ダンジョンに儲けを求めて何が悪い!   作:ケツアゴ

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第五十五話

 ……一体何が悪かったのだろうか。この世の快楽全てを欲した事か? 神酒によって団員を支配し弱肉強食へと誘導した事か? 喋るモンスター等での違法な取引か?

 

 美味い物を腹一杯食いたかった。美酒を浴びるほど飲みたかった。飽きるまで美女を抱きたかった。

 夢と呼ぶには些か欲に偏った願いを抱えた私は周囲の者と同じく神酒に溺れつつも偉業を乗り越えてステイタスを昇華させ、武力だけでなく、運営に必要な知力なども高めて遂に団長の座を手に入れた。

 

 それからは好き放題、団員の子として生まれたあの兄妹も搾取する対象でしかない、そう思って居た。

 酒を好まない兄がランクアップしてもファミリアに入れる金が増えるだけだと思っていたが、更に最速でランクアップをした時は内心穏やかではなかった

 

 復讐の対象になる程度の自覚があるからな。

 

 だが、あの兄妹は私を遥かに超える力を手に入れても直接的な復讐には走らず、互いが望む利益を得る為の取り引きを持ち掛けた。

 

 向こうが望んだのは立場に縛られない自由であり、その対価に私は大きな利益を得た。

 

 その代償に私は利益を使って快楽を得る機会を大きく失ってしまったのだが……。

 

 あの日、悪魔との契約をしてしまった私は背中を押され……いや、蹴り飛ばされ転がり落ちた。二度と這い上がれぬ奈落の底へと。

 

 

「……ふがっ!? すまない、寝てしまっていたらしい。三日程不眠不休でしてね。満足に食事も摂れていないのですよ」

 

 重苦しい空気と突き刺さる視線に気が付き居眠りから目覚める。呆れや怒りや興味無しの視線を向けて来るのは私より格上、腕の一本、中には指一本で羽虫の様に私を殺せる者までいるが、その程度はプレッシャーにもならない。

 

 

ふふん! 納期の調整に比べれば大した物ではない。ちゃんとオムツを装着したから小便を垂れ流す心配すらないのだ、ふはははは!

 

 一部のファミリアの団長のみで行われる会合、その中で相応しく無いのは私だろう。張りぼての玉座だのお飾り団長だの、自分でも納得しかないし、恨みを向けるキリア達の方が高いという意味不明な事になっているのが世間一般での私の評価だ。

 

 いや、Lv.2も普通に上澄みだし、キリアも言っていたが私と同じ様に団の運営が可能な者がどれだけ居る? 商売にギルドや他派閥との交渉に最近では教材に使う漫画? とやらの作画も任されて、ソーマ様と結託した兄妹が遠回しに殺す気なのかと疑う程だ。

 

「ああ、それで二十四階層の調査と拠点への突入メンバーをどうするかでしたね。私の所はアーデ兄妹を……と言っても二人しか使い物にならないのでしょうが」

 

 丁寧な口調の優男の仮面を被り注がれる視線を受け流す。私の領分は商売だと既に割り切っている以上、此処に世界最強クラスの冒険者が揃おうが何とも思わない。

 

 算盤とフライパンと弓矢を競わせても無意味なのだ。そもそも強さに最大価値を見出す風潮などが馬鹿馬鹿しい。

 

「女神は連中を明確に敵と認定した。突入班には俺を入れてもらう」

 

「当然さ、オッタル。君を入れない理由が無い」

 

「相手は最低でもLv.6なのだろう? 我らガネーシャ・ファミリアは第一級こそ多いがその領域には届いて居ないからな。問題は外に遊撃に出た時の場合だが……」

 

 当然だが私はこの場に出るだけだ。最初に伝えているし、向こうの認識でもキリア達に伝えるだけと認識している。

 

 それで良いが……さて。

 

 視線を向けず視界の端に捉えたエルフの女、ポンコツエルフ三号……いや、それはキリアの軽口か。

 【死妖精(バンシー)】だったか? あの悪夢と呼ばれる事件の生き残りであり、自分を残して何度もパーティが壊滅して来た不吉な女。

 

『生き残ったなら上等だったか、それとも或いは……』

 

 キリアの評価を思い出す。関わらない方が良さそうで、その口実だってある相手だ。私も外道の自覚があるので分かるのさ。

 

 

 あの女もマトモではない。なまじマトモな部分を捨て切れないまま這い上がれない穴の底に転がり落ち続けている、それが私の下した評価だ。

 

 ……あの女の所の団員を殺した犯人がオリヴァスの仲間の可能性があるからと捻じ込んで出席して来たが迷惑な。

 この機会に調査の名目で裏取引に手を染めていた事にする予定だったのに。

 

 

「ああ、所で聞きたいのですが、【白巫女(マイナデス)】」

 

「……何だ?」

 

「貴女……正確には貴方の主神であるデュオニソス様ですが、キリアを疑っておいでで? 探る視線があからさまですので気になりまして」

 

 この小娘……なのかはエルフ&上級冒険者なので分からないが、仮に私と親子程に歳が離れていたとしても甘い。

 

「どうも探っている連中が居て迷惑してるのですよ。足並みを乱すのを辞めて頂きたい。だいたい……天界で随分と悪質なお方だったらしいじゃないですか、とある主神殿は」

 

「貴様! デュオニソス様を愚弄するか!!」

 

「おや? 私はとある悪戯好きな御方を指したのですが、貴方は自らの……おっと、これ以上場を乱せば【猛者】に叩き出されそうだ。ご不快に思われたのなら謝罪いたします」

 

 成る程、ポンコツエルフ三号と呼ぶ理由が分かるな。私も随分と汚い事をしているので敏感だが、この女は本心を隠すのが苦手だ。

 劣等感と罪悪感、それに怒りを抱えてエルフらしい誇り高い立ち振る舞いに努めているが、軽く突っつけば崩れ去る程度。

 

 仲間を見捨てて逃げたか、不埒な真似に怒り剣を振るったか、その他の何かにせよ何かはありそうだ。

 何にせよ心の中を表に出し過ぎて空回っている姿は滑稽でしかない

 

 腹黒で強欲で執拗で陰湿で兄馬鹿でネーミングセンスに問題があって糞鈍感なキリアとは大違いだな。

 

 腹芸の一つでもしなくてどうする?

 

 私の指摘で明らかに動揺を滲ませた小娘(暫定)を軽く揶揄う事で激務からのストレスの溜飲を下げ、あくまで伝達役として話を進め、ホームへ戻ったのだが、不意にソーマ様から自分以外が作った神酒の匂いがすると言われた。

 

 

 

 

 

 

「これは多分葡萄酒。……ああ、デュオニソスが至っていたのか」

 

「成る程。かの男神も酒神でしたか。強力な商売敵にならなければ良いのですが」

 

 まあ、商売に関しては私の領分だ。あの兄妹に頼る事は一つも無いし、シェアを奪われない為にお得意先との連携と市場拡大を目指さねば。

 




こうでもしないとフィルヴィスとの絡みを作れない 主人公が神酒に生き当たっちゃうから
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