ダンジョンに儲けを求めて何が悪い!   作:ケツアゴ

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第五十話

 天に昇った魂の結末は担当する神次第、つまりは生前の行動よりも運の方が大切って事で、暗黒期に悪神の多くが送還される以上は神格者が地上に残る程にハズレの可能性が上がるって訳で……。

 

 ソーマ・ファミリアへの在籍が生まれ付き決まっていた俺が世の中は運だと納得したのは間違いじゃないって事だ。

 民衆の味方だの正義だの語って、それを司る神でさえ闇派閥でもないファミリア内部での悪辣な行為にはその後を考えて強硬策には出られなかった。

 

 うん、正しい。簡単に数えられる数の被害者を守る為に数え切れない被害者を救う為の力を失うなんて馬鹿馬鹿しいからな。

 

 俺はそれに賛同しよう、評価しよう。傾かなかった天秤に乗っていたのが俺達だが、俺だって天秤に掛けたりするもんだ。

 

 高潔で知られるエルフが一族だってだけでオラリオにいるクロッゾに末裔に敵意を向けるなら、誰かの何かって事は敵意も依怙贔屓も許される筈だ。

 

 まっ、ハイエルフが普通にユニコーン飼ってる怪物趣味なのにエルフが平然と受け入れている辺り、神の言葉を借りるなら高潔(笑)な気もするが。

 思っても口にしたら怒って魔法飛ばす蛮族を相手にするからしないけれど。

 

 結局、世の中で尊ばれる良俗やら高潔やらは幻想でしかない。少なくとも俺はそう学んだ。

 

 金より大切な物は多く、金で手に入らない物も多いが大抵の問題は金で解決可能で、努力や信念は後押しにはなっても一番重要なのは運なんだ。

 

 

 

 その証拠に今の俺と妹の存在がある。運が向いてなきゃ地に這いつくばって汚泥を啜って生きていたんだろうからな。

 

 

 

 

「これで三匹目。今日の俺は運が良い」

 

 ヴィーヴル、それは冒険者なら余程の事が無い限りは狙うであろうレアモンスター。魔石もドロップアイテムも、取ったら凶暴化する額の宝石も高額で取引されるんだが、奪う前に倒すと額の宝石は砕けてしまうんだ。

 

 取り外す事で灰になる体との繋がりが途切れるって事なんだろう。モンスターの手足を切り落としてから殺したら手足も灰になるから魔力でも関係してるのか?

 

『ガァアアアアアアア!!』

 

「お宝ゲット! 後はドロップアイテムに期待したい所だが……」

 

 そんなモンスターに出会ったら殺すだろ? ちょっと人っぽくてもモンスターはモンスター、容赦する必要は無しだ。ユニコーンを飼うハイエルフみたいに怪物趣味じゃない俺は発見次第両目に矢を撃ち込んで、混乱している隙に額の石を引き千切る。

 

 途端、より怪物らしい姿になって闇雲に暴れながら絶叫するが、大きく開けた喉の奥に細い矢を数本プレゼントだ。

 喉の奥に何本も矢が刺さっても即死しないのは中層以降に出現するモンスターの生命力の賜物だろう。

 

 未だ死なないってのと生き延びれるってのは別の話で、喉の肉が薄い箇所に黄金の矢を撃ち込んでから回収すれば終わりだけれどな。

 刺さっていた矢が消えて塞がっていた傷口から血が吹き出す。

 

 声にならない絶叫をあげてもがき苦しみ、そしてヴィーヴルは死んだ。

 

「じゃあ、追加で頼むぜ」

 

「お、おう。任しといてくれよ……」

 

 宝石を指で弾いて弄びながらヴィーヴルの死骸を後ろに投げ込む。積み上がった灰の山が幾つも連なる中で働くのはヘルメス・ファミリアのメリルとポックとポット、そしてイシュタル・ファミリアのアイシャの計四人。

 

 サポーター募集に希望を出して来たのを選ぶのが面倒だったから全員雇う事にした。どうせサポーターを守りながらって課題なら難しい方が良い。

 

 甘〜い試練がなにの役に立つんだ? 立たねえだろ?

 

 魔石の取り出しとドロップアイテムの回収は四人の仕事、俺は一切手伝わない。それが今回の契約だからな。

 

 契約、特に金が絡む契約には真摯に向き合うべきで、同情や優しさなんて挟む余地があってはならない。

 反対に俺は俺で契約通りの仕事をこなすんだ。

 

 ピキリと音を立てて膨らむ地面。ダンジョンがモンスターを生み出せば冒険者の本能から四人が反応を示すが解体用の刃物を取り出すよりも前に黄金の矢がモンスターの急所に突き刺さった。

 

「追加だ。そっちの仕事にだけ集中してくれ」

 

 最大でもLv.3の四人と6の俺の反応速度と役割の違い。四人よりも遥か先にモンスターの出現を察知し、反応した時には既に矢を放つ。動こうと腰を上げる最中に絶命した状態だ。

 

 この為にダンジョンに入ってから【エル・ドラド】を常時発動状態……魔力のアビリティが上がりそうだな。

 

 最初は唖然として落ち着かない様子だった四人も多少は慣れたのか僅かに反応してしまうだけで戦闘を丸投げした様子だ。

 

 

 

「こっちは終わったよ。悪いね、随分と楽をさせてもらって。何なら体で返してやろうかい?」

 

 モンスターの死骸は公平に分配しているが、その中でも第二級、それももう直ぐランクアップしそうなアイシャの手際が良い。

 ヘルメスの所の三人が八割程度。三人で役割分担してそうなんだからこの女の力量が測れるだろう。

 

 自分のノルマを終えたからと気軽な様子で俺に近付いて上から顔を覗き込めば身長差から薄布に包まれただけの胸が間近だ。

 

 体で返すって事はアレだよな? 何処ぞの恋愛脳の暴れ馬と違ってアマゾネス特有のアレではないが貞操感覚から気軽に夜のお誘いをしていると。

 

 

 ちょっと童貞には圧が強過ぎる感じだな。

 

「契約に従っただけだ。提示した条件を自ら破る奴は信用されないからな。金儲けに響くだろう?」

 

 顔には出さない。こんな場面で平静を保てなきゃ金儲けの機会を何度も失っていただろうからな。

 

 身長差で好みでは無いにしても一夜の関係なら別に良いよ? 色気は感じるし、経験豊富そうだからな。でもヘルメスの眷族が居る時点で論外で、更にイシュタル・ファミリアじゃな。

 

 気紛れか主神の指示か、何の目的か探る為に雇って泳がせていたが今の所は分からない。敵意は感じない? おいおい、そんなの持たずに殺人が出来るイカれ女を知ってるからな。

 

「ふぅん。【聖女】かフレイヤ・ファミリアの【黄金の乙女】、それか【剣姫】と随分と仲が良いと聞いたが、そっちを気にしてるのかい?」

 

「友人と恩人と知人だが?」

 

「……本気で言ってるよ、こりゃ。強さは申し分無いのに雄の目じゃないね、アンタは。まあ、それはそうとして……摘み食い位は良さそうだ」

 

 アイシャの指先が俺の顎を軽く撫でたその時だ。曲がり角の向こうからフィン達が姿を見せたのは。

 

 

 

 

「えっと、お邪魔だったかな?」

 

「いや? 面白半分でちょっかいを出されているだけだ」

 

 アイズが居ないな。あの馬鹿、まーた思い詰めてやがるよ。テメェ一人が強くなった所で意味無いだろうに。折角仲間が居るんだから頼れっての。

 

 

 

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