ダンジョンに儲けを求めて何が悪い!   作:ケツアゴ

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第三十四話

 全く! 兄さんはリリの事をなんだと思っているのやら。妹使いが荒くないですか?

 

 多分、きっと、大体、可愛い大切な家族だ。ほら、答えたんだからバリバリ働け とでも言われて終わりだろう疑問を浮かべながら地下水道を進む。

 魔石灯の仄かな光に照らされた華奢な……そう! 兄さんは腕が逞しいとか言ってきますが華奢なリリの体が照らされて影を伸ばしていた。

 

 肩に担ぐのは今朝受け取ったばかりの第二武器、漆黒の柄と刃に小さな水晶の装飾がされた鎌槍【ソウルイーター】。アンタレスのドロップアイテムの一部を使い、ゴブニュ様が【神秘】や【鍛冶】持ちの団員と共に打った第一等級武器。

 

 お値段三億五千万ヴァリス、一括払いなり。

 

「それにしてもお手伝いをして下さって助かりますが良かったのですか、リューさん?」

 

「ええ、私も気になっていますし……ミア母さんから急遽非番を頂きましたので」

 

「あのミアさんが急にお休みを? ……あっ」

 

 此処に向かう途中で遭遇したリューさんはダンジョンでの鍛練を急遽中止して私に同行をして下さったのですが、昨日といえばフィリア祭りの大失敗の憂さ晴らしにと豊穣の女主人に結構なお客が集まったそうなのですが……デュオニソス様がうっかりオラリオメリーをぶちまけてしまい、その飛沫を匿名のエルフ二人が浴びて大変な騒ぎになったとか。

 

「まっ、ロハで手伝って貰うのも心苦しいですし、終わったらお昼ご飯でもご馳走致しますよ」

 

「いえ、それは流石に。……私としては貴方の兄に負い目も有りますし」

 

 はぁあああああああああああああ。まーだ昔の事を気にしているんですね、この飯マズポンコツエルフは。

 

 気落ちした表情で何時までもグダグダやっていますが、腕を切り落とされようが戻せる兄さんからしたら勘違いで拳骨食らった程度だというのに。

 

「あーもー! 相変わらず……いえ、失敬。飯マズでポンコツな【疾風】とは顔が似ていて同じ名前なだけでしたね。そんな事よりもさっさと終わらせないと五十食限定の揚げ魚の七色ソース定食が売り切れてしまいます。ほら、行きますよ!」

 

「わっ!?」

 

 この人は肌に触られるの嫌なタイプのエルフなので腕じゃなく袖を掴んで強引に引っ張って走る。

 今じゃリリの方がLv.も上。なので体格差があっても楽に連れて行けるのですが……。

 

「水浸しですね」

 

「困りました」

 

 旧地下水道へと進めば階段の先は膝より下辺り(ヒューマン基準)が水に浸かりそうで、これでリューさんに背負って貰うのも無理でしょうし……。

 

 仕方が有りませんし、神血と魔石を消費して【オーズ・ア・ウィッチ】を発動しますが、今回は知恵有る案山子と勇猛な獅子の出番は無し。

 

 現れたのは心持つ木こりの人形、どう見ても大きな全身鎧に巨大な斧を背負った重戦士ですが気にせずに名前は【タロス】としました。

 

「ほら、リューさんも乗って下さい」

 

 私の思考での命令通りに動くタロスは私を右肩に乗せた状態で水の中へと入って行き、リューさんも戸惑いを見せながらも魔法で造り出した人形ならばと左肩に飛び乗ります。

 

 少し進めば反対側から壊された壁、そして貯水槽まで到着したのですが、予想通りと言いましょうか、前回と同様に獰猛な感じで向かって来る食人花(ヴィオラス)

 

「リューさん、どうやら魔力に強く反応するらしいので……タロスを囮にしましょう」

 

『!?』

 

 タロスが驚いた風に見えますが気のせい気のせい。飛び降りて敵の真ん中に突っ込めば一斉に食い付かれるも牙は装甲を貫通出来ていません。

 

 では、早速試し切りをば……。

 

「はえ?」

 

 リリ達の存在など見えていない様子でタロスに食い付くモンスターの胴体に刃を振るったのですがすり抜けた?

 

 一瞬呆けたリリの目の前で刃がすり抜けた筈のモンスターが崩れ落ちる。成る程、切れ味が良すぎて切った感触がしなかっただけだと。

 

「ゴブニュ様は意味深な感じで『この武器なら世界を救えるやも知れぬ』とか言っていましたが、あれは大袈裟でも無い気もしますよ……」

 

 いえ、あれは別の何かに意識を向けていた様な? アンタレスの持つ能力がどうとかも言ってましたし……。

 

「ん~? これは無駄足でしたか? 手懸かりらしい手懸かりは有りませんし……」

 

 潜んでいた四体を即座に片付けて、得られた成果は妙な色の魔石のみ。『万能者(ペルセウス)』にでも持っていけば何か分かるかと思っていると来た道から向かって来る気配。

 

 一人と……一柱。

 

「どうなさいますか?」

 

「ほら、そうやって相手が誰か確かめずに臨戦態勢にならない。だから兄さんにポンコツエルフ一号と呼ばれているのですよ、リューさん」

 

「初耳ですが!?」

 

 それよりも今は相手が誰かを確かめるべきだと警戒しつつも声に耳を傾ければ知っている声が二つ。

 

 

 

 

「なんや。リリたん達も調査かいな。……まあ、丁度ええわ。聞きたい事もあったしな」

 

「これはベート様と神ロキ。リリ達は今から優雅にランチと洒落混む予定だったのですが、お話は後日で宜しいですか?」

 

 まあ、聞かれるのは十中八九三十階層での事。箝口令が敷かれたものの騒ぎになった事は伝わっているでしょうし、深層に向かった筈のリリ達が直ぐに戻って来た事を考えれば何かあったと神様なら思い当たっても不思議じゃありません

 

 団員が怪我しましたし、黙っていられず動いたのでしょうが……。

 

 

 

「飯ならウチが奢ったるから話聞かせてや」

 

「じゃあ、バベルの高級レストランでお願いします!」

 

「げぇっ!? 入るだけで十万ヴァリスする店やんか!?」

 

 相手が相手だけに、護衛のベート様も第一級冒険者なので煙に巻いて逃げるのは不可能でしょうし、少しばかり流して役得をちょうだいしましょうか。

 

 

「分かった分かった! 奢ったるさかいにちゃんと情報は流してや!」

 

「ええ、勿論」

 

 勿論ながら死者がモンスターになって甦ったとかは話せませんし、適当に本当の事で誤魔化しませんとね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、あの汚れた魂を思い出すだけで頭が痛くなるわ。昨日はリューが面白い事になったらしいし、仕事を休まなければ良かったかも。ベルの姿も見れなかったし」

 

「……ベルですか?」

 

「ええ、そう。ベル・クラネルよ。未だ何処のファミリアかも分からないのだけれど」

 

「ベルならば女神ヘスティアのファミリアですが」

 

「うん?」

 

「キリアの所に居候中、少しばかり稽古を付けました。どうやらゼウス・ファミリアの遺児らしいです」

 

「……此処数日、ベルの所属をどう探し当てるか考えてたのが無駄だったわね。あの子の好みが【剣姫】らしいとまでは分かったけれど、他は全然だったのに」

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