ダンジョンに儲けを求めて何が悪い!   作:ケツアゴ

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第四十話

「美味かった。ご馳走さん」

 

 青空の下、都市内部の喧騒が届かない小さな公園でだいぶ遅めの昼飯を食う。ジャガーノート?オッタルとフィンが居るんだし、俺も今後の為にちょっとだけ手出しして色々試したが割りと楽だったぞ。

 

 流石にあれにアストレア・ファミリアが壊滅させられたってのも妙な話だし、爆破の被害とか階層での強さの差とか有るのか?

 

 まあ、その辺の報告は大手ファミリアの団長二人に任せて、あの新種モンスターの氷漬けの引き渡し、俺が少しだけ働いて団長に後は丸投げしている間にアミッドがチャチャっと作って来てくれた弁当を食べたんだが、最近遅くまで借金関連の作業してたから眠くなって来たな。

 

 欠伸を噛み殺し適当に寝転がろうとすれば頭を掴まれて、誘導されたのはアミッドの膝の上だ。何も言われないので何も言わない。

 此奴が店で働き始めた頃からの付き合いだし、そんなもんだろ。

 

 

 

「あれって【銭ゲバ】よね? 冒険者収入予測ランキング1位の。かなり怖いって聞いてたけれど……」

 

「ああしてみると小さくて可愛いのに強くて頼れるって驚いちゃうわ」

 

 聞こえて来るのは女神達の囁き声。神の気配を出しているから分かるが、出していなくても分かる。

 

 不死で不老の神と違って死ぬ人間の方が死ねば死ぬって分かっちゃいない。身近な人間が明日あっさり居なくなるってのを分かっておらず、だから命を助ける対価に大金を要求する俺は基本的に女にモテない。

 

 ちゃんと接するのは妹か金目当てか俺の悪評を知らないか、死ねば終わりだって分かってる奴等だけだ。

 

 チラッと視線を送ればまた可愛いだの聞こえて来る。女神だけあって綺麗だし色気もあるんだが……神は神だしな。鼻の下を伸ばす気にはならず、逆にそれを面白がられる。

 

「相変わらず女神は対象外なのですね」

 

「女神じゃなくても選ぶならあの中よりお前の方が良いけれどな」

 

 これにはちゃんとした理由がある。前にボールスにアイズとか興味無いのかって言われて只の知り合いだし、そもそも身長が違い過ぎるって言ったんだ。

 

 だって彼奴に例えるなら二メートル半大幅越えの大女って事になるんだぜ? 幾ら美人でも確かに嫌だって納得してたよ。

 

 そもそも俺達を褒める時に大体付けられる小さくて、とか根本では獣人を獣畜生って言うのと同じじゃねえ?

 

 そんな訳でフィンとは違う理由で同族か身長が頭二個分以内の差じゃねえのが対象になるんだよな。

 

 まあ、アミッドにわざわざ説明するのも面倒だし選ぶならお前とか言う位別に良いだろ。

 

 

 

 

「……はぁ。私も小柄なので何となく理由は分かりますが他所では言わないで下さいね。……寝ていて聞いてませんが。……癪ですね。何か落書きに使える物は……」

 

「此処にあるぜ、アミッドちゃん! このペンなら三日間残り続けるが三日後には綺麗に消えるし肌についても問題無いぜ!」

 

「おや、これはヘルメス様。借金の取り立てが厳しい事への仕返しなら止めておくべきかと。信用失墜行為と言われて貸し剥がしに合いますが」

 

「た、確かにっ!? じゃ、じゃあ俺は行くぜ。いやー、相変わらず分かり合っててお似合いだよ、君達!」

 

 

 

「……一応伝えておきましょう」

 

 

 

 

 黄金の船が星空の海を進む……なんて言い方したらリリルカ辺りに変な物でも食ったかと心配されそうだが、俺から湧き出した言葉じゃない。

 

 船体には木材の模様が刻まれ、まるで空を飛ぶのに使われている様な二対の翼には羽毛一本一本が繊細に作り込んでいる。

 船首には壁画に描かれた女神の飾り、船内も持ち込んでソファーや寝具以外は全て細やかな黄金細工。

 

 アリフリッグ達から八十五点を貰えた自信作だ。

 

「面舵いっぱーい!」

 

 因みに船首前の舵輪は俺の趣味。全部俺が動かしてるので帆も必要無いが風を受けて動いてる風にしている。

 

 今は夜中、客人も客神も眠っている最中で、船は高速で飛びつつも少しも揺れはしない。

 

 ただ一つ惜しいのは……船の中ならハンモックじゃねえか? 相手の要望なのでギルド購入の品だし、イスラファンの変態にでも美神が使ったベッドって高値で売ってやろうか……。

 

 

 

 

「喜び咽び泣きなさい! この私が労いに来てやったわよ!」

 

 但し当の美神は何となく残念な感じ。オラリオの二柱に比べたら騒がしい小娘って印象で、凄く残念。

 

 第一印象? 寒そう。

 

 それがオラリオでの講演を口実に裏ではオリヴァスを魅了する予定の女神アフロディーテ。マジで俺が喜んで当然って感じの態度だ。

 

「上空は冷えるんで風邪引きますよ? アレでも風邪は引くでしょう?」

 

「ええ、神であっても力を封じてたら風邪は引くわね。そういうアンタは大丈夫なのかって可愛い歌姫が気にしてるから付き合ってあげたのよ。わ・ざ・わ・ざ!」

 

「一応ホットミルク作って来てあげたわよ。それで一晩中魔法を使い続けて大丈夫なの?」

 

 カップを手に姿を見せたのはアフロディーテ・ファミリアの劇団で歌姫をやってるらしいハルモニア。

 迎えに行ったら劇を見ろって言われたが、移動が徹夜なので仮眠取りたかったので劇中眠っていてよく知らん。

 

 何か人気なんだなーってしかな。このファミリア変なのが多いし、此奴も何か有りそうだ。

 

「……どーも」

 

 カップを受け取って匂いを嗅げば少し甘い匂いがするから何か入れてるんだろう。俺は温めただけのが好きなんだが文句は言わない。

 移動中の接待と護衛が俺の仕事だ。

 

「って、前! 前ぇ!?」

 

「ああ、ハーピィの群れか」

 

 女神らしからぬ騒ぎ立てをしながら指差した先には人と鳥を合わせたモンスター【ハーピィ】。それが十体ほど船に向かって来ている。あっ、小型の竜も数匹追加だ。

 

 別に跳ね飛ばしても良いんだが、折角凝って作った船に傷を付けられるのは修復が楽だろうと嫌だ。

 

「確か演目は戦乙女がホニャララだった筈」

 

「いや、覚えてないの?」

 

 うん、寝ていない風に寝てたからな。隙を見せれば狙われる暗黒期で磨いた技術が役に立った。

 

 はぁ!? とか叫んでいる女神アフロディーテの前で作り出したのは天使の羽を持つ鎧の女騎士、神が降り立つ前に伝承されていた神の使いである戦乙女。

 鎧の細かい所にも拘り、呼吸に合わせて胸が僅かに上下する動作も付けている。

 

「所詮はダンジョン外で魔石だって劣化した雑魚。この程度で十分だ」

 

 翼と髪をひらめかせ黄金の戦乙女は月光を浴びながら怪物達へと向かって行く。

 

 

 翼を左右から掴んで心臓を貫き、背後から首を締め上げ、黄金の一部を目に張り付かせて視界を奪った上で急所をブスブス刺し続け、血で甲板を汚されたら嫌なので仕事が終わったら消した。

 

 

「観客を楽しませるって事が分かってないわね、アンタ。ショーをするなら最後まで拘りなさいよ」

 

「小道具以外は全部駄目だわ」

 

 ……えー? 魅せる戦いとか別にしなくて良くね? これでも無駄なサービスした方だってのに。

 

 

 

「それにしても此処までの事が出来るのに【銭ゲバ】なんて不名誉な二つ名なんて主神が他の神に抗議するレベルだし、悔しくないの? 貴方、冒険者として多くの他人が羨む高みにいるのに」

 

「ソーマ様は眷族を金稼ぎの道具としか見ちゃいないし、俺と妹も金さえ払えば自由にさせて恩恵くれてる相手としか。それに俺の行いが理由だし、呼ばれ方とかどうでも良くないか?」

 

 ハルモニアが不機嫌そうな理由も分かるんだが、生憎俺は名声欲しさに冒険者を選んだ訳じゃない。ましてや人気商売の歌姫とも違う。

 

「俺には俺のやりたい事があって、他人の評価を気にして生き方を曲げたくねえだけだ。俺の人生は商売じゃねえんでな。不都合が無い程度に欲しい物を手に入れて生きてるのさ」

 

「あっそ。それがアンタの生き方なら私があれこれ言うのも筋違いってもんね」

 

「別に言いたきゃ言えば良いさ。そっちは歌姫、人気商売。こっちは後ろ指差されても生き残ってた奴が上等の冒険者。知らねえ他人の評価より望む生き方を選ぶかどうかはテメェの勝手だからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうね。よし、決めた! アフロディーテ……私、今回の公演で引退するから!」

 

 ……うん? 何がどうしてそうなった? 俺、悪く無いよな?

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