ダンジョンに儲けを求めて何が悪い!   作:ケツアゴ

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第六十話

「それで説得の方は出来たのかい?」

 

 オラリオメリーの影響が残るエピメテウスをヘスティアに任せて部屋を出ればアルフリッグとヘディンが物陰から姿を表す。

 一見分からない様に武装して、何かあれば直ぐに飛び込んで一戦始める構えだ。

 

 まあ、随分と精神的に不味い状態だとは聞いているし、何か企んでるってのも話せば分かる。

 

 その上で俺は顔を左右に振った。

 

「一時的に穢れの影響から外れた上でオラリオメリーで理性緩めただけで、人間性を其処迄分かっちゃいないからな。ヘスティアがどうするかだが、どっちにしろ心身的に万全じゃねえ」

 

「当然だな。出会ったばかりの相手と少し言葉を交わして救われるのなら既に救われていただろう。何せエピメテスを讃えるであろう者達の本拠地にいたのだからな」

 

 それはそう。人は簡単には変われない。そもそも簡単に変わるのならエピメテウスの栄光の時期はもっと短い筈。

 

 俺だってもっと別の性格だっただろうさ。

 

「ヘスティアの奴、普段は駄目人間女神で天界ですら怠惰で有名だったらしいが……まあ、神としての格は高いらしいから」

 

  本当にビックリだが複数の神の証言がある。本当にビックリだが。

 

 一応リリルカに扉の前で警戒させているし、黄金の針を部屋に幾つか残して来た。

 

 憤怒と絶望で堕ちた奴を説得で立ち直らせるなんて物語では良くある話だが、それを現実にも期待なんざしねぇ。

 酒と動揺と神の言葉で駄目で元々、上手く行けば儲け物程度。少しでも戦意を削げればそれで良いんだ。

 

 暫くしてエピメテウスは呆けた様子でフラフラしながらも部屋から出てくる。

 ヘスティアに首尾を聞いても、あとはあの子次第だ、としか言わない。

 

 よし、敵対意思を見せたら即座に斬首の方向で行こう。失敗すれば世界の終わり、大義の為にブチ殺せてな。

 

 

 そして俺達はオリンピアへと到着した。伝承に残る程の美しさってのは分かるが、道行く連中を含めて全部過去の影法師、外に漏れ出さない様に抑えていた生き残りには頭が上がらない気分だ。

 

 幻の場所を観光しても時間の無駄だ。ヘスティアの犠牲が確定した場合ならベルでも連れて来て思い出で残りたいと思うんだろうが、生き残れる可能性があるから一刻も早く囚われた魂を解放したいと俺達は神殿の地下深く、燭台にまで足を運んだ。

 

「これが悠久の聖火、それが人間の悪感情で穢れた姿か。こりゃ人間滅ぼせ、世界は人の子だけの物に在らずって考える神が居そうだが、其処の所どうなんだ?」

 

「どうだろうね。そんな神が居ても不思議はないけれど、矛盾している事に悪神や邪神だって子供達が大好きな場合が多いんだぜ?」

 

「相変わらず神様って意味不明ですよ。では、兄さん……お願いします」

 

 任せておけとばかりに黄金の矢を作り出し、炎の中心を射る。操作に魔力は使わない。

 

 ただ形作った矢をアンタレス素材の弓で放つ事で染み出した神喰いの力が矢へと吸い込まれ、そして悠久の火の中で溶けて消える。

 

「来ます! ヘスティア様はもう少しお下がりを!」

 

 もう一矢撃ち込んだ時だ、炎の様子が明らかに変わったのは。それは一種の防衛本能。

 窮鼠が猫に噛み付くのと同じで喰われる事への反撃だ。

 

 炎から飛び出す獣の姿の炎【炎獣】、同時に風で煽られたかの様に炎が俺達へと伸びたのを前にリリルカはソウルイーターを振るいながら前へと飛び出した。

 

 炎獣も炎も大鎌が切り裂くと同時に勢いを失くして萎んで行き、俺はひたすら黄金の矢を精製しては射続けた

 

「このまま頑張ってくれ。制御可能な段階まで衰えたら僕が何としてでも鎮めてみせる!」

 

「黄金の在庫が尽きる前に頼んだからな」

 

「その場合はリリ達だけでドロンさせてもらいますので!」

 

「う、うん。寧ろそうしてくれないと困るかな」

 

 どれだけ撃ち込めば良いのか、そんな事を考えている余裕は無い。黄金が溶け出し、聖火の力が流れ込む度に骨の芯まで焼き尽くす様な熱が俺に流れ込み、火を振り払うリリも熱気で肌と肺を焼かれて行く。

 

 其処に流れ込むヘイズの回復魔法。ヘディン達も撃ち漏らした炎獣を始末して俺達に近付けさせはしない。

 

 

 

 一体どれだけの黄金を溶かし,どれだけの時間が経過しただろうか。炎獣の量と質は産み出す炎の大元があるせいか激しさを増すばかりでヘディン達も消耗が激しい。

 

 ヘイズも既に大量の精神回復薬(マジックポーション)を流し込み何度も枯渇で倒れそうになるのに耐えている。

 

 

 流石に限界が近い,その時だった。

 

 

 

 

 

皆、お疲れ様。後はボクの仕事だ

 

 ヘスティアがヘスティアじゃない誰かになって微笑む。同時に穢れた炎はみるみる内に萎み、そして消え去った。

 

 

 

 

「これで全部終わりだ。後始末が終わったら帰ろうぜ、オラリオへ」

 

「そうか、……あー、水風呂浴びてさっさと眠りてぇ」

 

「ベル君、今頃何やってるかなぁ? まさか浮気なんてしてないよね!?」

 

「処女神を辞めてから言えや」

 

 もうこんな大仕事は勘弁だ。時間も手間も費用もリスクも馬鹿にならねえ。

 その場に大の字に倒れ込む。暫くは動きたくねえよ、まったく!

 

 

「うん? 何か嫌な音がオーライーターからした様な……」

 

 ミシミシピキピキと軋みながら割れて行く音がオーライーターから響く。

 まさかと思って指を伸ばすも触れるより先に全体に広がった亀裂から細かい破片が飛び散って、そのままオーライーターは完全に砕け散り消えて行った。

 

 

 ……は? え? まさか聖火を受け止めるのに精一杯だった? 消えたから修復は不可能。

 

 三億,買ったばかり……。

 

 

 

「兄さんが気絶した!?」

 

「おや、でしたら私が膝枕をしましょう」

 

「妙にウキウキしているな、ヘイズ。それよりも功労者であるそのアホをベッドまで運んでやれ」

 

「では、ベッドで膝枕を?」

 

「ベッドには普通に枕があるだろう。疲れているなら貴様もさっさと休め」

 

「流石にベッドで添い寝は……」

 

「休め」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「畜生め! 何処の馬鹿だよ、ブラッドザウルスなんざ中層に持ち込んだのは!? テメェら、死んでも抑え込め! じゃねえと死ぬぞ!!」

 

「分かってるわよ、モルド!」

 

「さっさとぶっ放せ、ベル!!」

 

「最大まで貯まった。これなら……【ファイアボルト】ォオオオオオオ!!!」

 

 きかんごにしったが、ベルたちがぶらっとざうるすをたおしたってさ。へー。

 

 




ヒヒイロノカネって原作や外伝で出てる
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