ダンジョンに儲けを求めて何が悪い!   作:ケツアゴ

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四話

 世界は残酷だ。努力すれば必ず報われるなんて都合の良い事は起きはしない。結局、才能を持って生まれるか、努力が報われやすい環境に居られるか。

 

 つまり世の中は運って事だな、うん。

 

「今思ったんだが、あの喋るモンスターって実は人間だったんじゃ……」

 

 俺の目の前に積まれたのはヘファイストス・ファミリアの刻印が刻まれた武具防具の数々。第一級は流石に無いが最低でも三百万ヴァリスを下回らない品々。

 

 頻繁にまとめ買いするのでヘファイストス・ファミリアから転売目的を疑われたとリリルカが愚痴をこぼしてたな。

 まあ、転売はしないので大丈夫だが。

 

 合計すれば数千万ヴァリス、数十ヴァリスあったらお腹一杯食べられる事を考えれば……これ以上は止めておこう。

 

「……喋るモンスター? 知らない」

 

 考えるのを最初から拒否したいので意識を背ける為にソーマ様に食事を運んだついでの会話中、話題は出先で始末した喋るアラクネについてだが、本当に知らないっぽい。

 

 殺した後で思ったんだよ。あれ? モンスターの姿に変身するかさせる魔法でも使ったんじゃないのか? って。見た目だけモンスターにして怪物趣味が楽しめる様にしたとかだったらヤバかったよな。

 

「そうか。魔石はあったし灰になったから大丈夫とは思ったんだが、何か知ってるんじゃないかと思って。だってダンジョンに関して質問しても露骨に知らん振りするしよ」

 

 じゃあ喋らせる魔法かアイテム……もしくはダンジョンが変化を起こし始めたか、だ。

 

「いや、ダンジョンはダンジョンだから」

 

「……【我が財よ、金へと変わり倉に収まれ】」

 

 何か教えてくれるか期待はしてなかったので武具と防具を魔法内部の残高へと預け入れる。但し卸せない。

 硬貨が大量に消えたら価値の変化が不味い事になるからこうして価値がある物を買って換金可能なのは良いんだが……。

 

「教えてくれ、ソーマ様。どうして自分の魔法に三割も手数料を取られるんだ?」

 

 増えた魔法内残高は購入代金の七割程度。ああ、金が、俺とリリルカが稼いだ金が……。

 

「いや、聞かれても困る。知らない。……飲むか?」

 

「酒は匂い自体に生理的嫌悪感があるって言ってるだろ……」

 

 【マネーイズパワー】は項目内から選ぶって制約はあるが願いを叶える普通に凄い魔法だ。金さえ、金さえ大量に消費しなければ……。

 

 そっと差し出された酒を前に手で鼻を覆う。マジで臭くて堪らないよ、酒臭いって。

 

 

 

「うちの主神様はお仕事にお戻りか。精々稼いで貰わないとな」

 

 ソーマ様が飯を食い終えるなり酒作りに戻った所で団長が姿を現すんだが、まーた神酒盗み飲みしてやがるよ。

 チャンドラみたいな比較的マトモなのは勿論、燻ってる下級冒険者の連中が知ったら不満に思うだろうに。

 

 それとソーマ様への敬意がねえな、俺もだけれど。

 

「そーいや何人か追い出したんだってな。俺に取りなせって媚売って来たのがいたぞ」

 

「自分じゃノルマを達成出来ない連中だぞ? ソーマ様同様にそんなクズに期待などするだけ無駄だって思ったのさ」

 

 そう、ソーマ様は酒に溺れる団員に失望して無関心になっていたんだが、今は何一つ期待せず金を運んでくる相手とだけ認識しているので逆に言葉を交わす事が僅かだが増えた。

 

 俺が昔言ったんだよ。黒竜やらダンジョン外のモンスターやら共通の敵が多いのに神が降り立って以降も戦争やら他種族への蔑視で潰し合ってる人間に期待するのが端からの間違いだったんだって。

 

 そりゃ中には立派なのもいるんだろうが、んな稀で極端な例が存在するからって人間全体が素晴らしいって事にはならない。

 稀代の大英雄も極悪人も逸脱してるから讃えられたり恐れられたりするのさ。

 

 平均を見れば酷いもんだって、暗黒期のオラリオ見てたら分かるだろうに、アホじゃねえの?

 

 故に団長がファミリアには邪魔な存在だからって言えば作業を止めて恩恵の剥奪や改宗の手続きだって応じる様になった。

 最悪、俺達兄妹と運営責任者の団長と雑務担当が居たら十分回るからってな。

 

 それでもノルマ達成の褒美に神酒は与えるのは酒神としての誇りなんだとか。

 

 

「一応ギルド長には俺から賄賂送ってるけれど、問題起きすぎて査察が入った結果、酒作りを禁止された事で自分から天界に帰るとかの最悪のシナリオも考えられるからな。何を理由にギルドが首突っ込むか分からねえ。ガネーシャ様とか理念的に馬鹿の共食いとか嫌って首突っ込みそうだし」

 

 言外に裏でやってる悪事はちゃんと上手くやれって伝える。俺は何かあった際に知らぬ存ぜぬで過ごすから関わらない。第一級冒険者の立場を勝手にチラつかせるのは別に良い、好きにしろ。

 

 俺もリリルカも好きにやれるファミリアの方が都合が良いって知ってるからな。

 

 

 

「安心しろ。ちゃんと上手くやるさ。お前達は今まで通りに金を稼いで上納金をファミリアに入れてくれたら良い」

 

 そりゃ結構。互いにマトモな人間じゃねえが、そんなの今更だ。世界自体がおかしいんだから、そんな世界で生きていこうと思ったらマトモじゃいられないのさ。

 

 

「しかし随分と捻くれて育ったものだな、お前達は」

 

「当時のファミリアの環境と暗黒期の冒険者に対する市民の態度からして真っ当に育つとか奇跡だと思う。大人が悪いよ、大人が」

 

 それ考えるとリリルカが少し黒いのって保護者である俺のせい? 多少黒くないと大変な都市だから別に良いけれど。

 

 

 

 

「あーもー! さっきからキリが無いですよっ!」

 

 激しく唸り音を立ててスパイク付きの巨大な金属球がスパルトイの頭部を粉砕し、柄との間の鎖が周囲のモンスターを撃ち据える。

 鎖は太くて長く、金属球はそれを振るうリリルカの頭部よりも少し大きい程度。

 

 鎖はオリハルコン、球体部分はアダマンタイトで作られた第二等級武器【スターフォール】。リリルカはそれをスキルによって重い物を持てる様になった事で本来のステイタス以上に使いこなせている。

 

 鎖は勢い良く暴れ、床を砕きながら跳ね回るも周囲を埋め尽くす勢いで殺到するモンスターの勢いは衰えない。

 怪物の宴(モンスターパーティ)と呼ばれ恐れられるモンスターの異常発生。それが俺達兄妹を殺そうとするダンジョンの悪意によって起こされていた。

 

 スターフォールはモーニングスター、もしくはフレイルと呼ばれる武器で、それを片手で奮いつつすり抜けて襲い掛かるスパルトイの剣を巨大な盾で防ぎ、柄頭で魔石を砕く。

 

 既に足元には灰とドロップアイテム、出現時に崩れた床だのの破片が散乱して動き辛い。思わず足を止めた瞬間、モンスターが前方から殺到した。

 

「ああ、もう! 【貴方の刻印は私のもの。私の刻印は私のもの】、シンダー・エラ」

 

 本来、その魔法の効果は大きな体格の変化までは行えない変身。俺が借りた時には魔導のアビリティと魔力の高さで自由が効くが、リリルカが一度ランクアップした時には服装の変化が可能になった程度だ。

 

 そう、自分だけでなく身に付けた物まで変化可能って事だ。

 

 大きく振り下ろされたスターフォールは球体部分が小さく分裂、連結された鎖も途中から幾重にも枝分かれして広範囲のモンスターを一網打尽に叩き潰した。

 

 

「流石のパワー! まさに至高の腕力! そこに痺れる憧れる!」

 

「乙女に何言ってやがるんですかっ! はっ倒しますよっ!?」

 

 可愛い妹の抗議の声を口笛で誤魔化しながら刀の柄に手を掛ける。腰に差したのは二本。黒塗りの太刀と小太刀。色々試行錯誤の結果、これが俺に向いていたんだ。

 

 飛び掛かるスカル・シープやルー・ガルーの隙間を早歩きで通り抜けながら小太刀を持つ手を動かせば背後から聞こえるのは灰になって崩れ落ちる音。

 気にせず散歩感覚で進めば立ち塞がったのは巨大な蛇のモンスター、ラムトン。

 

 本来はLv.4なんだが、普通のと違って鱗がゴツゴツしてやがるし強化種か?

 

 ダンジョンの頑丈な地面を掘り進める程のパワーを更に高めて、なのに素早い動きで飛び掛かるラムトン。

 俺はその横を通り過ぎ、太刀を納刀した。

 

 

「まっ、俺達兄妹が揃えばこの程度は敵じゃねぇな」

 

 頭部が輪切りになって崩れ落ちるラムトンの巨体が周囲を揺らす中、俺は小太刀を左手で弄びながら振り返る。

 リリルカの方もそろそろ終わりそうだし……そろそろ二度目のランクアップの申請を出す頃かもな。

 

 剣姫には劣る速度だし、それ程目立たねえだろ。




リリルカ・アーデ   Lv.4



結束強絆(ファミリア・チェイン)

 共に戦う際に自分と相手のステイタスを上昇させる。

 ・関係性が強い程に効果上昇

 ・同じスキルを持っている相手が居る場合は効果上昇
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