此処数日の間検証を重ねて少し聖火について分かって来た。
先ず一番重要な事だが、デミアルカナムを更に人間の魔法に宿らせたせいか神の力としての性質は少しばかり変容したらしい。
ダンジョン内部での使用には問題が無い。これが駄目なら九割以上の価値を失った事になるので助かった。
但し黒いモンスターにまで効くかどうかは不明とはエピメテウスの意見だ。
ダンジョンは素人だからとエイナさんの講習を受けに行く途中に意見を貰ったが、人の魔法に宿るなどどうなっているのかと首を傾げられた。
「お前は何というか意味が分からん。ああ、憤怒を込めて穢れた火にすれば通じるやも知れんが」
「世界滅びかけた原因だろうが、ボケ爺」
「……むっ。確かに私は爺か。実年齢を告げれば老人向けサービスを……」
「受けられるか、馬鹿。そしてバラすな、阿保!」
あの英雄、脳の容量が限界になってアーパーになってやがるんじゃねえか?
情報料をしっかり徴収しやがったし、クソが!
「何処か希少金属の鉱山とか見つかりゃ助かるんだが……」
【エル・ドラド】の金貯蔵量は入れた物の価値の七割相当。前回は膨大な貯蔵量の金鉱を手に入れて丸ごと換金したが、今度も未発見の物を手に入れられれば……。
「そんな幸運が都合良く見つかりゃ世話無いんだが……」
次の【啓示】がそれなら嬉しいと願うが、どうせ緊急セールの日程という諦めだってある。
今の所、後から入れた金にも火は宿る。火の総量がどれだけかは金を入れ続けるしかないか。
……戦闘中の移動やら防御や牽制と俺にとって重要な武器が使い辛くなったんだ。
知れば幸いと狙って来る奴も居るだろう。フレイヤ様に引き離されて焦ってるだろう宣伝失敗女神とか。
世界を救う女神を救った報酬が金銭以外は厄介事の種を含んだ威力上昇を対価にした使い勝手の低下とか、世界は俺が嫌いなのか?
俺も世界が嫌いだよ、バーカ。
「……仕方無ぇ。直感頼みでダンジョンの壁を掘りまくるか」
ヴィーヴルとか異常発生しねーかなぁ。全部俺が狩れば相場も下がらねえし最高なんだが。
リリルカも暫く居ねぇし、兎に角金を稼ぐか。
俺の後ろを不安そうに着いてきて、背中を蹴り飛ばし続けたお陰で隣を歩く様になった半身の不在に少しばかり落ち着かない物を感じるも、新しく掴む物の為には仕方が無いだろう。
学区。オラリオとは別の方法で戦力を育てる教育機関。第一級冒険者になった事だし、此処らで基礎から学び直させる為に短期入学をさせた。
金を積めば無理は結構通るもんだな。
金さ金金、お金が重要。自分と身内の命以外でお金がこの世で一番大事。
俺の魔法があったなら金さえあれば大抵の事は何でも出来る。
少し立ち止まり考える。今、家には俺しか居ない。つまりは朝帰りして特定の匂いが付いていてもバレないって事だ。
「今なら行けるな……」
そう、イシュタル・ファミリアが心配だからオラリオのには行けねえが、他の場所なら大丈夫な筈だ。
一応有名なので匿名性を守れる所娼館へ……。
「今晩辺りお食事でもご一緒しませんか?」
「どうせならイスラファンにでも行っ…て……」
DTを捨てるチャンスだと気が緩んだのか背後からの声に反応が遅れてしまう。
振り向けば何処か嬉しそうなアミッドの姿。偶然っつーか幸運つーか独り言が返事に適した内容だった。
これで向かった先で性欲を発展させるとか言わなくて助かった。真の目的に関わる内容だと確実に妹の耳に入るだろうからな。
「随分と遠出ですが……ええ、実に楽しみです。ディアンケヒト様にお洒落をしろとお金を渡されて迷っていましたが、良い口実になりましたね」
「砂漠の夜は冷えるからな」
今更独り言とは言えない雰囲気だな、おい。良いよ、気晴らしに友達と出掛けるって事でよ。
珍しく鼻歌まで歌いながら去って行くアミッドの姿に良かったと感じつつも折角その気分になっていたのに残念な想いも押し寄せる。
あれか? あの時にヘイズに手を出しとけば良かったか? 主神の悪ふざけに従ってた恩人に?
却下だ。それは流石に駄目だろう。
良いさ、チャンスはその内に巡って来るだろうよ。……今の内にパッと転移して予約しとくか。
「おぉ! 逢引の為のお店ですか。ならば私の伝手で最高の場所をご用意致しましょう。大丈夫、イスラファンの英雄なら遠慮は無用ですぞ」
「いや、飯食うだけだぞ?」
「はっはっは。照れずとも良いでしょうに」
イスラファンの文化なのか相手は友達だと伝えても信じては貰えない。あれよあれよと話が勝手に進み、演奏付きのディナーで夜景を眺めるなんて内容に。
「それと宿も取っておきましょうか? 露天風呂付きで恋人や夫婦での利用に人気ですよ」
「だから友達だっての」
アミッドだって飯食った後でそんな所に誘われたら困るだろ。友人と飯食うだけの予定が下心丸出しで誘われるとか普通に困る。
あー、絶対勘違いしたままだし余計なチャチャ入れられたら気まずいってもんじゃねえだろ。
「……はぁ。それは何とも言い難い」
そして晩飯の時間、今後の付き合い目当てでタダ飯を食わせてくれるとなって、だったら後から知られて変な空気になっても困る。
だから一連の会話を食事中の笑い話としてみたが、返って来た反応がこれだ。
私服まで仕事の事を考えて選ぶアミッドが珍しくドレスに軽い化粧までと偽物ではと今も少し疑っていたが、この反応で本物確定だ。
完全に呆れてやがる。俺に!
「折角豪華な宿を用意して頂けたのなら貴方だけでも泊まれば良かったのでは? そもそも私も泊まったとして、その様な雰囲気になるとは思えませんし、罷り間違って行為に及んだとして関係性が変わりますか?」
「変わらないだろうな。……損した」
そりゃそうだとしか言えない話だろう。アミッドと腕を組んで歩くとか愛の言葉を囁き会うとか想像も出来やしない。
つまり考え過ぎだった。部屋を用意していても俺とアミッドじゃ変な雰囲気になる筈がなかったって事だ。
「露天風呂付きの部屋、少しばかり興味があったのですが仕方有りませんね。此処で誘えないから……ふぅ」
「いや、お前も居ないじゃん」
おい、蹴るな。テーブルの下で脛を蹴るな。そもそも恋人が居ないとか言われて怒るタイプじゃねーだろ。
「何故かオラリオでも私達は恋人だと思われているそうですよ」
「え? 何で?」
「さあ? 多分貴方が悪いので何時か責任を取って貰うかも知れません」