ダンジョンに儲けを求めて何が悪い!   作:ケツアゴ

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第5話

「俺、前から思っている事があるんだ」

 

「何だ?」

 

「俺が寝ている間に俺の魔法が抜け出して豪遊してやがるんじゃないかって」

 

「疲れているのなら寝ろ。肉を食って休め」

 

 リストの中から願いを選択して叶えるという一見破格の魔法【マネーイズパワー】。膨大な金が必要となるデメリットだってダンジョン深層に連れて行くのに料金を取れば大儲けだと幼い頃の俺は思っていた。

 

 結果? 魔法を使う事の代価は投資しようがギャンブルで増やそうが入金出来ない仕様だったんだよ、チクショー。

 

 お陰で気付いた時には高レベルの冒険者を深層まで送る為の費用で大赤字。仕方無いからその時の報酬は装備の代金に充てて、今後は移動を伴う仕事は他の仕事のついでに引き受けて生活費に充てている。

 

 働けど働けど我が暮らし楽にならず、だ。寧ろ働く程に経費が嵩むとかどうなってんの?

 

 荷物が増える度、対象のランクアップの回数の度に必要経費が跳ね上がって行くんだからよ。

 

 そんな俺の魔法について知っているのはソーマ様とリリルカと、現在サポーターとしての雇い主である【猛者】オッタル。その主神にも伝わっていそうだが、詳細までは話していないから別に良いや。

 

 勿論だが不正防止として仕事の報酬として必要な金額は請求不可能。あくまで相場の割合までとか魔法が意思持ってるとしか思えねえ。

 

 そんな訳でファミリアの仲間(笑)の妨害防止と日数削減の為に互いの都合が合えば俺を雇ってダンジョンに向かうんだが、このオッさんも組織のトップには向いてねえなあ。

 

 戦場で一番戦闘に立つのは良いが、強いだけで組織のトップは無理があるって。主神には大きな差があるってのに、其処は同じなんだなって思うと悲しくなって来た。

 

「話は此処迄だな。……来るぞ」

 

 オッタルが足を止めれば待ち兼ねたとばかりに響く振動と咆哮。前方の広大な広間を埋め尽くす様なフォモールの大群と階層主であるバロール。

 

「おう。俺も自衛は出来るから取り零しは気にせずに大将をぶっ倒して来い」

 

「無論、その予定だ」

 

 一応仕事の品だし荷物を離れた所に置いて俺も武器を構える。あの数でもオッタルなら倒し切る可能性は有るんだろが、荷物を荒らされたら堪らない。

 仮にもこんな深くのモンスターだ。それが数百を越せば……。

 

「危なくなったら直ぐ帰るからな。安心しろ。荷物は遺品としてホームに届ける。……捨てられないと良いな」

 

「……生きて帰れば良いだけだ」

 

 あれ? ちょっと背中が煤けて見える気がするんだが、まさか有り得るのか? 冗談で言ったのに?

 

 

「頑張れ!」

 

 それだけ言うと俺も迫るフォモールの群れにのみ意識を向ける。バロールでさえもオッタルを相手にしちゃ繋ぎ止められる以上、力じゃなくリーチの問題で取り零したのが俺の方に来るだろうから……此処は死線だ。

 

 一歩間違えば俺は死ぬ。その緊張感が闘争本能を刺激し、刀を握る手に力が入った。やだやだ、戦闘なんて手段の一つでしかないってのに。しかも割と悪手の類いだぜ? 強者弱者に関わらずな。

 

 仕事だから頑張るけれど、俺のキャラじゃねーんだよ。

 

 

 

 

「階層主単独撃破おめでとうさん。これで現在の都市最強はランクアップか?」

 

 一体何時間の激闘だったか分かりゃしねえ。群がるフォモールを塵芥として吹き飛ばし、最後にはバロールが恐怖で逃亡し始めたのを何とか倒したオッタルだが、こっちだって重症だ。

 この階層まで自力で来て、途中で幹部連中の襲撃を受けての消耗があったら死なないにしろ逃げられたんじゃねえの?

 

 俺も散々攻撃喰らったせいで右目の上の肉が腫れて視界が狭いし、骨も何本かはやられちまった。本来ならフィンみてぇに前衛が押し留めて魔法で一掃ってのが正解だろうにな。

 

 無事だった荷物からエリクサーの瓶を取り出して大の字で倒れるオッタルに浴びせ、俺も必要経費として貰うんだが、これって一本五十万ヴァリスはするんだよな。

 

 この状態のオッタルをイシュタル・ファミリアに売れば歓楽街の収入の何割かは貰い続けれそうだなって考えが過ったが、此奴って死に掛けだろうが俺を殺せそうな気がするし、フレイヤ様の敵判定されたらおっかないから止めといた。

 

 物凄い謝礼は期待出来るんだけれどなあ……。

 

「いや、ここ迄の道中も含めての偉業だろう。……それにあの男が万全の状態で生きている以上は最強の称号など嫌味でしかない」

 

「言うなよ? 彼奴を助けたのバレたらアンタの立場もフレイヤ様の評判だって悪くなるんだからな? 俺だって自分とソーマ様の立場は別として、リリルカの立場は守りたいし」

 

 俺の言葉にオッタルは苦虫を噛み潰したみたいな顔で呟く。そりゃそーだわな。戦った時は毒に侵されていて、それが解毒された状態で生きてるんだから。

 

 あの日、啓示で俺の未来に待ち受ける大きな戦いの影響を及ぼすから助けた方が良い、そう知らされた俺は万全じゃない状態でオッタルに負けた男を助けた。

 その時の費用で入金額は全額消滅、自分の魔法にした借金を返し終わるまで魔法が使えないってふざけた状態に陥って大変だったぜ。

 

「あっ、言い忘れてたけれど育ててる子供がその内にオラリオに来るってさ。一応伝えてくれって手紙にあった」

 

「そうか。どの様な者か楽しみだ」

 

 あーあ、どんな奴か知らねーけれどオッタルと関わらせようとか何を考えているんだか。俺を巻き込まないなら別に良いんだけれどさ.。

 

「さて、傷も癒えたのだから先に進むか。カドモスの相手でもするとしよう」

 

「そんな散歩ついでに飯でも食うか的なノリでするもんじゃねえだろ、脳筋」

 

 良いや、脳筋が相手している間に泉水を汲めば一千万ヴァリスは硬いだろうし。往復分はそれで賄える。おのれ、脳筋。別ファミリアのLv.7なんか深層に連れて行ったらどれだけ金が掛かると思ってんだ。

 

「そうそう、分かってると思うけれどオラリオに帰ったら……」

 

「ああ、スケジュールの間を見てお前達兄妹の相手をしてやる。女神が許可を出している以上、それを違える事は無い」

 

 それなら別に良いや。あの女神も眷族に契約を反故にさせる真似なんて……あっ。

 

 

「この前は途中でヘディンが止めに入ったけれど、魔法で外に出たいとか言われたらどうするべきだ? 団長として言ってくれてないと断っても了承してもキレる奴が出るだろうからな」

 

「……相談しておく」

 

 話し合いの場を設けても無駄だろうとか、今聞かされたって反応な辺りマジでファミリアの顔として戦闘力しか認められてねぇんだな、このオッさん。

 

 脳筋でも常識的なんだよ、訳分からねえ事呟く根暗とかアレンやらガリバー兄弟の次男以降とか女神が絡まなくても社会に不適合な連中と違って。

 

 絡んだ場合と俺? 言わずもがなだろ。俺は俺が利己的な奴だって自覚あるし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来ましたか、この守銭奴っ! 乙女の尊厳を返しなさい!!

 

 その数日後、仕入れに向かった先で昔馴染みがドロップキックかまして来やがった。理由? なんとなーく覚えがある。

 

 

 

「落ち着けよ、年上なんだから」

 

 多分リリルカが俺が悪いって言ってたし、今後の取引も考えてこの程度は受けるか。どうせ効かないし。

 

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