ダンジョンに儲けを求めて何が悪い!   作:ケツアゴ

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第三十八話

 崩れた屋根の下敷きになった二人を助け出してこき使おうと思ったその時、俺が見たのは胸に顔を埋めていたベルの姿だった。

 

「流石神ロキの眷族。何処ぞの婚姻するまで手も繋ぐべきでないとか純潔と潔癖を履き違えたポンコツとは違ってエロフだったか。この状況でおっ始めてるとか……うわぁ」

 

 瓦礫を適当に蹴り飛ばして様子を見てみれば暫く固まっていた二人は慌てて左右に飛び跳ねる。顔は真っ赤で軽いパニック状態。

 フィンは苦笑でアイズは何を言って良いのか分からずに固まっていた。

 

 あっ、此奴でも此処までになると何となく分かるのか。

 

「そんな訳が無いでしょう!? そもそも幾らエルフでも其処迄の人がいる筈が有りません!?」

 

「崩れた屋根から庇ったらあの体勢で動けなくなっただけですからね!?」

 

「だろうな。その程度分かるに決まってんだろ。ほれ、さっさと武器を持って戦え。既に始まってんぞ」

 

 ただ、イラァっとしたから言ってみただけだ。こっちは今までの人生で男女交際の経験なんて無いのに人前でイチャイチャしやがって、糞が。

 

「レフィーヤ、早速で悪いけれどリヴェリアの所で指示を受けてくれ。キリア、君の魔法で下級冒険者だけでも脱出させられないかい?」

 

「魔力に反応するからな。脱出中に一斉に群がって来るから無理だ。まあ、全部倒せば良いだけだろ」

 

 太陽の代わりをしていた水晶が崩れて薄暗くなった十八階層の中、直ぐに用意された篝火がリヴィラを薄く照らし、周囲の水場から姿を見せた食人花へと冒険者達は応戦を始めている。

 

「テメェら! 数人掛りで一体抑え込め! 倒せなくて良い! 【銭ゲバ】とロキ・ファミリアがどうにかするからな!」

 

「人任せじゃないの。まあ、良いわ。行くわよ、ティオナ!」

 

「了解! うりゃりゃりゃりゃ!!」

 

 あっちはヒリュテ姉妹が大暴れしているし、フィンとアイズが居るなら俺が刀を振るう必要は無いか。

 

「おい、フィン。俺もちょいとエルフ共の所行って来る」

 

「……一緒に戦わないの?」

 

「戦わないの。そんな事よりもやるべき事が有るんだよ」

 

 普段はする機会が無いが、これが【エル・ドラド】の使い方としては満点に近いって奴がな。だから不満そうにすんな。

 知り合いでしかない俺と違ってファミリアの仲間が居るだろうが。

 

 

「フィン、ちょいと育て方が間違ったんじゃねえの? 強いせいで周囲の同年代の殆どが立場の上下が出たせいだぞ、此奴の情緒」

 

「あははは……。君が仲良くしてくれたお陰で少しはマシになったんだけれどね。どうしてもファミリアの構造上はさ。それよりも今度お茶でもどうだい?」

 

「親子レベルで年上なんだし奢りだよな? まっ、種族の再興とか興味ねえけれど別に良いだろ」

 

 因みにリリルカの方の情緒についてはノーコメント! クズ二人がやらないから俺が育てたが限界があったんだよ!? 

 

 

 

 長文詠唱の魔法を得意とする魔導士にとって重要なのは敵を近寄らせない事と平静を保つ事。詠唱が終わるまで敵が間に合わない距離に居るのが理想だが、そうは行かないのが現実だ。

 

 並行詠唱も悪くは無いが、避け続け撃ちまくるにしても周囲の味方を巻き込む事も。

 

 結論、やっぱり近付けない場所からのブッパが一番だ。

 

 

「普段からこれなら楽なんだがな」

 

「確かに……」

 

 天井近くに浮かぶ黄金の船。オラリオでも屈指の魔導士二人と俺を乗せて街を見下ろしていたよ放たれる魔力に食人花が反応するが当然届かず体を伸ばして必死に牙をガチガチ鳴らすだけだ、この距離だと聞こえないが。

 

「はいはい、今回限定だろうが是非とも堪能してくれ」

 

 二人が放つのは極寒の冷気。街の左右に向かって放たれたそれは湖の中のモンスター共を凍らせ、再びの詠唱が始まれば事態解決は秒読み前。

 

 あー、小腹減ったな。肉食いたい、肉。

 

 

 

 

 

「おい、イカれ女。それを勝手に掘り出した上にどうする気だ? 未成熟だが、次の場所に持っていけば未だ……」

 

「アタシちゃんが気になるのかい、レヴィちゃん先輩。モチのロンで使うのサ! こういうのはパァーッと使う物だよ、アタシちゃんはクルクルパー!」

 

「それには大いに同意する」

 

「共感得ちゃった! これで二人はマ・ブ・ダ・チ! だね」

 

「死ね」

 

「およよよ、また友達作り失敗だよ。アタシちゃん、四番目になっても友達が増えない。大抵ぶっ殺しちゃったせいで減る一方だし」

 

「元から0人だろう。周囲からの好感度はマイナスになっても友人の数は0から減らんぞ」

 

 

 

 

 

 

 再び放たれた冷気によって街を囲うモンスターは全滅、手が届かない場所からの一方的な殲滅ってマジでやべえ。

 敵によっちゃ撃ち落とされて終わりだろうが、その辺は俺次第か。

 

 後片付けをさっさと終わらせて飯にでも行こうと思った時、不意に森が振動して燃え上がる。現れたのは岩の様な肌を持つ巨大なワーム型のモンスター【ファイア・ロックワーム】。

 

 本来は灼熱のエリスに生息するんだが、妙なのは女型のモンスターが頭部から生えている。それが求める様に両手を伸ばせばファイア・ロックアームの口の奥が赤く輝いた。

 

「急降下するぞ。振り落とされるなよ」

 

「え? ひゃああああっ!?」

 

 アレはヤバいと思った瞬間に俺は船を最高速度で地上へと向かい、先程まで居た場所をワームの口から放たれた熱線が通り過ぎる。

 

「危ねえ。掠るだけで黄金が溶けてたな」

 

 斬られても砕かれても別に構わないんだが、溶かされたら総量が減るからな。着地の勢いでレフィーヤが尻を強かに打ったが気にしない気にしない。

 

 だから俺も逡巡は落下中に終わらせた。手早く扉を出現させるとフィンへと視線を向け、飛び込む様に促す。

 

 もう一体、女型のモンスターに寄生されたグリーンドラゴンが現れたのはその時だった。

 

「……どうするよ、これ」

 

 どっちも第一級複数で相手するべき相手だろうが、今の戦力をどう分断する? いや、それはフォンが考えるべき事か。

 

 そのフィンも二体のイレギュラーな相手の登場に一瞬では思考が纏まらずにいる様子。だが敵は待ってくれはしない。

 ファイア・ロックワームの口内が再び輝き、溜めの後に放たれる熱線。

 

 

 

「彼方の相手は引き受けよう。お前達は街を竜から守れ」

 

 背後からその声が響くと同時に熱線に向かう衝撃波。それは熱線と僅かな拮抗の後に押し込んでファイア・ロックワームの寸前で爆ぜる。

 

「オッタル! 何で……頼んだ」

 

「……其方もな」

 

 今ここにいる理由は今聞く必要は無い。オッタルが扉をくぐると同時に俺はグリーン・ドラゴンへと向けて武器を構える。

 

「あれれ? 今、詠唱したっけ?」

 

「船の上で済ませた!」

 

 おい、ティオナ! 聞くな! わざわざ聞くな、馬鹿!

 

 

 しかしデケぇ。通常個体の倍近く。だが、寄生しているらしい女型の方は少し痩せてんな。

 

 街の中心部に降り立った竜に寄生する女型のモンスターは所々肉が極端に少なく重病人か何かみたいだ。

 

「ねえ、前の遠征の時のと何か違うくない?」

 

「確かに気になるけれど考察は後だよ、ティオナ。キリア、一旦指揮下に入ってくれるかい?」

 

「状況が状況だしな。……大人数での戦いは不慣れだ。足引っ張っても文句言うなよ」

 

「君は自信があるのか無いのか分からないな、相変わらず」

 

 もう少し自信を持て言いたそうだが、ダンジョンが生んだ黒龍はあの最強派閥を壊滅させて、なまじ俺自身の魔法が便利で2ランク上にジャイキリかましたんだ。

 

 だから敵にも同じかそれ以上の事が出来ると思うべき。

 

 やるしか無いなら格上相手でも戦うが、自己評価は最小で相手の評価は高く見積もるのは当然だろう?

 

 

 

 

 

 

 

「実はもう一体持ち出してましたー! どんどんぱふぱふー!」

 

「殺して良いか?」

 

 

 

 

 

 

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