「そうだな。一人辺りこれだけ支払ってくれりゃ良いよ」
そう言いながら広げた右手を差し出せば一行の顔が強張る。あれ? 支払えない感じ?
だったら先に行きたいんだが。
その後? 俺と遭遇しなかったらサンドワームに追われたままだったし、礼を言いながら見送るのが礼儀じゃね? 一ヴァリスにもならない感謝とか要らねえけれど。
多少の時間節約の為に急かしても損だから顔にも出さないが、料金を提示された向こう側は面食らった様子で相談を始めた。
「五千……」
「何とか手持ちで足りますが、その場合目的地迄の路銀が足りませんぞ……」
こりゃ這々の体で逃げ出したって所か。アリィは多少の武装はしているが、それでも事前準備してない感じで、急襲が上手く行ったって所だな。
どれだけの地位かは知らねえが、これからどうする気なのかは気にしない。問題なのは俺に金を幾ら落としてくれるかだ。
この先の街が目的地じゃねえんだったら支払い渋られそうだと交渉は時間の無駄かと思えて来た。
しゃーない。お金を出したくなる様にしてやるか。
「此処で二つ程セールスポイントを教えよう。リオードまで俺の魔法で向かえば数時間で到着だ。いや、目立つのが嫌なら街の近くで降ろした方が良いか? そしてもう一つ……俺は第一級冒険者、つまりL v.五だ」
「なっ!?」
力をひけらかすのは好きじゃねえんだが、金を引き出すのに必要なら仕方が無いな。それにしても少し残念。
金が足りてねぇよ。
「第一級……確かにそれなら先程の魔法も掛かる時間も納得が……」
「二万五千ヴァリスは大きいですが、使命を考えれば安いかと」
「そう、だな」
最弱種族だから侮っていたんだろうが、俺のレベルを聞かされた一行の表情に僅かだか希望の光が灯る。
そりゃオラリオ内部でさえ下級が大半、外なら尚更って中で五だ。
見た限りじゃ敗走して何処かで味方と合流の予定なんだろう。少なくともアリィは五体無事で、更には一刻でも早く向かいたい、と。
……もう少し吹っかけときゃ良かったぜ。
「何か勘違いしているが桁が違うぞ? ちゃんと落ち着いて話を聞け」
「そ、そうか。すまない、勘違いでビックリした。一人につき五百の間違いだった……」
「いや、五万」
つまりは合計二十五万、これには一行再びの絶句。でも、受けるしか無いよな? 俺と会わなかったのなら仕方無いから自力で向かおうってなっていただろうが、出会ってしまった。
盗賊やモンスターにも少ない荷物での強行軍でも、それこそ敵からの追っ手の危険を退けられて徒歩よりも遥かに速く到着する。
支払うしかないよなぁ? 俺が物での支払いの場合は釣りが出ないって伝えた時、アリィは服の下の腰の辺りに手を置いた。まるで価値の有る大切な品を隠しているって自白するみたいにな。
あー、良いカモだよ。ちょっと甘いんじゃねーの? だから俺みたいな悪いお兄さんにつけ込まれるんだ。
アリィが差し出そうとした物が何か察したのか配下達が慌てる中、一人が俺を見てハッとなるひ表情を見せた。
「……あっ! 思い出したぞ。第一級冒険者で金に執着した
「そうそう。俺、お金大好き。でも金が絡んだ契約はちゃーんと守るから安心しな。因みに出世払いとかの確約されない後払いは大嫌いだ」
今更金に汚いとか言われてもどうとも思わない。思ったのは今の状況で俺を怒らせてどうするんだって発言をした男からして追い詰められているなって事だ。
それと二つ名って俺達がセンスが良いって思う奴の多くが神にとって恥ずかしい物らしい。どうりで弱小ファミリアには随分と派手な二つ名が多いなって思ってたんだ。
「これ…を……」
取り出す前に動きを止め、小声で誰かへの謝罪を口にしながらアリィが差し出したのは短剣。それも随分と高く売れそうな奴だった。
「短剣としちゃあオラリオの物に劣るが装飾は悪くねぇ。運賃には十分だなじゃあ、遠慮無く貰っとくぜ」
受け取った短剣を鞘から抜いて値踏みする。柄と鞘に宝石を嵌め込んだ金装飾を施した短剣。
紋章が刻まれている辺り、家宝なのか勲章と同じ意味を持つ物なのか。
その辺が分かれば売値をつり上げる材料になるんだが、生憎向こうは正体を隠したいらしく、俺も深入りはしない。
聞いてないから確証は無かった、揉めた時に神にする言い訳に使えるからな。
短剣の予想価格は二百万後半、上手く売れば三百以上。深層への往復費に使って、リリルカにドレスと髪飾りでも買ってやって、と金の使い道は一瞬で考え付き、元持ち主のアリィは心苦しそうだ。
個人よりも大きい括りで大切にしていたものだったらしいのに自分の安全の為に手放したんだ。使命の為って免罪符があっても心苦しいだろうさ。
「じゃあ、戦車を拡張して全員乗れる形にして、ソファーはお客様の中で一番偉いアリィ様がどうぞ。金に汚い下郎が座ってたもんだが気にしないでくれ。それと乗車中はこれをレンタルしよう」
代金を貰ったなら俺は役目を全力でこなすしかない。互いに了承して行った金が絡む契約は絶対だからな。
材料の黄金を追加で出して戦車を拡張、ついでに冷気を出す首飾りを投げ渡す。
緊急時の脱出経路は
「……オラリオの冒険者は君みたいなのが多いのか?」
黄金の戦車に乗って砂漠を進む。あまり高く飛んだら目立ち過ぎるから1メートル程度を飛び、それでも全く揺れないので乗り心地は悪くない、寧ろ良い。
空を掛ける戦車に動揺していたアリィだが、少し慣れた頃にそんな事を聞いて来た。失敬だな、他の真っ当な冒険者に。
「下級冒険者はな。特にソーマ・ファミリアは殆どが酒と金しか頭に無い。Lv4以上は基本的には真っ当。まあ、頭のネジが外れてるのは居るが有名なのは善人だな」
女神が関わった時のフレイヤ・ファミリアは別。俺、オッタルとガリバー兄弟とヘディンとは少しばかり交流があるんだが、マジでドン引き。
金が絡まない時の俺の方がマトモな気がして来た。
まあ、俺って金と妹が絡まないなら殆ど動かないから比較が難しいけれど。
お喋りの相手は料金の範囲外なので話し掛けられられたら返す程度で俺から話題を出す事もなく、遠目に街が見えた所でお別れだ。
「此処まで連れて来てくれて感謝する。お前と出会わなければ無事に到着出来たか分からなかった。それで恥の上塗りになるのだが……相場の倍額で買い戻すと約束するから短剣を売るのは待って欲しい。それは私の一族が戦場に出る際に身に付ける物なんだ」
「まあ、少なくても戦争がどうなるか分かるまでは保留だな」
どっちが勝つにしろ、その際に宣伝文句を決めるからな。俺の言葉にアリィは安堵したのか握手を求めて手を差し出して来た。
「ただ売るのは俺だから値段は俺が決めるぞ。倍額じゃ足りない」
「本当に強欲だなっ!?」