ダンジョンに儲けを求めて何が悪い!   作:ケツアゴ

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第五十九話

「お会い出来て光栄です、ウェスタ様ぁ!」

 

 オラリオにおいてヘスティアの扱いが此処迄良いのは過去未来においてこの時が一番じゃねえのかと、ゼウス曰くプロメテウスが混ざっている聖火の巫女達を眺めつつ思う。

 

 バイトバイトと忙しい借金持ちのぐーたら女神で、マスコット的な扱いで慕われていても神への敬いはベルだけしか向けていない。

 

 それが今はどうだ? 元々はヘスティアが犠牲にならないと穢れた聖火を消し去れなかった事への罪悪感か凄くチヤホヤされている。

 

 オリンピアから来た巫女達はヘスティアを取り囲んでキャーキャー楽しそうに世話を焼いてるんだが、十代の態度だよな、あれ。

 

「にしてもオリンピアの連中の年齢って確か……」

 

「しっ! 神様と同じで歳を取らないせいで精神的な成長も遅いんですよ、きっと」

 

 エルフ換算でさえ棺桶に収まっている年齢だってのに見た目相応の言動をしている事が気になるも嗜められ、仕方が無いので誰が女神の擬態なのか暇潰しに考えてみる。

 

 今回、俺は極力消耗せずにオリンピアまで向かう事になっているから【エル・ドラド】で空飛ぶ黄金船は出せない。

 

 オリンピアが用意した船にヘスティアの次に豪華な部屋を用意してくれるらしいので優雅な船旅をするだけだ。

 

 ……大体の場所の心当たりはあるので、半日もかからず行ける距離を何日も航海に費やしながら進むのは少し勿体無い気がするのだが、世界の命運とついでにヘスティアの一万年が掛かっているので理解はしている。

 

「僕にはよく分かりませんが、頑張って来て下さい、神様」

 

「おう! さっさと役目を果たして帰って来るぜ、ベル君!」

 

 ベルはタケミカヅチ様の所からダンジョンに通うらしい。ステイタスも相当上がってると嬉しそうに情報漏洩してやがったが、絶対成長促進する魔法かスキルあるだろ、此奴。

 

 

「それでさっきから俺の方を観察しているのが……」

 

「彼方の方が神儀長のエトン様です、アーデ殿」

 

 俺の呟きにレアと名乗った巫女が答える。成る程、あれが英雄エピメテウスか。

 

 今回、ヘスティアの護衛の名目で儀式の際の補助要員としてヘディンとガリバー兄弟とヘイズ、ヘスティアと俺達がしくじった場合に備えてヘファイストス様も来ているし、此処の全員が既に事情を知っている。

 

 向こうにも伝えている筈だが、互いに知らない事にしたいんだろう。まあ、受け入れられない気持ちは分かる。

 

 しかし見た目相応に振る舞う巫女の実年齢も知っている訳で、外との交流が無けりゃ精神的にも成長しない物なのか?

 

 後付けで不老になろうが神じゃねえんだし……。

 

 

「少し良いだろうか?」

 

 そして俺がわざわざ一人になった所でエピメテウスが近付いて来た。穢れと愚民の影響で心がヤバい状況だとゼウスから聞いているし、少し警戒して肉削ぎを袖口に隠した状態の俺は彼の言葉に頷いた

 

「おーう。その前に礼を言っておく。エピメテウスが持ち帰った情報のお陰でザルド達はベヒーモスを倒せたし、アンタレスだってアルテミスが喰われて神造武器を奪われてりゃオラリオはお終いだった」

 

 お世辞でも精神的な揺さぶりでも無く、これは俺の本心だ。エピメテウスの末路を知っているから救いを待つだけの赤の他人に一切の価値が無いと知れたし、そもそもベヒーモスが討伐されず、エピメテウスが倒したモンスターがそのままなら俺が生まれていない可能性だって有り得るんだ。

 

「何を……」

 

「ああ、気にするな。俺にとっちゃ赤の他人の賛美も侮蔑も期待も評価も無価値だ。勝手に言ってろってしか思わない。だから……まあ、俺の自己満足に過ぎない」

 

 何を言っている、何を今更、それ以外なのかどうか初対面で物語でしか知らない俺には判断出来ねえ。

 

 なので説明も許可を取るのもすっ飛ばし、抵抗する隙も与えずに【マネーイズパワー】を無詠唱で発動する。

 

 選択するのは浄化。本来なら呪いだのを解除するが、今回のは怨念みたいなもんだからな。

 

 消費残高は五億……おっふ。良いさ、金は使う為にある。それに妨害されたら厄介だし?

 

 一瞬迷うもエピメテウスの体内限定で穢れを消し去る。所詮は一時凌ぎ、繋がりは残っているから徐々に汚染されるだろうが少しは保つだろう……多分。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 何が起きたのか理解出来ないのか額に手を当てた姿勢でエピメテウスの息が荒くなっている。

 汚染の影響で負の感情が常に浴びせられ続けてるって話だったし、急に途切れちゃそうにもなるか。

 

「それで話ってのは未だするかい?」

 

「……ああ、お前の話を聞かせろ、小僧」

 

「悟った気でいるだけの世間知らずの小僧の話で良けりゃ話すさ。ついでに妹連れて来る。彼奴が俺にとって世界の大部分だからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

「何奴も此奴も期待外れだの役立たずだのっ! 私の働きの万分の一でもやってから言ってみろ!」

 

「だからさ、赤の他人の評価なんて勝手な期待と理想の上の無価値な物なんだよ。気にするだけ無駄だろ」

 

「そうは言ってもお仲間の名誉もありますしね。ささっ、もう一杯」

 

 俺の話をして、又聞きじゃなく本人からも話を聞いてみりゃ単純な話だ。

 英雄エピメテウスとしか此奴を見てなかったし、愚痴だって吐き出せなかった。何せ希望を一身に背負う英雄を押し付けられたんだから。

 

 正直死んだ仲間の名誉とか、死んだら終わりで魂も洗浄されるんだから生きてる奴が気にするだけで、本人からすればどうでも良いだろうに。

 

 お前、前世じゃ凄くて名前が残ってるぞ、そんな風に言われて嬉しい奴も居るんだろうが多分直ぐに飽きる。

 

 なので全力で丸め込む為、いざという時の切り札その三として用意したオラリオメリーをチビチビ飲ませて本音を吐き出させても共感は皆無だ。

 

「……私はこれからどうすれば良い? どの様に生きるべきだ?」

 

「自分の人生だろ? 人類最大功労者だからって主張して隠居しても良いし、旅に出ても良い。敵対するなら全力で潰しに掛かるが、好きに選べとしか言えないな」

 

「そうか……」

 

 どうも俺みたいな小僧の言葉じゃ丸め込むには少し足りない。このままだと穢れが戻れば敵対も有り得るので窓から捨てるべきか考えたが、覗いてる奴が居るのが厄介だ。

 

「おい、ヘスティア。此処は亀の甲より年の功って事で話聞いてやれ。神の負債っつうなら一番の被害者だぞ、此奴」

 

 上手い事説得出来たら儲け物。何かする気なら切り捨てよう。酔っ払ってるから多分楽だ。

 

 一応ヘディン呼んどくか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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