ジェンティルドンナのにぃに概念   作:おっき!!!

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何とか時間作ったので投稿します。

大変遅くなりました。サボりとかそういうのではくほんとに執筆する時間が足りなかったのでここまで時間かかりました。

と言いつつもあまり納得できた完成度ではありませが、そんな事言ってたらさらに時間かかりそうなので妥協させていただきます。

前回言ったように話を進めるだけでは一向に先が進まないので、かなりキング・クリムゾンさせていただきます。
前回は、夏合宿。今回は年始まで話が飛びます。なんじゃそりゃと思われるかもしれませんが、私が書きたいことを優先した結果こうなりました。
ご理解の程よろしくお願いします。



いつまでも待ってくださる方々には本当に感謝しております。
誤字脱字報告。感想をくださる方々。感謝してもし切れません。

これからも是非読んでいただけると幸いです。






7

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しんと静まり返った空気感。ひんやりとした風がそっと肌を撫でる。

口から吐かれた息が白く宙を漂い、真っ暗な空に吸い込まれていく。遠くから聞こえる鐘の音に耳を傾けながら、俺は実家の前で深夜の夜空を眺めていた。

空からは真っ白な雪がゆっくりと地上に降りてくる。地面は既に真っ白になり、俺の周りの雪は誰にも踏み込まれていない純白な草原となっていた。

 

 

 

普段は都心部にいる俺だが、年末年始は実家に帰るようにしている。かなりの距離があるが、飛行機を使えば一瞬なので、半日もあれば移動出来る。その為、5日間という短い期間ではあるが、実家に帰省しているのだ。

 

 

他のトレーナーも自宅や実家に帰る人が多い。ウマ娘が年末年始は帰省する子が多い為、そのウマ娘を担当しているトレーナー達も休みにする人が増えるのだ。俺もそのうちの一人。ヴィルシーナを仮担当するようになったサブトレ時代から、ヴィルシーナは年末年始は実家で過ごすと言うので、俺も帰省することにしたのだ。

 

 

そして現在、元旦。時間は日付変更から30分程時間が立った。外は真っ暗で、街灯の明かりと月明かりのみが地上を照らす。

普段は寝静まる時間にこのように外に出ているのは、大人ながら子供の頃のワクワクした気持ちを思い出させる。普段やっては行けないことを行うこの罪悪感が何とも言えないアクセントを与えてくれる。

 

 

とは言え、寒い中待つのは正直堪える。しかし、()()は準備が掛かる。何やら母が張り切っていたので、時間が掛かるのは当然だろうと何となく思えてしまった。

 

 

そんな事を考えていると、玄関の戸が開き、人影が出てきた。

ピコピコといつもなら頭の上で跳ね動いているはずの耳がすっぽりとモコモコした耳当てに収まり、肌の色よりも真っ白な着物姿を着こなした()()が恥ずかしそうに俺の目の前に現れた。

 

 

「……お待たせ、致しましたわ」

 

「…お、おう。もうちょい掛かると思った」

 

 

金箔の花の刺繍が散りばめられた真っ白な着物に身を包み、彼女の真っ赤な瞳が熱っぽく俺の姿を瞳に写している。彼女の姿は白い雪兎の様だった。耳当てが少し長いため、より拍車をかけている。ウマ娘では無くウサギ娘だ。

 

 

普段とは違う装いに少し羞恥に身を捩る彼女。そんな姿に俺もなんだか恥ずかしくなってしまった。寒さのせいか羞恥のせいか、鼻頭と頬を赤く染められた顔を隠すようにして俺の腕を全身で抱き締めてきた。女性特有の柔らかさと髪や肌に塗った香料を含んだコンディショナーやボディクリームの香りが、寒さで鈍った鼻腔に届く。

 

 

俺もいい歳した大人だ。彼女はまだ学生であるが立派な女性に近付いている。あまりこのような行動を軽はずみにしないで欲しいのだが。

 

 

「ねぇアンタっ、どぉー?()()()()()の着物姿はっ」

 

「母さん声デケェって。今何時だと思ってんだよっ」

 

 

彼女と共に家から出てきた母は興奮気味にパシャパシャと端末で俺達の姿を写真に収めている。多分彼女の実家に送るのだろう。彼女の父親も中々の親バカなので、多分可愛い可愛いと一人盛り上がって奥様や彼女の姉妹達に冷たい視線を向けられるだろう。

まあ愛されてるってのが目に見えて分かるからいいんだが。

 

 

「ほらっ、ほらほらっ。どんちゃん笑って笑ってぇ〜?はいパシャパシャッ」

 

「どんだけとんだよ……。ほら、そろそろ行くから」

 

「あーん、もう?しょうがない……どんちゃん気を付けてねぇー?足滑らさないように〜」

 

「はい。ありがとうございます」

 

「あ、これお年玉ね。明けましておめでとう」

 

「……宜しいのですか?ありがとうございます、とても嬉しいです」

 

「……あぁ、なんて……可愛らしいのかしら……っ。ね、どんちゃんっ。うちに是非お嫁に来て欲しいけど、貴女はとっても素敵な女の子なんだから、こんな芋臭い男と結婚しちゃ駄目よ?もっといい人探しなさいっ」

 

 

 

何言ってんだこの婆ァっ。

思わず眉間にシワがよる。

 

 

 

「おいおい。実の息子に芋臭いとはなんだよ。百歩譲って俺が芋臭いのは認めるけど、棚上げてまるで俺が悪いみたいに言うなよな。ここまで育ててきたヤツは誰って話だよ」

 

「あらあら?私ってば育て方間違ったなんて思って無いけどねぇ?私らの手を振りほどいて勝手に成長しちゃったんだから仕方ないわよねぇ?」

 

「自分で墓穴掘ってやんの。私は育児放棄してましたーなんて自分の責任逃れるようなこと言っちゃってまぁ」

 

「だから私はこんな芋臭い子に育てた覚えは無いって言ってるのよねぇ?どーこで間違っちゃったのだか」

 

「多分遺伝子の段階じゃね?母さんの変な遺伝子が混ざってこんなんになっちゃったんだわ」

 

「わーたしのかんっぺきな遺伝子ちゃんに何もうしちゃってるわけ?飛行機乗りのおじいちゃんと八百屋のおばあちゃんの血が入ったハイブリットなのよ?」

 

「何処がハイブリットだよ辞書で調べてこい。じゃあ俺がこんな芋臭い男に育ったのはそのハイブリット(笑)の遺伝子がおかしかったからだろ」

 

「いいえ、それはお父さんの遺伝子のせいよ。私じゃないわ」

 

「なんつーこと言ってんだよ母さん」

 

 

そんな事言ったら家庭内崩壊では?俺は訝しんだ。

この場にいない(多分あんまり)責任がない父さんに流れ弾が飛んで行った。多分家の中でくしゃみしてるだろう。

 

()()()()()は母さんのお嫁さんという言葉を何度も口に繰り返しており、俺の腕をギュっと強く抱き締めて母さんに顔を向けた。

 

 

「……お母様としては、私と()()()の婚約は前向きという事で宜しいのですか?」

 

「え?……まぁ当人達の気持ちを考えるのが一番だと思ってるから、私としては貴方達の意志を尊重するけれど。この子でいいの?」

 

「おい、発言」

 

「私は()()()の事をお慕い申しております。実家では多少の反発はありましょうが、彼との婚約はほぼ確実と考えて頂いて構いません」

 

「ちょ、待って()()()()()っ。話が、話が飛躍してるっ」

 

「……んー、でもね?()()()()()はまだコイツ以外の男性の事よく知らないでしょ?コイツよりも優良物件がいるかもしれないから。そう焦る必要は無いと思うけどなぁ?」

 

「……普段、休日を使って父が招待される会食パーティーに同席させて頂いておりますの。……正直、私の年齢くらい。なんなら、父と年齢が変わらない男性と会話しておりますが、あまり芳しくありません。皆一様に、私の身体や地位のことしか頭に無い。私の事を愛してくれる男性を望む私としては、彼以外の男性なんて塵芥にも等しいですわ」

 

「……んんー、まぁ()()()()()美人だし、可愛いし。おっぱいも大きい。そりゃあ盛ったお猿さんが大量に湧くのも分かる。分かる気がする……んだけどねぇ?」

 

地味に下世話な話するな。純粋な()()()()()が穢れるだろうが。

 

 

「無理に今了承を頂くことなんて致しません。私はこれから、とても大事な数年間を過ごします。今は、それに最大限集中したい所存でありますので、私としては後日お伺いをと思います」

 

「……ん、まぁこれから大事な時期だものね。今こんな話をしたってことは、何か……あるのよね?」

 

「……はい」

 

 

(恐らく)当事者であろう俺が置いてけぼりなのだけど?なんか異常に空気が沈んでるけど、これ新年だよね。新年始まって数分の話?幸先悪くないですか?

 

 

「……()()()にも、丁度いい機会ですのでお話します。私は、トゥインクル・シリーズの引退と共に、父の決めた殿方と婚約する事になりました」

 

「え?」「は?」

 

 

その言葉が、冷たくなった俺の頭に追い打ちをかけるように殴り付けてきた。

いま、彼女はなんと言った?婚約?()()()()()のお父様が決めた人と、婚約?

 

 

「……それはまた、急な話ね。でもさっきこの子との婚約はほぼ確実だって言ったのは?」

 

「……()()()も、父の考える中の一人という事です。幾つか候補を見せて頂いた際、()()()もその中に含まれていたのを確認しました。父曰く、私がトゥインクル・シリーズで結果を残せば、()()()との婚約は確実視されると、そう話を受けております。まだ、これから先どうなるかは分かりませんが、父の話の限りだとほぼ確実とされているので、そうお伝えしました」

 

「……え、俺いつの間にそんな候補になってたの?」

 

 

なんの話しも聞いてないんだけど?いやどっかのタイミングで言われるかもしれなかったけど、急すぎて理解が追いついてない。

 

え?()()()()()と婚約?結婚?俺が?

たしかにジェンティルは俺の事慕ってくれてるけど、まさか。

 

 

「……そう、なの?まあ今後の事は分からないけれど、きっとその結果は()()()()()のお父様が納得されたら改めてお話されるって事なのかもしれないわね。私達も何も聞かされてないから、まだそのときでは無いって判断なんでしょう」

 

「……困惑させてしまい、申し訳ございません。ですが、私の彼に対する想いだけは、お母様にも是非理解して頂きたいですわ。例え、これから先どんな殿方と出会おうとも、()()()以上に私を理解してくださり、私を見てくださり、私の事を大切に思ってくれる方は現れませんもの」

 

「……くぅ〜っ、我が家の愚息にそこまで言ってもらえるなんて……っ。分かったわ()()()()()っ。好きになさい。私は応援してあげる!!優柔不断で情けない息子だけど、思いやりはある子だから。きっと間違っちゃっいない選択になると思うわ!!頑張ってね!!」

 

「はいっ。ありがとうございます、お母様。()()()の想い、是非私が掴んでみせます」

 

「………それを本人の前でやられるのはちょっと恥ずかしいんだけどなぁ?」

 

 

聞いてるこっちが恥ずかしい。いや、嬉しいよ?嬉しいんだけどね?ちょっと自重というか、場所というか雰囲気というか。せめて俺のいない所でやって欲しいとは思うんだけどな。

 

()()()()()は俺の存在を忘れていたのか、恥ずかしそうにギュッと全身で俺の腕を強く抱き締め直した。もしかして、俺居ない扱いされてたの?

 

 

()()()っ、どうして聞いてらっしゃるのっ?何時からそこにっ?」

 

「いや白々しいよっ。()()()()()に腕抱きしめられてたから逃げも隠れも出来なかったよっ。こんな話俺だって聞きたくなかったわ!!」

 

「……あんた、乙女の秘密を聞いたわね?さいてーな男よ」

 

「逃げ隠れできねぇって言っただろばばぁ!!俺だって聞いちゃダメな話ってぐらいわかるわ!!」

 

「耳ぐらい塞ぎなさいよデリカシーの無い男ね!……ねぇ、やっぱりこんな子()()()()()には相応しくないわよ。今からでもお父様に伺って候補から外してもらいましょうよ」

 

「……いいえ、お母様。そんな所も、()()()の素敵なところです。どこか抜けてるところがあるのも、可愛らしいと私は思いますわ」

 

「そうよねそうよね、ギャップってやつよね?()()()()()がいいならそれでいいわ〜」

 

「掌回転させすぎだばばぁ!!きっしょいんだよ!!」

 

「はぁあ!?は?はぁああ!?あんた今キモいって言った!?あんた実の母親に向かって何抜かしてんのよこぉのドラ息子ぉ!!」

 

「ドラじゃねぇわトンチキ!!だから一々叫ぶな近所迷惑じゃボケェ!!」

 

「近所どんだけ離れてると思ってんのよアホンダラ!!都会とは違ぇのよ都会とは!!」

 

 

それでも100メートル圏内には隣があるんですが。知ってるか知らんか分からんが、学生の時近所の人に『あんたの母ちゃんホント元気やな。いっつもここまで声届いとるよ』って言われてんだぞこっちは!!近所付き合いが無かったら普通に苦情もんだからそこら辺分かってんのかこの母親はよぉ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どんちゃんに発情すんなよサル息子と、実の息子にかける声とは思えない言葉を受けた俺達は、近所の大きな神社に向かう。

今鳴っている鐘の音も、その神社から鳴らされている。普通、除夜の鐘と言えば煩悩の数とされる108回を年末から元旦にかけて鳴らされ、午前0時を過ぎてから初撞きが行われる。しかし、うちの近所はその後もカンカン鳴らし続ける。年間で鳴らす時間は変わるが、大体午前1時まで鳴らされることが多い。

 

 

地元の鐘を鳴らしたい連中が数多く集まる為、集まった人達が少なくとも1回以上は鐘を鳴らして行くので時間がかかるのだ。

 

 

こうもカンカン鳴らすのはどうかと思うが、まあ誰も文句言う人は居ないだろうし、俺が産まれる前からずっとこんな感じだったらしい。俺も高校生までは毎年鳴らしてた。母と参加して甘酒片手にカンカン鳴らしていたのが懐かしい。

 

 

 

実家から少し距離があるものの、こうして冬の雪空の下を歩くのもまた乙なものだ。()()()()()を歩かせるのは少し忍びないが、神社に行きたいと言い出したのは彼女からだった。俺の話を聞いて鐘を鳴らしてみたくなったそうだ。日が昇ってからでも出来るから大丈夫とは言ったが、それはそれ。これはこれらしい。昼までは味わえない夜だからこその神秘的な体験をしたいのだろう。

 

 

深夜も行って、昼間も行く。何気にどんちゃんはイベント事があると趣向を変えて楽しみ出すから、それに付き合ってる俺も中々飽きがこない。因みに昼間は伊奈波神社の予定。久々の坂道は多分膝にかなり来そうである。

 

 

どんちゃんの手を引く右手が、少し強めに握られた。少し顔を向けてみると、赤い瞳と視線が交わった。彼女はずっと、俺の事を見つめていたらしい。

 

 

「……どうした?」

 

「……ううん。なんでもないよ」

 

「その割にはずっと見てた様な気がするけど?」

 

「ホントに気にしないで。少し、……嬉しかっただけだから」

 

「……嬉しかった?」

 

「うん……。最近、2人っきりになれる時間、少なかったでしょ?」

 

「……まぁ、うん。そう、だな……」

 

 

 

やっと二人っきりになれたね?なんて言いたげに首を傾げて少し微笑む()()()()()。その小悪魔的な表情は、世の中の男性を勘違いという泥沼に引きずり込むには十分過ぎる威力を持っていた。

 

俺は、桐生院直伝の鋼の意思を持っているのでなんの問題は無い。が、そうだねなんて、真面目に答えるのは正直違う気がしたので濁して答える。

意地悪だとか、そういうのではなく。まあ()()()()()()()的に濁した方がいいと思ったからだが。

 

 

この一年は紆余曲折であった。

ヴィルシーナとジェンティルの同時担当。そして同デビュー。世代最強を欲しいままにするジェンティルと、打倒ジェンティルを掲げるヴィルシーナ。

板挟みになるのは正直しんどかったが、それでも2人とも予想以上に成長した。

 

ジェンティルは今年4戦4勝と無敗記録。数日前に行われたGIレースのホープフルステークスを制覇し、無敗のGIウマ娘となった。

 

彼女の必殺と呼べる、何処からでもどの体勢からでも閃光の如く唸る末脚のキレは凄まじく。後方だろうと前方でペースを刻んでいようと後続をぶっちぎって1着をもぎ取っている。彼女の脚を信じていたのは本当だが、まだジュニア期の段階でこれ程までの武器が完成するとは思わなかった。

 

まだまだ成長の余地はあるが、世代最強、緋色の閃光と呼ばれる貴婦人。ジェンティルはまさに俺の誇りである。

 

 

ヴィルシーナは11戦4勝。うち2着5回3着3回。掲示板だけでいえば連対率100%。彼女の強みが少しずつ成長しているようで、俺としては及第点。

世間的には走らせ過ぎだと大バッシングを受けているが、彼らはヴィルシーナの強さを知らないのだ。

 

彼女の凄さを、今年のティアラレースでしっかり目撃して欲しいものだ。

ヴィルシーナもGIレース阪神ジュベナイルフィリーズを勝利。ジェンティルは無敗の記録を持っているが、ジュニア女王の座はヴィルシーナが僅差で獲得。ホープフルステークスを走ったジェンティルは最優秀賞を獲得。

世間は、今年の世代は2強と叫ばれる大熱狂になった。

 

 

去年はオルフェーヴルの三冠達成が世間を熱狂させた。

ならば今年は?勿論、俺の担当達である。ジェンティルは正直最強の座を好きに出来る力を持つ。ヴィルシーナももう少しで彼女の完成系が成立する。

正直、贔屓目に見てしまうが、ウチの担当達が他のウマ娘に負ける想像が付かない。ヴィルシーナの1着を逃したレースも、必然的にそうなっただけであって、次やったら多分負けないと思う。

 

こんなこと思うのはトレーナーとして最低な事ではあるが、俺の担当達は本当に最強なのだ。誰にも負けない、誰にも1着は譲らない。強さへの欲望と渇望、執着が凄まじいのだ。

先生の元にいた時にも見なかった巨大な熱。初めての担当ということで緊張はあるが、それ以上に期待が大きい。

 

今年はどんな彼女たちの活躍が見れるのか。どんな姿を見せてくれるのか。

こんな深夜に神社に向かうのも願掛けを狙ってのものだ。

俺は、隣を歩く()()()()()にそっと笑いかける。

 

 

()()()()()もヴィルシーナも、俺にとっては大切な担当だよ。今年も、2人の活躍する姿を間近で観させてもらうからな」

 

「……そういう事、じゃない……っ」

 

「……まぁ、ちょっとその話は保留だ。俺だって突然過ぎて話に着いてけてないんだ。もう少し時間くれ」

 

「……私は、いつでもいいんだよ?」

 

「まだ俺は候補なんだろ?他の候補の人に申し訳がたたない」

 

「……ふーん。私の気持ちより、面識無い人達の事を考えちゃうんだ」

 

「……そりゃあな。()()()()()のお父様が選んだ人達だ。きっと飛び抜けた才能がある人達ばかりなんだろう。そんな中に俺が入ってるなんて、正直場違いだって思ってるよ。今すぐにでも降りたいって思ってる」

 

「……なんで?()()()は私の事嫌いなの……?」

 

「嫌いなわけ無いだろっ。ただ、()()()()()の人生はこれから、もっと輝かしいものになる。君を輝かせる為の舞台装置役である俺には、君とは釣り合わないと思ってる。……まだ時間はある。()()()()()の気持ちもきっと変わるだろうから、焦らずゆっくりとだな……」

 

「……()()()の馬鹿っ」

 

 

()()()()()はその場で立ち止まった。腕を抱き締められてる俺も、自然と立ち止まる事になる。

 

不安げに俺を見上げる()()()()()の目尻には、大粒の涙が今にも零れ落ちそうだった。赤い瞳は不安げに揺れ動きいつもの輝きが濁っている。

 

俺は、その表情を見てやっと自分の罪を認識した。()()()()()にこんな表情をさせてしまったのだ。大人気ないことをしてしまったと深く反省する。

 

 

「……ごめん、()()()()()。悪気は無かった。……ただ、本当に()()()()()の事を考えてそう思ってるだけで……」

 

「じゃあちゃんと私の気持ちを受け止めてよっ。私の事考えてるって言うならっ、私の気持ちをちゃんと受け止めて見せてよっ!!」

 

「……()()()()()

 

 

腕から体を離した()()()()()は、そのまま俺の真正面からギュッと抱きついてきた。俺の胸板に顔を埋め、身体を震わせながら嗚咽を漏らす。

 

 

「君の為君の為って、訳分かんないこと言わないでよっ!!私の事考えてるって言うのなら、私が望む一番の幸せを考えてよ……っ」

 

「……っ」

 

「……最近ずっと不安なのっ。あの子が……っ、あの子達がいるからっ、()()()の事取られるんじゃないかって……っ。()()()が私の事もう飽きちゃったんじゃないかってっ、どうでもいいって思っちゃうかもしれないって……っ!不安なの……っ、怖いの……っ、怖くて怖くて仕方ないのっ」

 

「お、俺が()()()()()の事どうでもいいなんて思うわけないだろっ。君の為にこの道を選んだ。全ては君を輝かせたいと思ったからだ。嘘偽りなんてない、俺の人生をかけて、ジェンティルドンナというウマ娘を磨き上げたいと思った、だから……」

 

「……じゃあ今すぐにでも担当契約を解約してよ」

 

「……え」

 

 

()()()()()は俺の顔を覗き込んだ。赤黒く染まった無機質な目。様々な負の感情が籠ったどす黒い瞳に俺の焦った顔が映り込んでいる。

決して逃がさないと、俺が苦しくないギリギリの力加減で抱きしめる()()()()()は、今まで見たことの無い嫉妬の炎に駆られていた。

 

 

そんな彼女から出た言葉に、俺は思わず素っ頓狂な声を出してしまう。

 

 

「ヴィルシーナさんと、シュヴァルさんとヴィブロスさんとの契約を解約して。私だけにして。」

 

「いや、それは……」

 

「私に人生をかけるって言うなら他の子は要らないよね。私だけを輝かせるんでしょ?だったらどうして私以外のウマ娘と契約してるの?可笑しいよね?おかしいでしょ?私何か間違ったこと言ってる?私間違ってないよね?間違ってるのは()()()でしょ?」

 

「……それでも、途中で手放すのは違う。俺だって彼女達の人生を背負うんだ。君には本当に申し訳ないと思っているけど、これが責任だ。最後までやり抜くのが大人としての責務なんだ。俺は、そんな責任放棄する男が君の隣にいるのは許せないよ」

 

「じゃあ私が許すから契約解除して。私が許すんだからいいでしょ?()()()の罪悪感は無くなるでしょ?自分でやった事より命令されてやったんだから後ぐされ無いでしょ?」

 

「……()()()()()。一回落ち着いて。君らしくない事を話してる」

 

「何?落ち着くって何?私落ち着いてるよ?()()()には落ち着いてないように見えるんだ。しっかり見て?ほら、冷静でしょ?落ち着いてるでしょ?心外だよ。私すっごく落ち着いてるよ?落ち着いてるからこそ()()()に冷静に提案したんじゃん」

 

「……いや、いつもの冷静な()()()()()はそんな風じゃない。()()()()()()()も落ち着いてないのか?」

 

 

俺は()()()()()とは別の()()に話しかける。

しかし、返答は無く()()()()()の可笑しいものを見るような笑い声しか返ってこなかった。

 

 

「……私と話してるのに()()()の女の名前出すんだ」

 

()()()()()()だって君自身だろ。君自身と話すことなんだからなんの問題も無いはずだけど?」

 

「……すけこまし。女の子の敵だね()()()。そうやって誑かしてるから勘違いした女が近寄ってくるんだよ?()()()は私だけ見てればいいのに、他の子に唾付けるなんて酷いよ」

 

「唾付けるなんて心外だ。それよりも、俺の話を聞いてくれ、()()()()()

 

「やだ。()()()が私の事ちゃんとお嫁さんにしますって言うまで話聞かない」

 

「まだ候補段階だろ?俺がそんな口約束したぐらいで、お父様が許可するなんて考えられない。いいから、俺の話を聞いてくれ」

 

「そうやって、私の事引きがそうとするんだ。()()()にとって、私なんてその程度の存在なんだよね。都合のいいただの若い女ってだけなんだね」

 

「話が飛躍しすぎだ。俺は()()()()()にも()()()()()()にもそんな事思った事はない。俺はいつでも君の事を幸せにしてあげたいと思って……」

 

「じゃあ今すぐにでも幸せにして見せてよ!!私が望む形でっ、今ここで!!」

 

 

それは、きっと()()()()()のヤケになった言葉だった。

俺の気持ちは()()()()()に届かない。()()()()()の幸せ、それを思う俺の気持ちは、()()()()()の願う幸せとは違うかすれ違いが起きてしまった。

 

俺はきっと自分のエゴを貫き過ぎたんだ。()()()()()が大切だから、こうあって欲しいとずっと考えてきた。でも()()()()()は、俺の偽善的な幸せよりも、俺と一緒に居ることが幸せだと思っている。

 

どちらが正しいか、なんて分からない。お互いにそう願っていだから、どちらもきっと正しいのだろう。結局は自己満足ではあるが、自分が正しいと思ってしまえばそれは自分の中では正しい選択であると思える。後悔するのは間違ったかもと後々思うからであって、それはその仮初の正しさの証明がされてから起こること。

 

だから、俺が願う()()()()()の幸せの形に違うなんて言えない。それが()()()()()の幸せなんだと思えるから。それこそが()()()()()に相応しいものであると思うから。

 

 

けれど、その正しさを証明する前に俺は後悔している。理由は単純明快だ。

 

幸せを願うはずの相手を、その願った幸せが叶う前に幸せでは無いと理解させられてしまったから。

()()()()()が笑って過ごせるよう願った気持ちが、返って()()()()()を泣かせる形にしてしまった。

 

最低だ。これは俺が悪い。俺の気持ちは間違っていたのだ。

()()()()()を幸せにしてあげたいと思うばかりで、()()()()()の気持ちを汲み取れなかった。

()()()()()の願う、俺と一緒にいたいという気持ちを考慮せず、我儘にも自分の気持ちを一辺倒にしてしまったのだ。

 

 

そんなことを()()()()()の泣きじゃくる姿を見てやっと気付かされるなんて、飛んだ阿呆である。

母さんが俺の事を最低のドラ息子なんて呼んでいたのも、納得させられる。

 

 

 

「……ごめん。俺は君の気持ちを考えてなかった。君が幸せなら、そのためならなんでもいいって。でも、君は俺と一緒にいることが幸せだと思うんだな。俺とずっと一緒に過ごしたいって想ってくれてるんだな」

 

「……ばかっ、ばかばかっ。どうして気づいてくれないのっ。ずっと私言ってたのに……っ」

 

「ずっと言い訳してきた。君はまだ学生だから、まだ早いって。もっと良い出会いがあるはずじゃないかって。でもそれは、ただの俺の押し付けだった。()()()()()の幸せを願うばかりで、()()()()()がどうしたいかなんて考えてなかった。本当にごめん……。俺ってば最低だな」

 

「……そう、そうだよっ。()()()は最低だっ。私の気持ちを無視してずっと私の事苦しめてきたっ」

 

「そうだ。俺は最低だ。()()()()()の気持ちを踏みにじった最低な男だ」

 

「……私今すっごい怒ってるよ?多分、()()()が謝っても私許さないよ?」

 

「……それは、困るな。どうしたら許してくれる?」

 

 

()()()()()は少し顔を俯かせると、再び俺を見上げるように顔を上げた。そして、ずいっと唇を尖らせるように突き出してきた。

目を瞑り、何か期待するような表情でそのまま動かない。これは、アレか?そういう事なのか?

 

逃げ出そうにも、()()()()()のパワーを振り切って拘束された腕を抜け出すのは不可能。

俺は、()()()()()に一応聞いてみる。

 

 

「……それは?」

 

「……誠意。()()()が私に許して欲しいって願うなら、ちゃんと行動に示して」

 

「……目敏くなったな」

 

 

いやほんとにガチで。こんな子だっただろうか?もう少し純粋なはずだったんだけど。

 

大方、ヴヴヴ三姉妹が現れてから、少し焦ってこういう知識に足を突っ込んだのだろう。……兄貴分としては複雑な気持ちだ。

 

 

「………はぁ。せめてするとしても、学園卒業するまで待って欲しかった気持ちがあるけど」

 

「そうやってなぁなぁで後回しにして、有耶無耶にしようとしてる?言っておくけど、私()()()以外の男の人、本当に微塵も興味無いからね」

 

「……男冥利に尽きるが、俺は君の幸せを願うのであって、そういう関係にはならないぞ」

 

「は?手を出しておいて逃げるの?最低なんだけど」

 

「まだ出してないだろ冤罪だっ。それに、こんな逃げ道塞いでるくせによくもまあそんな事言えるなっ」

 

「……ふーん、聞こえませーん。早く許して欲しかったらちゃんと見せてよ、誠意。そうすれば許してあげるから」

 

「……ほんとに言うが、しても俺は付き合うとか、そうことはしないからな。念を押して言うぞ」

 

「さいてーな()()()。でもいいもん。いつか自分で振り向かせるから」

 

 

……なんでこう、こうも姑息な感じになってる?なんか()()()()()らしくないぞ。誰かの入れ知恵か?……は、まさか……ブエナビスタかっ!?

 

まぁ適当に額にすればいいだろ。1回は1回だ。何処にしようとちゃんと誠意を見せるんだから大丈夫だろう。

 

しかし、そんな俺の心を読み取ったのか、顔を近づけようでした俺から顔を遠ざけて睨んでくる()()()()()

 

 

「……言わなきゃダメ?」

 

「言わなくてもいいです。指定されてないんだし」

 

「唇っ、はい唇っ。決定決定っ、それ以外はやり直しさせまーす」

 

「強か過ぎる……、本当に俺の知ってる()()()()()か?」

 

「……もう取られないように手段は選ばないようにしたの。ほら、早く」

 

 

覚悟を決めよう。俺はそう思い()()()()()の瞳をじっと見つめる。()()()()()も察したのか、同じように目を瞑り、唇を突き出すようにして顔を上げた。

 

なるようになれだ。たかが1回。なんの問題も無い。海外じゃ挨拶がわりにするところだってあるんだ、この国が堅物すぎるだけだ。

 

俺は言い聞かせるように顔を近づけ、そっとその唇に唇を重ねようとして……、()()()()()が不意に首を捻った。

 

少し湿った音が()()()()()の頬っぺに吸い付いた。え、なんで頬っぺた?と疑問に思ったのも束の間。突然顔を掴まれたと思ったらぶちゅッと音が鳴るぐらいの激しい勢いで()()()()()が唇を合わせてきた。

不意をつかれた為、半開きだった口の中に()()()()()の口から何か入り込んでぐちゅぐちゅと俺の口内を蹂躙していく。

 

 

何秒、何十秒か。寒いはずの空気がやけに暑く感じた。体が火照り、息継ぎ無しで口を合わせていた為、離れた際深く吸って吐いた息がやけに真っ白に見えた。俺と()()()()()を結ぶように半透明な細い糸が見えたがあえて見なかった振りをする。

 

 

「……えへへ、2回もちゅーしちゃったね」

 

「……最初からそのつもりだった?」

 

「……寧ろ、よく我慢出来たねって褒めるべきだよ?いつも()()()と寝る時、ずっと我慢してたんだから」

 

 

左様で。まぁ何はともあれこれで終わりだ。火照ってしまったとはいえ外は寒い。早めに神社に行って甘酒を貰って飲もう。

 

そう思ったのだが、何故か一向に拘束が解かれない。まさかと思い()()()()()の顔を見ると、そこには目を爛々と酷く美しい輝きに光らせた()()()()()()の姿があった。

 

 

「……な、なんで君も?」

 

(わたくし)とあの子は一心同体でしてよ?しかし、人格は別。傷付いた私も、是非()()()の唇で癒して頂きたいわ」

 

「……いや、癒すとかそうのじゃ」

 

「……ええ。気にしてませんわよ?ええ気にしてませんわ。ですが、私も傷つけられた1人であるというのに、()()()は私のことをおざなりにされるのね?酷い方ですこと」

 

「……そうやって脅してる君らの方が酷くない?……はぁ、仕方ない。1回だからね」

 

 

「……まるで私との接吻はついでの様ね。なんだか腹立たしいわ。5回ほどに量を増やしましょうか?」

 

「わーい()()()()()()とちゅーできるなんてうれしいなー」

 

「ふふっ、恥ずかしがって。お可愛いこと」

 

 

満更でもなさそうな表情の()()()()()()に、俺はそっと顔を近付ける。()()()()()()もゆっくりと瞼を閉じて俺を受け入れる姿勢を見せた。

そして、肌と肌が触れたと思った、次の瞬間。

 

 

「……っ!?」

 

「……っ」

 

 

()()()()()()は俺の後頭部を抱き寄せ、激しく俺の口を責め立てた。口内に蠢く何か。俺の舌と絡み、唾液が混じり合い、決して離さまいと貪るように唇が重なる。

息をしようにも()()()()()()がそれを許してくれない。もっと、もっとと貪られ、仕方なく鼻で呼吸するしか無かった。

 

ふと目を開けると、輝かしいまでの赤い瞳が俺の顔をじっと覗いている。

一体どれだけ続いたのだろうか。飲み込めない唾液が口から溢れて衣服に垂れる。それでもお構い無しに()()()()()()は激しく俺の唇を貪り食う。

 

今までの我慢が、タガが外れて暴走しているような。俺の舌が吸われ、歯茎が舐められ、()()()()()()のされるがまま。

 

 

ウマ娘の筋力に一般男性程度が叶うはずもなく、それから数分経ってようやく開放される。

お互いに息を切らし、2人とも互いので首周りがぐしょぐしょだ。俺はハンカチを取り出して()()()()()()の濡れた箇所を拭う。完全には吹ききれないが、きっとそのうち乾いてくれるだろう。乾いてくれるだろうか……?

 

 

「……ふふっ、次の機会は床の間で♡」

 

「……俺の知ってる()()()()()()じゃないっ」

 

 

なんだか、男の尊厳が破壊されたような気がしてとても悔しかった。

 

 

「……で、これで許してくれたんだね?()()()()()

 

「……あの子の方が長かった。やり直しを要求します」

 

「受け付けてたまるか却下だ!!」

 

 

こんな姿ゴシップ記事にされたら()()()()()達の評価は下がるんだぞっ。

俺は悪態をつきながら、その場から早く逃げるように神社に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▃▃▃▃▃▃▃▃▃▃▃▃▃▃▃▃▃▃▃▃▃▃▃

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……()()()()()、ちょっと聞いて欲しいんだけど」

 

「……?どうしたの、()()()。また、()()()()()()()()()()

 

「勘弁してくれ立派な犯罪なんだぞこれ」

 

 

俺を豚箱に入れようとするのはやめて欲しい。

冗談冗談と笑う()()()()()。普通に君がしたいだけではないのだろうか。

 

 

神社に着いた俺達は、顔見知りの人や同級生達と挨拶を交わし、鐘を鳴らしたい人達が並ぶ列に並びながら()()()()()にさっき言えなかった事を伝える。

 

 

「……俺がどうしてあの3人と契約を結んでるか。その理由を話そうと思ってさ」

 

「……ヴィルシーナさんは成り行きなんでしょ?」

 

「……まぁね。正直、最初はヴィルシーナじゃなくても良かったんだ。ただ、あの子が俺の元にやってきてくれて、思った以上に素質を見せてくれた。今では、ヴィルシーナじゃなきゃならないってぐらいには、俺の中であの子の存在はとても大きいんだ」

 

「……好きって事?」

 

「そうやってそういう事に結び付けないの。……まぁ、あの子が俺の事をそう思って見てくれてるってのは吝かではないけどさ?」

 

「……犯罪者、ロリコン……」

 

「大変不名誉だっ、節度は守るわ。さっき無理やり君ら2人に強制されなきゃ真っ当な人間でいられたのに……やった本人からそういうレッテル貼ってくるのは酷くない?」

 

「ごめんって。話続けていいよ?」

 

「………でだ、これは俺が掲げる目標というか、トレーナーとして絶対やりたいってことなんだけど」

 

「……え?」

 

 

俺は()()()()()にその目標を伝えた。

()()()()()は目を丸くしたあと、すぐに興味なさげにふーんと呟いた。

 

 

「なにそれ。私に必要なの?」

 

「必要だ。絶対に」

 

「今のままでも()()()?」

 

「でも今のままじゃダメなんだよ。君が、このレース界で絶対王者として君臨するならば、1()()じゃ無理だ。君の力を引き上げる誰かが必要なんだ」

 

「……それが、ヴィルシーナさん?」

 

「そうだ。あの子は、間違いなく()()()()()

 

「……っ、なに、それっ。()()()は私が負けていいって思ってるの?」

 

「そんな事思ってない。だからこそ、()()()()ように頑張るんだ」

 

 

()()()()()は全く納得していない様子だ。それもそうだろう。自分を負かす存在を、俺が育ててるなんて言われれば、巫山戯るなと言いたくなるのは当然の事。

ヴィルシーナの事を贔屓目で見たことは無いが、当然()()()()()の事も比較して贔屓目で見た事などない。

 

これは、()()()()()に。()()()()()()にとって必要不可欠な要素なのだ。

 

 

「……ふんだ。そうやって()()()は私の力を甘く見てればいいんだもんっ」

 

「……()()()()()

 

「見ててよっ。私には()()()()必要ないんだって証明してあげるから」

 

 

 

何処かぎらついていて、それでも何処か不安定な()()()()()の瞳が少し燻んで見えた。

強がりか焦りか。()()()()()の心情は分からないが、()()()()()の少し蠢く心を少しでも和らげるために、俺はそっと()()()()()の額に唇を落とす。

 

少し驚いた表情を見せた()()()()()であったが、そのまま何も言わずギュッと俺の身体に垂れかかる。

 

 

順番が来るまでそのまま過ごし、いざ順番がきた的()()()()()は、有り余るウマ娘パワーを駆使して力いっぱい鐘をついた。

聞いた事のない轟音と、激しく振動する衝撃波で神社内の窓ガラスが砕け散り、鐘の音は普段聞こえないはずの郊外まで響き渡ることとなった。

 

窓ガラスは()()()()()経由で()()()()()のご実家が弁償した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








次回はいよいよ話をすっ飛ばして桜花賞まで進みます。

現在制作中ですが、私の悪い癖で話が膨大な量になってしまいます。
マイルなのにレース描写長くするとか意味わからんと自分でも思っていますが、なるべく距離が短いレースだからこその端的な終わり方を目指して制作中ですので、ほんと、本当に今しばらくお待ちください。


……本当に自分の実力不足を痛感します。
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