け流し、魔法で弾く。それは力による物じゃなくって技。本能と力だけで戦うモンスターに対抗する為に磨かれ継承し続けられた結晶があの子の中にある。

 

 知りたい、と思った。もっと見たいって感じた。だから戦ってこの身で実感してみたくなってお願いしたら『はい』って言ってくれたんだけれど……。

 

「違いますよ、アイズさん!? それは急にお願いされらからベルがビックリしただけで。それと私がベルを呼び捨てにしているのは戦友とかその手のが理由で……」

 

「でも、ファミリアの仲間だって戦友だけれど呼び捨てにしていないよね?」

 

「そ、それはその……ゴニョゴニョ」

 

 なのにレフィーヤは駄目だって反対して来る。何故か凄く仲良くなったみたいだし。

 

 それにしても……本当に兎みたい。撫でちゃ駄目かな?

 

「大丈夫。ちょっとその子の持つ技術が気になっただけ。だから……ちょっとだけ戦お?」

 

「ええっ!?」

 

「アイズさーん!?」

 

 また驚かれた。誘い方が悪かったのかな?

 

 

 Lv.5になって数年、私は成長の限界を向かえている。キリアは半年で更にランクアップしたのに、私は停滞していて、目的の為に強くならなきゃいけないのに。

 

 

 

 

 だからもう一度頼もうとして、突然膝の裏を軽く蹴られてカクンとなった。ビックリした私の耳に届いたのは呆れた溜め息。

 

 

 

 

 

 

 

「おい、黒いもん出てるぞ。餓鬼の頃から変わらねえな、アイズ。頼みじゃなくて脅しになってるんだから気を付けろ」

 

「キリア……」

 

 振り返って視線を下に向ければ呆れ顔のキリアがこっちを見ていた。

 

 

 

 

 

 

「なんでムチャしちゃダメなの? ほら、あの子だってひとりだよ」

 

 彼を初めて見たのはダンジョンの中。あの頃は中々一人でダンジョンに行かせて貰えなくって不満が溜まっていた時だった。

 

 そんな時に見付けたのが私よりも小さくて弱くて装備もボロボロの男の子が一人でダンジョンで戦っている姿。

 あの子が許されているのなら私も許されるべきだと言ってもリヴェリアは聞いてくれなくって、その代わりに小さな子供一人じゃ危ないって心配して声を掛けていたんだけれどキリアは聞かなかった。

 

「糞みたいな運命で生まれちまったんだ。不運な奴は無理でも無茶でもしなきゃ死ぬんだ。同情だの心配だのするんだったらウチのアホ主神を送還してくれよ。しないなら身内の躾の為だけに関わるな」

 

 そう言って姿を消した彼を暫く見かけないで、ランクアップして暫く経った頃に彼のランクアップを知らせる張り紙をギルドで見掛けた。

 名前と所属を知ったのはこの時。でも、この頃はそんなに興味が持てなかった。見覚えがある子が死んでなくて良かった程度。

 

 

 そして彼が歴代最短で第二級冒険者にランクアップを果たしたと知って秘訣を聞きに行きたかったけれど、フィン達に反対されてもホーム近くで待ち伏せしたのに会えなかった。

 この頃にはもう妹を連れてホームの外で暮らしていたらしい。

 

 目付きは悪いままだったけれど、あの頃と違って拒絶する様な空気は消えて、急成長の理由以外なら教えてくれもした……有料情報も多かったけれど。

 

 商売に来た時や町で出会った時も話す様になったし、少しは仲良くなれたのかな?

 

 それからアストレア・ファミリアに何かと世話を焼かれているとかを聞いたり、遠征先で商売をしに現れたり、暗黒期で禁忌である神殺しを平気で行う第一級冒険者クラスの狂人を倒したりとか色々あったけれど……。

 

 ……それと何度かお願いしてたまに剣だけの手合わせをして貰った事がある。何度もやってられるかって途中で無理に終わりにしちゃうから悔しい。

 

 

「相変わらず自分の欲求第一か、中身幼女が。全然成長してねえな、お前。せめてちゃんと話す努力をしろ。ほら、どんな理由で何を思ってどの様な結論に至ったのか。相手が受けるも妥協案に落ち着くもそれからだ。ベルもポンコツエルフ二号も困ってんだろうが」

 

「ポ、ポンコツエルフー!? 貴方、前々から失礼じゃないですか!?」

 

「生憎教育すべき周囲の大人がクズばっかりだったんでね。お育ちの良い方々には万事ご迷惑お掛けするよ、二号。以後見苦しき面体お見知りおいて、向後万端ひきたって宜しくな。まあ、お前に頼る事は多分無いけれど」

 

 本当に出会った時から変わったなって、レフィーヤの抗議を受け流してヘラヘラ笑う姿に驚かされる。

 それにしてもまたアドバイス貰っちゃった。最初のは役に立てていないけれど……。

 

 

「強くなった秘訣? そりゃ強くなるのは手段でしかないからだよ。何で強くなりたいのか、他に方法はないのか、強くなって何をして、その後でどうするか。それを考えろ。それと休め飯食え頼れる奴は頼れ。それと相談料五千ヴァリス寄越せ」

 

 未だ強くなって何をして……それ以上は分からない。私には私の英雄が現れないから強くなるしかなくって他の方法なんて無いから……。

 

 それと子供呼ばわりされるのはちょっと不満。

 

 

「……私はもっと強くなりたい。だから君の持つ技術も知りたくなったから戦ってみたくなって……」

 

「じゃあ、特訓に付き合ってとかで良いじゃねえか。物騒な言い方すんな。もう少し考えて話せよ。先ずは一呼吸置いて何を伝えたいか考えろって」

 

「……特訓しよう?」

 

 また子供相手みたいな言い方。仕返しに頭を撫でてみたいのに撫でようとしたら怒るし。

 

 

 

「アイズさんが拗ねてる。そんな姿も……って、そうじゃなくって! 駄目ですって! アイズさんは幹部なのですよ!?」

 

「そもそも特訓とか言っていられるのか? 武器、壊れたんだろ?」

 

 此処に来る前、ロイマンや目撃者の話じゃモンスターを倒した時に武器がこわれてしまったとか。

 確か不壊属性(デュランダル)だった筈だろ? なら予備の武器か借り物か、指摘への反応からして借り物っぽいな。そして第一級冒険者に貸し出されるなら数千万は固い。

 

「……キリア、お金貸して」

 

「貸さねえよ? 借金の返済の為の借金はさせない事になってんだ。働いて稼げ。そもそも俺からは借りるなって言われてるんだろうが」

 

「アイズさん。ダンジョンに行くのなら私もお付き合いしますから。そうだ! 並行詠唱を会得したいのでダンジョンで色々と教えて下さい」

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、レフィーヤも一緒に特訓する?」

 

 それならベルとの特訓を黙っていてくれるだろうし……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前の返事を聞くの忘れてんな、ベル。覚えとけ、あれがポンコツって奴だ。じゃあ、俺はアミッドに呼ばれてるんだが……ああ、ちょっと叔父さんの借金返済の為に軽い仕事する気ねえか?」

 

 何だろう? 絵本に出てくるズル賢い狐みたいな顔してる……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




忘れがちな設定 キリア君の武の才はタケミカヅチに認められる程です
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