凍てつく心ときみ   作:めりゅちゃむ

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無印のとうもろこし茶がうまい



再始発

 呉鎮守府で研修を終えた俺は元帥に呼び出された。

おそらく着任する鎮守府の話だろう。

 

 約80年ぶりに海軍省に来たが、あまり変わっていなかった。

しっかりと整備されてきれいな状態を保っていることが窺える。

 

 コンコンコンとノックをして入室する。

 

 

「お久しぶりですね。研修はどうでした?」

 

「いろんな艦娘に囲まれて大変だった」

 

「あぁ、それはお気の毒に」

 

「で、用はなんだ?」

 

「察しはついているとは思いますが、着任する鎮守府の話です」

 

 

 そう言いながら茶封筒を差し出してきた。

この封筒の中に配属される鎮守府が書いてあるのだろう。

 

 それにしては封筒が厚い気がするが…まぁ気のせいということにして俺は封筒の書類を見た。

 

 

「横須賀…?」

 

 

 ____意味わからん。絶対に新任に任せちゃダメだろ。

 

 

「そうだ。あなたに横須賀鎮守府を任せるんです」

 

「適任がほかにいるはずだ」

 

「あなたを行かせるのにも理由があります」

 

「理由を聞いてみようじゃないか」

 

「最近、横須賀鎮守府の提督…あなたの前任が死んだのは知っていますね?」

 

 

 前任の死亡…呉の提督が言っていた。

たしか艦隊運営中に密行してきていた敵艦載機の爆弾で執務室ごと吹き飛んだという話だったな。

 

 それが俺を行かせる理由なのか…?

 

 

「一応知っているが」

 

「前任の死因は深海棲艦だとされていますが、実は違うのです」

 

「…ハァ?」

 

「前任はある一派から反感を買っていました」

 

「その一派とは?」

 

「艦娘は兵器であると唱える通称『兵器派』です」

 

 

 兵器派…いまだに残っていたのか。

兵器派は昔からある派閥だ。艦娘は人なのか、兵器なのかという上層部の議論から一般軍人の間でも話されるようになり、その結果海軍は三極化した。

 

 艦娘は仲間であり、家族であるとする『人間派』

 

 艦娘は深海棲艦を撲滅するために生まれてきた物とする『兵器派』

 

 艦娘は艦娘である。兵器とも違い人とも違う、ものだとする『艦娘派』

 

 くだらない。とてもじゃないが戦争中にする話題ではない。

これのせいで人間派と兵器派は溝を深め、対立してしまった。艦娘派はこの二勢力の仲裁をするのが常だった。

 

 戦争中に内部で争いがおきて戦況も悪化した。

そして仲裁に疲れた艦娘派は考えた「この話題を終わらせるには、人に艦娘と同じ力を持たせ、人でも艦娘でもない存在を作るしかない」と

 

 馬鹿みたいだろう?艦娘派の連中は既存の艦娘では戦局が好転しないとして、人体実験を強行した。

 

 しかしこれは本当に効果があった。兵器派と人間派は改造人間の登場で議論をすることはなくなった。

 が、現在はまたくだらないことをしているようだな。

 

 

「前任は兵器派からの誘いを断りました。自分は艦娘を家族だと思い、鎮守府は家であると」

 

「そして目をつけられたと」

 

「えぇ、嫌がらせが続き、所属艦娘がケガを負う場合もあったそうです」

 

 

 戦争中だというのに、何を馬鹿なことを…

 

 

「今、兵器派は後任の提督に目を光らせています。あなたなら問題はないと思いました」

 

「もし、向こうから突っかかってきたときは、制裁は許されるか?」

 

「こ、殺しは無しで…」

 

「殺すな、ね…善処しよう」

 

 

 まぁ、どうせ殺すが。

 

 

「天部隊の隊舎はまだあるか?」

 

「えぇ、現在は203戦闘隊の隊舎になっています」

 

「203だと…?」

 

「天部隊の創設メンバーのあなたならどんな部隊かわかりますね?」

 

 

 天部隊を作るときに挙がった部隊名の候補、203戦闘隊。

リーダーが数字はないわぁと言い却下された名前。それが使われているということは203戦闘隊は

 

 

「改造人間部隊…!」

 

「その通りです。あなたがたの部屋は今もあります。なにか取りに?」

 

「あぁ、軍刀を置いたままだった」

 

「約70年前の軍刀って…使えます?」

 

「使えるさ…多分、きっと、メイビー」

 

 

 

 元帥との会話を終えた俺は一緒に鎮守府についてくる艦娘を選ぶ必要があった。なんでも、艦娘はいるにはいるが、人への不信感が強く指示に従わない可能性があるとか。

 

 好きなように選べと言われたから好きなように選ばせてもらった。

元帥は引きつった笑顔になってた。

 

 そして今俺は何をしているかというと203戦闘隊の隊舎に向かっていた。昔と変わらないらしいが、半世紀以上過ぎててそれはないだろう。喧嘩とか売られなきゃいいんだけどな…

 

 

「…誰もいねぇのか?」

 

 

 こんなに静かな隊舎は経験したことがない。

あまりの静けさに呆然としていたら隊員らしき数人が帰ってきた。ただ、帰ってきた隊員たちを見て違和感を感じた。

 

 ________こいつらは俺と同じで違う。その判断材料は顔。

こいつらには感情が欠落している。帰ってきた隊員たちは凍てついたような表情だった。

 

 俺とは作り方が違う。理由はわからないが、作り方が違うことは確実だ。

敵対する可能性が高いな…

 

 

「とっとと軍刀持ち出して帰るか」

 

 ギギィっと扉を開けて部屋に入ってみて驚いた。この部屋は何も変わっていない。良くも悪くも昔の状態を維持していた。

 

 ほこりがひどい。ゴホゴホとむせてしまい、さらにほこりが宙に舞い、またむせる。

 

 

「刀…俺の刀…あった」

 

 

 昔作った俺の…とても罰当たりな刀

 

 

「やぁ、海軍実験体第2501693号…いや、今は名前があるんだっけ…?」

 

 

 誰もいなかったはずの部屋で俺は最悪な再会をした。

 

 

「…何の用だ、0000001号」

 

 こちらの心情を読み取らせまいと少し威圧的に返す。

 

 

「その名前はよしてくれないかい?今の私にもちゃんとした名前があるんだ」

 

「知らねぇよ、興味もない」

 

「じゃあ、203戦闘隊の改造人間たちについてだったら興味、あるかな?」

 

「まさかアンタ…」

 

「私じゃないさ…アホな後輩たちが作ったんだよ」

 

「知ってること、全部話せ」

 

 

 203戦闘隊の改造人間は私たちの劣化版。その分作りやすいんだ。

私たちとの違いは手術ベースが一つで、そのベースは艦娘。

 

 そして、感情の一切を捨てている。とどのつまり、こいつらはただの戦闘人形なんだよ。上の命令をただ聞くだけのね。

 

 

「とまぁ、こんな感じさ。クソみたいだろ?だから私は名前を変え、ただの一軍人として生きている」

 

「軍人、続けてんだな」

 

「私の天職だからな!」

 

「誇るな、お前はカスだ」

 

「ヒドゥイ。あ、この裏にはね」

 

「兵器派だろ」

 

「わかってるぅ」

 

 

 手術ベースに艦娘のみが使われているのは兵器派の艦娘の酷使による大量の素材があるからだろう。おそらくだが、ここではいまだに改造人間の製造が続いている。

 

 とっても胸糞悪いぜ

 

 

「ま、君とまた会えて私は嬉しかったよ。着任おめでと、がんばって」

 

「あんたに言われなくとも」

 

 

 

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