ダンジョンに儲けを求めて何が悪い!   作:ケツアゴ

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本日二度目


第四十八話

射て射て射て(うてうてうて)!! 射って射って射ちまくれ! 【銭ゲバ】を全力で射抜け!!」

 

 【戦いの野】名物・本気の殺し合い。それは近接戦闘を得意とする方々だけでなく、弓や魔法の遠距離戦を得意とする方々も当然参加するのですが本日は少々異彩を放つ様子。

 

 弓使いと魔導師全員VS兄さん一人。それが昨日の晩から繰り広げられている光景です。降り注ぐ魔法と矢の雨に兄さんは弓矢だけで対抗する。

 

 黄金の矢を魔法で生み出し、弓に番て射抜く、それを降り注ぐ全てに行いながら動き続ける様子に私はハラハラするけれど、つい立ち上がろうとした所で声が掛けられた。

 

「駄目よ。見に徹しろって言われていたでしょう?」

 

 今回は特別に近くで観戦なさるフレイヤ様の影響で皆様張り切っちゃって。……まあ、兄さんが九割方撃ち落としちゃっているんですけれど。

 

 弓の訓練の相談をした結果、リリ達はホームへと招き入れられました、其処で兄さんに出された課題は後方組の攻撃を一発も当たらずに撃ち落とす事。

 

 基礎は出来ているので経験を積めとの事で、魔法で矢を作り出すも操作はしてはならない純粋な弓の腕だけで対処すべしと命じられています。

 

 そしてリリの課題は見に徹する事。魔法の運用で必要となる指揮官としての能力を伸ばす事。

 

 午前は指揮官、午後からは近接殺しとも呼ばれるヘグニ様との近接戦闘で鎌槍の扱いに慣れ、夜は座学。

 朝から晩まで弓を使い続ける兄さんとは別の方向性で大変なんですよね。

 

 

「そもそも観戦して貰えない近接戦闘班の方々が凄い事になってますよね。オッタル様のランクアップもあって幹部の方々も凄い事に……」

 

「ええ、凄く可愛い眷族達よ。嫉妬する姿も愛らしいの」

 

「成る程……」

 

 兄さんはこの女神を生きにくそうだと言っていましたが、楽しそうに見えますけれどね?

 

 

「ねえ、私とミアの所のシルって娘、何方が楽しそうかしら?」

 

「幸せの形はそれぞれですし、女神を評する言葉なんてリリからは何とも……」 

 

 此処は女神の信奉者が集まる場所。リリの言葉の意味はつまりそういう事です。大手の主神でなくとも神は神である事への責務に囚われていますので。

 

 フレイヤ様も神の中ではご自由な方ですが、それでも女神らしい行動には退屈さを感じていそうですからね。

 

 そんな事、とても言えませんが……。

 

 

 

 

 

 

 

「それでキリアの本命って誰かしら? ウチのヘイズ? それとも【聖女】? もしかしてロキの所の【剣姫】なの?」

 

「兄さんは良くも悪くも問題が有る人ですからね。アイズ様に関しては……双方に大きな認識の違いがあるとだけ」

 

 

 

 

 

「ク、クク。指が落ちても平気で顎を蹴り抜いて来るとは。女神より愛と血を授かりし同朋の世迷言と思っていたぞ」

 

「高々指の三本ですからね。格上に一撃入れる代償なら耐久の上昇分だけお釣りが来ますよ。ほら、続けましょう」

 

 ヘグニ様との打ち合いは当然ながら劣勢。第一級になったばかりで不慣れな獲物の此方に対し、向こうは得意な武器を使う熟練のLv.6。

 不可視の伸びる刃に何箇所も切り裂かれ、ちょっと悔しいので一泡吹かせる事にしました。

 

 指が落ちるのも気にせずに刃を全力で握り締め、振り払われる前に引き寄せて顎に蹴りを叩き込む。

 直撃は避けられたので気絶はしていませんか。惜しい。

 

「じゃあ、続けますか」

 

「傷の手当ては……」

 

「何時も兄さんが直してくれる場所に居るとは限りませんし、別に良いのでは? 首が落ちた訳でも有りませんし」

 

「この子覚悟がガン決まりだよぉ……。本当に大丈夫?」

 

「ヘグニ様は口下手なだけでお優しい方ですね。今も手加減なさって下さってましたし。兄さんにちゃんと話を聞く様に言っておきますよ」

 

「あっ、良い子だ」

 

 ええ、兄さんがちゃんと躾をしてくれたので。ちょっと卑屈な印象の話し方になっちゃいましたが、油断を誘えるので問題無いです。

 

 

 

 

 

「肉と酒! どんどん持って来い!」

 

 日が暮れれば殺し合いは一旦終了だ。手当てを終えた戦士達は空いた腹に飯を詰め込むだけだが、ヘイズ達の戦いは此処から始まる。

 治療に駆けずり回った後は厨房で飯を作って配膳を続ける。

 

 まるでお客様って言葉に様が付いてるから店員に横柄な態度を取るクソ客、ミアさんだったら叩く出すだろう。

 

 団長に仕事丸投げしている俺が言うのもどうかだが、もう少し裏方に礼節を持てないもんか? 全員ライバルだから無理か。

 

 それでもソーマ・ファミリアの底辺よりはマシだってのが何とも……。

 

「世話になってる間は俺も手伝おう。精密操作の訓練にもなるしな」

 

 空中を漂う黄金のトレイに乗せられた料理を目の前の皿が空いたテーブルへと運び、トレイから伸びた細長い手が皿を入れ替える。

 

 輝く黄金に映し出されて食堂には死角は無しだ。俺は配膳と黄金の手での下拵え、残る調理は厨房を任されたヘイズ達の仕事だ。

 

 時折疲れを見せた奴を回復、酒と疲労で潰れた奴も黄金が掴んで外へと運ぶ。ゲロでも吐いてなきゃ少し放置で良いだろう。

 

「……仕事がどんどん片付いて行く」

 

「まさか今日は早く眠れるの……?」

 

「無駄口叩いてないで手を動かす! 彼に頼り切りでは駄目ですよ!」

 

 相変わらずのこの反応。普段どれだけ酷使されているか伝わって来るばかりだ。俺も配膳する前に軽く体を拭いて着替えはしたが風呂も飯も未だだし、さっさと休みたくはあるんだがな。

 

 厨房ではヘイズが精を出して美味い猪料理を仕上げて行く。幹部になったってのにご苦労な事だよ、マジで。

 

「……本当に貴方には助けられてばかりですね」

 

「命を助けるって対価は貰った。俺が勝手に恩義を感じて生涯力になろうって思っているだけだ。気にしなくて良い」

 

「なら、私も勝手に感謝するだけです。ウチの男共と同じく粗野な様で実際は気を使って下さる貴方にね。これ、幹部用のメニューです」

 

「そうか? まあ、損は無いから有り難く感謝を受け取っておくよ」

 

 食堂ではガツガツと消化に悪そうな食い方と次の料理を求める声が響く。次々に作られる料理を運び、少しずつ人数が減って行くが第二級以上の連中は訓練中も食事中も危機迫る勢いを見せていて、オッタルが理由なのでヘイズ達からオッタルへの好感度はドンドン下がって行った。

 

 因みにリリルカは食う側。さっさと食ったら指揮の勉強が待っているからな。少しでも休ませてやらねえと。

 

 

 

「風呂に入って行け? 其処迄世話になって良いのか?」

 

「ええ、戦士達の入浴は終わっていますし副団長以外の幹部からは文句も出ないでしょう」

 

 特訓の世話にはなるが泊まる訳じゃない。裏方の食事も片付けも終わり、明日の仕込みも手伝った所でヘイズが大浴場を使う許可を出してくれた。

 

「凄く汚れているからついでに魔法で掃除してくれって事は……おい、目を逸らすな」

 

 いや、良いぞ? 必要経費と思えば魔法で綺麗にするのは構わないんだが、それなら正直に言えば良いのに。

 

「へいへい、アンタの頼みじゃ仕方がないか」

 

「感謝します。では、せめてものお詫びにお背中でも流しましょう」

 

「……ん?」

 

 え? 何? 今、何つった?

 

 

 

「凄いでしょう? これが我がファミリアが誇る大浴場です」

 

 あの後、流されに流された俺は腰にタオルを巻いた状態で待機、少し遅れて入って来たヘイズに背中を流された後で言われた通りに浴場を眺めるが確かに凄い。

 さっきまで緊張で意識する暇も無かったからな。

 

「……あー、もう流して貰ったから出ていってくれて良いんじゃねえか?」

 

「いや、私も入りますけれど?」

 

 その当然じゃないですかって声色は一体何なんだ? 何かの罠か悪戯か、それとも本当に労る気持ちだったのか。

 

 キスすらまだの俺には刺激が強いがヘイズは解放してくれる気は全然無いらしく、俺の隣のシャワーで髪を洗う。

 当然だがタオルを巻いているので肌はちゃんと隠れている状態で助かった。

 

 あまり見ていても悪いからと視線を外して考えるが、そもそもフレイヤ様の影響を受けて普通とは羞恥心が違うんじゃないのかと思う。

 成る程、それなら……。

 

「あの、私の頼みなら大抵は聞いて下さるんですよね?」

 

「ああ、流石に無理な物は無理だと……」

 

 

 

「じゃあ、この場で襲ってと頼んだらどうしますか?」

 

 その言葉の意味を理解するよりも前にヘイズは立ち上がり、体に巻いたタオルを引き剥がす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、そんな事はお願いしませんが」

 

 その下は水着だ。それも肩紐こそずらしちゃいるが肌面積は少ないタイプで、確かスク水?

 

 種明かしを終えたからかヘイズはタオルじゃ隠せない紐の部分を戻していた。

 

「そもそも頼んだ時点で合意なのに襲うって言えるのか?」

 

「さあ? フレイヤ様の考えた悪戯に従ったまでですので」

 

「……うん、理解した」

 

 そりゃ忠誠心高いヘイズなら従うよな、平然と。嫁入り前の娘がするには度が過ぎている気もするけれども。

 

 

 

 

「いや、俺が襲うとか思わなかったのか」

 

「いえ、全く。襲いますか? 襲わないでしょう? じゃあ、入りましょうか。悪戯の為に待たせている子達が居るので」

 

 そのまま腕を引っ張られた俺はヘイズと一緒に湯船に浸かる。少し早いが今日はもう寝よう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪戯が過ぎましたし、お詫びに一緒に寝てあげましょうか? 実力差からして成すがままにされそうですが仕方無いでしょうし」

 

「悪戯続行じゃねーか」

 

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