ダンジョンに儲けを求めて何が悪い!   作:ケツアゴ

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第三十三話

 アミッドの頼みはリヴィラの街での治療院開設にあたっての協力要請だった。物資の運搬は当然として、顔役のボールスへの口利きやら薬品を取り扱っている奴との交渉の仲介。

 

 何せ明日には異変が起きてお陀仏だってのが冒険者、その中で更に刹那的で快楽重視な荒くれ者に命を救う事への重大さを解いても無駄だろうに、その辺に頭が行かないのは堅物の所以だな。

 

 結局、団で扱っているポーション類を手頃な価格で売る事で商売敵との衝突は回避、出張治療院の開設にこぎ着けましたって具合だ。

 

「じゃあ、掃除は任せたぞ、時給六百ヴァリス。月に六百万ヴァリスの利子が増えて行くんだから頑張れ頑張れ」

 

「焼け石に水!? 下級冒険者の収入を考えたら高給だけれど全然返済が追い付かない!?」

 

「確かにちょっと高いな。中抜きするか。……冗談だよ、アミッド」

 

 そんな訳で経営者死亡でファミリアも扱いに困っている元店舗の広さはある掘っ立て小屋を改装するんだが、先ずは掃除って事でベルに丸投げだ。

 

 居抜き物件って事で諸々の経費と手間を抑えられると思いきや、甘い甘いぜ甘納豆とばかりに掃除されてねえの。

 需要はあるからな、うん。地上と違って店が汚いからって客が来ない事は無いんだ。

 

 そのせいで下見で建物を見に行ったアミッドは絶句していたんだが、だからってファミリアの団員を掃除に駆り出すには人手不足。

 故に俺の伝手でアルバイトを探したって事だ。

 

 ベルを選んだ理由は……グータラなヘスティアの世話してるしザルドに家事スキルは叩き込まれてるらしいからな。それと一番先に見付けたから、ぶっちゃけ掃除できりゃ誰でも良かった。

 

 ヘスティアはナイフの購入価格について黙っておきたいみたいだったが、ザルドが手紙に『もしもの時は保証人の俺が何とか支払うから安心しろ』とか書いちゃったもんだから。

 

「あの小僧、【銭ゲバ】の魔の手に掛かっちまったのか……」

 

「駄目よ、モルド。関わらない方が良いわよん」

 

 まあ、精々頑張って成長して金を稼いでくれ。恩恵を授かってからこの短期間であの花のモンスターに防戦可能程度に成長するとか何か成長に関わるスキルを持ってそうだしよ。

 

「……うん? ああ、もうそんな頃合いか」 

 

 俺は適当にブラブラするかボールスの所のソファーでも借りて昼寝ぶっこく気だったんだが、遠くから復活したばかりのゴライアスの咆哮が聞こえて来る。

 何時もなら通行の邪魔だからって住人総出で倒しに行くんだが、今日は集まる様子が無いし、俺に任せる気か?

 

 それは別に良いんだ。巨大モンスター相手の戦闘方法を試す機会になるので不満は無いが、ちょっとだけ勿体無い気もする。

 

 

「おーい。経験値(エクセリア)稼ぎたい奴は先着十名限定で着いて来いよ。攻撃は大体俺が防いでやるから身動ぎに当たらない程度に注意して攻撃すりゃ良い。アミッド、後衛で怪我した奴を治療してやってくれるか?」

 

「はい。別に構いませんが……」

 

 わざわざ手間を掛けるだなんて何を企んでいるのやら、と疑いの眼差しを向けられる。アミッドの奴、分かってるじゃねえか。

 

 ゴライアス程度じゃ既に俺の糧にするには不足も不足だが、育って貰わなきゃ困る債務者の成長には良い案配だ。

 

「そんな訳でベル、一旦バイト前に階層主相手に良い汗流そうぜ」

 

「ええっ!? 無茶振りが過ぎるんですけれど!?」

 

「多少の重症はアミッドなら楽に治せるし、欠損も手足一本につき五百万ヴァリスという破格の値段で治してやるから安心しな」

 

 そもそも拒否権を与える気は無い。手早く強くなるなら限界を超えた先の限界に挑戦するのが手っ取り早いんだぜ?

 

「……」

 

 アミッドの視線が呆れを通り越して諦めになっているが気にしない気にしない。さっさと片付けて働こうぜ。

 

 

 

「グォオオオオオオオ!!」

 

 ゴライアスの口内に充填されて行く魔力。それが咆哮として放たれる直前に骨を粉砕しない程度に顎を蹴り上げれば天井が崩れて降り注ぐ。

 こっちは防がない。上級冒険者ならこの程度は何とかして当然だろ?

 

「ファイアボルト!」

 

「っと、助かったぜ、小僧」

 

 なのにベルの奴、耐久を上げるチャンスだろうにモルドの上に落ちそうになった岩を魔法で砕いてるし。

 骨が折れて肉が潰れてもどうせ治すんだし、目だの鼻の穴だの口の中だの狙えば良いだろうが。

 

「来るぞ!」

 

 参加者に経験値が行くように俺の攻撃は最低限の威力なのがもどかしい。連中を潰そうと腕を振り上げた所で右膝を後ろから殴って体勢を崩し、更に背中を蹴り上げれば巨体が宙に舞って仰向けに落下する。

 

 落ちた時にぶつかった奴が居たり飛び散った岩の破片が刺さってベルも怪我をするがアミッドの魔法がそれを癒し、俺は気にせずゴライアスの顔面に降り立つと眉間に拳を叩き込んだ。

 骨が砕ける音に続いて響く絶叫、そして右目にベルの魔法が直撃したのを皮切りに次々と魔法が飛んで来るんだが、俺が居ても平気なのは流石だ。

 

「起き上がる前に足を潰すぞ! どうせ攻撃自体は【銭ゲバ】が防いでくれるんだ! 余波にだけ気を付けてぶっ潰せぇええええ!!」

 

 虫の死体に群がる蟻みたいにゴライアスに冒険者達が殺到して腱やら指の付け根を狙って攻撃する。

 酷く暴れて抵抗するゴライアスだが、肩を強引に脱臼させてやれば悲鳴と共に抵抗が弱まり、分厚い皮膚を刃物が切り裂いて行く。

 

「ファイアボルト! ファイアボルト! ファイアボルトォオ!」

 

 ベルも果敢にナイフで突き刺しては魔法を流し込んで内部から弾けさせて行く。身動ぎ一つで吹き飛ばされるもアミッドの魔法で癒えるなり飛び込んで行くんだが、その動きが不意に止まる。

 

「あれ……?」

 

「ちっ! 精神力枯渇(マインドダウン)かよ。おい、これで貸し借り無しだぞ、小僧!」

 

 おいおい、大体何発で枯渇するか把握するのは当たり前だぜ? 今回は組んでる連中が居たから良いが、じゃねえとモンスターに新鮮な肉のお届け便になっちまう。

 

 崩れ落ちた所をモルドに抱えられながら遠ざかるベルの姿に呆れているとゴライアスが手を伸ばして来たので力任せに払い除ければ肉が弾けて骨が砕ける。

 

 さてと、かなり弱って来たから決着は近いか。ドロップアイテムを落とせば良いんだがな。

 

 

 

 

 

 

「……貴方にしては珍しいですね。【女神の黄金(ヴァナ・マルデル)】以外に他人を気に掛けるなど」

 

「そりゃ金の卵を産む鶏候補だ。成長速度が異常だし、死ななきゃ強くなれるんじゃね」

 

 ゴライアス討伐後、アミッドに頼まれて俺は水浴び中の見張りをさせられていた。黄金の壁で四方を囲み、壁越しに話をする。

 俺の意思一つで壁は消え去るんだが、そこは信頼の証って事で水音と共に聞こえる声に返答して行った。

 

「貴方との付き合いは長いですが、それでも驚かされてばかりですよ。女神の告白を断ったと耳にした時には相手の正気を疑った程です」

 

「お互い様だろ? ライバル店だったミアハ様が好きだったり、出汁が温泉になったりとかビックリだわ」

 

「出汁と言うなと言いましたよね? 後で殴ります。……それと誤解無き様に。あの方への感情は尊敬と癒しを求めての物ですので恋愛とは無関係です」

 

 ふーん、そっか。じゃあ、アミッドも俺と同じで恋愛とは無関係な訳か。大変だな、イメージとか気にせず動いてる俺とは違うってのに。

 

「……それはそうと【剣姫】とも少し繋がりがあると聞きました。彼女は貴方を友達と疑問符を浮かべながらも言っていましたが」

 

 

 

 

 

 

「アイズとの関係? 一時期手合わせを申し込んで来ていた知り合いなだけだぞ。保護者の良心につけ込んで金を引き出す役には立ってくれたな」

 

 その為にアドバイスもしてやったし、たまに剣の稽古に付き合ってやってたんだよな。魔法無しなら俺が上だし、一撃先取のルールで俺に勝てないからって何度も挑むから面倒になってやらなくなったけれど。

 

 

 

「私の事はちゃんと友だと認識しているのに……」

 

「だって一緒に居ても楽しくねえし。見ていられない危なっかしさだらけで無駄に世話焼いて手間と時間を無駄にさせられるしな。……人形から人間に戻ったかと思いきや情緒が成長してやしねえ。何をやってんだ、保護者」

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