ダンジョンに儲けを求めて何が悪い!   作:ケツアゴ

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第六十三話

「矢張り風呂は良い。特にこの湯は数千年物の疲れも吹き飛ぶ気分だ」

 

 ダンジョン十八階層の森の一角、水晶から湧き出る水が湖の様に溜まっている場所にてエピメテウスは入浴を行なっていた。

 

 そう、お湯だ。少し熱めの湯温で湯気が立ち上り、何かあるのかと気にしたモンスターが近付くも無造作に振るった手から飛び出す聖火が焼き尽くす。

 

 聖火が浄化された際の影響で止まっていた時が動き出しオリンピアの多くの者は聖火との繋がりが消え去った。

 

 だが、エピメテウスは最初に聖火の祝福を得て、穢れた聖火を宿し続けた身だ。

 

 故に全盛期に比べれば大きく劣るものの聖火を扱える。ヘスティアの眷属になった影響かどうかは分からないが戦闘にも生活にも便利に使えるので今も風呂を沸かすのに使っていた。

 

 デミアルカナム、世界を救う為にプロメテウスがゼウスに逆らってまで地上に与えた力をだ。

 

 何か聖火の影響か上質な温泉の様な効能まで発生しており、ダンジョンに潜る為の講習で発生した肩凝りも癒えるというもの。

 

 

「さて、もう少し堪能したら食料を確保して帰るとしよう。ベル達も心配しているであろうしな。……シャンプーを持って来るべきだったか」

 

 そもそもエピメテウスが何故一人で十八階層まで来ているのか。その理由は地上にてヘスティアに説明されていた。

 

 

 

 

「エピ…エトン君がダンジョンで行方不明だって!?」

 

「……はい。すいません、神様」

 

「私達が居なければエトン殿なら無事だったでしょうに……」

 

 この日、ベルとエピメテウスはタケミカヅチ・ファミリアの面々と中層へと進行した。

 第三級が一人に第四級が三人で中層の上の階層だけで終わらせる予定だったのだが、予想以上の出現に加え天井からの大量発生による崩落。

 

 咄嗟にエピメテウスが他のメンバーを蹴り飛ばさなければ下敷きになっていたであろう状況の中、ベルが見たのは崩落から逃れる為に縦穴へと飛び込んだエピメテウスの姿だった。

 

「ボクの繋がりは失われていないしエトン君なら大丈夫だとは思う。でも、だからって帰って来るのを待ってなんかいられるもんか! ベル君、彼を助けに行こう!」

 

「はい、神様!」

 

 こうしてエピメテウス救出部隊が編成される事になったのだが……。

 

 

 

 

 

「成る程。オラリオの酒も悪くない」

 

「あん? こっちに来てから酒飲んでねえのか?」

 

「生憎零細ファミリアなものだし、私も酒は嗜む程度だった。食費を削ってまで飲むかどうかとなれば……」

 

 ベルを通じて顔見知りになっていたモルド達とリヴィラの街で遭遇したエピメテウスは集めた魔石の一部を換金し酒と料理を楽しんでいた。

 

 風呂上がりの一杯は格別で程よく火照った体に冷えたエールが染み渡る。

 恩恵の影響か上級冒険者は酔い辛いが量で補えば良いと安酒と安いツマミをテーブルに並べて舌鼓を打つ。

 

「それにしてもさっさと帰らなくて良いのか? 彼奴お人好しだし心配してるんじゃねえのか?」

 

「問題無い。私の実力はちゃんと把握させているからな。道に迷う程度は心配されるだろうが、恩恵が保たれているのは主神には伝わる」

 

 エピメテウスはオリンピアにおいて絶対的な英雄であり、ベルもヘスティアも素性は知っているのだからそれ程の心配はされていないだろう。

 

 普通はそう思うのが当然だろうと料理を楽しむエピメテウスであった。

 

 

 

 あと色々と気を遣うヘスティアと憧れの視線を向けて来るのでダラダラ出来る時間が欲しかった。

 数千年単位で働いたのだし五百年程ニートをしても良いとさえ思っている。

 

 

「取り敢えず肉料理と酒を追加しよう。鶏肉が良い。特に揚げた奴が」

 

 腹一杯美味い物を食って酒を浴びる程に飲んで爆睡こいたら風呂に入ってから帰ろうと決め、宴はまだまだ続くのであった。

 

 

 

 

「そこの者、悪いがこの場所は譲って頂けないか? 高貴な御方が今から水浴びをする予定…あれ? お湯が沸いている…だと?」

 

 翌朝、二日酔いでダウンしたモルド達と別れたエピメテウスが向かったのは昨日の水場。流れを塞き止め聖火で風呂の準備をした所で背後から声が掛けられる。

 

 相手はエルフ数人、装備に刻まれた道化のエンブレムに見覚えがあったエピメテウスは風呂へと変わった水場に戸惑う彼女達を前に考え込んでいた。

 

「神ロキと主神殿は不仲だったな。だが、エルフが高貴と呼ぶのなら……ハイエルフか」

 

 別に譲る事は構わない。準備の労力もそれ程ではない事であるし、別の場所に移動するのも億劫では無いのだが、かと言って今から入浴する気分だった所を赤の他人に譲るのもモヤモヤするものだ。

 

 だが、王族と精霊が関わった際のエルフが面倒なのは分かっているので場所を譲る面倒よりも譲らない際の面倒の方が勝った。

 

「この場所は私が入浴の為に沸かしたが別に良いだろう。どうせ半隠居の老人だ。若者を優先しよう」

 

「そ、そうか。申し訳無い。助かる」

 

 別に構わないと手をヒラヒラと動かし去って行こうとした時、不意にエピメテウスの腹が鳴る。そういえば朝飯が未だだったと思い出した彼は朝食確保の為に森の奥へと進んで行った。

 

 

 

 

「甘い果実ばかりだな。塩気のある物があれば助かるのだが……」

 

 甘い果物ばかりを大量に手に入れ、少々残念に思いながらも進めば同じく食料を集めに来たであろう集団と出会した。

 ロキ・ファミリアのエンブレムを見て遠征の帰りかと当たりをつけるも、それ以上の興味は無い。

 

「おい、私はこれほどの量は不要だ。若者が腹を減らすのは忍びないから譲ろう」

 

 少なくとも自分の正体をロキは知らないのだから放置で良かろうと果物を投げ渡すと横を通り過ぎ、朝から一杯引っ掻けるべきかとリヴィラの街まで向かって行った。

 

 

 

 

「成る程な。確かに風呂だが……ただの風呂ではない。神か精霊の力に近い何かが込められているな」

 

 遠征帰り、猛毒を浴びて多くの団員が行動不能になる中で水浴びに来たリヴェリアであったが、エルフの団員に案内された場所でお湯を手で掬いまじまじと見詰める。

 

 ただの火の魔法で沸かしたのではない何かを感じ取っていた。

 

 

「それで風呂をわざわざ譲ってくれた男は何処の誰だ? ちゃんと礼を伝えねばな」

 

「それが此方が名乗る前に立ち去ってしまい……」

 

「何処の誰かも分からないという訳か。はぁ……」

 

 精霊に近い力、先日の十八階層や今回の遠征で深層にて相手取った穢れた精霊の事もあって気になるリヴェリアであったが、情報は男の容姿だけ。

 

 どうするべきかと頭を悩ませるしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

「ほう。この場所でも商売をしているか。ドロップアイテムを多く手に入れて懐も暖かい。男やもめは侘しいものだし、相手をして貰おうか」

 

 その頃、その男は娼婦を朝から買っていた。探りを入れる目的だったらしく安かったので迷いはなかったらしい。

 

 

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