泡沫浄瑠璃:秤金次の同級生が呪われて死ぬまでの話   作:天狗猿

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夏油ゥ…なにそれ
僕の大切な佐藤さんにセクハラをする変な前髪の男を見ると反吐が出るんですよ


拾伍:京都百鬼夜行 -泡沫-(二〇一七年、十二月)

 

 

 

深い、深い暗闇の底。

 

白波瑠璃の魂は、冷たい水槽に沈む石のように、静かに、しかし確かな質量を持って形を結んだ。

 

母から遺された「自由」という名の呪縛。

 

何者にもなれない己の無力さ。

 

唯一の理解者であり、愛する者を泥に汚される絶望。

それらすべてを「何もできない自己への圧倒的な憎悪」という猛毒で塗り潰した瞬間。

彼女の脳内に刻まれた呪術の回路(ブラックボックス)が、重々しい音を立てて再起動する。

  

  パチィンッ

 

現実世界、伏見稲荷の冷え切った石畳の上で、微かな、しかしひどく硬質な破裂音が響いた。

 

「……ん〜?」

 

血に濡れた宮國蓮の体を愛おしげに組み伏せ、その口内に自身の(体液)を流し込もうとしていた汨羅愛裏が、奇妙な予感に顔を上げた。

 

視線の先。

両腕を根元からもぎ取られ、ただ血液を撒き散らして絶命を待つ肉塊でしかなかったはずの白波瑠璃が、幽鬼のような静けさで立ち上がっていた。

 

「わぁお!流石、瑠璃ちゃん!本当に頑張り屋さんなんだね!でもね、腕がなくて大丈夫?ちゃんと私とイチャラブでき…る?」

 

愛裏は、壊れた玩具を見るような、無邪気で残酷な慈愛を湛えて嘲笑った。

だが、その言葉は瑠璃の肩から噴き出した異様な熱気によって遮られた。

 

 シュゥゥゥッ……

 

欠損した両肩の断面から、沸点を優に超えた蒸気が噴き出す。

呪力とは「負のエネルギー」である。

負と負を掛け合わせることで、正のエネルギーへと昇華させる極めて高度な呪力操作。

 

『反転術式』。

 

それは、天賦の才を持つか、あるいは死の淵で自己を完全に解体し、呪いの核心と心中した者だけが辿り着く神の領域。

自己肯定ではなく、究極の「自己否定」。

己の魂を人間の範疇から切り離し、呪いへとベットした瑠璃は、脳を焼き切るような知覚の果てにそれを強引にこじ開けた。

 

(思い出せ……秤さんの、あのデタラメな熱を……家入先生の、細胞を無茶苦茶に編み直すような感覚を…ッ!)

 

高専での日々。死線に立つ彼らの背中越しに見てきた、生命の再構築。

感覚が、細胞が、それを完璧に模倣(トレース)する。

凄まじい肉芽の増殖音。

骨が軋み、血管がのたうち、神経が編み上げられていく。

数秒。

そこには、赤子のようになめらかで、しかし凍てつくような殺意を纏った白く細い両腕が、完全に再生していた。

 

「反転、術式……? わぁっ、すごぉい!瑠璃ちゃん、清楚な顔してそんな隠し玉持ってたの!?マジで下品だね!!」

 

愛裏の目が、狂喜と驚愕に細められる。

 

「……退いて」

 

瑠璃の声には、もはや震えも迷いもなかった。

 

「宮國さんから……その汚い手を、離して…私には、これくらいしかできない…けど……邪魔するなら…」

 

その瞳は、冬の夜空のように澄み渡り、同時に、すべてを拒絶するような自己嫌悪が深く沈殿している。

 

 

「滅茶苦茶にぶっ壊してやる──ッ!!」

 

 

羅刹が牙を剥く。

 

「ふふっ…!お手々生えただけでもう元気になっちゃった?そういうところおちゃめで可愛いよ!!」

 

愛裏が楽しげに指を鳴らす。

瑠璃を拘束していた無数の人骸たちが、飢えた獣の群れとなって一斉に彼女へと跳躍した。

この伏見稲荷の参道で対峙する二人の少女は、呪術師として致命的なまでに対極に位置していた。

汨羅愛裏は、有象無象の死体を操り、他者の尊厳を泥で侵し、世界を壊しながら「自己の狂気的な愛」を満たそうとする捕食者。

対する白波瑠璃は、空っぽな自分を埋めてくれたたった一人の存在を守るため、自らの肉体と精神を壊しながら「愛」に応えようとする自己犠牲の体現者。

「代替可能な群れ」を盾にする者と、「唯一無二」のために牙を剥く者。

 

相反する呪いが、ついに激突する。

四方八方、退路はない。

物理的な質量による圧殺。

だが、瑠璃は印すら結ばない。

反転術式による「自爆覚悟の特攻」が可能になった彼女に、防御という概念は不要だった。

ただ、再生した両足の裏に、自身の呪力特性である「泡」を極限まで圧縮し、配置した。

 

炸裂する空洞現象(キャビテーション)

 

「───『柘榴(ざくろ)・腿』」

 

 ズガガンッッ!!

 

石畳が爆散し、稲荷山の斜面に巨大なクレーターが穿たれる。

摩擦係数を完全に殺し、爆発的な負圧による推進力を得た瑠璃の体は、人骸の包囲網が閉じるよりも速く、文字通り「不可視の弾丸」となって射出された。

 

「何っ──!?」

 

愛裏が反応する暇もなかった。

突風が頬を切り裂いたかと思うと、瑠璃はすでに愛裏の眼前、宮國に覆いかぶさる彼女の顔面めがけて肉薄していた。

 

「───っ!!」

 

瑠璃は、再生したばかりの右脚を、一切の躊躇なく振り抜いた。

標的は愛裏の腹部。

 

「あが……っ!?」

 

愛裏の絶叫。

だが、それはただの重い蹴りではない。

瑠璃は、蹴りのインパクトの瞬間に生じた微小な空間に、呪力の泡をミリ単位で流し込み、内側から強制的に「破裂」させたのだ。

内臓が弾け、あばらが軋む不快な音。

そして、その零距離での呪力衝突が、因果の連鎖を呼び込む。

『黒閃』。

打撃との誤差0.000001秒以内に呪力が衝突した瞬間に生じる、空間の歪み。

漆黒の稲妻が爆ぜ、通常の2.5乗に跳ね上がった威力が、愛裏の腹部から背中にかけてを突き抜け、彼女の体を弾き飛ばした。

 

「おぎゅぅッ……!!」

 

愛裏の体は、数十メートルも後方へと吹き飛び、伏見稲荷の本殿の朱色の柱に激突した。

ドスン、と重い音を立てて彼女の体が崩れ落ちる。

 

「ハァッ……ハァッ……」

 

瑠璃は、蹴りの反動で右脚の骨が砕けていたが、即座に反転術式を回して強引に骨を繋ぎ合わせ、立ち上がる土煙の向こうへとゆっくり歩み寄った。

完璧な一撃。並の呪詛師であれば、内臓破裂で即死している威力だ。

だが。

 

「いぃ……痛いぃ…痛いよぉ…でも、激しい(こういう)のも大好きぃっ!!瑠璃ちゃぁんっ!あなたの本気で私の体もうベチョベチョだよぉ!もっと激しいことヤろっ?!」

 

土煙が晴れる。

愛裏は、血を吐きながらも、本殿の柱を背にして立ち上がった。

彼女の背後には、クッション代わりに使われ、原型を留めないほどに潰れた数体の呪霊の残骸が散らばっていた。

さらに、瑠璃の『柘榴』による高速移動の代償で足が砕けていたコンマ数秒のラグが、愛裏に体勢を立て直す隙を与えていたのだ。

 

「すっごいねぇ……反転術式かぁ…これじゃあ、ちょっとやそっとじゃオとせないね…」

 

愛裏は、腹部の致命傷を自身の泥で強引に塞ぎ、赤血操術にも似た止血と肉体補強で立ち上がる。その顔には、苦痛よりも深い、嗜虐的な悦楽が浮かんでいた。

 

(……どれだけ再生力があろうと、人の形をしている時点で弱点はある。裂傷や切傷みたいな直接的外傷をすぐに治癒されちゃうなら…)

 

愛裏の脳内で、狂気と冷徹な計算が交錯する。

 

(脳震盪や神経系へのダメージ、窒息みたいな……外傷を伴わない攻撃で、内側(なかみ)から壊すしかないね…ッ!)

 

愛裏は、自身の体液である「泥」を瑠璃に直接取り込ませ、その精神を汚染し、行動不能にすることを攻略の糸口として定めた。

 

「もっといやらしいことしよっか!!こっから面白くなるよ!!」

 

愛裏の呼びかけに応じ、周囲の闇から、夏油に貸与された無数の呪霊たちが湧き出し、瑠璃を取り囲む。

 

「……邪魔」

 

瑠璃は、再び足元に『柘榴』を展開し、物理法則を無視したジグザグの軌道で呪霊の群れの中を駆け抜けた。

すれ違いざま、手刀や蹴りに乗せた泡の破砕で、次々と呪霊の頭部を内側から爆破していく。

血と肉片が舞う中、瑠璃の視界の端に、呪霊の影に隠れて接近してくる愛裏の姿を捉えた。

 

(……来たッ!)

 

瑠璃は即座に身を沈め、愛裏の頭部を狙って鋭い回し蹴りを放つ。

 

「沈めッ!!」

 

メシャッ、と、蹴りが頭蓋を粉砕する確かな手応え。

だが、瑠璃の目に映ったのは、愛裏の顔面がドロドロと崩れ落ちる光景だった。

 

「擬態か…!」

 

それは愛裏本人ではない。

『人骸』の顔面を、愛裏自身の姿に泥で精巧に「擬態」させたデコイだった。

 

「残念、二回目だよいい加減学習しなよ!でも、ハメられた姿も宇宙一かわいいねッ!」

 

瑠璃が気付いた時には、周囲の景色が異様なものへと変貌していた。

呪霊の群れに混じり、いつの間にか、瑠璃の周囲を囲む人躯たちの顔面が、すべて「愛裏と同じ顔」に変化していたのだ。

無数の「愛裏」が、一斉に不気味な笑い声を上げながら瑠璃に襲い掛かる。

 

「……ッ!」

 

瑠璃は舌打ちし、咄嗟に優先順位を切り替えた。

単純な腕力では呪霊より劣るが、泥による状態異常や拘束力を持つ人骸を先に潰さなければ、機動力を削がれる。

瑠璃は、群がる「愛裏の顔をした人骸」の関節や頭部を、泡の破砕で次々と的確に破壊していく。

 

(……人骸の動きが、単調すぎる。これは……誘導……?)

 

瑠璃の思考が、微かな違和感に警鐘を鳴らした。

だが、その思考のタイムラグこそが、愛裏の待っていた「瞬間」だった。

 

 ズブブッ

 

背後から、鈍い痛みが瑠璃の腹部を貫いた。

見下ろすと、血に濡れた刀の切っ先が、自身の腹から突き出している。

 

「……っ!?」

 

振り返ると、そこには、無表情に刀を握りしめた「一般人の信者」が立っていた。

呪霊や人骸の濃密な呪力に紛れ、呪力をほとんど持たない一般人の存在感知が、一瞬だけ遅れたのだ。

 

「あはァッ!痛いの我慢しなくてもいいよォっ!!その可愛い()もっとよく見せて!!見せろ!!!」

 

その信者の背後。

彼を操っていた人間大の呪霊の「口の中」から、本物の愛裏が、蛇のように這い出してきた。

彼女の手には、どす黒く脈打つ「泥」が握られている。

 

「瑠璃ちゃあぁんんんッ!!!いただきまぁぁすッッ!!!!」

 

愛裏は、刀が突き刺さった瑠璃の腹部の傷口に手を伸ばし、その泥を直接、瑠璃の体内へと流し込もうとした。

反転術式では防げない、精神と脳髄を直接犯す猛毒。

回避は不可能。防げば泥が皮膚から侵食する。

その絶体絶命の瞬間。 

 

「……本当は、こんなこと、したくない…ッ!」

 

瑠璃は、狂信的な笑みを浮かべる愛裏の顔を見つめ返し、極めて冷静に、自身の腹部に刺さった刀の刃を、両手でしっかりと握りしめた。

 

「え?」

 

愛裏が間抜けな声を漏らす。

愛裏の泥が傷口から肉体を侵食する直前。

瑠璃は、自身の両手に『柘榴』の出力を最大まで込め、握りしめた刀身ごと、自身の腹部を──真横に、力任せに引き裂いた。

 

「んなァ……ッ!?」

 

 ブチュッブチブチィッ

 

筋肉の繊維が千切れ、腸が溢れ落ちる凄惨な音が、千本鳥居の静寂を暴力的に引き裂いた。

 

彼女の手から染み込んだ致死の「泥」は、瑠璃の傷口から外に漏れ出し虚空でウネウネと掻いていた。

なぜなら、泥を流し込むはずだった標的の上半身が、物理的にそこから「消滅」したからだ。

重力に従って崩れ落ちる下半身。

そして、鮮血の尾を引きながら、後方の宙へと舞い上がる上半身。

 

「はぁぁッ!? 嘘でしょ、正気(マジ)ッ!?」

 

愛裏はドン引きしたように叫んだ。

いくら反転術式を会得したとはいえ、自らの肉体を真っ二つにするなど、生物としての生存本能が許容するはずのない「狂行」である。

 

呪力は(丹田)から湧き、反転術式は()で回す。

呪術界におけるこの絶対的なセオリーを、瑠璃は高専での凄惨な任務や、同級生たちの死闘を間近で観察することで、感覚的に理解していた。

愛裏の泥は、皮膚や傷口から侵入し、脳を汚染する。

ならば、泥が侵入した部位、あるいは侵入しようとする経路ごと「物理的に切り捨てる」しかない。

頭部さえ無事であれば、莫大な呪力を消費してでも、極論、失った肉体は一から編み直すことができる。

 

「……ッ、痛、いぃぃ……けどぉぉ……ッ!」

 

宙を舞う瑠璃の口から、大量の血が吐き出される。

痛覚が精神を焼き切る直前、彼女は脳髄に全呪力を集中させ、反転術式をフル稼働させて強引に意識を繋ぎ止めた。

下半身を失い、呪力のタンクである丹田を失った今、彼女に残された時間は数秒にも満たない。残存する呪力と、反転術式によって生み出された「正のエネルギー」のすべてを、彼女は両腕へと注ぎ込んだ。

 

「あははッ!すごい、すごいよ瑠璃ちゃんッ!でもね、(シモ)なしじゃ何処にも逃げられないよッ!」

 

愛裏は一瞬の驚愕から立ち直り、再び狂喜の笑みを浮かべた。

彼女は周囲の「愛裏の顔をした人骸」たちを盾として集結させると同時に、自身の体液を触媒とした『堕靡泥外法(だびでげほう)』の出力を限界まで引き上げた。

伏見稲荷の石畳を突き破り、地中から無尽蔵に湧き出す漆黒の泥濘。

それは、巨大な壁となり、津波となって、宙で無防備な瑠璃の上半身を飲み込もうとそそり立つ。

 

「世界中の人間がさぁ、私の泥で満たされて、全員お友達になってくれれば、みんな最高に幸せだと思わない!? だから私は、全部無茶苦茶に直して、一つに繋げてあげたいの!瑠璃ちゃんも誰かと()し合うために生まれてくれたんでしょッ?!」

 

それは、他者の尊厳を奪い、自己の狂気という水槽に沈めることでしか「愛」を証明できない、壊れた人間のイデオロギー。

 

「生まれてきてくれてありがとう!瑠璃ちゃん!最後まで、もっと、もぉっ〜と気持ちよくなろうッ!!!」

 

泥の大津波が、空を覆い隠す。

その圧倒的な質量と、ドロドロとした悪意の塊を前にして。

宙を舞う瑠璃は、ただ静かに息を吐いた。

 

「……もういい、これ以上聞きたくない。脳が腐る」

 

 

瑠璃の瞳に、逃げ場のない怒りと、底知れぬ自己嫌悪が渦を巻く。

愛裏は、世界を壊し、泥で塗り潰すことで自分という器を満たそうとする。

対して瑠璃は──自分自身を壊し、切り離すことでしか、愛する者を守れない。

二人は決して交わることのない平行線であり、互いに互いを映し出しながら、決定的に反転した合わせ鏡の虚像だった。

 

「私は……空っぽで…何もない…」

 

瑠璃は、再生したばかりの白磁のような両腕を前へと突き出した。

その周囲に、幾千、幾万もの微細な呪力の泡が湧き上がる。

それは美しくも、触れれば存在そのものを削り取られる、致死の星雲。

 

「だから…熱も…意思も…呪いも…すべて呑み込んで─」

 

生きて逝く。

 

瑠璃は、愛裏を見据えたまま、唇を開いた。

それは術師同士の戦いにおける定石にして、自らに課す「縛り」。

 

術式の開示による、呪力出力の底上げ。

 

 

「私の術式は………『泡沫塞釈(ほうまつさいしゃく)』……泡の本質は『剥離』……」

 

淡々とした、しかし凍てつくような声が、轟音の戦場によく通る。

 

白波瑠璃の特異な呪力特性「泡」は、本来、事象を「剥離する」ためのものである。

順転された術式は、対象の運動エネルギー、熱量、呪力の指向性などを泡という微小な境界の中に「隔離」し、保存する。

それは、世界との間に線を引きたがる彼女の「臆病さ」と、すべてを無に帰したいという「破壊衝動」が融合した矛盾の極致。

 

「そして……」

 

瑠璃の腕の骨がミシミシと軋み、再生したばかりの筋肉の繊維が悲鳴を上げる。

肉体の限界を超えた呪力出力が、両腕を内側から破壊し、皮膚の裂け目から青白い火花のような呪力が漏れ出す。

自分自身をチップとしてテーブルに叩きつける、魂の一撃。

 

「この泡に反転した正の呪力を無理矢理流し込んで……内側から炸裂させると……何が起きるか、分かる?」

 

瑠璃は、迫りくる泥の津波に向かって、血に塗れた掌をかざした。

 

「──『相転移』だよ」

 

その言葉が落ちた瞬間。

世界が、彩度を失った。

 

「これ以上は、誰も何も……奪わせない」

 

瑠璃の呪力が臨界点を超え、大気が悲鳴を上げる。

 

「はじけとべ、泥女」

 

「出力最大──『泡沫塞釈』」

 

瑠璃の掌から解き放たれたのは、高密度に圧縮された「完全なる真空」の泡だった。

極限まで圧縮された無数の泡が、巨大な泥の津波に触れた瞬間──。

 

 

  ズズズズズズアアアアアア……ッ!!!

 

 

すべての音が、文字通り「虚無」へと隔離され、消失した。

圧倒的な質量と呪力を誇っていた泥の壁が、空間ごと不可視の(あぎと)に食い破られたように、次々と「無いこと」にされていく。

 

「あ、え──?」

 

愛裏の顔から、狂気の笑みが抜け落ちた。

絶対の自信を持っていた泥の防御と攻撃が、一瞬にして物理法則の外側へと追放されたのだ。

 

隔離によって生じた擬似的な真空状態に、反転術式由来の正の呪力が光の奔流となって流れ込む。

 

泡の崩壊。

 

それは微小な空間における相転移の連鎖である。

偽の真空が真の真空へと転移する際に生じる莫大なエネルギー差は、周囲の空気、物質、そして呪力さえも燃料として巻き込み、連鎖的な爆縮と膨張を引き起こす。

この現象は、現実空間においては、呪力と同じ色の青い火花を撒き散らす、極小のビッグバンの如き爆発として観測される。

 

世界が白く塗りつぶされた。

 

隔離された莫大なエネルギーが、元の数百倍の威力となって解放されたのだ。

京都の夜空を、真昼の太陽のように照らし出す、瑠璃色の大爆発。

空間の負圧が空間そのものを削り取り、愛裏の誇る泥の津波が、無数の人骸が、そして彼女の術式が、その存在ごと根こそぎ破裂し、微粒子レベルへと還元されていく。

 

「あ──」

 

光の奔流の中で、愛裏は自らの敗北を悟った。

迫りくる、破滅的な純白の正のエネルギー。

自身の肉体が、細胞レベルで崩壊し、蒸発していく感覚。

痛みはとうに通り越し、脳髄が焼き切れるほどの刺激が全身を駆け巡る。

 

だが、その最期の瞬間にあっても、彼女の顔に「恐怖」は浮かばなかった。

彼女の瞳には、自らの肉体を胴体から切り離し、反動でボロボロに崩壊させながらも、圧倒的な力で自分を蹂躙し、壊してくれた瑠璃の姿が、どうしようもなく美しく、そして愛おしく映っていた。

 

(やっぱ……愛しいものは、無性に傷つけたくなっちゃうけど……)

 

愛裏は、肉体が炭化し崩れゆく光の中で、とろけるような恍惚の笑みを浮かべた。

 

(……メチャクチャに傷つけられるのも……最ッ高に幸せ……ッ!)

 

鼓膜はおろか、三半規管までをも破壊する轟音と共に、伏見稲荷の山腹に、隕石が衝突したかのような巨大な爆発が巻き起こった。

純白の光芒と瑠璃色の火花が夜空を舐め尽くし、絶対的な真空の負圧が周囲のあらゆる事象を削り取る。

千本鳥居の朱色も、鬱蒼と茂る神域の木々も、そして無数の呪霊と人骸たちも、すべてが圧倒的な「虚無」へと飲み込まれ、消滅していった。

やがて光が収束し、もうもうと立ち込める土煙が夜風に流されていく。

そこには、なだらかな山肌をえぐり取り、すり鉢状に穿たれた巨大なクレーターだけが残されていた。

 

 ズズッ……ズチャッ……

 

焦げた肉の匂いと泥の悪臭が漂うクレーターの底に、不気味な水音が響く。

上半身だけになった瑠璃が、失われた腰から下を、反転術式によって強制的に編み上げながら歩みを進めていた。

莫大な呪力消費と、脳を焼き切るような演算の代償。

彼女の目や鼻からは一筋の血が流れ落ちている。

だが、骨格が形成され、筋肉が絡み合い、無垢な白い皮膚が覆っていくその再生の過程は、神の御業というよりは、呪いに魅入られた修羅の執念そのものだった。

完全に再生した両足が、ジャリッ、と石畳の残骸を踏み砕く。

 

瑠璃が歩みを進める先──クレーターの中心には、汨羅愛裏が仰向けに倒れていた。

 

愛裏の肉体は、自慢の泥の装甲ごと術式の直撃を受け、四肢の大半が炭化して欠損し、腹部からは内臓がこぼれ落ちている。もはや生物として機能していない、ただのスクラップのような状態だ。

瑠璃がそんな彼女の姿を一瞥した直後。

 

「ガ、フッ……!」

 

瑠璃の口から、どす黒い血が大量に吐き出した。

術式の反動と、自らの体を切断・再生させるという常軌を逸した反転術式の過剰使用。

その代償が一気に押し寄せ、全身の毛細血管から蒸気と血が噴き出す。

 

膝の力が抜け、崩れ落ちそうになるのを、瑠璃は必死に堪えた。

 

よろめく足取りで、瑠璃は泥と血に塗れた石畳を歩く。

 

再生したはずの両足は、ひどく熱く、そして鉛のように重い。

 

視界は暗く明滅し、意識は今にも途切れそうだった。

 

歩を進める度に石畳に赤い足跡が一つ、また一つと刻まれていく。

 

しかし、向かう先は、一つしかない。

 

小さな背中から伸びる影が、どこまでも深く、長く、石畳の上に伸びていた。

 

 

 

 

 

 

 

新宿と京都を舞台に繰り広げられた百鬼夜行は、夏油一派の敗走という形で終息しようとしていた。

だが、その騒乱の中心地であった東京都立呪術高等専門学校のグラウンドには、祭りの後のような静寂が満ちている。

瓦礫と化した校舎の影で、一人の男が壁にもたれかかっていた。

 

夏油傑。

 

数千の呪霊を束ね、呪術界転覆を目論んだ最悪の呪詛師。

その右腕は肩から先が消し飛び、袈裟は赤黒い血に染まっている。

 

乙骨憂太と特級過呪怨霊・祈本里香による「純愛」の一撃。

呪霊操術の極ノ番『うずまき』を以てしても相殺しきれなかったその余波は、彼の五体を致命的に破壊していた。

 

「……ハァ、ハァ……」

 

息をするたびに、肺の中で鉄錆の味がする。

視界が明滅し、指先の感覚が遠のいていく。

だが、不思議と恐怖はなかった。

あるのは、祭りの終わり特有の気だるさと、どこか晴れやかな諦念だけだ。

 

「……里香さえあれば、せこせこ呪いを集める必要もない……次だ…!次こそ、手に入れる…!」

 

強がりを吐き捨て、這いずってでも前へ進もうとする。

その視線の先に、漆黒の影が落ちた。

包帯で目を覆った長身の男。

 

現代最強の呪術師、五条悟。

 

「……遅かったじゃないか、悟」

 

夏油は乾いた笑みを浮かべ、かつての親友を見上げた。

五条の手には、呪力の残滓が青白く燻っている。

ミゲルという予期せぬ足止めを食らったとはいえ、彼がここに現れたということは、戦況は完全に高専側の勝利で決したということだ。

 

「……」

 

五条は何も言わず、ただ静かに夏油を見下ろしていた。

その包帯の下の六眼が、今、何を捉えているのか、夏油には分からない。

ただ、殺意よりも深く、哀れみよりも透明な何かが、そこにあるような気がした。

 

「……何か、言い残すことはあるか」

 

五条の声は、予想していたよりもずっと静かだった。

夏油はふと、遠い記憶を手繰り寄せる。

青い空。蝉の声。無限に続くと思われた青春の日々。

そして、自分が選んだ修羅の道。

 

「……ないな」

 

夏油は短く答えた。

元より、仲間の元へ戻る前提の作戦だった。

もし失敗したとしても、美々子や菜々子、ラルゥたちが遺志を継いでくれるという確信があった。

だから、別れの言葉など用意していない。

言葉は呪いになる。

未練を残せば、それは枷となり、彼らを縛り付けることになるだろう。

そう思っていた。

だが、ふと脳裏に過るのは、自分を慕い、父のように、兄のように慕ってくれた「家族」たちの顔だった。

 

「……いや。やっぱり、あるかな」

 

夏油は苦笑し、失った右腕の痛みを堪えるように顔を歪めた。

 

「じゃあ、家族ひとりひとりに一言ずつ残したいから、メモ取ってもらえる? ラルゥには『筋肉自慢もほどほどに』、美々子には『ぬいぐるみは大事にしろ』、菜々子には……」

 

「……そこまで図々しくこられるとは、思ってなかったな」

 

五条が呆れたようにため息をつく。

その軽口に、夏油は声を上げて笑った。

「ははっ、冗談だよ……言葉を残すことが、必ずしも相手を思いやることじゃない。沈黙もまた、一つの愛だろ?」

 

夏油は空を見上げた。

厚い雲の切れ間から、冷たい月明かりが差し込んでいる。

 

「……悟、あの子たちや愛裏を、こんな殺し合いの連鎖に引き込んだこと……軽蔑するか?」

 

「……あいつらは、こういう生き方しかできなかっただろうな。お前がいようがいまいが、遅かれ早かれ破滅に向かってただろうよ」

 

五条は淡々と返す。

汨羅愛裏。禪院家の汚点として追放され、死体と汚泥を弄ぶことでしか自己を表現できなかった少女。

彼女にとって、夏油という男は、その狂気を肯定してくれる唯一の受け皿だったのかもしれない。

 

「だが、あの二人には……思うところがなかったわけでもないかもしれないな」

 

五条の言葉に、夏油は目を細めた。

檻の中で震えていた幼い姉妹。

彼女たちを救い出したあの日、自分は確かに「非術師(サル)を殺す」という大義を選び取った。

だが、それは本当に彼女たちのためだったのか。

それとも、自分自身が「術師としての在り方」に耐えられなくなり、その理由付けとして彼女たちを利用しただけだったのか。

 

「……もし、彼女たちに何かあったら……後は頼むよ」

 

夏油の口から零れたのは、呪詛師の王としての命令ではなく、ただの旧友としての頼み事だった。

 

「……苦しませずに殺せってことか?」

 

「そうかもね……でも、君に任せるよ、悟。好きにしなよ」

 

それは、最期の無責任であり、最大の信頼でもあった。

自分が歪めてしまった彼女たちの運命を、この最強の男なら、あるいは違う形に導いてくれるかもしれないという、淡い期待。

 

「……」

 

五条はしゃがみ込み、夏油と視線の高さを合わせた。

その距離は、高専時代のあの頃と変わらないようでいて、決定的に隔絶されている。

 

「……誰が何と言おうと、非術師は嫌いだ」

 

夏油は、最期まで自分の信念を曲げなかった。

だが、その声には以前のような刺々しさはなく、どこか憑き物が落ちたような響きがあった。

 

「でも、高専(ここ)の連中まで憎かったわけじゃない」

 

それは、彼がずっと蓋をしてきた本音だった。

大義のために耳を塞ぎ、ひたすら走り続けてきた。

その足元を支えていたのは「家族」たちだったが。

 

彼を本当に救い出し、立ち止まらせることができたのは、皮肉にも、かつて袂を分かった親友だけだった。

 

「……ただ、この世界では、私は心の底から笑えなかった」

 

夏油傑という男の、嘘偽らざる遺言(本音)

五条はそれを噛みしめるように、ゆっくりと口を開いた。

 

「──、────」

 

「……はっ」

 

その言葉を聞いた瞬間、夏油は思わず吹き出した。

目を見開き、信じられないものを見るように五条を見つめ、そしてくしゃりと顔を綻ばせる。

 

「……最期に、なんて言葉を吐くんだ……そんな台詞、学生のころだって言わなかったろうに」

 

夏油は、満足そうに目を閉じた。

呪術師に、悔いのない死などない。

だが、この最期だけは、悪くないと思えた。

 

 ──バシュッ。

 

鋭い風切り音が、静寂を切り裂く。

一瞬の閃光と共に、特級呪詛師・夏油傑の命は、その生涯の幕を閉じた。

五条は立ち上がり、冷たくなった友の亡骸を見下ろす。

その手には、まだ微かな温もりが残っているような気がした。

彼は夜空を見上げ、独りごちる。

 

「……一人は、寂しいよな」

 

その言葉は、誰に向けたものでもなく、夜の闇に溶けて消えていった。

 

 

*

 

 

瑠璃は、再生したばかりの裸足で、泥と血に塗れた石畳を踏みしめていた。

一歩進むたびに、足の裏から生温かい感触が伝わる。それは敵の血であり、彼女自身の血であり、そして、守りたかった人の血でもあった。

彼女の視線の先には、仰向けに倒れた宮國蓮の姿があった。

胸部を貫かれた致命傷。流れ出た血液は既に黒く凝固し始め、彼の白い肌を不吉な地図のように侵食している。

 

「……宮國、さん」

 

瑠璃は、糸が切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。

震える手が、彼の方へと伸ばされる。

 

愛裏との決着、勝利。

 

そんなものは、今の彼女にとって路傍の石ころほどの価値もなかった。

 

「終わりました……全部、終わらせましたから……」

 

瑠璃は、宮國の胸に掌を押し当てた。

脳髄が焼き切れるほどの疲労感に抗い、丹田の底に残った滓のような呪力を絞り出す。

 

(回れ……回れ、反転術式……ッ!)

 

負のエネルギーを掛け合わせ、正のエネルギーを生み出す。

彼女は先刻、己の肉体を瞬時に再生させてみせた。その感覚はまだ神経に残っている。

だが、宮國の傷口に触れた瑠璃の呪力は、拒絶するように霧散した。

 

「……なんで……?」

 

他者への反転術式の出力(アウトプット)。それは、自己再生とは次元の異なる演算能力と、適合性を要求される神業だ。

家入硝子や乙骨憂太のような特異点ではない瑠璃にとって、反転術式はあくまで「自己の生存」のために特化したエゴの産物だった。

加えて、度重なる反転術式と術式の行使。

彼女の呪力貯蔵量(タンク)は、すでに枯渇の底を割っていた。

 

「いやだ……お願い、治って……」

 

必死に掌を押し付けるが、傷は塞がらない。体温は残酷なほど速やかに奪われていく。

その時、冷え切った宮國の手が、瑠璃の手首を弱々しく掴んだ。

 

「……もういい、瑠璃」

 

宮國が薄く目を開ける。

その瞳は、いつものように飄々としていて、けれどガラス玉のように曇り始めていた。

 

「この傷は……きっかけに過ぎない。俺の体はもう、とっくに終わっていたんだ」

 

「え……?」

 

宮國は、自嘲気味に口の端を歪めた。

 

「末期の癌だ……全身の臓器に転移している。硝子さんからは、余命半年と宣告されていてね……普通の人間なら、とっくにベッドの上で管に繋がれている頃合いさ」

 

瑠璃の思考が停止する。

 

癌。

 

その言葉と、宮國のこれまでの振る舞いが、走馬灯のように結びつく。

常にどこか達観していた態度。

死線においても恐怖を感じさせない冷徹さ。そして、家入硝子が彼に向けていた、どこか哀れむような、諦めたような視線。

 

「ここら辺が、潮時だったのさ……には悪いことをしたな。どうせ死ぬ命なら、彼女のコレクションに加えてあげてもよかったのかもしれない」

 

「そんな……嘘、です……」

 

瑠璃の目から、大粒の涙が溢れ出した。

受け入れられない。受け入れられるはずがない。

彼は、瑠璃にとって初めてできた「先輩」であり、導き手であり、そして────。

 

「私まだ……もっと宮國さんと図書館に行って……お茶して……買い物に行って……」

 

子供のような言葉が、嗚咽と共に漏れ出す。

呪術師としての使命も、世界の命運もどうでもいい。ただ、当たり前の日常を、この人と過ごしたかった。

その切実な願いは、しかし、運命という名の巨大なシステムの前ではあまりに無力だった。

宮國は、涙に濡れる瑠璃の頬に、冷たい指先を這わせた。

 

「……瑠璃。これから言うことを、よく覚えておきなさい」

 

それは、遺言であり、同時に彼女の魂に刻み込む「呪い」の儀式。

 

「運命とは、呪いだ……生まれた時から決められた寿命、才能、環境。俺たちは…その大きな流れの中で藻掻くことしかできない小さい、泡みたいなもんだ」

 

彼の声は、次第にか細くなっていく。

だが、その言葉の芯にある「意志」だけは、鋼のように硬質だった。

 

「世界は退屈で、未来は平凡だ……だからこそ…俺は抗うことを選んだ。人間として…呪術師として…最期まで自分の足で立つことを選んだ…」

 

宮國の瞳が、瑠璃の瞳を射抜く。

 

「瑠璃、君も、抗え……心臓が息の根を止める、その最後の瞬間まで…運命という名の呪いに、中指を立て続けろ」

 

それは、呪術師としての新たな指針(コード)

ただ生き延びるためではない。自分の意志を、尊厳を、世界に刻みつけるための戦い。

 

「……俺は、きっと……キミが期待するより普通の人間なんだ」

 

宮國は、ふっと力を抜いて、少年のような笑顔で微笑んだ。

 

「死ぬのは怖いし……未練もある……でも…まぁ…君と過ごす時間が最期なら…悪くない人生だったよ」

 

視界が霞む。

宮國の顔が、近づいてくる。

瑠璃は、拒まなかった。いや、自ら求めて、その顔を寄せた。

 

「……好きだ」

 

最期の吐息と共に紡がれた、最初で最後の告白。

 

「……うん」

 

瑠璃は短く答え、彼に口付けた。

唇が触れ合う。

 

そこには、映画のような甘さも、高揚感もなかった。

あるのは、鉄錆のような血の味と、命の残り香。

そして、絶対的な「死」の冷たさだけ。

 

その接吻(キス)は、永遠に続くかのように長く、そして一瞬で終わった。

 

宮國の身体から、力が抜ける。

握られていた手が、石畳へと滑り落ちる。

胸の上下動が止まり、瞳孔が開いていく。

 

世界から、音が消えた。

瑠璃は、動かなくなった宮國の体に縋り付くことも、泣き叫ぶこともしなかった。

ただ、唇に残る死の味を反芻しながら、夜空を見上げた。

雲が切れ、凍てつくような満月が、二人を照らしている。

彼女の中で、何かが決定的に変わり、そして固まった。

 

宮國蓮は死んだ。

 

だが、彼が最期に残した「呪い」は、白波瑠璃という器の中で、新たな心臓となって脈打ち始めていた。

 

(私は生きる……生きて…呪い(抗い)続ける…私と…そして運命を…)

 

瑠璃はゆっくりと立ち上がる。

その瞳には、もはや迷いも、甘えも存在しない。

あるのは、呪術師として生きていく覚悟と、底知れぬ昏い光だけだった。

 

二〇一七年、十二月二十四日。

 

多くのものを喪失し、多くの呪いを生み出した百鬼夜行は、こうして幕を閉じた。

 

 





ソシャゲをやる時や一番くじを引く時はリカちゃんを欲しがる夏油の真似しながらやると楽しすぎルと申します

第二章で見たい内容

  • セクシー九十九との修行編
  • 夏映画・福岡分校編
  • メロンパンとの呪霊モンマスターの旅
  • ぼっち伏黒
  • 自由にやれ…呪詛師のように
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