ダンジョンに儲けを求めて何が悪い!   作:ケツアゴ

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第三十七話

「アイズ、合わせる!」

 

 【神狩り】の顔がチラ付く仮面の女も気になるが、目の前の赤髪の……レヴィ・チャン?

だかレヴィちゃんだかの方が今はヤバい。

 

「【目覚めよ(テンペスト)】!」

 

「その風は……」

 

 詳しい説明も無しに指示を飛ばせばアイズは何も聞かずに風を纏い女へと斬り掛かる。初会合の時にも反応していたがビンゴ! 風に反応して意識をアイズの方へと向ける。

 

 その理由はどうでも良い。オリヴァスが精霊に関わっていそうだし、この女もアイズの風から何かを感じ取ったんだろうが、俺の前で隙を晒したな。

 

 女の直前で腰を落としての納刀。意識をアイズに向け、更に種族特有の背の低さが完全に俺を視界から外させていた。

 女が意識を此方に向けたのは本能からの警告だろうか。迫るアイズから俺へと意識を切り替えるなり飛び退く……が、一瞬遅かった。

 

 左腕と脇腹に走る赤い線。血が吹き出すと同時に左腕が宙を舞うが脇腹の方は浅く、そして直ぐに血が止まる。

 

「ちっ! 両断にする筈がしくじった」

 

「この餓っ……ぐっ!」

 

「私を忘れたら駄目」

 

 俺を睨み付ける女だがアイズの振り下ろしに咄嗟に剣を構えて受け止める。意識外からの攻撃だが押し込めたのはほんの僅か。

 どうやら前回会った時よりも強くなってやがる。ステイタス換算でLv.6の上位って所か? 

 

 受け止められた事に驚きつつもアイズは更に出力を上げて押し込もうとするが徐々に押し返され、その腹に向かって蹴りが放たれる。

 

 どうやら忘れるみたいだな。今は2対1の戦いだ。当然そんなのは見過ごさず女の足を水面蹴りで払うと同時に目を狙って突きを繰り出すも体を回転させてアイズを弾き、俺の突きも耳を削いで終わりだ。

 

 突きは終わり、アイズは既に次の攻撃へと移っている。弾かれた勢いで後退し、今度は地面を這う程の低さを風で跳び、女を真上へと弾き飛ばす。

 剣で切ったにも関わらず傷は浅いが風の衝撃は凄まじく天井に迫る勢いで女は飛び、俺はそれよりも高く跳び上がり中に浮かせた黄金を蹴って折り返していた。

 

「随分と強化されてるじゃねえか。随分と共食いしたか、怪物女?」

 

 オリヴァスは捉えたが情報源は多いに越した事は無いが、此奴は駄目だ。戦闘力も再生力もオリヴァスの比じゃねえ。

 

 此処で殺さないと更に強くなって手が付けられなくなる。

 

「死ね」

 

 この女の血を吸って骨断ち丸が歓喜しているのが伝わり、逆に肉削ぎの方が血を吸えずにご機嫌斜め。

 暫くは拗ねて切れ味が乱高下するのが分かるが今は仕方無いか。

 

 胸の魔石の辺り目掛けて振り抜けば骨を断ち肉を切る感触。だが、僅かに逸れて魔石には届かない。

 

 カウンターで放たれた拳を黄金の足場を蹴って避けるが女からは大きく離れてしまう。

 

 だが、相手も空中で自由に動けないんだ。そして地上からは風の噴射で加速を続けながら突きの構えを取るアイズ。まあ、これで仕留め損ねる事は……。

 

 

「おい、アリア! お仲間に会いたくないか!」

 

「え……?」

 

 は? あの馬鹿、何やってやがるんだ?

 

「この際だ。手足が無くとも問題無く持ち帰るだろう」

 

 アリア、その名前を聞いた瞬間にアイズの動きが空中で乱れ、女は俺に背を向けアイズを迎え撃つ体勢だ。

 此処で俺に殺されてもアイズを倒す気かよ。

 

 

「ちっ!」

 

 持って帰るだろう? あの仮面女は動けない。つまり伏兵有りって事か? 此処で女を殺したとして、アイズが連れ去られたら取り返しがつかない事態に陥ると直感が告げている。

 

「……仕方無い、か」

 

 女の脇腹を狙う様に大質量の黄金をぶつけて軌道を逸らし、動きが乱れたアイズを掴むと黄金に乗って地上へと急降下する。

 

 地上に降りてもアイズの表情は驚愕と動揺で固まって森の方へ落ちて行く女の方に視線が向けられていて……その尻を鞘で強打した。

 

「あひゃん!?」

 

「戦闘中は相手をぶっ殺す事だけ考えとけ、馬鹿」

 

「……痛い」

 

 尻を摩りながら俺を涙目で見るアイズだが、無言でもう一発入れる動作をすれば慌てて距離を取る。

 どうやら少しは我に返ったみてぇだな。

 

 

「あのままだったら痛いじゃ済まなかったからな?」

 

「うん、ごめん。そして……ないすこんびねーしょん?」

 

 慣れない言葉を使うな、馬鹿。昔からあれだけ相手をさせられたんだから合わせられて当然だろうが。

 寧ろリリルカとだったら勝ってたからな!

 

「及第点だ」

 

「きゅう? ……それよりもあの人は何?」

 

「おい、意味が分からず誤魔化しただろ? こりゃ保護者にチクって勉強させるしかねえな。……詳しくは分からねえが人の姿をしたモンスターだ」

 

「人の姿をしたモンスター? そんなのが居たんだ」

 

「危険だから此処で仕留めたかったんだが、くだらねえ置き土産を残して行きやがったぞ、彼奴」

 

 

 

 

 恐らくあの傷も塞がってやがるし、落とした腕も断面が盛り上がり始めている。切れ味が良過ぎるってのも考えものだと刃に付着した血を振って払い除けつつもアイズに意識を向ける。

 

 目的はどっちだ? 俺への復讐もあったが前回アイズの風を遠くから感じ取って反応していた。まるで探し物が見付かったみたいにな。

 

 捕まえて聞き出そうにも町を囲う食人花の大群。無視して行ったらリヴィラの住人の何割か死ぬな。それは不味い。

 

 相手の無敵に繋がる情報。アリアってのとアイズが関わってそうだが、最初にアリアって口にした時にそれをフィン達からアイズへの口止めを頼まれたって事は……いや、別に良いか。

 

「どうやら取り込み中みたいだね」

 

「おーう。例の赤髪の女の襲撃だわ。アイズが下手こいて逃げられちまってな。その上でこの状況だが……あの仮面女が居ねえ」

 

 下敷きになっていた筈の場所にはあの女の姿が無い。結構な出血の痕跡があるが、冒険者かオリヴァス達と同様なら生きているだろう。

 

 

「……あの怪しい()()か。『馴染んだ記念に、なあ死んで!』と言って襲い掛かって来てね。防いだら直ぐに逃げて行って、追う途中でこの騒ぎさ」

 

「あ? 違う違う。俺が言ってるのは全身タイツのアマゾネスの餓鬼で……今は別に良い話だな。さっさと動かねえと被害が大きくなる。戦闘中に何かしたらぶっ殺すだけだ」

 

 其奴が伏兵か? 違う気もするんだが、流石に数が多いんで会話してる暇はねえ。声が聞こえるから元気っぽいしベル達を助け出して手伝わせるか。

 

 さっき倒せてたら悩まずに済むのによ。

 

 

「空中戦、どうにか特訓しねえとな」

 

「私なら相手出来るよ?」

 

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