ダンジョンに儲けを求めて何が悪い!   作:ケツアゴ

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義務有給って取るなら取るで面倒ですよね モンハンストーリーズ3
来たから良いけれど


第三十九話

「私は凄く不愉快よ。あの穢れた魂の持ち主が新種のモンスターを操る一派に関連があるのなら叩き潰しなさい」

 

 ガリバー兄弟が三十階層から戻り報告を受けたフレイヤによって集められたオッタル達は女神の一言によって表情を変える。

 

 溢れ出す殺気。女神が見ただけで体調を崩す程の相手の仲間を決して許すべからずと怒気を隠せないでいる中、他の者と同じく殺気を溢れさせながらも冷静なのはヘディンだった。

 

「フレイヤ様、オリヴァスはどうなさいますか? ギルドから奪うか、それとも……」

 

 想定するのは仲間による救出か或いは口封じ。故にギルドで見張るという選択肢も有るのだが。

 

「そうね。オリヴァスに関しては大っぴらに関わるとギルドが煩いわ。ヘディンとヘグニで交代しながら見張ってちょうだい。オッタル、貴方はリヴィラで情報収集をお願いね」

 

 この流れによって丁度十八階層に辿り着いたオッタルがリヴィラに入ろうとした直前、目の前が凍り付いて凄く寒かった。

 

 

「少しばかり予定外だったが、まあ良いだろう。何があったか聞けば情報が手に入りそうだ」

 

 街に入る前、居候中に風呂に入らずベッドに入ってしまった際に散々汗臭いだの加齢臭が酷いだのと罵倒されたのを思い出し水浴びしたのが悪かった。

 冷気の余波で、わずかに凍りついた髪の毛を気にしつつ、彼は好戦的に笑みを浮かべる。

 

 通常個体よりも倍以上の大きさを持つモンスターの頭部から生えているのは多少発達不良が見られるも頭に美が付く女。

 それが尚更不気味さを立てる中、既に本能で獣化を選んだオッタルが剣を構えると同時に巨体が蠢き、女の口が開いた。

 

「【燃えろ 燃えろ 燃えろ】」

 

「詠唱!」

 

 そう、それは本来ならエルフや魔法を発現した眷属、そして精霊にのみ許された奇跡。それをモンスターが扱う光景を前に脳裏に浮かんだのはガリバー兄弟から聞いた精霊関わる可能性について。

 

 目的の者達が関わっているかもしれない疑惑が確信へと変わり、良い土産話が手に入ったと喜びさえするが、笑みは直ぐに消えて普段の寡黙で無骨な戦士へと戻っていった。

 

「来いっ!」

 

「【全てを灰に 全てを炭に 全てを火種へと変えて】」

 

迎え撃つかの様な言葉と共に先制攻撃。ファイア・ロックワームの一部を切り飛ばすも詠唱は止まらず、オッタルの視界は赤一色へと染まる。

 

 次の瞬間、先程急激に冷やされた大地に流れ込んだ熱波によって発生した上昇気流が天井へと届く事で炎の竜巻が発生する中、逃げ惑うモンスターを巻き込みながら燃え広がるも突如それは両断され消えて行った。

 

「この程度では到底足りん。……どうにか【暴食】と再戦出来ぬものだろうか」

 

 豪撃一閃、炎の竜巻諸共強化された女型モンスター、【精霊の分身(デミ・スピリット)】を両断し燃え残った服に付着した灰を払い除けながらオッタルは街の方に視線を向けていた。

 

 

 

 

「あっちは速攻で方が付いたか。何か魔法使ってなかった気がすんな、あっち」

 

 それも長文詠唱以上の威力をだ。森があった場所は焼け野原になって延焼を続け、街を捨てるか湖を凍らせた魔法をぶっ放すしかねえが、それを起こした奴を一撃で倒すとか獣化オッタルはやっぱり強い。

 

 あっちの情報とか後で貰うとして……こっちは其処迄情報になりそうにねえな。

 

 リヴィラのど真ん中に現れたグリーンドラゴンに寄生した女型のモンスターだが、服屋のマネキンを思わせるのっぺりとした顔で時々呻き漏らす程度で知能は其処までって所だ。

 

 つまり喋りそうにない。それは魔法詠唱を使えなさそうって事だ。

 

 ただ、厄介なのは……。

 

「あぁっ!? またかよ、クソが!!」

 

 ティオネが竜の首を切り裂くが皮下に伸びた根が傷口を覆って縫い付ける。竜の巨体の背には頭だけを出した食人花が無数に寄生して負った傷を修復させていた。

 

 

「てやー!! って、またぁ!?」

 

 続いて右前脚をティオナが切り飛ばすも断面から伸びた根が落とされた足に絡みついて結び付ける。

 

「参ったね。オッタルが秒で終わらせたのに僕らが苦戦していたら格好が付かない」

 

 苦戦はしていない。しぶといだけで時間を掛ければ倒せるんだろうが、二大派閥がそれぞれ別個に敵に立ち向かい、片や一人で秒殺だってのにもう片方が数人で中々仕留められないってのは沽券に関わるよな。

 

 俺は……別にロキ・ファミリアの名声自体には興味が無いが、このタイミングでって事で疑わしい【神狩り】リスペクトのアマゾネスやら赤髪のレヴィ・チャン? やらフィンが出会ったって奴やら、そんな連中の思惑通りにってのは気に入らない。

 

 なので速攻で潰そう。

 

「アイズ、先ずは花をどうにかするぞ!」

 

「分かった」

 

 俺とアイズの役割は空中を動き回っての撹乱と飛んだ場合に叩き落とす事だ。左右から交差する動きで翼を切り飛ばして背中に着地。

 手入れされてねえ庭に生えた雑草みたいにびっしり生えた食人花を切り飛ばして行く。

 

 此方は竜と違って再生は無理だと。

 

 グリーンドラゴンが暴れて振り落とそうとするがフィン達が攻撃してそれを邪魔をする。

 

「アイズ、数秒稼げ」

 

 そう告げるなり俺は片膝を付いて納刀、竜の皮膚を突き破って新たに食人花が現れるがアイズによって瞬殺され、頼んだ数秒が経過した。

 

 

雷影(らいえい)

 

 呟きと同時に抜刀、コンマ一秒も置かずに納刀し鍔鳴りの音だけが響く中、女型モンスターとグリーンドラゴンの首が落ちた。

 

「……マジかよ」

 

 竜の胴体は力を失い崩れ落ちるも切り飛ばした首は違う。頭の無い女型に寄生された竜の首は断面から飛び出した根で地面を這ってこの場からの逃走を始め、その往生際の悪さにゃ俺もビックリだわ。

 

「普通首を落とせば死ぬもんじゃねえか? ……無駄だけれど」

 

 寄生した相手と女の首だけどうにかしても無駄とかゴキブリ並みの生命力、どうやら魔石を砕かないと無駄らしいが……その足掻きも無駄だ。

 

「ウィン・フンブルヴェドル!」

 

 俺達は再生能力に責めあぐねていたが場には釘付けにしていた。後は長文詠唱をゆっくり行っていたリヴェリアの魔法を叩き付けて終えば良い。

 

 氷漬けになって厄介な相手との戦いもお終いって訳だ。

 

 

「それで氷漬けのアレ、どうするよ、フィン? 専門家に調べさせた方が良いよな?」

 

 普通のモンスターじゃないから【万能者(ペルセウス)】にでも任せる事になりそうだが、新事業とか始める計画の真っ最中だろうに大変だな、彼奴。

 

 やっぱ責任有る立場になるもんじゃねえよ。有能故の仕事と立場からの仕事で多忙になるし。

 

 

「そうだね。持ち帰るのはお願いするね」

 

 ……だよなぁ。腹減ってるし運送とか引き渡し関連の遣り取りとか面倒臭ぇ。大して金にならないだろうし……。

 

 

 大事だし交渉関連は全部団長に丸投げするか。そうだ、それが良い。

 

 

「あっ、そうだ。アミッド、昼飯に弁当用意してくれてる筈だよな? 無事か? 無事なら食わせてくれよ。思い出したら完全にお前の料理の口になっちまった」

 

「戦闘の余波で吹き飛んでます。……どうせ地上に戻るでしょうし、治療が終わったら作って差し上げますよ」

 

 ……しゃーない。魔法で復元したら金が掛かるし待つか。アミッドにはアミッドの仕事が有るからな。

 

「助かるぜ。お前の飯は結構好みだからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……力が抜けた、か」

 

「ああ、まるで恩恵を奪われたみたいに数秒間力は入らず、徐々に戻ったとはいえしばらくはLv.3か4にでもなった気分だったよ」

 

「矢張りな……。だが、あの時に確かに自爆して死んだ筈だが……」

 

「キリアは爆弾を使った襲撃者にあの【神狩り】を連想させられたそうだよ。但し、同じ言動のアマゾネスの少女だったそうだ。僕が出会った同族とは言動が同じでも別人……なのか? ……何かが来る」

 

 怪我人の治療の後で一旦撤収される事になる中、二人の会話に耳を傾けていた俺もそれに気がついてアミッドを庇う様に武器を構える。

 

 爆弾や度重なる大規模な魔法による破壊。それが引き起こす事態を俺は知っている。リリルカに言われ仮にも世話になった借りを返す為に全滅したアストレア・ファミリア団員の遺髪を届けた際に聞いた通常とは違うモンスター。

 

 

「おい! 彼奴は魔法を反射する。絶対に使うんじゃねえぞ」

 

 迷宮が哭き、生まれ落ちる破壊者。口止めしに来た奴が告げた名前は……【ジャガーノート】。骨の様な長い肉体を持つダンジョンの尖兵。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか。ならば俺が抑え込もう」

 

 まあ、オッタルが居るなら大丈夫か。

 

 




次回 ジャガ丸にナレ死を求めるのは間違っているだろうか
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