自分語りとかの自己満足とかするもんじゃ無いと、俺は今ひしひしと感じていた
ちょっと人生観を語ったら何を思ったのか人気女優が引退宣言。初対面の言葉一つで放り捨てられる程に軽い物だったのか、それとも前から抱えてる物があったのか。
直感的には後者だが、他所様の都合に首を突っ込んんでも損するだけ。
無駄な労力は払いたく無いんでな。
「何言われても決めたんだから! 歌わせて貰えない歌姫とかやってられるかー!!」
「はぁ!? アンタ、何勝手な事言ってんの!」
五月蝿いので離れた所で喧嘩してくれねぇかなあ……。
こっちは夜通し船を揺らさず空を高速で飛ばすって高度な技を使っているんだ。それを背後でギャーギャーと内輪揉め。
一瞬一回転してやろうかとさえ思ったもののロイマンから受けた依頼だし、顔を立ててやらなければならないので我慢する。
最悪、オリヴァスを魅了して情報を吐かせてくれれば俺としては問題無いんだ。問題は小物感溢れる女神が臍を曲げて魅了を渋るか他の美神に伝わる事の面倒さで……。
「大体稽古か出資者への挨拶回り、そして何ヶ月も馬車で移動とかどうなってんのよ、ポンコツ女神! スケジュール管理も出来ない訳ぇ!」
「誰がポンコツよ、誰が! ……あっ、そうだ。馬車の移動時間を大きく短縮出来たら良いのよね? 【銭ゲバ】、私の所に来なさいよ。アルテミスをフったアンタを手に入れたらじまんできそうだし」
「嫌です。因みにこの場で魅了したらコントロール狂って落ちるのでご注意を」
会話の最中に嫌な予感がしたが、矢張り俺の勧誘に来たか。それ、オラリオから戦力引き抜く行為だってのを分かってるのか? この駄女神。
呆れが強過ぎて怒りの欠片すら感じさせないアフロディーテは勧誘を断られると思ってなかったのかドヤ顔のままで固まり、次の瞬間には爆発した。
「はぁあああああああっ!? この神羅万物天上天下で最も美しい女神ザ女神のお誘いを断るっての!? アルテミスの初恋を失恋にした時点で分かってたけれど生意気よ、アンタ!」
「その手の文句は一番身近な神だったアホ主神にどうぞ」
「あっはっはっは! フラれてやんの、ざまあ!」
「五月蝿い五月蝿い五月蝿ーい!」
ああ、余計に騒がしくなった。ちょっとだけ落としたら駄目か? 駄目だよな、多分……。
結局アフロディーテとハルモニアの口論は俺を巻き込みながら続いた。成る程、どんな女神か聞いたら雑魚キャラとか残念女神とか言われる訳だ。
俺、絶対接待とか向いてねえし、さっさと送り届けてサヨナラしたい……。
この時、俺は忘れていた。迎えがあるなら送りがある事を。そしてもう一つ。どうもハルモニアには大きな秘密が有るらしいって直感を覚えるも精神的疲労で後回しにしていたが、それは余計に厄介な事になる事だ。
「……それで何故こうなった?」
「ほら、ちゃんと荷物を持ちなさい。この場合は持たせなさい、かしら? このエリクサー製のコスメとか気に入ったし十箱買うわ」
アフロディーテ達をオラリオまで連れて来て、これで俺の仕事は終わったと一安心。お気に入りである黄金コレクションに囲まれて熟睡していた俺だが、何故かハルモニアの荷物持ちとオラリオのガイドをやらされていた。
手が塞がるのは困るから黄金の人形に持たせ、相応しい服装をと言われたので俺お気に入りのタキシードとシルクハット一式じゃなくリリルカが選んだ無難な最高級品を身に纏って警戒する。
「しかし【銭ゲバ】なんて呼ばれてるから趣味が悪い服かと思いきやお洒落じゃない。誰かに選んで貰ったんでしょう?」
「俺が選んだ全身黄金コーデは妹に却下されたからな」
せめてもの抵抗に肉削ぎと骨斬り丸の鞘は黄金を纏っているが、多分知られたら小言が待っている。
全身金ピカの何処が隣を歩いていて恥ずかしい服装なんだか全く理解出来ねえ。贅沢大好きな団長なら分かると思ったが目を逸らして無言だったしよ。
「それよりも約束は守ってくれよ? 俺がエスコートを引き受けた条件ってのはそれなんだから」
「はいはい。引退は別の都市での公演まで先延ばしにしてあげるわよ。ほら、次に行きましょ!」
あの後で何とか説得に成功したのかオラリオでの公演は行われる事になった。俺の言葉が理由ってロイマンに知られたら五月蝿いし、無関係な所で好きにしてくれたら良いから助かったが、その条件ってのが俺を一日貸し出せって事だ。
あの団長、偶には金稼ぎ以外でファミリアの為に働けとか言いやがって。余計な仕事を増やしてやろうか。具体的に三徹分の。
「ねえ、今度は小さめの船を出してオラリオ全体を見渡せる高さまで飛びなさいよ。其処で色々とお話聞かせて」
「……じゃあシャルザードの
居なかった事になってるオッタルとかは伝説の戦士が云々、王子が王女だったとかは隠して適当にっと。
芝居の脚本の方が万人受けしやすいと思うんだが、こんなもんで良いのか?
「はぁ!? 五歳児をダンジョンに連れ出して、妹の世話も押し付けてた!? どうなってるのよ、アンタの所は!?」
「どうなっていた、の方が正しいな。あの糞共が死んで苦労したが過去は過去。暗い過去を嘆いても不相応に明るい未来に焦がれても、成った事は成った事で成る様にしかならない。運が悪かったと切り捨てるだけだ」
「第一級って全員こうなのかしら……」
さて、俺と妹はそうだが他はどうなのやら。
話を聞いて冒険には心躍らされていたハルモニアだが、腕を食われたとか少しばかりグロい話になると顔を青ざめさせ、俺がどうして冒険者になったのか聞かれたから答えたが、半分破落戸でその日暮らしな暴力家業に何を期待してるのやらとしか 思わない。
「それにしても本当に私に興味が無いのね。引退する理由とか全然聞かないし、舞台で途中から寝てたでしょ? これでも客はちゃんと見てるから分かるの」
いや、実際は最初から寝てた。
少し憂いの籠った顔で呟いたハルモニアは聞いてもいないのにポツポツと呟き始めた。
要約すれば歌えないのに歌姫と讃えられるのが嫌になった、だそうで……。
「それでも舞台は好きだったけれど、貴方の言葉で思ったのよ。このままファンの期待に応えて自分を騙し続けちゃ駄目だって。……辞めた後の事は考えれないけれど」
「自分の人生だろ? 迷惑掛ければ周りから叩かれるが、そうでないなら好きにすりゃ良い。死ぬ寸前に後悔するか満足するかは運と実力次第だがな」
「ほーんと私を前に興味無いですって態度貫ける相手は初めてよ。そろそろお腹減ったし、美味しいご飯食べられる場所とか知らない? オラリオで一番の店が良いわ」
「オラリオで一番……か」
嫌だが、非常に嫌だけれど仕事だから仕方無い。報酬だって出るんだし、我慢しろ。
リリルカにでも手伝って貰えば良かった……。
「にしても若者の言葉じゃないわよね、さっきから。実際は長生きのお爺ちゃんだったりする?」
「エルフじゃねえんだし見た目通りだよ」
やっぱ別の店に案内してやろうか、此奴……。
「それでウチの店を選ぶのは良いさ。でもね……事前に連絡をしな、連絡を!」
ゴツン! と鈍い音と共に叩き込まれる拳骨。Lv.は同じだってのに。これでもステイタスの貯金は大金掛けて相当なもんだぞ?
連れて来たのは豊穣の女主人。オラリオで一番の店っつったら此処しか無い。
「流石は化け物染みたドワーフと現役から呼ばれるだけある」
あっ、次が来る。やべー。
文句の理由はハルモニアのファンまで押し掛けて許容量を大きく上回ってしまったからだ。黄金の空飛ぶ船から無理矢理腕を組まれての入店だったから目立って当然だ。
「ったく、来いって言ってる時には時候の歳暮の品渡す以外で来ない癖に、来たと思ったらこんなにゾロゾロと。ほら! 其処の小娘を眺めるだけなら邪魔だから出て行きな!」
「この人には逆らうなよ? フレイヤ・ファミリアの前団長で今でも上位の実力だから」
「余計な事を言うんじゃないよ。ほら、さっさと頼みな!」
ゲームでは必要物の配達までの耐久ですが……
そして年齢不詳扱いされた主人公 やさぐれただけなのに