ダンジョンに儲けを求めて何が悪い!   作:ケツアゴ

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第四十二話

「……完成だ」

 

 鍛冶神であるゴブニュは出来上がったばかりの武器を前に少しばかり眉間の皺を一層深めながらも呟く。

 出来栄えに不満は無い。神の権能が封じられながらも神業の技術は健在だ。

 

 それは一見すれば僅かに湾曲した両身の槍。柄から切先まで同じ漆黒の素材で拵えられ中心部に水晶が嵌め込まれたその正体は弓だ。

 

 張られた弦は第一級冒険者の力によって漸く引ける程に強靭で、弓の重さは老神の力では持ち上げる事さえ苦労する程。

 

 素材の正体はキリアによって持ち込まれたアンタレスのドロップアイテムの残り。神を喰らい力を奪う黒い怪物。

 討伐されドロップアイテムとなって加工されても尚、神への強き敵意は収まらずゴブニュは拒絶の意を弓から感じ取っていた。

 

「さて、銘はどうすべきか」

 

 同じドロップアイテムで先に打った鎌槍は【ソウルイーター】と名付けられ、上層中層の低質な物ならアダマンタイトすら容易に切り裂く程であり、神への敵意からか神血を吸わせる事で特殊な力を発揮する。

 

 この弓に宿るのは別の力。本来ならば役立つか微妙な能力だが、使い手の魔法によって有用性は大きく跳ね上がる。

 

 その槍としての機能を持ち合わせた弓を前にゴブニュは静かに呟いた。

 

「【ゴッドイーター】……いや、流石に五月蝿いのが出るか。【オーライーター】、それがお前の名だ」

 

 その名が気に入ったとでも返答する様に弓から発せられる敵意は一瞬だけ和らぎ、鍛冶場の

炎に照らされ水晶が怪しく輝いた。

 

 

 

 

 

 

「ええつ!? あのアルテミスに逆に水浴びを覗かれたっての!? 嘘じゃないって分かるけれど信じられないわね。だって数百万年以上処女拗らせてた女神よ!?」

 

 豊穣の女主人での食事中、気が向いたとかで合流したアフロディーテは早速酒を飲みだして、凄く臭い。

 さっさとオリヴァスを魅了して帰ってくれないか? 他に重要な目的があるから無理だそうだが。

 

 酒臭さに耐えつつ話すのは古代の英雄や大精霊すら封印するしかなかったアンタレスを討伐した時にアルテミス様とどんなやり取りがあったかについて。

 

 古代のモンスターって辺りで真面目な空気を出したのが違和感だらけで気持ち悪い。残念じゃないアフロディーテってアフロディーテじゃなくね?

 

「半分事故みたいなもんなので」

 

 遺跡に残された壁画や彫刻目当てに向かった事で出会ったアルテミス・ファミリア。封印が活性化しているとかで、俺とアルフリッグも無理して時間を作った事もあって早期解決を目指して調査に手を貸す事になったんだが、出会った当初は悪評からか俺に疑心を向けていた女神アルテミスは夜の散歩に出た俺を尾行したんだ。

 

「流石は狩猟の神だけあって気配を隠すのが上手くて、俺が水浴びをしようと上着を脱ぐまで気付けなかったんだ。上着脱いだら動揺から乱れたんだが」

 

「……あー、成る程ね。女ばかりにでもしてたから男の裸なんて見慣れてなかったと」

 

 実際は古い傷跡にビックリしたらしいがな。胸とか腹とか、未だ未熟で完全に怪我を治せなかった頃に負った傷は問題が無いのでわざわざ消さない。リリルカのは消してやってるが、俺には不要だからな。

 

 それでも納得出来る予想が正解だったと勝手に納得したアフロディーテは呆れ顔だが、別に訂正はしない。

 

 その後で俺が妹を守る為に色々と頑張って来た事を話す事になって、誤解していたと謝られてからは態度が軟化して行き、狩りで協力したりもしたら好感度稼いだらしいが女神の価値観は理解不能だ。

 

 親が役に立たないから兄が妹を全力で守るのは当たり前過ぎて見直す理由にはならねえだろ。

 

 

 

「それで調査中にアルテミス様が軽く血を流したらアンタレスが復活。アルフリッグと俺で相手をしたが苦戦して、仕方がないので足に刀をぶっ刺して送還ギリギリまでアルテミス様の血を刀に吸わせて何とか撃破したってのが事の顛末ですよ」

 

「刺したの!? 刺しちゃったんだ、女神を!?」

 

「いや、だってあのままだと不味い事になったし、当神が納得したし」

 

「……まあ、良いわ。アンタは古代のモンスターに打ち勝って、更に強くなった。オラリオにはアンタ以上の奴も居るのね?」

 

 凄い勢いで詰め寄られ、酒臭かったので息を止めて無言で頷けば納得した様子で戻るが、まさか古代のモンスター案件を押し付けられるんじゃないのか?

 

 

「……所でさっきからアタシへの言葉遣いが乱れてない? 神よ? アタシ、神なのよ?」

 

 バレてたか。残念な駄女神だから大丈夫だと思ったんだがな。

 

 

 

 

 

「あー、美味しかった! 今まで高級レストランには何度も行ったけれど此処は一番ね」

 

「まあ、俺があの店のゴミを漁ってたのも匂いが良かったからだしな。酒の匂いがキツいから普段は妹に持ち帰りをしてもらうばっかりなのが残念だよ。それはそうとこの酔っ払いをどうにかしてくれ」

 

「無理」

 

 豊穣の女主人での食事を終え、未だ時間があるから何処かに案内さされそうなんだが問題が有る。それが散々高い酒を飲みまくって酔っ払ったアフロディーテ。歩けないから背負えとか、俺はリリルカにもダンジョンでは基本的に許さなかったぞ? 本当に歩けない場合は別として。

 

「もー! ろうしてアルテみしゅの告白断ったのよー。折角恋を知っちゃのにぃ」

 

「何度も言ったが神は神で人は人だからだよ。同じに見えて全くの別物だろ」

 

 俺の背中の上で手足をバタバタ動かしながら呂律の回らない舌で叫び回って五月蝿い。適当な所に捨てたいが、捨てちゃ駄目なのも分かっているのが癪だ。

 

 まさかオラリオメリーを飲んじまったんじゃないかと疑う程の酔っ払い具合で長い間恋を知らず否定までしていたアルテミス様の告白を受け入れるべきだったと叫ぶが、俺の価値観に合わないんだから仕方無い。

 

 無理に曲げて見抜かれる嘘で塗り固めて受け入れる方が失礼じゃねえか?

 だって神を殺せる兵器を持ってるんだぜ?

 

 ……まあ、神って一万年したら死んでも生まれ変わるらしいし、数百万年以上生きてるんだろ? じゃあ、人間なら数週間意識不明になってる程度か。

 

「ハルモニアぁ。アンタの歌は本当に凄いんだからねぇ。天界の宝すら上回る美しさなんだから」

 

「……嘘ばっかり。本当だったら歌わせてる筈じゃない」

 

 

 

 

 

「ええ、だから今此処で歌いなさい、ハルモニア」

 

 俺の背中の上で神威が放たれる。甘ったるい感じのこれは魅了か? 対象は会話の流れからして俺じゃないが、何でわざわざ魅了で歌わせる?

 

 

 その疑問が晴れぬまま魅了されたハルモニアの瞳の色が変わり、唇が開かれて歌が響き渡った。

 

 

 

 

「……ふーん。凄いな」

 

「ちょっとっ! ハルモニアの歌を聞いてもその程度の反応ってどうなってんのよ、アンタ!」

 

 背中でギャースカ騒ぐ女神を無視して歌に耳を傾けるが、良い歌だと思う。素晴らしい歌声で、舞台で歌わない理由が分からなかったが……分かった。

 

 

「【金は天下の回り物、金の力は偉大なり。心身削って得た金で、我の願いを叶えよう】、マネーイズパワー」

 

 現れたのは竜。俺の知識には存在しない姿をした怪物は歌に誘われる様に飛来し、ハルモニアへと一直線に突き進んだ。

 

 武器の柄に手を掛け、直感が無駄だと告げている。無理だと、彼奴は斬れないんだと。

 

 

 「そんな訳で遠くに行ってろ」

 

 転移を選択、場所は遥か遠くの内海のなんか近付いたら不味いと感じさせられた謎の場所の近く。

 そこに繋げた扉に向かって竜を蹴り込んだ。

 

 

 

「手応えが無い。おい、あれは一体……やべっ。アフロディーテ背負ったままだった」

 

「あっ、ああ……」

 

 アフロディーテは気絶しているし、ハルモニアはパニック状態だし、一体どうなってるんだ?

 

 




聖火辺りは長いしちゃんと書くとキリアならヘスティア犠牲にするだろうから……どうしよう 今、見ているところです
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