ダンジョンに儲けを求めて何が悪い!   作:ケツアゴ

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六十四話

 団長であるベルは私に憧れる少々純粋が過ぎる少年だ。あれでは悪しき者に利用されてしまうのではと心配になるが、同時にとある少年を思い出す。

 

 アルゴノゥト、愚物が私なら道化と扱われる英雄。私が助けた者の内の一人だ。

 

 先駆者として老年の者として若者を導くべきか、挫折も経験として見守るべきか。

 

 ……私には娘しか居なかったからな。若き部下は死なせてしまったし、息子を育てた経験も無い。

 

 ただ分かるのは……主神のアレは子離れ出来ない母親と依存気味な恋心が混ざり合った物だ。

 

 諫めるべきか? いや、見ていて微笑ましくもあるので放置で良いだろう。

 

 今の私はエトン。愚物の名を捨て一から英雄への道をやり直す事を決めた者だ。

 

 

 

「……ふぅ。まさか私が足腰立たなくなるまで抱かれるだなんてね。やるじゃないか、旦那。今後ともご贔屓に頼むよ」

 

「主神殿が潔癖な処女神で団長は純粋な少年だ。目を盗んでの娼館通いは骨が折れそうだが、何とか都合は付けよう」

 

 故に妻も娘達も先立っているし、この体だけは若い。なので女を抱いても許されるだろう。

 これが故郷なら権威を盾に迫っている事になるのだろうが、此処はオラリオだ。

 

 億単位生きる神でさえ女を求めるのだから問題は無いとアマゾネスの娼婦を宿に連れ込み貪る。

 

 少しだけ聖火の残火の力を借りて回復を早めたので久々故の堪え弱さを回数で補い、アイシャと名乗った女は少しばかりの情報も得られて満足そうだ。

 

「くくっ、そりゃ楽しみだ。なら、さっさと帰って顔を見せてやりな。幾ら強くても帰りが遅くなれば心配するもんだ」

 

「……そういう物か。心配されるなど久々なもので忘れていた」

 

 ならば汗を流した後で帰路に着くとしよう。流石に強い匂いを付けたまま帰るのは面倒な事になりそうだからな。

 

 

 

 

 

「エトン君! 無事で良かったよ!」

 

「……むっ。主神殿まで来るとは随分と無茶をする」

 

 予想外も予想外、長年世界を守って来た私が言えた義理では無いが無茶をする。

 

 余計な匂いを落として帰ろうと十七階層への坂を登ろうとした所でまさかの遭遇。

 これには流石に目を丸くした。

 

「ふっ。随分と心配を掛けたらしい。安心しろ。老骨に堪える程でも無い。迎え、感謝する」

 

 パーティに入れた鍛治師にタケミカヅチ・ファミリアの面々に酒場のエルフにゼウスの配下だというヘルメスとその眷属の女。

 此方は何か企みがあるタイプと見たが私の観察か?

 

 別にそれは構わない。神格者以外の神は一切信用するなとキリアから助言を受けている。

 奴曰く、大義の為に好き勝手するので商売相手としてしか信用していないそうだ。

 

 元より警戒対象、それがどう動こうか構わないと考えた時、坂の向こうから壁が崩れる音と共に咆哮が響き渡った。

 

「階層主とやらか。食後の運動に丁度良い」

 

「ちょっと待つんだ、エトン君!? 君、Lv.3! 階層主の相手を一人でするのはまだ早いから!?」

 

 ゴライアスは4程度……ああ、ランク以上の力を正体を知らない者の前で使うなという事か。

 

 ならば街の冒険者かロキ・ファミリアに任せるべきと結論付けて引き返そうとした私達に接近する風。

 

 この風は精霊、それも上位の……。

 

「……ベル?」

 

「アイズさん!?」

 

 現れたのは酷似した者達に出会った事がある金髪の少女、噂に聞く【剣姫】。キリアが古い知人と言っていた者だろうが……。

 

 

「アリアの娘に似ているな。もしや子孫か……?」

 

 穢れが始まった聖火に抗いつつも放浪している時に出会った人と、精霊の夫婦が娘と呼んでいた幼子に似ている。

 

 アルゴノゥトの仲間にも似ていたが、先ず最初に思い出した存在について呟けば聞こえたらしく表情が固まった。

 

「主神殿、どうやら神の言葉を借りるなら地雷を踏んだとやららしい。最悪、ベルと仲良くなった第三級冒険者達に同行を頼むので、先の帰還と誤魔化しを頼む」

 

「ちよっ!? エピメ……」

 

「あいるびーばっく? とやらだ」

 

 問題の少女が放心している間に私は炎を出す勢いで加速しながら森の中へと消えて行く。

 迷惑を掛けた事だし、先の階層で少し多めに稼いで行くべきか?

 

 

 

 

 エピメテウスの突然の逃亡。説明するには人が多いからとは理解するのだが、それでもベルは状況について行けない。

 

「あーもー! 重積から解放された反動だよな、あの自由人!」

 

「ちょっとエトンさん!? 何がどうして……」

 

「ねえ、ベル。あの人、どうして私のお母さんについて知っているの?」

 

「えっと、詳しくは知らないのですが、見た目より年上で世界中を放浪していたから?」

 

「そ、そうだぜ。えっと、【剣姫】君? ずっと前に会った事があるんじゃないかな?」

 

「ちょっと待ってくれ、アイズちゃん」

 

 動揺したまま詰め寄る合図の気迫に押されてベルとヘスティアがたじろぐ中、助け船とばかりに口を挟んだのはヘルメスだった。

 

 

「その様子だと訳有りだろ? そしてヘスティア達の様子から見てエトン君も訳有り。部外者が大勢居る所でする話じゃないし、俺達もダンジョンを抜けて疲れている。先に街の方で休ませてくれ」

 

「……はい。分かりました」

 

 ヘルメスの言葉を受け入れつつも納得も落ち着きもしていない様子で立ち去ろうとして、アイズは思い出した様に振り返る。

 

 

「もしかしてランクアップした? 四人でブラッドザウルスを倒してたし」

 

「はい! あの戦いで僕達四人ともランクアップしたんです。これでレフィーヤに少し追い付けたかなって……」

 

「おめでとう。レフィーヤもきっと驚いて喜ぶと思う」

 

「おーい、ベルくーん? 何をデレデレしてるんだい、まったく! あっ、此処迄来るのに疲れたなー。誰か背負ってくれないかなー」

 

 

 少しばかり騒がしくリヴィラの街へと一行は向かって行く。流石にリューだけではゴライアスに勝つのはリスクが大きい。

 

 ベルと仲良くなった冒険者も居る事だし、無事に帰れる時を見定めて地上を目指そうと話がついた。

 

 エピメテウスについては……無事だったので良いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……君の母親について知っていた? ベル・クラネルの仲間で精霊に近い力を扱うという男がかい?」

 

 

「うん……。私をアリアの娘の子孫かって言ってた」

 

「子孫、か。これはちょっと話を聞いておく必要があるかも知れないな。リヴェリア、何人か選んでリヴィアの街に行ってみようか」

 

 

 

 一方その頃……。

 

 

「妙な連中がいるな。目がいかん。死すら前提にした狂人の目だ」

 

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