ダンジョンに儲けを求めて何が悪い!   作:ケツアゴ

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第六十七話

「……大体扱いに慣れて来たな」

 

 大きく抉り取った壁から零れ落ちる希少な金属を直ぐに黄金へと変えながら精神回復薬(マジックポーション)を飲み干す。この程度で痛い出費だ。

 

 聖火を纏った黄金の威力は長文詠唱クラス、砕くでも吹き飛ばすでもなく、消し飛ばす。深層のモンスターすら灰さえも残らない。

 勿論一発辺りなので範囲は抑えめ、但し雨霰と降り注ぐので敵からすりゃ糞仕様。

 

 俺からしても速度が上がって操作が面倒だわ余波でフレンドリーファイアしちまう事を考えたら糞だ、糞。

 本来なら拳大の黄金一つ操る毎の消耗が百倍近いので広範囲に絶え間無くは無理、そもそも黄金の量が減り過ぎた。

 

「聖火金の扱いにも慣れたが……」

 

「【エル・ドラド】の強みは物量と変幻自在の形状による対応力だ。攻撃魔法としては数段上になったが、利便性は数段下がったな」

 

「テメーの最後の魔法よかマシだけれどな、ヘディン」

 

 フレイヤ様の命令で例の連中の手掛かりを探しに来たヘディンにも意見を貰ったが、スキルもあって妹と連携する時が一番強い俺としてはこの魔法の変化は望ましくない。

 

 黒いモンスターには効かないんだろう? 纏えば強化魔法にもなっちゃくれるものの、もう少しどうにかならないもんか。

 

「この絶望感よ。【神狩り】を相手にした時よかマシだけれどな。追い詰められて十億消費する切り札使ったら逆に追い込まれたんだぜ? ありゃ無いわ」

 

「アレについて語り合うのは不愉快で止めていたが、格上殺しのスキルを持っていたのだったな」

 

 話題にする事さえ虫唾が走るのか露骨に変な顰めっ面になるヘディンに笑いを堪えそうになるが、俺もガブリエルを思い出して笑う気が無くなった。

 

 ヘディンも戦った事あるんだったな。そりゃ不愉快にもなるわな。

 

 どうせぶち殺した相手だし、語るのも時間の無駄だ。金でも貰わなきゃやってられねえし、彼奴をぶっ殺した後も戦いも復興作業も続いたから死人の能力への調査もおざなりに。

 

 まあ、死者が神の管轄から離れて天界から帰省でもしなきゃ意味無え話……うん? 

 

「仮に彼奴が蘇った場合、ぶっ殺した俺と確殺の為に頭砕いたお前をマブダチ認定してそうだよな」

 

「……恐ろしい事を言うな」

 

 普通は恨んで復讐対象なんだろうが、あのイカれ女は普通を理解した上で自分の欲求に正直に生きている。

 

 相手を殺すことの何が楽しいのか、へらへら笑いながら獲物の後処理だの復讐者の始末だの面倒が増えるのに俺には理解できずに聞けば、一瞬、きょとんとした後で平然と返答した。

 

 どんな遊びが好きかなんて人それぞれでしょ? アタシちゃんは世界中の誰もが好きで、そんな好きな相手と好きな遊びをしたいだけ。

 

 殺しは遊び、だから殺されても遊びの一環。遊びに負けて悔しさはあっても恨みは無い。むしろ楽しく遊んだ相手として認識される。

 

「価値観は人それぞれにもほどがあるだろう。え? どうしたよ?」

 

 死んだ奴が遊びに来るとか神が送還覚悟で力使わない限り不可能な事態を思い浮かべて辟易するとか馬鹿馬鹿しくって疲れてるのが丸分かりの俺だったが、ヘディンはヘディンで顔色が急に悪くなってる。

 

 変なもんでも拾い食いしたか? L v.7になって耐異常も上がってるんだろうがダンジョンだぞ? 好奇心で未知の物を食うなよ。

 

「恐ろしいと口にした瞬間、何故か頭だけオッタルのアマゾネスという言葉が浮かんだ瞬間に全身が震え出しただけだ。問題は無い」

 

「問題しかねえよ。頭オッタルかよ、別の意味で」

 

 頭だけオッタルのアマゾネスかぁ。……オレハナニモシラナイ。魔法とか貸してない。

 

「一旦休めって。疲れてるんだよ。……頭脳担当がいなくなってホームの書類仕事が溜まってるだろうし」

 

「胃がキリキリ痛む……」

 

 大丈夫? 回復要る?(有料) ついでに治す所有るか?(追加オプション毎に値段追加)

 

「まあ、世話になってるから一旦十八階層まで物資補給ついでの休憩に行こうぜ」

 

「ああ、頼む。手間を掛けるな」

 

 普段の頭脳キャラ気取りの態度さえも消え去る憔悴っぷりに流石の俺も心配する。

 この恩はその内に回収するとして、俺も戻れって直感が騒いでいるからな。

 

 

「……素直に謝るヘディンがキモい。リリルカに言っても絶対信じねぇだろ」

 

「魔法を放つ程度なら可能だが?」

 

 怖い怖い。じゃあ、さっさと行くとするか。【マネーイズパワー】を発動、転移を選択して十八階層への扉を開けば……死んだ筈の女がポンコツエルフの腹に短剣を突き刺そうとする寸前だった。

 

「おりょ?」

 

 体に力が入らない様子で膝を付くリューの、エルフにしちゃ体のラインを晒した服の布地を貫く瞬間、横に現れた俺の姿にガブリエルの視線が注がれて動きが止まる。

 

 その僅かな時間に脱力感が抜けたのかバッと立ち上がったリューの掌底がガブリエルの顎を打ち抜き、続いて腹に蹴りを叩き込もうとするも仰け反った体勢でガブリエルが投げた短剣が足に突き刺さった。

 

 痛みによって生じた僅かな硬直、それはガブリエルがバックステップで距離を取るには十分だった。

 

 同時にヘディンが詠唱を終わらせる時間も有り余っていたんだがな。

 

 本来は遠距離から数の暴力で広範囲の敵を殲滅する雷の矢。弧を描きながら降り注がせる其れを正面に向けて、更には密集させて放つ。

 

 束ねられ巨大化したその様は矢ではなく攻城兵器の類い。たった一人を確実に消し去る為、ランクアップによりオラリオおいて現在最強の魔術師となったヘディンの動きはもう人には止められない。

 

 

 

 

「待てくれ! 其奴は殺したら不味い!」

 

 そう、人じゃなく神ならば止められた。この場でヘディンのみに集中させて放たれるヘルメスの神威にヘディンの魔法のコントロールが乱れ、ガブリエルを捉えるも直撃ではない。

 

 右腕が炭化して煙を上げ、右半身に重篤な火傷を負わせるもガブリエルは生きていて、あまつさえニチャニチャと気持ちの悪い笑みを浮かべていさえいた。

 

「おおっと! 危なかったぜぃ! 楽しく遊びたい友達が二人も来てくれたのに終わっちまう所だったよ、ギリギリセーフ! ヘルメスちゃん様は命の恩神、遊びの時間の大恩神」

 

「誰が友達だ、誰が。女神への侮辱の次に腹立たしい」

 

「大変だな。あんなのに友達認定されるとか。でも仕方が無いから相手してやれよ、友達として」

 

「二人と言っただろう。貴様も彼奴にとっては友人だ。予想が的中して良かったな。最悪だ」

 

 心底不愉快そうなヘディンは全部押し付けようとした俺の脛を蹴り続けながらもガブリエルへの警戒は解く気は無いらしい。

 

 

 

 

 

 

「え? 良いじゃん、どうせキリアちゃんもヘディンちゃんも友達凄く少ないでしょう? でも大丈夫。アタシちゃんを殺したり死体をグチャグチャにした時点でアタシちゃん達は親友だぜ! やぁーったね!」

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