「やあ! これからダンジョンかい?」
「うっわ……」
遂に顔を見せたよ、と俺は嫌な顔を顔に出す。隠す気は勿論無い。だって相手は神ヘルメスなんだから。
胡散臭さの化身っつーか理想と娯楽の為に平気で周囲を巻き込む黒幕気取り。ゼウスの部下で本神事態は世界の行末を案じて英雄を欲しているんだが……。
「このタイミングって事は神としての接触だろう? 俺、商人としては信用しているけれど、神としては信用していないんだ」
「おいおい、同族嫌悪かい? 共犯者じゃないか、俺達。仲良くしようじゃないか」
「それは認めるが申し出は面倒だから拒否する。あれか? どうせベル関連だろ?」
多分この神が苦手なのは俺を巻き込む気でいる事と共通点に対する嫌悪。何らかの理想はあるんだろうが、それに俺と妹を巻き込むなと言いたい。
でも持って来る儲け話やら情報は美味しいんだよなあ。アンタレスが封印されていた遺跡の芸術性が素晴らしいとか教えたのもヘルメスで、利用はされたがプラスも多かった。
そんな此奴はゼウスの部下であり、どうもベルに注目しているとザルドが心配していた。ベルにも頼れるが信じるなと伝えているとか。
そう、ザルドが生きてるのも当然知っているんだ。そもそも俺をオッタルとザルドの戦いの場まで案内したのもヘルメスだし、だから共犯者と呼んで来る。
何かやらかしてるって知らせるみたいな真似は止めろって言ってるんだがな。
何を言っても冗談混じりに受け流すし、昔は俺に目を付けて試練を与えて来てやがった。今は諦めたみたいだが……。
「……送還させた方が良いかもな」
「君が言うと冗談に聞こえないんだけれど……」
冗談で言ってるかどうかなんて神なら分かるだろ? つまりは……まあ、そういう事で。
「冗談は此処までにして本題に入ろうか。内密に集めて欲しい素材が有るのと、とある調査に同行して欲しいんだ」
本当に珍しくヘルメスは告げる。つまり厄介な案件で、断ると不利益を被るって事だ。同時に受けざるを得ない内容だと理解させられた。
やはり神は度し難い。腹黒の上に頭が切れるとか本当に厄介だ。
「報酬を三倍にするなら引き受ける。前金で報酬の三割、経費は別途支給で」
「あー、任せてくれ。アスフィ達は五月蝿いだろうけれど何とか説得するよ」
リストの端に書かれていたのは少し安い報酬額だったので俺の要求も予想済みだろ。良いさ、乗せられてやるよ。
「それはそうと例のダンジョン迷宮とやらの事業計画書の手直しは何時になったら提出してくれるんだ? 遅れるなら貸した金は仕込みで一括払いな」
「ひぇ!? あと一週間だけ待ってくれ」
五日な。それ以上は無理。ホーム差し押さえられたくなきゃ頑張ってくれ。
笑顔で通告を済ませた俺はダンジョン……ではなくてギルドへと向かう。普段ならパッとダンジョンに行き、ギルドへは換金以外では立ち寄らないが今日はクエストボードと睨めっこだ。
この日、途轍も無い問題が浮上していた。重要で深刻なその内容は、金が無い。正確には現金が手元に少ししか無い。
「ショボい依頼しか残ってねえな……」
貸付金に投機の品、未来の収入の為には直ぐに現金化は出来ない財産達。信用出来ない相手にツケ払いは許さない俺達は自分達もツケ払いを許さない主義だ。
【ソウルイーター】と【オーライーター】、二つ合わせて五億五千万ヴァリスを一括で支払い、複数の家や抜け道の維持や新規購入と出て行くお金が多過ぎだ。
念には念を入れて【エル・ドラド】にも入金をしたし、生活費や遊興費に使う手元の金が頼りない。
弓の特訓で世話になってるからヘイズ達の治療は無料にしてるから【マネーイズパワー】の残高も補充すべきで嫌になって来る。
金だよ、金! もっと金が欲しい!
「……しゃーない。ダンジョンで稼ぐか」
都市最強だったオッタルが更に先に進んだ事で触発されたのはフレイヤ・ファミリアだけじゃない。
負けてられるかと根性出して無謀な真似をした挙句に大怪我を負った奴を相手にポーションを売り付ければ儲けが期待出来そうだ。
ただ、問題も有る。ホームで団員相手の弓の特訓が一段楽した結果、俺に課された課題は深層までに出現するモンスターを階層主やグリーンドラゴン等を除いて黄金の矢だけで全部仕留めろって内容だ。
勿論ながらレアモンスターも含む。
やるしかないから挑戦するが面倒だと辟易する中で感じる視線。好奇や嫉妬や欲望等々、普段浴びてる慣れた物。
最弱種族が成り上がってるのが気に入らないのか? お金儲けが悪い事か?
英雄ってのはこーんな連中の評価も気にしなきゃならないんだ。フィンはよくもまあ……理解出来ねぇ。
「さてと……。悪いが急ぎの募集を掛けたいんだ。サポーターを雇いたい」
もう一つがサポーターを雇えって物だ。まあ、ヘスティアを守りながらの場合を考慮してか? それなら理解はしよう、納得はしない。
なので不満を抱きながらも受け付けに申請するが、その内容を見て困惑された。
「は、はい。えっと、条件は上級冒険者 報酬は三割+働きで調整 命の保証無し。えっと、命の保証無しではちょっと……」
「ダンジョンで必ず守りきると言う方が無責任で信用出来ないだろう? 不適切な真似をすれば四肢を切り落として餌にすると書いてる訳でも無し、何処に問題が? 精々足の骨をへし折ってギルドに突き出す程度だぞ?」
じゃねえと手間だけになる。相手側のファミリアから貰える物は貰っておかないと損だ。
困った、サポーターとしての経験はあるが劣悪な環境だったし、治安維持が進んで暗黒期に比べて格段に温くなった今の基準が分からない。
心無しか周囲から距離を取られている気が。
だが、一応ヘディンには申請書を見せている。深ぁ~い溜め息の後で一度申請してみろとかオーバーなリアクション取りやがったが、普段なら駄目には駄目出しする奴だし。
……この反応からして集まりそうにないな。
仕方無いので同じファミリアから誰か引っ張って行こうか考えるが、最近は酒造り要員の育成で忙しいので人手持って行ったら団長が倒れそうだと悩む中、先程から向けられていた視線の主が近付いて来た。
「面白そうじゃないか。私を雇う気はないかい、【銭ゲバ】?」
「あ、あの。私達を雇って貰えませんか?」
それも別方向から別々にだ。
片方はアマゾネスで、確かイシュタル・ファミリアの
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