ダンジョンに儲けを求めて何が悪い!   作:ケツアゴ

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聖火の奴、アプリで見てるんですが長え 音声だけ運転中に聞いても漸く最終戦


第五十四話

「……ねえ、キリアにとって英雄って何?」

 

 それはずっと昔、俺が漸くランクアップを果たし、今まで自分から搾取して来た連中を叩きのめして上機嫌だった頃だ。

 

 ポンコツエルフが物取りと勘違いしなきゃもう少し痛め付けられたんだが、どうせホームに戻らないと酒が飲めないんだから問題無いと、装備と手持ちの金を巻き上げて新居を探す予算にしていた時、少し前に最速でランクアップしたアイズが浮かない顔で訊ねて来た。

 

 何があったのかは知らないし、興味も無い。そもそも当時のアイズは他人の干渉を嫌う程に拗らせていたからな。

 普段なら知るかとばかりに無視しただろうが、機嫌が良かった俺は答えてやったよ。

 

「酒の席で奢ってくれる相手へのお世辞。彼奴こそは英雄って称賛は重くて辛い責任を良心の呵責無しで赤の他人に押し付ける為の方便だな」

 

「……違う。英雄はそんなんじゃない」

 

「お前の世界じゃそうなんだろうな。英雄は世界を救うとか言ったりもするが、世界なんてテメェの周囲だけだ。関わらない物は存在しないのと同じ以上は俺の世界じゃそうなのさ。エピメテウスなんてそうだろ? 散々人を救って、没落した途端に【愚者】だぜ?」

 

 俺の返答が気に入らないのか拗ねた様子で反論するアイズに俺は畳み掛けた。英雄への称賛も喝采も自分とは違う存在なのだから自分は何もせずとも良いって逃げる為の口上さ。

 

 アイズにとって英雄ってのは大した物なんだろうが、俺にとっては重荷を背負わされた被害者だ。

 英雄の偉業に価値があっても英雄の称号は無価値でしかない。

 

 だって英雄を称賛するのは何かあれば平気で手のひらを返す人間だ。そんな奴ばかりじゃないと反論されたら肯定するが、大部分はそうだろう?

 

 だからさ、英雄の称号ってのは無価値なのさ。目指す物でも重荷や誇りに思うもんでもない。

 

 

 

 

 

 ゼウスから届いた一報。それは穢れた悠久の聖火を利用すべく動いてる奴が居るという物。顔に出やすいヘスティアには知らせず、警戒しながら対処して欲しいとの事で予定を早める事になりそうだが……。

 

「じゃあ、俺が攻めるからアイズは二人を守れ。どっちかの魔法が俺の体に擦れば終わりな」

 

 その辺の調節は俺の仕事じゃねえし、考えるのが得意な奴に丸投げしとくわ。

 

 ダンジョン下層の安全領域にて宙に浮かぶ黄金の足場に立ち見下ろす先にはアイズとベルとレフィーヤの三人。

 

 ちゃんと説明していないからか困惑する二人を無視してオーライーターを構えればアイズも風を纏う。

 但し剣には纏わず、空中戦に対応する為に足だけだ。

 

 風に頼り過ぎて基礎技術の研鑽が疎かになっていると感じたアイズの申し出であり、俺の課題は空中戦に慣れたアイズにちゃんと風を使わせる事。

 

「じゃあ先ずは十発」

 

 宙に浮かぶのは黄金の杭。俺に向かって跳ぶアイズに向かわせると思いきや寸前で軌道を変えて二人へと向かう。

 

「っ!?」

 

「どうした! 余所見してる暇なんてねぇぞ!!」

 

 空通に展開するのは絨毯の様に伸びる黄金の道。踏み込みの威力で砕けるも気にせず駆け抜け、道は伸び続ける。

 二人を気にして意識が逸れたアイズの顔目掛けて弓の切先を突き出せば僅かに頬を掠めただけで避けられ、反撃の振り払いは足場を消す事で落下し避けた。

 

 直ぐ様展開した黄金に鎖を垂らさせ、それを掴むと壁を蹴り振り子の勢いを乗せてアイズに飛び掛かるも跳んで避けられ、振り下ろしを受け止めると弾き飛ばす。

 

「弓……いや、槍? だと普段みたいに戦えないの?」

 

「槍として使えるが弓だな。扱いの方は未だ未だ練習が必要か」

 

 だからこそアイズの申し出も受けたし、ベルを鍛えるついでにレフィーヤが来るのも許可を出した。

 

 弓で軽く肩を叩く真似をしつつアイズの動きを警戒する中、宙を飛び交う杭は地上の二人を追い続ける。

 

 先端は丸めてるし、打撲や軽い骨折で済む程度の威力だ。避けてばっかりじゃなくって反撃して来いよ。

 

「おらおら! 避け続けられる程度に手加減した攻撃なんて敵は撃っちゃくれねえぞ!」

 

 続けて黄金のモンスターを出して二人を襲わせつつアイズの蹴りを弓で受け止める。未だ体と感覚のずれに慣れてない感じか。

 

 つまり……。

 

「全然駄目だな。動きがガタガタだ」

 

 弾き飛ばそうとする風を両手の力で強引に押さえ込んでアイズを振り回す。勢い付けて投げ飛ばし、背後から迫ったファイアボルトを振り向きざまに放った矢で軽く相殺するとアイズに向かって跳んだ。

 

 空中の足場を駆け抜け、壁を蹴り時に真下に向かって跳び次の動きを読ませない様に撹乱しながらアイズへと向かい、弓で撃ち合い、時に離れながら弓を打ち込んで行けばアイズの動きも徐々に体に慣れて来る。

 

「アルクス・レイ!」

 

 漸く魔法が使えたか、彼奴。

 

 俺は思うに恩恵を得た当初から集団で戦う事に慣れてしまったのが並行詠唱習得を妨げているんだろう。

 敵は前衛が抑え、抜けられても素早く駆け付ける仲間が居るから無意識に油断し、近付かれると怯えて魔力のコントロールが散漫だ。

 

 向かう必中の矢はオーライーターを叩き付けて強引に叩き落す。軌道が戻るよりも弾き飛ばす力が強けりゃ先に地面に激突して終わり。

 

「先ずは避け続ける事を体に叩き込んだ方が良いな、彼奴。おい、アイズ。後で役割交代だ。俺が魔法で妨害するからお前は二人を狙え」

 

「うん、分かった」

 

「骨折だろうが目が潰れようが腕がもげようが俺なら傷一つ残さず治せる。それで心が折れるなら別の機会にモンスター相手に同じ事になるだけだ。死ぬよりは引退の方がマシだろ」

 

 長い事生きて今後の育成計画も長いスパンで考えてるんだろうな、ハイエルフ様はよぉ。

 

 だが、俺は特訓に協力してくれと頼まれて、そして引き受けた。だから俺流でやらせてもらう。誓約書も先にサインさせたから……まあ、問題無し。

 

 それで文句を言うのなら最初から箱にでも入れておけってだけだ。冒険者だぜ、冒険者。

 

「……大丈夫。レフィーヤは強いから。キリアが思ってるよりずっと。きっと直ぐに私を守ってくれる位に強くなれる」

 

「ほーん。なら、認識を改めて手加減のレベルを下げるか」

 

 黄金の騎士が更に増え、武器も様々な物へと変わっていく。宙を舞う杭も同様だ。俺の認識より強いって仲間のアイズが言ったんだ。

 それを信じてやらなきゃ仕事にならねえからな。

 

 呼び出すのは一軒家程の大きさの金塊、手を翳して念じれば圧縮されて一本の矢へと姿を変える。

 

 

「グレートゴージャスシャワー……いや、長いからゴールド・レインとでもしとくか?」

 

 鏃の先端が向くのは天井。オリハルコンを細長く伸ばした特製の弦を限界まで引き絞り放てば操作して飛ばすよりも遥かに速く飛んで行き、落下と共に無数の矢に分裂した。

 

 驟雨の如く降り注ぐ黄金の矢。アイズが二人の前に飛び込んで撃ち落とし続けるが全ては無理だ。

 先端は潰してるから即死はしねえだろ、恩恵持ちなら。死んでないだけで心が限界に達するかもだが、それは自己責任って事で。

 

「心身のどっちかが潰れるか強くなるか、俺に鍛えさせるって事はそういう事だぜ? まあ、精々頑張りな」

 

 しかし、もう少し格好良い技名とか無いもんかね?

 

 

 

 

 

「最初のはダサ過ぎると思う」

 

「……なあ、ロキ・ファミリアのホームから大通りに出る時に空き家のか前を通るだろ? 彼処、幽霊が出るってよ。片目が腐り落ちた老婆が窓から通行人を眺めて、気付いているのに無視する奴の寝室まで来るってよ」

 

「!?」

 

 ……あー、そういや今日は昼からギルドで会合があるんだよな。二十四階層でモンスターが特定の通路に固まってるし、オリヴァスの時みたいになってるんじゃないかって。

 

 

 

 

 

「まあ、どうせ出るのは団長とかの役職持ちだし、俺は話を聞けば良いか」

 

 




前話 更新後に前書きにオマケ載せてます


次回 ザニス視点の予定  こち亀の本田と部長の被害者要素を集めたのが今作の彼ですが、自業自得だし使う暇のない金は手に入るのでセーフ?
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