ダンジョンに儲けを求めて何が悪い!   作:ケツアゴ

58 / 65
第五十八話

「全く美味しくないんだが、偶に食いたくなるっつーか、食わなきゃいけない気になるんだよな」

 

 火の粉弾ける焚き火を使って枝に刺した虫を炙り、塩も使わずにそのまま食べる。

 正直不味く、食感も最悪だ。

 

 弱かった頃、パン一つ手に入れるにも役立たずの無駄飯食らいだと殴られ蹴られの毎日だった。

 

 怪我をすれば更にダンジョンで稼げなくなるとホームでの食事を諦め、時代が時代だけに物乞いは無駄だと初日で悟り、スリや置き引きは俺一人なら良いが、幼い妹を抱えてリスクは犯せない。

 

 俺が報復を受けるなら自業自得だが、リリルカにまで害が及ぶからな。

 暴力を正当化する口実、それが無理矢理でも得られたなら人間ってのはとことん残酷になるもんだ。

 

「まあ、口直しに何か食べに行きたい気分ですが、負けん気を失わない為に今日だけは我慢しましょうか」

 

「ゴミ漁りもするか?」

 

「したら怒りますよ?」

 

 別に俺だけでも良かったんだが律儀に付き合ってくれるリリルカも不満は隠せない。

 いや、そもそも不機嫌だったな、昨日から。

 

 

「それでお前から見た【白巫女(マイナデス)】はどうだったよ?」

 

「共闘の最中にポンコツエルフ二号と三号が自分達の世界に入り込んでイチャコラし始めたのが鬱陶しかったです。それと多分黒寄りの灰ですかね?」

 

「間近で観察してたもんな。ご苦労さん」

 

 主神が行方不明で、送還されたら恩恵失ってダンジョンの中だ。二回もランクアップした奴がそれを理解しない訳もねえのに作戦に参加して、死に怯える様子も無く果敢に戦う姿を見せた。

 

 

 自暴自棄? それとも大丈夫だと知っている? 何方も有るだろう。

 

 俺の直感じゃ黒に近いが、彼奴ってオリヴァスみてぇな異様な再生能力は持っていなかった。

 この時点でモンスター化……情報共有の為に呼び名を【怪人】にはなっていないらしい。

 

 結局二十四階層の肉壁の中はもぬけのから、囮だったか予定外の事態か無駄でもやらなくいけない理由があったか、不完全燃焼で、嫌がらせとしては成功だ。

 

 まあ、こっちが前回荒らしまくって幹部から情報引き出していて、それで向こうさんが行動を変えないなら、黒幕は一度決めた予定は変えられない装置じみた存在なのか馬鹿なのか、そう思わせて惑わせる作戦なのか。

 

 

 魅了で吐かせれば一番早いが、フレイヤ様は魅了嫌いでイシュタルはきな臭い、アフロディーテに頼るにしても魅了で操るって行動を表沙汰にすればお終いだ。

 

 タガが外れて疑心暗鬼からの内輪揉め、敵は喜び漁夫の利と暗い未来が待っている。

 

 

「食い足りねえし芋虫でも探すか?」

 

「リリはカブトムシの幼虫が良いですね」

 

 色々と考えたが必要なら戦うまでだ。可能なら援軍有りかつ向こうは仲間の助力が望めない状況で。

 

 その為に力を付け、コネを築いて来たんだから。

 

 一旦虫を食い終わったと焚き火を消して片付けを始めた時、一匹だけ残ってるのを発見する。

 

 小さくて食いでの無い蜂の幼虫、これ一匹を炙る為に火を起こすのは面倒だが、だからと言って捕まえる労力を無為に帰すのも考えものだと悩む事数秒。

 

 ダンジョン内で発生した遠雷が解決案を示してくれた。

 

「おーい! 虫焼きたいから一発だけこっちにくれよ!」

 

 声が届いたのか承知とばかりに向かって来る雷の矢。但し一発っつったのに十発も、更に全部俺に向かってだ。

 

 離れていたから余裕で避けて、一瞬だけ幼虫を触れさせれば電熱が中まで伝わってこんがりと良い焼き加減。

 

「狙いの精度も戻ったし、慣れたか」

 

「みたいですね」

 

 本日の依頼はヘディンとガリバー兄弟とヘグニをダンジョン下層まで運ぶ事。

 

 オラリオ内外を震撼させたオッタルのランクアップ。触発されて冒険しちまう冒険者が増加した事でギルドの方は悲喜交々、フィンの勇姿に続こうとする同胞の末路を見た気分だ。

 

 まあ、それは別にどうでも良い。冒険者なら自己責任。中には今までの経験も合わせて器を昇華させた奴等だって居るんだからな。

 

「人の魔法を虫焼きに使おうとするな、阿保」

 

「虫なんて食べなくても良いだろ? 大役の前に腹を下したらどうするんだ、まったく」

 

 不満顔のヘディンと呆れ顔のアルフリッグ、そして何処かすっきりした顔のドヴァキン達。

 

 下に潜ったから此処に居ないヘグニ、既にランクアップ済みのアルフリッグ、序でにアレンを除きフレイヤ・ファミリア幹部勢は一足遅れてのランクアップを果たした。

 

 今日は体の調整も兼ねてやって来たんだが、見た限りじゃ調整は終わったみたいだな。

 

「三人もランクアップ後の動きに慣れたし、これで連携の乱れも解決だな」

 

「あっ、抜け駆け長男が偉そうにしてるぞ」

 

「自分だけ一足先にランクアップしたからって上から目線だ」

 

「此奴を残して俺達三人で遺跡に同行すれば良かったな」

 

「お前達なぁ……」

 

 更に先に進んでもこの兄弟は相変わらずで、ヘディンが今後どうするかは分からない。

 

 貴重な頭脳労働枠だしアレンから副団長の座を奪い取って最終的に団長を目指すかどうかは本人次第

 

 

 これで二大派閥がニ大(笑)になったと噂している神も居たが、そっちの争いも関与しないので興味無し。

 

 このフレイヤ・ファミリア躍進で一番面倒なのは……。

 

 

「イシュタル・ファミリアが面倒な事しそうだよな。あの魅了ばら撒き女神、絶対姑息な手に出るぞ。そんなんだからフレイヤ様との評価差が広がってるってのに」

 

「問題無い。潰すだけだ」

 

「「「「同感」」」

 

「……一応歓楽街って性犯罪の抑止とか大きな都市じゃ必要な側面も有るからな? もっとマトモな神が運営してたら良かったんだが」

 

「安心しろ。女神の命令でなければわざわざ壊滅などさせん」

 

「命令されればするのですね、分かります。まあ、兄さんの言っていた必要性も主神が主神ですから十全に発揮していないんですけれどね。団長とか一番強いヒキガエルとかが特に問題で」

 

 ランク詐称の冤罪案件でギルドに大きな貸しを作ったからな、彼処。だか多少問題点があっても安易に調査に入れない

 

 考えれば妙な話だ。幾ら連合でも大手ファミリアに喧嘩売ろうって冒険者が何人もがランク詐称してるって判断を誤るか?

 

 そりゃレアスキルや魔法なら何人かは疑惑を持たれても仕方無いだろうが、記録では結構な人数に疑惑があった筈だ。

 ランク二つ上の相手を討ち取った俺が言うのも何だが妙過ぎて罠を疑うな。

 

 誤ったじゃなく、誤らされた?

 

 

 

「他人にまで付与可能なランクアップ相当の強化? 流石に有り得ない……事も無いのか?」

 

「「「「アホみたいに便利な魔法を使えるお前って前例があるしな」」」」

 

「まあ、それでも精神力には限界があるから全員に長時間使えないだろうし、そもそも少し前なら別として、今更多少の援軍があってもフレイヤ・ファミリアの敵じゃないんだが」

 

 基本的にホームで共食いしてるから弱い奴をダンジョンで襲うってのは難しいしな。

 だって公式では5と4が一人ずつ、残りは精々3だ。階層主を強化種にした上で魅了で操れば勝てる確率はごく僅かだが漸く勝負と言える内容に持ち込める、その程度だ。

 

 フレイヤ様が魅了上書きしないって大前提で。

 

 

 最終的にフレイヤ・ファミリアの問題だからと話を切り上げ、ヘグニを食糧が尽きる頃に回収。

 

 そして数日後、ロキ・ファミリアが遠征の準備の仕上げで忙しい頃にオリンピアからの使者が到着した。

 

 

 

「お前らが寿命で死ぬのを待ってから何かするかもな。エルフの寿命は長いが、神からすりゃ僅かだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。